RAW画像
RAW画像(ローがぞう、テンプレート:Lang-en-short)は、デジタルカメラなどにおける完成状態にされていない画像データのことである。英語でRawは「生」「未加工」を意味する。
かつてはいわゆるベタ画像のことを指すこともあったが、2000年代に入ってからはデジタルカメラやイメージスキャナ等における「未現像」データのことを指す場合が多い。
概要
デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラほか、高級デジタルカメラで記録可能な画像形式。デジタルカメラでは一般的に「写真」としてJPEG画像を生成するが、RAW画像はJPEG画像を生成する元となる「生」の画像データである。ある程度の写真知識がある(プロフェッショナル、ハイアマチュアなど)ユーザーが、露出、コントラスト、ホワイトバランス、カラーバランス、明度、彩度などの補正や加工、ノイズや歪曲など除去をパソコン上で思い通りに行ないたいという要望に応え、カメラメーカーが用意している機能のひとつ。加工と鑑賞には専用のソフトウェアが必要になる。カメラメーカーによって記録データの内部形式がまちまちである事、およびデータ量が多くなることから、そのままでは印刷データや、不特定多数に向けた配布、鑑賞には適さない。
解説
多くのデジタルカメラで採用されている単板式カラーCCD・CMOSイメージセンサでは各画素が単色の色情報しか持たない。このためデジタルカメラは撮影時に各画素に対してその周辺画素から足りない色情報を集め与えることで色情報を補完し、フルカラー画像を作り出す「デモザイク」(de-mosaic)処理を行っている。多くのデジタルカメラではデモザイクに並行して色や明るさのトーン等を自動レタッチする画像処理を行い、完成した画像をJPEGやTIFFなどの汎用画像フォーマットで保存する。
しかし、デモザイクや自動レタッチ処理の精度は完成画像の画質に大きな影響を及ぼすほか、現像後(後述)はホワイトバランス(色温度)などが固定されてしまうため容易に修正ができない。また、最終保存に使われるJPEGフォーマットは通常非可逆圧縮であり、水平方向の色情報の間引きも行っているため元データと比較すると原理的に画質劣化が避けられない。さらに、これらフォーマットの色深度は通常各色8ビット(合計24ビット)しかないため、通常12ビットの精度があるイメージセンサから受け取った情報を大幅に切り捨てるほかなく、撮影後の露出(画像の明暗や輝度)調整が困難になる。
このような事情から、通常の画像フォーマットで保存されたデータでは大胆なレタッチをしようとすればするほど画質低下が際立ち、作品作りの自由度がそがれているとしてプロ写真家などからは大きな不満の声が上がっていた。このため、デジタル一眼レフカメラなど高機能カメラを中心に、デモザイク前の生データ、すなわちRAWデータをそのままファイル保存する機能を持つものが増え始め、2010年現在ではほぼ全てのレンズ交換式カメラや一部の高級コンパクトデジタルカメラにも搭載されている。RAWデータは無圧縮か可逆圧縮であるためJPEGと比較すると非常に大きなファイルサイズになるが、各画素に1つの色情報しか持たない特性上、TIFF(各色8ビット)と比較するとその半分以下で済む。
RAW画像は専用に設計された現像ソフト(RAW現像ソフトウェア、テンプレート:Lang-en-short)によって自由に調整・出力が可能で、この処理をフィルムになぞらえて「現像」と呼ぶ。RAW画像のデータフォーマットは各メーカー・各機種によって違うため、現像には対応ソフトウェアを用意する必要がある。通常はカメラメーカーが自社製の現像ソフトウェアを添付したり、カメラ本体で再処理する機能(カメラ内現像)を用意しているほか、いくつかのソフトウェア・メーカーからも数多くの機種に対応した現像ソフトウェアが発売されている。現像ソフトウェアの採用するアルゴリズムによって現像された画像の画質傾向が大きく変化する。
上記の通り、A/D変換直後の信号情報を保存するのがRAW画像の原則であるから、カメラ毎の画質パラメータ(スタンダード、ビビッドといったスタイル、及びホワイトバランス)は数値上の影響をいっさい及ぼさない。
2005年にはRAWフォーマットの互換性向上を目的としてアドビシステムズがDigital Negative(DNG)フォーマットを提唱したが、カメラメーカー側の採用は進んでいない。 一方、マイクロソフトは「Windows Vista」以上のバージョン用に主要カメラメーカーのRAW現像アルゴリズムを組み込むための、カメラコーデックパックを別途インストールすることによりOS標準で利用できるようになる。[1] また、マイクロソフトは2006年にJPEGの代替を目的としたHD Photoフォーマットを発表(後にJPEG XRとして規格化)しており、このフォーマットが普及すればJPEG保存における問題点の数多くが解決されるため、RAWとJPEGの間に横たわる隙間を埋めるフォーマットとしても注目されている。
また、OpenRAWプロジェクトは、互換性のないRAWフォーマット画像の標準化のため、カメラメーカーに自社フォーマットの仕様を完全公開するように働きかけている。
主なRAW現像ソフトウェア
カメラメーカー純正ソフト
- Digital Photo Professional(キヤノン)
- DiMAGE Master(コニカミノルタ) - 別売
- HS-V3(富士フイルム) - 別売
- Image Data Converter SR(ソニー)
- KODAK EASYSHARE Software(コダック)
- Mamiya Digital PhotoStudio(マミヤ)(Phase One、日本語版発売元:DNPフォトルシオ) - 2007年にフェーズワンと業務提携を締結し、デジタル分野における業務を全てフェーズワン社へ移管した。
- ViewNX(ニコン)
- ViewNX2(ニコン)
- CaptureNX(ニコン) - 別売
- CaptureNX2(ニコン) - 別売
- OLYMPUS Viewer 2(オリンパス)
- PENTAX Digital Camera Utility(ペンタックス)
- PENTAX PHOTO Laboratory(ペンタックス)
- SIGMA Photo Pro(シグマ)
- PHOTOfunSTUDIO(Panasonic)
- Capture One(Phase One、日本語版発売元:DNPフォトルシオ) - デジタルバック「Phase One」シリーズ用現像ソフト。現在のバージョンでは他社製デジタルカメラのRAW画像も現像できるなど汎用ソフトとしての性格も併せ持つ。
- Phocus(Hasselblad) - AppleコンピュータOSのみ
サードパーティ製汎用ソフト
- Adobe Photoshop Lightroom(アドビシステムズ)
- Adobe Photoshop(アドビシステムズ)
- Corel Paint Shop Pro(コーレル)
- Aperture(アップル)- Mac OS X専用。
- iPhoto(アップル)- Mac OS X専用。Ver.5より対応。
- dcraw(Dave Coffin) - フリーのコマンドライン式ソフトウェア。これをベースにしたGIMP用プラグイン「UFRaw」がある。
- RawTherapee(Gábor Horváth及び開発チーム) - オープンソース。無償で利用でき日本語にも対応している。Windows、MacOS X、Linuxに対応。
- SILKYPIX(市川ソフトラボラトリー) - 記憶色志向の派手な絵作りが特徴的。
- LightZone(Light Crafts) - ゾーンシステムを現像・画像処理に応用。JavaベースであるためWindowsとMac OS X以外にLinuxにも対応。
- Pixmantec RawShooter(Pixmantec) - 2006年にアドビが買収し、Lightroomへ機能統合する計画を発表している。
- Microsoft RAW Image Thumbnailer and Viewer for Windows XP(マイクロソフト) - Windows XPでRAW形式をサポート。
- Picasa(Google)
- DxO Optics Pro(DxO Labs、日本語版発売元:ソフトウェア・トゥー)
- ACDSee Pro(ACD Systems、日本語版発売元:イーフロンティア)
- ArcSoft Digital Darkroom(ArcSoft、日本語版発売元:ジャングル)
脚注
関連項目
- Digital Negative(DNG)
- デジタルカメラ
外部リンク
- OpenRAW - OpenRAWプロジェクト