Sd Kfz 250
テンプレート:戦闘車両 Sd.Kfz.250 とは、第二次世界大戦中のドイツ国防軍の軽装甲兵員輸送車の制式番号である。1t ハーフトラック (Sd.Kfz.10) をベースにオートバイ兵大隊(偵察部隊)の装備を強化するために開発された。ドイツ語では leichter Schützenpanzerwagen (Sd.Kfz.250) と表記される。また、le.SPW と略される。
概要
Demag 社が製造した。1941年6月から1943年9月まで生産された旧型と、形状を簡略化して1943年10月から生産開始された新型に分かれる。終戦まで生産が続けられ、旧型車体“アルテ(Alte)”が4,250輛、新型車体“ノイ(Neu)”が2,378輛の総計6,628両ほど作られた。
3tハーフトラックがベースである中型装甲兵員輸送車Sd.Kfz.251に比べると、同じエンジンでより小型軽量なため機動性に勝る。しかし前輪に動力が無いため東部戦線の泥沼化した道ではまともに機動できなくなり、最悪向きを変えバック状態で"前進"せねばならず、また重火器に対する防御力も不足しており、装甲部隊や突撃砲部隊の指揮用・偵察用としては撃破されやすく、前線での評判は良くない。このため突撃砲部隊では指揮官用としてSd.Kfz.253やSd.Kfz.250/4に代わって(大戦初期には数が足りず使えなかった)突撃砲が用いられるようになり、偵察・連絡用としてはもっと小型で軽快なキューベルワーゲンが使われることが多くなった。
また、アメリカ軍のハーフトラック M2/M3 などに比べると、性能の割りに複雑高価すぎるのは否めない。日本の模型マニアやイギリスの実車マニアには「デマーグ」と呼ばれることもあるが、これは 1t ハーフトラックや本車を生産した製造会社 Demag(デマーク)に由来する。タミヤの250/9のキットの商品名でもある。
当初は兵員4名を輸送可能な軽装甲兵員輸送車として装甲偵察部隊を中心に使用された。様々な派生型が作られた。
マイバッハ製VG102128H半自動変速機が使用され前進7段後進3段とドイツ軍装甲車両の特徴である非常に段数の多い変速機を搭載していた。これはドイツ軍の車両全般に共通した仕様でエンジンのトルクが薄く回転数が高いため、一つの変速比で出すことができる速度領域が狭くなっているためである。 アメリカやソビエトの装甲車などは4段から5段で同じ速度を出していた。
- 回転数:毎分2800回転
- 1速:5.5キロ
- 2速:9キロ
- 3速:13キロ
- 4速:20キロ
- 5速:31キロ
- 6速:48キロ
- 7速:65キロ
バリエーション
- 1型:基本形であり、兵員輸送室の前方に機関銃を装備、後方にも機関銃を置ける三脚のついた、兵員4名を輸送可能な兵員輸送車。
- 2型:電話線敷設車
- 3型:部隊の統制や、空軍との連絡用の無線指揮装甲車。エルヴィン・ロンメルは北アフリカ戦線で「グライフ (Greif)」と大きくマーキングした同車を使用した。
- 4・5・12型:砲兵の着弾地点を観測・測定し、砲兵に無線で指示を与える観測測定車。Sd.Kfz. 250/4 は Sd.Kfz. 253 の代替車輌であり、突撃砲部隊向け。
- 6型:突撃砲部隊用の弾薬運搬車。Sd.Kfz. 252 の代替車輌。
- 7型:輸送室内に迫撃砲装備の支援用輸送車。
- 8型:24口径 7.5cm 砲装備の自走砲。
- 9型:2cm 砲搭載の偵察部隊用車輌。Sd Kfz 222 に代わって部隊に配備された。
- 10型:3.7 cm PaK 36対戦車砲搭載。偵察部隊の小隊長用車輌。威力不足のため、Sd.Kfz. 250/11 に代替された。
- 11型:2.8cm sPzB41 重対戦車銃搭載。偵察部隊の小隊長用車輌。威力不足のため、Sd.Kfz. 250/8 に代替された。
- Sd.kfz. 252:突撃砲部隊の弾薬補給用車両。初期の短砲身型突撃砲用で、専用の弾薬トレーラーを牽く。
- Sd.kfz. 253:突撃砲部隊の指揮官用車両。上面に装甲が施されており、250より若干装甲が厚い。