T-1000

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T-1000は、映画『ターミネーター2』に登場する架空アンドロイド

設定

2029年にスカイネットによって開発されたターミネーター。従来型とは異なる、流体多結晶合金(液体金属)製のボディを持つ。その硬度は基本となる人型を構成する状態[1]から完全な液状、あるいは刃物のような高い硬度を持つ固体状態まで変化することができる。その特性から、外部からの衝撃によりダメージを負ってもすぐに再生が可能で、従来のターミネーターからは考えられないほどの耐久力を持つに至った。このため、力学的な攻撃により破壊するのはほぼ不可能であり、格闘戦では強力な打撃を得意とするT-800を苦戦させた。破壊するには、後述のように変形機構に異常が生じている間に修復不能なダメージを与えたり、高熱や化学変化でT-1000のボディそのものを完全に分解・溶解するしかない[2]

また、自分とほぼ同じ背丈の物(自分の体積とほぼ同じ物体)に擬態できる能力を持つ。特に触れて調べた人物になら、どのような姿にでも擬態できる。コピーした人物は必ず殺すため[3]、その人物と完全に入れ替わることができ、高い隠密性を持つ。この変身能力による擬態は視覚的に完璧であるが、従来型のターミネーターと同じく、犬には見破られている[4]。また、腕などを変形・硬化させてナイフや剣などの白兵戦用の武器として扱うこともできる。劇中では頻繁に指を尖らせたり、腕を剣のようにしたり、鈎爪のように変形させたりしていた[5]。全身を平面化して床などに化ける事も出来、触れた物体の色、模様、質感をほぼ完全に再現できる。しかし銃器自動車の様な複雑な部品を有する物体や、火薬ガソリン薬品などの化学反応を伴う物質には変身できない。そのため、劇中で使用する銃器は全て奪うなどして現地調達している。

T-1000は機械ゆえ、人間とは異なり利き手や利き腕といった概念が無い。しかし、擬態した人物の利き手は、T-1000の利き手に影響を与える[6]。白兵戦用の武器に変形させた腕に関しては特に左右どちらかに偏る傾向はない[7]

液体金属製故に骨格が無いものの、パワー面においてはT-800に引けをとらない性能を持つ。[8]。また、スピードではバック中の乗用車やオフロードバイクを追いかけており、駆け足程度の速度しか出ないT-800よりは優れている。

声帯模写や感情の再現も可能であり、T-800と同様の知能スペックを有する。初期設定状態での人間の感情や表情を模した行動もT-800よりやや上手く、ジョンの写真を見て「可愛いお子さんだ(He's a good looking boy)」と発言したり、バイクを奪う時に「ところで…いいバイクに乗っているな(Nice bike)」と声をかけてから奪ったり、またサラのショットガンの弾が尽きたときに人差し指を左右に振って愚弄する等の、人間に近い行動が多く見られる。

また、このモデルは骨格が無く、動力源の所在が不明である[9]。ただし、CPUについては、T-1000本体を構成しているナノマシンそれぞれが思考回路となっており、全身で思考していると言える。また、「T1」ではカイルが「タイムマシンは生物しか送れず、T-800を過去に送れたのは生きた細胞で包まれているからだ」と語っていたが、そうだとすると、人間の皮膚の質感を表面に再現しているだけのT-1000が、なぜタイムトラベル出来たのか説明がなされていない[10]。これはT-Xも同様である[11]

プロトタイプ[12]であるためか、若干不安定な性質を持つ。T-800に比べると質量が小さく、T-800は拳銃程度の威力の攻撃であればほとんど揺るがず即座に反撃するが、T-1000は衝撃を受けると破損箇所の修復を優先して行なうため隙が生じやすく、機械的なダメージ回復能力は高いもののそういった点ではT-800より劣っている。極めて強い衝撃を一度に受けるか、もしくは中程度の強さの衝撃でも[13]連続的に受けると、形態維持能力が一時的に混乱し、機能が著しく低下して完全な無防備な状態となる。この間に全体に強力なエネルギーを浴びせられると破壊されてしまう。また、基本性質が液体であるため、極低温環境にさらされると凍結してしまう。劇中では、短時間の内に凍結・粉砕、さらに解凍・再生という極めて過酷な状況にさらされた結果、触れた物質の質感を無条件でコピーしてしまう等、擬態能力の一部に機能不全を起こしていた[14]。特別編の未公開シーンでは何気なく触れた鉄製の手すりを掴むと手が半凝固化したり、足元の鉄板の模様を写すトラブルも出ている。その後、サラのショットガンの連発や、T-800のM79グレネードランチャーにより一時的に動きが鈍り、バランスを崩して溶鉱炉に転落し、銑鉄に溶けて消滅した。

後の2032年にT-Xが開発されたため、生産中止となった模様。製造そのものが難しかったという映画上の設定がされていた。ただし、『T2』の後日譚的な続編である『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』には、T-1001という液体金属型のターミネーターが登場しており、ある程度の改良は行われていた模様。また、同ドラマ中の「歴史が変化して生まれた別の時間軸の未来(ジェシーのいた未来世界)」ではキャサリンに擬態する以前のT-1001型も登場している。

変身形態

映画では大きく分けて2つの変身像(警官・白バイ警官)が見られるが、一時的なものも含めすべて記載。

スキャニング
タイムスリップ直後に警官を殺し、制服のみをコピー。その後、パトカーの中にある小型PC端末に一旦触れたのち、操作していることからわかるように、触れるだけで機械の使い方、情報も読み取れる。また拡張特別編ではジョンの部屋を指先で触れて捜索し、ポスターの裏に隠してあった写真を発見した。刃物はジョンの養母に擬態して料理をしているときにコピーした。
裸体
未来からタイムスリップしてきた直後は裸。未来から転送される際に発生した電波に気付いたパトロール警官を狙い、制服姿を真似る。
警官
映画序盤から中盤に掛けて多く見られる。一見制服を着ているように見えるが、実はこれも擬態で体表面を変化させて「制服を着ているように見せかけて」いる。但し先述の殺害した警官から奪った拳銃だけは本物。
ジャネル・ヴォイト(ジョンの養母)
ジョンの帰りを狙い、ジャネルを殺して成りすまし待っていたT-1000であったが、電話越しの会話からT-800に見抜かれた[15]。T-800は養父トッド・ヴォイトも殺されている事も看破した。
また、映画ラストで模した像が次々に現れるシーンでは腕のナイフの位置が左右逆である。
精神病院のスタッフ
床に水溜り状に潜み、スタッフが知らずに歩き過ぎたところで相手のデータを読んで擬態。このシーンは、スタッフ役の役者が双子という特殊な事情から成功したシーンでもある。本物を殺害し、サラを殺すためしばらくこの姿で病院内を歩き回り、サラを探した。
白バイ警官
ヘルメットにサングラス姿(これも頭部の表面を変化させて身につけているように見せかけている)で目が隠れているためか、普通の時よりさらに無表情、最も不気味でT-1000らしさが存分に出ている。ストーリーの後半の多くがこの擬態である。奪った無線機からサイバーダイン社に急行する指令無線を受信した。サイバーダイン社にバイクに乗ったまま入り込んでT-800たちがトラックで逃走している事に気付き、ヘリコプターに突っ込んで乗り込みT-800たちを追い掛け回した。この時だけはヘリのパイロットを殺さず、飛び降りるように指示している[16]。もしパイロットを殺せば機体重量のバランスを崩して墜落の危険があること(ヘリに限らず航空機では充分にありえる)を感知していたのかも知れず、高度な判断力があることを示唆している。その途中、T-800にヘリを破壊され、液体窒素を積んだタンクローリーに乗り換えた。ヘリを操縦しているとき、よく見ると腕がさらに2本生えており、下の腕でヘリの操縦をし、上の腕でサブマシンガン(MP5K)の発砲・銃弾の再装填を行っていた[17]。ここでもT-1000の能力の高さが伺える。
破片
液体窒素を浴びて冷凍化された上記の状態のT-1000が、T-800に撃たれた衝撃で細かくバラバラになったもの。溶鉱炉の熱で融解・再生し普通の警官姿に戻る。しかし、T-1000はプロトタイプであるため、この際の急激な凍結・粉砕・解凍を受けて擬態機能にバグ[18]が発生する。
サラ・コナー
T-1000が擬態した人物の中では唯一殺されていない人物。サラを脅迫した時にデータを読み擬態。しかし、先述の擬態機能の異常により足が金網の格子模様になっていたためにジョンを騙すことはできなかった[19]。このあと、本物のサラのショットガンを連続で食らい、変身を解く。このシーンも双子であるリンダ・ハミルトンとその姉のレスリー・ハミルトンによって成功したシーンである。実際は手前のT-1000をリンダが、奥側のよく見えないサラをレスリーが演じ、バストショットになる際はリンダが演じている。

VFXの製作過程

このT-1000の特徴的な変形はコンピュータグラフィックス特殊メイクを駆使して製作されている。同監督のSF映画『アビス』で登場した、人の顔に変形する海水のシーンで使用されたCG技術を発展させ、T1000の液体金属のCGが作られた。当時としてはまだ発展途上段階であったデジタルモーフィングの技術や、カメラのブレとCGキャラクターの動きを同調させるマッチムーブ技術等もふんだんに活用され、90年代当時としては極めて高い品質で表現することに成功した。巧妙に作られた粘土をつけた特殊メイクも併用されており、銃撃による一時的な弾痕、腕の一部が刃物に変形しているシーンなどで見ることができる。また、銀色の薄いスーツを着用してのカットが一瞬あり、ローテクも効果的に使用されている事が判る。尚、金属体時の動きをCGで作成するため、演じたロバートは体中に線を書かれた上パンツ一丁で街中を歩かなければならず、撮影現場のすぐそばを通っていた一般人から奇異な目で見られていた。本人は当時を振り返って「街行く人たちの自分を見る視線が非常に痛かった」とコメントしている。 ちなみに、ラストの溶鉱炉の溶解した鉄はCG合成ではなく、下から強い光を当てたシロップのプールである。

T-1000のキャラクタ構想は、T-800と正反対のイメージで作られた。監督曰く「T-800シリーズは頑丈なだけの装甲車で、T-1000シリーズは柔軟性がある高性能のポルシェ」。このキャラ構想は当初『T1』の設定であり、「細身の人型アンドロイドが実は強い」というキャラ設定を『T2』でようやく実現できた形となった。

この映画を観た20世紀フォックスの重役はキャメロンに対し「アビスは実験だったのか?」と怒ったという[20]

T-1001

T-1000の改良型であり、『TSCC』に登場する。ゼイラ・コーポレーションの女社長キャサリン・ウィーバーに成り代わっていた。

基本的な性能はT-1000のそれを受け継いでいる。だが、T-1000が多くの場合ゆっくりとした変形を行っていたのに対し、こちらはかなり高速での変形が可能で、後述の人類抵抗軍に捕獲されたT-1001は液体状態のまま体をヘビのように変化させて高速で這い動く・大ジャンプして天井裏に逃げる・水中を泳ぐといったかなり激しい動きも見せている。

思考回路もより高度となっており、社員に自らの悪口を言われ、トイレの便器に擬態した姿から元の姿に戻った際に、「悪かったわね」と言ったり、その直後に暗殺を済ませて「私もムカついていたの」と発言するなどT-1000と比べ、より人間らしくなっている。またキスをするように見せかけ、相手の口から体内に侵入するなどの殺し方もした。ただし、それでも人間と比べればかなり異質で、理論的であるが無感情すぎる対応、相手の心理を理解しきれず初歩的な質問をするなどなど、困惑させることも多々あり(周囲からは夫をなくしたショックで精神的に不安定になったと見られていた)、娘のサバンナ(本当のキャサリンの遺児)からは異常な変化から怖がられていた。キャサリンも周囲の反応からそれを理解しており、本物のキャサリンが残したビデオを見たりエリソンと相談するなどして、どうにか人間に近づこうとしていた。

初登場の回では、デレクのいた未来世界でスカイネットへと変化したチェスコンピュータ「ターク」を裏ルートで手に入れ、それを基に人工知能の開発を行う計画「プロジェクト・バビロン」を社内に立ち上げ、視聴者にはスカイネットの開発を試みているように登場した。だが、その後の回ではスカイネットが抹殺を試みた心理学者をタークの教育係にする(セカンドシーズン6話)、キャサリンが単独で破壊した工場内で未来世界のハンターキラーに酷似した兵器が極秘に開発されていた(セカンドシーズン13話)、タークが成長して誕生したAI「ジョン・ヘンリー」に対してエリソンが命の尊厳を教えたことに満足を見せるなど、スカイネットに対して不利となる行動が見られ始め、謎が深まっていく。

最終話にて、実は彼女の正体は人類抵抗軍側のターミネーターであることが判明。更に、後述の未来におけるT-1001型の捕獲・輸送から見て、彼女は再プログラミングされたのではなく、自らの意思で人類抵抗軍に味方したターミネーターである。その任務は「スカイネットに対抗できるコンピュータ」を作り出すことであり、ジョン・ヘンリー(ターク)がそれであった[21]

なお、登場人物であるジェシーのいた未来世界では、このキャサリンに擬態する以前の液体金属ターミネーターが登場している(セカンドシーズン19話)。このターミネーターはジョン・コナーから「仲間にならないか」と声をかけられており、凍結されて潜水艦で輸送されていた。だが、積荷の正体を不信がった兵士たちが独断で開放してしまい、自ら潜水艦を破壊して脱出を試みるジェシーに「ジョンに伝えろ、答えはノーだ」と協力拒否を表明して自身も脱出した。潜水艦の液体金属ターミネーターが彼女本人だという事がシーズン2第1話のZEIRA Corpの自分のオフィスから階下の道路を見下ろしながらの喋るキャサリン・ウィーバーの言葉から推測できる。

使用銃器

俳優

T-1000
T-1001

脚注

  1. なお、劇中ではグレネードランチャーの弾が直撃しても、弾が着弾と同時に爆発していない事から、骨格が存在しないという独特の特性を含め、普通の人体よりは柔らかいと推察される。
  2. 実際T2では、溶鉱炉に没して消滅した
  3. T2の劇中ラストでサラ・コナーに擬態しているが、サラは殺されていない。これは殺す前にT-800がサラを助けに入ったことで、彼女を見失ったため。このことで、劇中終盤に、サラに擬態し、ジョンへ接触しようとした際に、後を追ってきた本物のサラが表れたことで、ジョンが戸惑っているが、機能不全により、すぐに見破られた。
  4. ヴォイト家に侵入した際、ジョンの愛犬であるマックスが激しく吠え立てている。
  5. こうした“腕”そのものを凶器に用いる描写については日本の漫画作品=岩明均の『寄生獣』との類似を度々指摘されている。岡田斗司夫は監督のジェームズ・キャメロン自身『寄生獣』の読者であると発言している(BSマンガ夜話『寄生獣』の回にて)。
  6. 最初に接触(殺害)した警官は左利きだった為、T-800と遭遇した時は腰の左側のホルダーから拳銃を取り出し左手で射撃し、病院の警備員に変身した際は同じ理由で右手で射撃した。
  7. しかし、劇中で鈎爪状にして車内後部に居たジョンを攻撃した時、左手は車のボディーに引っ掛け、右手で攻撃している。
  8. 2体の力が相殺されて動かなくなる描写がある
  9. 小説版や続編などにおいても触れられたことが無い。
  10. 更にドラマ『サラ・コナー・クロニクルス』では、生体組織が破損してかつチップが抜かれて機能停止したキャメロンのボディは転送できず消滅し、一緒に転送されたT-1001はタイムトラベルできたという妙なシーンもある。この際、わざわざ裸の姿に擬態しているため生物反応を偽装したとも取れるが、説明はない。
  11. ただし、「T1」でT-800とカイルを送ったタイムマシンは、「カイルが後を追ってタイムトラベルした後、2029年に残ったジョン・コナー達が破壊したはず」とカイルが語っていたため、まったく同一の機能を持ったタイムマシンで送られたとは限らない
  12. ゲーム版『ターミネーター2・ジ・アーケード』における正式名称は「T-1000 ADVANCED PROTOTYPE」。
  13. 劇中では、至近距離からのショットガンの連射や、グレネードランチャーの直撃など。
  14. 後半では、上半身は最初にコピーした警官の制服で、下半身は白バイ警官の制服になっており、ここでも機能不全が現れている。
  15. このシーンは完全版の方が明確に表現されている。T-800がジョンの愛犬の名前を偽って話しかけたものの、T-1000はそれに気付かずに会話を続けた。つまり、養母は偽物。ただし、ジョン自身も最初の会話で「やけに優しい」と違和感は感じていた。
  16. もっとも、高所を飛行中のヘリから飛び降りさせられたパイロットは、どう考えても無事とは思えない。小説「新ターミネーター2」ではヘリから落下して死亡したと明言されている。
  17. ヘリは両手でそれぞれに操縦桿とコレクティブピッチレバーを持って操作しなければバランスが取れないためである。
  18. 金属に触れると、触れている部分やその周辺が触れている金属に同化してしまう・上半身と下半身の擬態がおかしいことに気が付かない等。
  19. ただし、劇場公開版ではジョンがT-1000の擬態機能の異常により偽者だと気付くシーンがカットされている。
  20. ターミネーターの秘密 ISBN-10: 4887181833
  21. 工場爆破の件のように、歴史改変のため作中の時間軸ではターク以外のコンピュータからスカイネットが誕生していた。


テンプレート:ターミネーターit:Terminator (macchina)#T-1000