Final Cut Pro
Final Cut Pro(ファイナルカット・プロ)は、アップルの開発・販売するソフトウェアのひとつで、パソコン向けのノンリニアビデオ編集を目的としたMac OS X向けのソフトである。アップルのプロフェッショナル向け映像ソリューションの中核となるソフトウェア。 バージョン7まではMotion、Soundtrack Pro、DVD Studio Pro、Compressor、Colourなどを含むソフトウェアスイートFinal Cut Studio(ファイナルカット・スタジオ)として販売されていた。
概要
もともとは、アドビシステムズでPremiereを開発していた、Randy Ubillosを中心とするグループが、マクロメディアに移ってコードネームKeyGripと称して開発していたソフトウェアであり、"Macromedia Final Cut"として販売されるはずであった。
後に、Apple Computerが開発中のKeyGripを購入、1999年4月に"Final Cut Pro"としてVer.1が発売され、2009年7月時点の最新版はIntel Macのみ対応のVer.7となる。
Final Cut Studioは、Final Cut Proに加えて、Motion、Soundtrack Pro、DVD Studio Pro、LiveType、Compressor、Cinema Tools、Colourを含む、プロ向けのスイート。また、機能を省略した廉価版であるFinal Cut Expressも用意されていた(後述するFinalCutPro Xの登場と価格改定に伴い、Express版はフェードアウトとなった)。
MacBook ProやMac ProとFinal Cut Proのみでもかなり実用性の高い編集が可能だが、拡張環境対応に優れておりインタフェースボードやRAIDディスクの追加、Xsanシステムの利用などにより、さらに高性能・高画質な編集も可能である。
反面、数多くのコーデックやフォーマットに対応する為に設定項目が多く、NTSCやPALといった放送規格だけではなくある程度の動画圧縮コーデックの知識を必要とし、そういった項目を意識せずタイムラインを設定し編集すると(タイムラインと素材や出力のフォーマットの違いによるピクセル比やコーデック、フレームレートの変換、誤った優先フィールドの設定等で)意図しない画像の劣化や余計な処理時間が発生してしまう事もある。
優位点
- 前述の拡張性によって、廉価かつコンパクトなシステム(MacBookPro本体のみなど)で大筋の編集(旧来のオフライン編集に相当)を行い、仕上げを高価なシステム(MacPro+ビデオインターフェースカード+RAIDディスクシステムなど)に移行して行う(オンライン編集に相当)などの流れが非常に容易である。この場合まったく同じソフトウェアを用いることになるので、オフライン段階で効果などを付けた場合でも、そのままオンラインに反映させることができる。
- Final Cut ServerとXsanシステムの組み合わせにより、FCPで編集した映像を複数のデスクトップ等から同時作業出来る。
Final Cut Pro X
2011年6月、アップルはFinal Cut Proの新しいバージョンである"Final Cut Pro X"または"FCP X"をリリース。内部構造が根本的に刷新されたほか、ツールとしての挙動・用語の概念・UIデザイン等が大幅に変更された。
Final Cut Pro XはGrand Central Dispatch とOpenCLをサポートをしている64bitアプリケーションである。 これらの機能が追加された事によって、バックグラウンドでレンダリングを行う事が出来るようになった。
RED ONEなどの4Kの解像度にも対応し、クリップの管理ではクローズアップ、ワイドショットなど自動的にショットによってグループ分けされる機能を持っている。 レンズフレア、手ぶれ補正、ローリングシャッター補正、カラーバランス(色補正)等の映像修正も簡単に行う事が出来る様になった。
Final Cut Pro Xは2011年6月21日からMac App Storeでダウンロード可能になった。初期価格は3万5000円で、後に2万6000円となった。
リリース後、Mac App Storeでは従来のプロフェッショナルユーザーから多くの1星レビューが書かれることとなった。その理由として過去バージョンにあった機能の未実装、EDL,XML,OMFの非対応、過去のFCPプロジェクトファイルのインポートが出来ない、マルチカメラの非対応等が挙げられる。結果として、「ハイエンド製品ではない」「iMovieProである」といった評価もみられた。
従来版とは実質別ソフトと言っていいほどの改変であったため、「ポスト Final Cut」「(乗り換えによる) Final Cut 特需」といった言葉も生まれた。
アップルは、今後のアップデートによりマルチカメラなどの機能を追加予定だと発表、Ver.10.0.3のマイナーアップデートでマルチカメラ等の機能が追加された。2012年6月のマイナーアップデートではver.10.0.5となりRetina対応などが行われた。
発売開始当初、AppStoreサポートセンターによると、利用規約に記述されている「(i) お客様には、個人的、非商用目的に限って本iTunes商品を利用される権限が与えられるものとします。」を根拠とし、「iTunes Storeでは非商用目的の、個人でご利用を目的としております」と回答しているため、Final Cut Pro Xはプロユースとしての使用できないとされていた。 2012年8月現在は法人向けストアである Apple Store for Business からの決済もできるようになっている(通常のApple Storeや同Educationには表示されない)。
Final Cut Proの画面(Final Cut Pro 7まで)
標準設定でFinal Cut Proを立ち上げて現れるのが、「ビューア」・「キャンバス」・「ブラウザ」・「タイムライン」の4つの画面である。動画作成に使う素材(クリップ)は、ブラウザに収納することが出来る。それぞれのクリップを、ダブル・クリックして現れるのがビューアで、そのクリップに関する設定(例えば、透明度、拡大・縮小など)を変更することが出来る。
ビューアとは対照的に、動画全体がどのように画面に現れるかを確認できるのが、キャンバスである。そして実際の動画作成の作業場となるのがタイムラインで、ブラウザに確保してあるクリップを、ここにドラッグ・アンド・ドロップしながら動画全体を編集していく。