胚
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エルンスト・ヘッケル (Ernst Haeckel) による脊椎動物の胚の比較。初期胚には形態的な類似性が見られるがこれは捏造だといわれている。左の4つは魚類、両生類、爬虫類、鳥類。右半分は哺乳類。右端がヒト。
胚(はい、独,英: Embryo)とは多細胞生物の個体発生におけるごく初期の段階の個体を指す。胚子ともいう。
内容
動物の場合、初期の細胞分裂を卵割と呼び、その分裂様式から等割、不等割、盤割、表割などと分類する。卵割によって生じた細胞を割球と呼び、相対的な大きさから大割球、中割球、小割球と呼ぶことがある。
卵割が進むと、次第にその生物の構造が出来上がる。孵化する時期は動物によって異なるので、どの程度の体のしくみができるまでを胚というか、というような定義はない。初期の発生には様々な動物群を通じて共通する構造も見られるので、それらを共通の名で呼ぶことも行われる。卵割が進んだものを桑実胚、分化のない細胞層が表面を覆う状態(普通、内部に卵割腔という空洞を生じる)を胞胚、一部の細胞層が内部に陥入して原腸を構成する原腸胚(嚢胚)などである。動物群によってはこのような胚の名で呼ばれる時期に孵化してしまうものもあり、そのような場合、その群固有の幼生の名で呼ばれるが、胚の名で呼ぶ場合もあり得る。たとえばウニのプリズム幼生は原腸胚とも呼ばれる。
古典的な動物発生学では、実験材料としてウニやカエルの胚がよく用いられていた。現在では観察技術の発達や研究目的の変化から、線虫やショウジョウバエといった小さな対象や、アフリカツメガエルやゼブラフィッシュ、マウスなどさまざまなモデル生物を対象とするようになった。