「水の戯れ」の版間の差分
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テンプレート:Portal クラシック音楽 『水の戯れ』(みずのたわむれ、テンプレート:Lang-fr-short)は、フランスの作曲家モーリス・ラヴェルがパリ音楽院在学中の1901年に作曲したピアノ曲。当時の作曲の師であるガブリエル・フォーレ[1]に献呈された。
初演
1902年4月5日、サル・プレイエルで行われた国民音楽協会主催のリカルド・ビニェスのピアノ・リサイタルにおいて、『亡き王女のためのパヴァーヌ』とともに初演された[2]。
曲の特徴
ホ長調、4分の4拍子、八分音符=144、きわめて優しく。
ラヴェルは「テンポ、リズムも一定なのが望ましい」と述べており、楽譜の冒頭に、「水にくすぐられて笑う河神」というアンリ・ド・レニエの詩[3]の一節を題辞として掲げている。曲の構成はソナタ形式。また、七の和音、九の和音、並行和声が多用されており、初演当時としてはきわめて斬新な響きのする作品だったと思われる。そのためか、「不協和音に満ちた作品」というカミーユ・サン=サーンスの酷評をも招いた。しかし、今日では「水の運動と様態を描いてこれほど見事な作品はあるまい」(三善晃)という評価もあるように、ラヴェルのピアニスティックで精巧な書法が本格的に開花した作品として、高い評価を得ている。また、ピアノ音楽における印象主義の幕開けを告げた作品として、ドビュッシーの組曲『版画』(1903年)に先んじていることも特筆すべきことである。
この曲はリストの『エステ荘の噴水』(Les Jeux d'Eaux à la Villa d'Este)から影響を受けていると言われるが、ラヴェルは、かねてよりピアノ音楽におけるリストの超絶技巧や、ショパンの詩情あふれる書法などに強く惹かれていたのであった。また、よく比較される作品に、同じく水を題材にしたピアノ曲、ドビュッシーの『映像』第1集の第1曲「水に映る影」(または「水の反映」とも訳される)がある。ラヴェルの『水の戯れ』は、制御された噴水のような美しい水の動きを古典的なソナタ形式を用いて描いているのに対し、ドビュッシーの「水に映る影」は、水そのものよりも「水に映った風物の輝き、ゆらめき」をより自由な形式で描いている。
なお、ラヴェルは他にも組曲『鏡』(1905年)の第3曲「海原の小舟」、『夜のガスパール』(1908年)の第1曲「オンディーヌ(水の精)」など、水を題材にしたピアノ曲を残している。
備考
曲名の日本語訳『水の戯れ』は逐語訳であり、フランス語の原題 "Jeux d'eau" は通常は噴水のことを指す。
脚注
- ↑ ラヴェルは1898年からフォーレの作曲のクラスに在籍したが、音楽院のフーガのコンクールで入賞できなかったために1900年にクラスを除籍、その後1901年から聴講生として再びフォーレに師事していた。
- ↑ アービー・オレンシュタイン、井上さつき訳『ラヴェル 生涯と作品』音楽之友社、2006年
- ↑ 「水の祭典」(詩集『水の都市』に収録)からの引用(オレンシュタイン、前掲書、198ページ)。