陸上競技場
陸上競技場(りくじょうきょうぎじょう)とは、陸上競技を行うために設けられる施設である。通常は屋外に常設されるものを指すが、体育館やホール内に特設される室内陸上競技場もある。
日本の主要な陸上競技場は地方自治体が設立・運営しているものが多いが、学校が有する陸上競技専用のグラウンド(特に私立大学に多い)が、日本陸上競技連盟の公認を受けている例も少なくない。
以下に屋外に設けられる陸上競技場について解説する。
施設
競技が行われる部分は、周回走路である「トラック」と、跳躍や投擲などの競技を行う「フィールド」に分かれている。
トラックや助走路の表面はシューズのスパイクを受け止められるよう堅固で、かつ均一でほぼ水平でなければならない。第1種・第2種公認競技場では競技面は全天候舗装されている必要がある。これには古くからアンツーカなどの舗装材が使われてきたが、最近ではポリウレタンまたは合成ゴム舗装が一般的である。舗装の色はほとんどがレンガ色であるが、近年は青色のトラックを持つ競技場も増えている。第3種以下の競技場も全天候トラックが多いが、一部の地方競技場ではシンダー舗装(土のトラック)になっているもの、あるいは全天候型とシンダー舗装を併用しているものもある。
トラック
徒競走、リレー競走、ハードル競走、障害物競走などが行われる周回走路。平行な2本の直走路と、それらをつなぐ2つの曲走路からなり、選手達は反時計回りにこれを周回する。その内端にはコンクリート、あるいは適当な材質の縁石を設けることになっている。1周の距離は400mが標準だが、第3種以下の競技場ではそれより小さなものもある。
- レーン
- 走路は白線によって各レーンが区切られている。400m以下の競走では選手は各々決められたレーンを走らなければいけない(セパレートコース)。800m競走など、スタートから一定距離はセパレートコースで、その後はどこを走っても良いオープンコースになる種目もある。レーンの幅は122cmと決められており、内側のラインから20cmの部分(ただし、トラック内側の縁石が走路より高くなっている場合は、最内レーンのみ縁石から30cmの部分)を走るものとして距離が測定されている。また中距離走より距離の長いトラック種目や1600メートルリレー走の2走以降は、必然的に最も内側の1レーンを走る。そのため、使用頻度によっては1レーン、あるいはインレーンほど表面の傷みが激しく、短距離走などでは記録にも影響を及ぼすおそれもある。近年9レーンまである陸上競技場が第1種、第2種公認となった背景には、短距離走などで2レーンから9レーンの8つのレーンを使うことで、1レーンの使用機会をできるだけ減らし、表面を保護する目的もある。
- フィニッシュライン、スタートライン
- 一方の直走路の終端部にはフィニッシュラインが引かれており、競技の種類や距離にかかわらずこのラインがゴールとなる。このラインから競技距離分だけ離れた場所にはスタートラインが引かれている。100m競走や110mハードルでは直走路の延長部分にスタートラインが引かれ、直線コースで競走が行われる。セパレートコースを用いる200mから800mの競走ではレーンごとにスタートラインが引かれている。1,000m以上の競走ではオープンコースであるため、スタートラインは最初の曲走路入り口を中心とした弧になっている。
- 水濠
- 3,000m、あるいは2,000mの障害物競走が行われる競技場では、一方の曲走路の内側か外側に水濠が設けられ、そこへ進入するための走路も作られる。このため、障害物競走においては1周の距離は400mよりやや長いか、短いことになる。日本では外側にあるのが主流だが欧米などでは逆に内側にある競技場が多い。
フィールド
投擲競技や跳躍競技が行われる部分。トラック内側をインフィールド、外側をアウトフィールドと呼ぶ。インフィールドをサッカー競技やラグビー競技などを行うスペースとして利用できる競技場も多い。このような競技場の場合、芝生の保護という観点から、通常は投擲競技の練習ができず、サブトラックなどで行われることが増えている。
走幅跳・三段跳には直線助走路と着地場所である砂場、棒高跳には直線助走路とポールを突き立てるためのボックス、走高跳には扇形の助走路が設けられる。ハンマー投と円盤投のサークルは兼用されることが多いが、砲丸投のサークルは別に設けなければならない。やり投の助走路は直線で36.5mある上に、やりの飛距離が100m近くにもなるため、トラックの曲線部を横断する形で設けられることが多い。
走幅跳・三段跳の助走路と砂場はアウトフィールドに設けられることが多い。これらをインフィールドに設けてしまうと、インフィールド内の面積が制限され、サッカーやラグビーのピッチの規格に合わなくなってしまい、事実上陸上競技専用競技場になってしまうためである(例:千葉県総合スポーツセンター陸上競技場)。走幅跳・三段跳の直線助走路と砂場がインフィールドとアウトフィールドどちらにあった方が競技を行いやすいかは競技者によって区々のようである。
公認競技場の区分
国際陸上競技連盟(IAAF)公認の競技場には、オリンピックや世界選手権などIAAF主催・管轄大会に必要なクラス1や、国際招待大会に必須のクラス2がある。
日本陸上競技連盟公認の陸上競技場には、第1種から第5種までの区分がある。主な項目についてその規格を示す。
| 項目 | 第1種 | 第2種 | 第3種 | 第4種 | 第5種 |
|---|---|---|---|---|---|
| 使用できる大会 | 日本選手権、国民体育大会、 国際的な競技会 | 加盟団体の選手権、 地方における国際的競技会 | 加盟団体等の 対抗競技会 | 対抗競技会、 記録会 | 学校内競技会、 クラブ対抗競技会 |
| 走路一周の距離 | 400m | 300m,400m | 200m,250m, 300m,400m | 200m,250m,300m, 350m,400m | |
| 直走路 | 8又は9レーン | 8レーン | 6レーン以上 | 4レーン以上 | |
| 曲走路 | 8又は9レーン[1] | 6レーン以上 | 4レーン以上 | ||
| 3000m障害用施設 | 必要 | なくともよい | |||
| 公認長距離競走路 | 近くにあることが望ましい | なくともよい | |||
| 走幅跳、三段跳の跳躍場 | 6か所以上 | 1か所以上 | 各1か所以上、一部を欠いてもよい | ||
| 棒高跳の跳躍場 | 6か所以上 | 4か所以上 | |||
| 砲丸投のサークル | 2か所以上 | 1か所以上 | |||
| 円盤投、ハンマー投げのサークル | 兼用可で2か所以上 | ||||
| 補助競技場 | 全天候舗装、走路一周400mで第3種相当 | 全天候舗装が望ましい | なくともよい | ||
| 収容人員 | 15,000人以上(芝生席を含む) | 5,000人以上 | 相当数 | ||
競技場の運営者から公認申請があった場合、日本陸上競技連盟は検定員、技術役員を派遣して実測調査を行い、施設用器具委員会における審査を行い公認の可否を決定する。公認の有効期間は第1種から第4種では5年、第5種では3年であるが、競技場の改変を行った場合は再検定が必要となる。また、公認要件を満たさなくなった場合や、所有者・管理者が有効期間満了前に公認更新を行わなかった場合には公認は取り消される。
公認料は上位の種別ほど高く、第1種では新規公認84万円、継続公認42万円(2004年現在)が必要となる。このため、第1種や第2種の要件を満たしていても財政的理由から下位の種別で公認を受けている施設もある。
第1種公認陸上競技場の一覧
2012年現在、日本陸上競技連盟により第1種公認を受けている競技場は以下の通りである。
北海道・東北
- 札幌厚別公園競技場 (北海道札幌市厚別区)
- 青森県総合運動公園陸上競技場 (青森県青森市)
- 岩手県営運動公園陸上競技場 (岩手県盛岡市)
- 北上総合運動公園陸上競技場 (岩手県北上市)
- 宮城スタジアム (ひとめぼれスタジアム宮城)(宮城県利府町)
- 秋田市八橋運動公園陸上競技場 (秋田県秋田市)
- 秋田県立中央公園陸上競技場 (秋田県秋田市)
- 山形県総合運動公園陸上競技場 (NDソフトスタジアム山形)(山形県天童市)
- 福島県営あづま陸上競技場 (とうほうみんなのスタジアム)(福島県福島市)
関東
- 笠松運動公園陸上競技場 (茨城県那珂市・東海村)
- 栃木県総合運動公園陸上競技場 (栃木県宇都宮市)
- 群馬県立敷島公園県営陸上競技場(正田醤油スタジアム群馬)(群馬県前橋市)
- 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場 (埼玉県熊谷市)
- 千葉県総合スポーツセンター陸上競技場 (千葉県千葉市稲毛区)
- 東京スタジアム(味の素スタジアム)(東京都調布市[2])
- 横浜国際総合競技場(日産スタジアム) (神奈川県横浜市港北区)
- 川崎市等々力陸上競技場(神奈川県川崎市中原区)
- 山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場(山梨中銀スタジアム)(山梨県甲府市)
北信越
- 新潟市陸上競技場 (新潟県新潟市中央区)
- 新潟スタジアム(デンカビッグスワンスタジアム)(新潟県新潟市中央区)
- 富山県総合運動公園陸上競技場 (富山県富山市)
- 石川県西部緑地公園陸上競技場 (石川県金沢市)
- 福井運動公園陸上競技場(福井県福井市)
- 長野市営陸上競技場 (長野県長野市)
- 松本平広域公園陸上競技場 (長野県松本市)
東海
- 静岡県草薙総合運動場陸上競技場 (静岡県静岡市駿河区)
- 静岡県小笠山総合運動公園スタジアム(エコパスタジアム) (静岡県袋井市)
- 名古屋市瑞穂公園陸上競技場 (愛知県名古屋市瑞穂区)
- 岐阜メモリアルセンター長良川競技場 (岐阜県岐阜市)
- 三重県営総合競技場 (三重県伊勢市)
関西
- 皇子山陸上競技場 (滋賀県大津市)
- 京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場 (京都府京都市右京区)
- 万博記念競技場 (大阪府吹田市)
- 長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)(大阪府大阪市東住吉区)
- 長居第2陸上競技場(ヤンマーフィールド長居)(大阪市東住吉区)
- 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県神戸市須磨区)
- 明石公園陸上競技場 (兵庫県明石市)
- 尼崎市記念公園陸上競技場 (ベイコム陸上競技場)(兵庫県尼崎市)
- 姫路市立陸上競技場 (兵庫県姫路市)
- 加古川運動公園陸上競技場 (兵庫県加古川市)
- 兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場(兵庫県三木市)
- 奈良市鴻池総合運動場陸上競技場 (奈良県奈良市)
- 奈良県立橿原公苑陸上競技場 (奈良県橿原市)
- 紀三井寺運動公園陸上競技場 (和歌山県和歌山市)
中国
- 鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場 (コカ・コーラウエストスポーツパーク陸上競技場)(鳥取県鳥取市)
- 松江市営陸上競技場 (島根県松江市)
- 島根県立浜山公園陸上競技場 (島根県出雲市)
- 岡山県総合グラウンド陸上競技場(kankoスタジアム) (岡山県岡山市北区)
- 広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島) (広島県広島市安佐南区)
- 広島県総合グランドメインスタジアム(Coca-Cola West 広島スタジアム) (広島市西区)
- 維新百年記念公園陸上競技場 (山口県山口市)
四国
- 徳島県鳴門総合運動公園陸上競技場 (鳴門大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアム)(徳島県鳴門市)
- 香川県立丸亀競技場 (香川県丸亀市)
- 愛媛県総合運動公園陸上競技場(ニンジニアスタジアム)(愛媛県松山市)
- 高知県立春野総合運動公園陸上競技場 (高知県高知市)
九州・沖縄
- 東平尾公園博多の森陸上競技場(福岡県福岡市博多区)
- 平和台陸上競技場 (福岡県福岡市中央区)
- 北九州市立本城陸上競技場 (福岡県北九州市八幡西区)
- 福岡県立久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県久留米市)
- 佐賀県総合運動場陸上競技場 (佐賀県佐賀市)
- 長崎県立総合運動公園陸上競技場 (長崎県諫早市)
- 長崎市総合運動公園かきどまり陸上競技場 (長崎県長崎市)
- 熊本県民総合運動公園陸上競技場(うまかな・よかなスタジアム) (熊本県熊本市東区)
- 大分スポーツ公園総合競技場(大分銀行ドーム)(大分県大分市)
- 大分市営陸上競技場(大分県大分市)
- 宮崎県総合運動公園陸上競技場 (宮崎県宮崎市)
- 鹿児島県立鴨池陸上競技場 (鹿児島県鹿児島市)
- 沖縄県総合運動公園陸上競技場 (沖縄県沖縄市)
- 沖縄市陸上競技場 (沖縄県沖縄市)
脚注
- ↑ 尚、国際陸上競技連盟の"IAAF Track and Field Facilities Manual 2008 Edition 2.2.1.1 Layout of the 400m Standard Track"によれば、IAAFコンチネンタルカップ(World Cup in Athletics)に使用する競技場は9レーン必須となっている。また、同マニュアルの当該箇所には「外側のレーンの走者が有利になりすぎるため、曲走路の上限は9レーンとする」旨の記載がある。
- ↑ 2012年敷設。東京都の地方自治体(都・市区町村)が運営する競技場唯一の1種公認。それまでは陸上トラックの予定地は補助トラック設置が凍結されていたため人工芝を敷いていた
外部リンク
- 主なスタジアムの概要は 日本陸連主要競技場一覧 を参照
- 第2種などその他の主要競技場(全天候型トラックについてのみ掲載)の一覧については 主要競技場一覧(月刊陸上競技社製作) を参照