イワナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2014年6月1日 (日) 04:41時点におけるBankuBot (トーク)による版 (WP:BOTREQ#生物分類表の動物界に於ける配色の変更。)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:特殊文字 テンプレート:生物分類表 イワナ岩魚、嘉魚、テンプレート:補助漢字フォント[1])は、サケ目 サケ科 イワナ属の。分類上は、イワナ属のうちの1種にイワナという和名がつけられているが、近縁種のオショロコマも含めて広義のイワナとして扱われることが多い。本稿ではイワナ、オショロコマを含むイワナ属の魚を総称して、イワナ類と呼ぶ。

概要

生態

肉食性で、動物性プランクトン、水棲昆虫、他の魚、河畔樹木から落下する虫、その他の水底の小動物などを食べる。産卵期は10月-1月頃で産卵床は本流に流入する支流が多い。2年魚以降で18cm-22cmを超えるとオス・メス共に性的に成熟し、数年にわたって繁殖行動を行なう。 受精卵は水温10℃で50日程度で孵化する。寿命は6年程度。 厳冬期の個体は体色が黒ずんでいて、この黒ずみは釣り人の間で「さび」と呼ばれるが、水温が上昇し活発に摂餌いる頃になると「さび」は消えていく。

日本のイワナ類のほとんどが一生を淡水で過ごす魚で、河川の最上流の冷水域などに生息する場合が多い。多くの種類が食用とされ、渓流釣りの対象魚としても人気がある。イワナ属には、世界で30数種が知られているが、その多くがスポーツフィッシングの対象魚として人気がある。

現在の日本のイワナ類は、生息する地域、河川によって、形態が少しずつ異なる地域変異があり、大きくいくつかの亜種に分けられている。イワナの亜種には、アメマス(エゾイワナ)、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ(およびその地方変異であるキリクチ)、ゴギがあり、オショロコマの日本産亜種には、オショロコマとミヤベイワナがある。なお、これらの亜種、地域変異の個体群は、かつてはすべてが別種であるとして扱われたこともあるほど、その形態的な特徴には著しい相違がある。日本産のイワナ類がこのように大きな変異を持っている理由として、イワナ類の生息至適水温と過去の地球の気候の変化が挙げられる(後述)。

また、ヤマメとイワナは、いずれも上流域に生息するが、イワナの方がやや冷水を好む。それぞれが単独で生息する川では、どちらの魚も上流域を占有するが、両者が生息する川では、混在することなく、最上流域をイワナが、そして上流域のある地点を境に、それより下流をヤマメが占有するという事が生物学の棲み分けの一例としてしばしば紹介される。しかし近年は堤等により生息場所や産卵場所が限れたり、イワナ域とヤマメ域関係なく両者を放流するなどが原因とみられるイワナとヤマメの交雑個体がみられる。

混血・交雑イワナ

イワナ系、オショロコマ系以外にも、日本に人為的にカワマスレイクトラウトなどが移入され、一部地域で外来種として定着している。また、イワナ類の種間、あるいはヤマメなどとは、自然状態で交雑が行われており、雑種が生息している地域もある。特に外来種のカワマスとは容易に交雑し、雑種一代目は成長はよいが繁殖力が落ちるため、純粋なイワナが滅びる可能性が懸念される。 ヤマメと同様一般に各地で見られるイワナは、その多くが遊漁(釣り)目的に養魚繁殖魚を放流したものであり、これがその地域に本来生息していた個体と混血し、純粋な地域型個体が残っている河川はかなり少ないと考えられている。

料理

旬は5-6月から夏にかけて。塩焼きや唐揚げで食べることが多く、淡白な味の白身はヤマメと並び賞される。また焼いた岩魚に熱く燗をつけた日本酒を注いだものは骨酒と呼ばれ、野趣あふれる美味である。

日本産イワナ類の特徴

世界的に見ると、イワナ類も他のサケ類と同様、成長過程で海に下り、成熟して川を遡上する降海型の生活史をもつ。しかし、イワナ類は、冷水環境を好む魚であり、日本産のイワナは、世界のイワナ類の中で最も緯度の低い、温暖な地方に生息する南限の種である。したがって、日本のイワナ類は、暖かい海には下らずに、冷水の流れる河川源流付近に一生とどまる河川残留型(陸封型)の生活史をもつ場合が多い。日本のイワナ類で降海型の個体群は北陸地方以北で見られ、北海道産のイワナ(アメマス亜種)などが知られている。東京湾や秋田県ではニッコウイワナの降海型と考えられる個体が捕獲されている[2]

過去の氷河期の寒冷気候の下では、日本のイワナ類も、海と河川を往復する降海型であったことが推測され、氷河期の終焉に伴う気候の温暖化で、河川の上流域に陸封されたとされる。その後の長い年月の間に、各地方、各河川のイワナが、遺伝的な交流のない状態で独自に変化していったと考えられている。

こうして形成された隔離された個体群は、20世紀後半以降、開発による生息環境の減少、生息域を同じくする他の魚類や他亜種との競合、外来種の放流による競争、マニアによる乱獲などにより、その生存が脅かされている。特に、産地が限定される中部日本以西では深刻である。

イワナ属の種・亜種

イワナ

学名 Salvelinus leucomaenis、英名 Whitespotted char

体色は褐色から灰色。英名ホワイトスポット・チャーの名の通り、体には背部から側面にかけて、多数の白い斑点が散らばる。夏でも水温が摂氏15度以下の冷水を好む。個体の特徴は地方によってさまざまに異なるが、亜種レベルではアメマス、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギの4亜種とするのが一般的となっている。

アメマス(エゾイワナ)
学名 Salvelinus leucomaenis leucomaenis
日本では千葉県以北の太平洋側、山形県以北の日本海側に生息するイワナの亜種。朝鮮半島東岸、樺太、千島列島、カムチャツカ半島までの河川とオホーツク海、ベーリング海に分布する。イワナでは唯一、降海型と河川残留型(陸封型)がおり、河川残留型はエゾイワナとも呼ばれる。アメマスは最大の全長 70-80 cm、7 kg まで。河川残留型では 35 cm 程度が一般的。体側の白点が最も目立つ亜種。
降海型のアメマスは、2年目に海に下り、2年以上海で過ごし、成熟すると産卵のために川を遡上する。
ニッコウイワナ
学名 Salvelinus leucomaenis pluvius
イワナの日本固有亜種で、東北地方、関東地方の山岳部から、滋賀県、鳥取県にかけて分布。全長 30-80 cm 程度まで。体側の白斑ははっきりしているが、側面から腹部にかけて、より大きな橙色-薄桃色の斑紋が散在する。
情報不足(DD)環境省レッドリスト
ヤマトイワナ
学名 Salvelinus leucomaenis japonicus、英名 Kirikuchi char
イワナの日本固有亜種で、本州中部地方の太平洋側、山岳地帯の河川に生息。体長 25 cm。他のイワナ亜種のような白い斑点が目立たず、側面により小型で紅色の小斑が散らばる。
ゴギ
学名 Salvelinus leucomaenis imbrius
絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト
イワナの日本固有亜種で、中国地方の島根県、岡山県、広島県、山口県などの山岳地帯の源流域に生息。背部から体側の白斑が、頭部にも続いているのが目立つ[3]。体長は 20 cm 程度。日本での分布の西限(キリクチ個体群を除けば南限でもある)の亜種で、ゴギの分布の西南限は、日本海側では島根県の横田川(現:高津川)、瀬戸内海側では山口県の岩国川(現:錦川)であるとされる。環境省の汽水・淡水魚類レッドリストに於いては絶滅危惧II類に分類される。捕獲に関しては禁漁区が設定され保護されているが、禁漁区以外では他のイワナやヤマメに対し自治体と漁協が設けている漁期、体長制限などが適用される。
地域個体群
キリクチと呼ばれている個体群が、紀伊半島の十津川水系(奈良県)にのみ分布しているが、ヤマトイワナの地域変異型として考える場合が一般的になっている。この個体群が、イワナ類の南限とされている。現在は2水系に2つの遺伝的に異なる集団が残るが、かつては十津川水系の上流部や日高川水系にも生息していた。遊漁者による捕獲やアマゴとの生息域の競合、遊漁目的に放流されたニッコウイワナSalvelinus leucomaenis pluviusとの交雑、土砂流入による河床の平坦化により生息数は急激に減少している。1992年から2004年まで行われた三重大学大学院生物資源学研究科、奈良大学らのチームによる調査によれば、「キリクチはアマゴとの種間関係において劣勢にある可能性が示唆され、サケ科魚類が遺伝的多様性を維持し存続するための最低個体数は2500尾程度とされているが、2004年の生息数は1000尾程度と推定される」[4][5]としている。</br>IUCN レッドリストでは、キリクチを、英名 テンプレート:Sname、学名 Salvelinus japonicus として、他のイワナとは別種として取り扱っており、単独で絶滅危惧種に指定している。また、環境省の絶滅のおそれのある地域個体群と1962年には奈良県天然記念物に指定されている。2003年以降キリクチ個体群の保護及び増殖を目的とし、禁漁区の設定、密猟者の摘発、河川での淵(深み)の造成、競合するアマゴの除去などの施策が順次実施され、生息数の増加が報告されている[6]

オショロコマ

ファイル:Dolly 2.jpg
オショロコマ

学名 Salvelinus malma、英名 ドリーバーデン(Dolly varden)。

降海型では背部が暗青色、体側は灰色、腹面は白っぽい色をしているが、河川残留型(陸封型)では背面は暗褐色から褐色。イワナの白い斑点に対し、黄色、橙色、あるいは赤色の斑点が体側に散在する。繁殖期には、腹面、腹ビレ、尻ビレなど、鼻先などが橙色から赤く発色する。また、側面の小赤斑もより鮮やかになる。

イワナよりもさらに寒冷気候に適応した種類。オショロコマ(同名亜種)、ミヤベイワナ、サザンドリーバーデンの3亜種が知られ、日本では北海道だけにオショロコマとミヤベイワナが生息する。

オショロコマ
学名 Salvelinus malma malma
オショロコマの同名亜種。北極海と太平洋北部に広く分布。太平洋岸では、朝鮮半島、北海道からベーリング海、アラスカからアメリカワシントン州にかけて分布。日本より北方に生息する降海型の個体では、孵化後、3-4年を河川で過ごした後、海に下り、沿岸部で2-3年過ごした後、繁殖のために河川を遡上する。一方、北海道では、イワナよりもさらに上流の冷水域に生息し、基本的に海に下ることはない。降海型では全長 127 cm、18.3 kg の報告がある。北海道に生息する河川残留型(陸封型)は全長 20 cm 程度。
絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト
ミヤベイワナ
学名 Salvelinus malma mitabei
北海道の然別湖とそこに流れ込む水系に生息する、オショロコマの日本固有亜種。最大で全長 50-70 cm 程度。ビワマスヒメマス等と同じく、海の代わりに湖に下るタイプ(降湖型魚類)と考えてよく、生涯を河川に陸封された北海道産のオショロコマよりも大型になる。体色は、背側が暗色で腹側は淡黄紅色。ウロコが極めて小さい。
絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト
サザンドリーバーデン
学名 Salvelinus malma krascheninnikova

その他のイワナ属

カワマス(ブルックトラウト)
学名 Salvelinus fontinalis Mitchill、英名 brook trout
北アメリカ大陸カナダ東岸、ニューファンドランド島からハドソン湾西岸にかけてと五大湖ミネソタ州からジョージア州にかけてのミシシッピ川流域)に分布。河川残留型(陸封型)と降海型がおり、降海型では、全長 86 cm、9.4 kg の報告がある。河川残留型(陸封型)の個体は、背面と背ビレが暗緑色-緑がかった暗褐色で、小斑がつながった不規則な模様があり、側面に薄青色で囲まれた赤い斑点が散在する。降海型では、背面は暗緑色、体側が銀色で腹部は白くなり、赤い小斑の色が薄くなる。成熟したオスは体高が高くなり、背部が盛り上がったサケ型の体になり、腹部と腹ビレ、尻ビレなどが赤く発色する婚姻色を呈する。
世界中の温帯域の国に人為的に移入されており、場所によっては交雑種が生態系に深刻な影響を与えている地域もある。日本では上高地梓川に放流された個体が交雑雑種(F1)となり、F1の子同士、あるいはF1とイワナの戻し交配が自然状態で行われF2が生まれて、イワナの純粋種が減少している[7]
レイクトラウト
学名 Salvelinus namaycush、英名 テンプレート:Sname
基本的に冷水性の湖沼に住む完全な湖沼残留型(陸封型)のイワナであり、北アメリカ大陸、カナダ北部からアメリカ、ニューイングランド地方にかけて、五大湖の流域が原産地だが、北アメリカ大陸の他の地域にも広く移入された。また、「スプレイク」(Splake) と呼ばれる雑種が、レイクトラウトの卵にカワマスの精子で授精させた人工交雑によって作出され、ゲームフィッシュとして各地に導入されている。
イワナ属の中では最大級の大きさになる魚で、最大の全長は1.5m、30kg以上。50年の生存記録がある。体は暗緑色から灰色で、そこに白色-淡黄色の斑点が散在する。腹部は白い。現在、中善寺湖に移植されており、毎年80cm-100cm級のレイクトラウトが釣り人によって捕獲されている。同湖の漁業関係者からは、ヒメマスへの影響を危惧する声もあがっている。

交雑種

ジャガートラウト
イワナとカワマスの交雑種。管理釣場などで放流されている。上高地の大正池、梓川にも生息する。
カワサバ
イワナとヤマメ交雑種でヤマメの特徴であるパーマークがあるが、背中の斑点がイワナの特徴である流れる傾向がみられ斑紋が海の魚のサバのように見える事からカワサバと呼ばれるようになった。地方や魚によって体の模様はバラバラ。温度耐性試験の結果両親のイワナ・ヤマメよりも高温に強いという事が分かった。養殖場ではどうしてもヤマメとイワナの交雑種が生まれてしまい、カワサバをF1扱いしている管理釣り場も多い。多くの管理釣り場などではヤマメに混じって普通に生息している可能性が高いという。また自然の河川でも堰堤等により産卵場所が限られてしまった河川や本来イワナとヤマメはイワナがヤマメより上流に棲みヤマメがイワナより下流に棲むと棲み分けているがイワナ域にヤマメ、ヤマメ域にイワナを放流することによりイワナとヤマメが交雑することもわかってきている。[8]カワサバのことをイワメと呼ぶ釣り人が多いが正確にはイワメは無班型のアマゴの事である

地方公共団体の魚

下記自治体ではイワナを自治体の魚として指定している。

参考画像

出典

脚注

テンプレート:脚注ヘルプテンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:鮭
  1. UnicodeではU+9B87に収録。日本語文字セットではJIS X 0212に収録されている(JIS X 0213へは収録されなかった)。
  2. 東京湾で捕れたイワナ神奈川県水産技術センター内水面試験場
  3. テンプレート:PDFlink 島根県
  4. 世界最南限のイワナ個体群"キリクチ"の個体数変動と生息現状保全生態学研究 11(1) pp.13-20 20060625
  5. テンプレート:PDFlink
  6. シリーズ・Series日本の希少魚類の現状と課題魚類学雑誌 Vol. 55 (2008) No. 1 p. 49-55
  7. 近縁外来種との交雑による在来種絶滅のメカニズム 三重大学大学院生物資源学研究科 水圏資源生物学研究室
  8. この魚は何でしょう?宮城県内水面水産試験場