C++ Builder

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テンプレート:Infobox C++ Builder(C++ビルダー)は、エンバカデロ・テクノロジーズC/C++統合開発環境である。同社の代表製品である「Delphi」のC/C++版とも言えるRADツールで、Delphiと同様に構成部品を貼り付けていくようなユーザインタフェース設計を可能としている。元々はボーランド(インプライズ)で開発され、コードギアへ移管、同社の買収に伴って現在へ至る。移管された後も、Borland C++ Builder(ボーランド C++ビルダー; BCB)と呼ばれる事が多い。

概要

同社のDelphiで使用されている FireMonkey や Visual Component Library (VCL) をC++で扱えるようにしたもので、C++コンパイラには、そのための拡張がされている。また統合開発環境はDelphiとほぼ同一である。なお FireMonkey および VCLはDelphiで記述されており、手を加えるにはObject Pascalの知識を必要とする。

長所

短所

  • コンパイラ自体の最適化性能は低い。
  • ランタイムライブラリを結合すると実行ファイルが大きくなる。(バージョン5の場合、最低でも500Kバイト程度)
  • Windowsの開発環境としてはDelphiよりも知名度が劣る。
  • Visual C++インテリセンスに比べて、コード補完機能のレスポンスが悪い。

歴史

C++ Builder 1から6まで

Delphiとバージョン番号を合わせた結果、C++ Builder 2は欠番となっている。2002年に「C++ Builder 6」が発表された。

C++ BuilderX 路線

C++ Builderが使用するVCLは、Delphiにおいて7、8、2005と進化した。またDelphiは、リファクタリング機能などを備えた新統合開発環境 (IDE)「Galileo」に移行した。しかし、これらに対応するC++ Builderは発表されなかった。BorlandのC++統合開発環境は、従来のWindowsに加えてLinuxクライアントサイド市場を狙った「Kylix3」の失敗により、Java製の「C++ BuilderX」(シープラプラビルダーテン)が担うことになったからである。これはRADではなく、統合環境版のBorland C++ Compilerとも言うべきもので、携帯電話などの組み込み、サーバサイド市場を狙ったものである。結局、この路線は失敗に終わった。無償版の配布も終了した。

復興運動からTurbo C++まで

2004年にC++ BuilderユーザはPaul Gustavson氏を中心として、ボーランドに公開質問状を送り、新製品の開発を促した。これに対して同社は「C++ Builderコミュニティへの公開書簡」[2]で、これを了承した。

2005年12月21日に「Borland Developer Studio 2006」が発売された。これには約束どおり「C++ Builder 6」の後継製品である、「C++ Builder 2006」が統合された。

2006年に「Turbo C++」が発表された。これは「Borland Developer Studio 2006」上で他の言語と統合されていた「C++ Builder 2006」を単体化した物である。無料版も提供された。この無償公開版は、Turbo C++ Explorerという名称にて同社のサイトより配布が行なわれていたが2009年8月26日に日本語版の頒布を終了した。Turbo C++ は、C++ Builder とは異なり、プログラミング言語を1つだけしか選べない。

C++ Builder 2007

2007年5月15日に、C++ Builder 2007が発表された。Windows Vistaに対応した。2007年9月6日には、C++ Builder 2007を含む統合版「CodeGear RAD Studio 2007」が発表された。

C++ Builder 2009

2008年8月26日に「C++ Builder 2009」(コードネーム:Tiburón)が発表された。C++ Builder 2009から文字列が全面的にUnicode文字列に置き換わった。

C++ Builder 2010

2009年8月25日に「C++ Builder 2010」が発表された。 C++Builder 2010の新機能: 新しいIDE機能/デバッグツールにより開発をさらに効率化。コーディング作業やデバッグ作業をさらにスピードアップ可能である。 タッチ対応アプリケーションの開発をサポート。タブレットやタッチパット、POSやATM向けのアプリケーションをビジュアルに開発可能である。 Firebirdサポート、DataSnapなど、広範なデータベース、アーキテクチャ、プロトコルに対応する。

C++ Builder XE

2010年9月2日に「C++ Builder XE」が発表された。XEは「Cross Platform Edition」の略である。名称通りクロスプラットフォーム開発環境を目指して開発が進められたものの、不完全であったため見送られている。アカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010のライセンスが付属する[3][4]

2011年2月1日にはStarterエディションが追加発表された。「Turbo C++」以来のエントリー向けエディションであり、無償ではないがコンポーネントのインストールが可能、1,000 USドルを超えない範囲であれば商用利用可能など、制限は大幅に緩和されている。ただし、Starterには旧C++ Builderのライセンスは付属しない。また、同時利用は同一サブネット内において5ライセンスまでとされている。このため教室での利用は向かないとされており、アカデミック版の提供はない。税別価格は18,000円だが、同社または他社の開発ツールユーザーは税別14,000円でアップグレードできる。Delphi Starterとの併用はできず、RAD StudioにもStarterは提供されない。

C++ Builder XE 2

2011年9月1日に「C++ Builder XE 2」が発表された。新たにFireMonkeyフレームワークを導入したことにより、HDや3Dに対応した高品質なUIの設計や、x64ネイティブ、MacOS X、iOS向けアプリケーションの開発が可能になった。Starterとアカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XEのライセンスが付属する。

C++ Builder XE 3

2012年9月4日に「C++ Builder XE 3」が発表された。新たに「Metropolis UI」を導入したことにより、タッチ対応、ライブタイルサポートなどを搭載した Windows 8 デスクトップアプリケーションの開発が可能になった。

2012年12月10日にリリースされたアップデートにより、ClangLLVM に対応した 64-bit コンパイラが追加提供された。

C++ Builder XE 4

2013年4月22日に「C++ Builder XE 4」が発表された。FireMonkey FM3 を搭載。

C++ Builder XE 5

2013年9月11日に「C++ Builder XE 5」が発表された。

2013年12月11日にリリースされたアップデート2により、iOS 開発機能が投入されたが Professional 版では Mobile Add-On Pack を別途購入する必要がある。

C++ Builder XE 6

2014年4月16日に「C++ Builder XE 6」が発表された。このバージョンから対応プラットフォームに Android が追加された。これにより、Windows 7/8/8.1(32bit/64bit)、iOS、iPhone/iPad、Android(Google Glassを含む)向けのアプリケーション開発が可能となった。Professional 版では Mobile Add-On Pack for C++Builder XE6 Professional を別途購入する必要がある。

その他

  • 2000年にBorland C++Compilerが公開された。これはコンパイラリンケージエディタ、標準ライブラリおよび開発ツールの無料版である。開発はRADではなく、コマンドラインから行う。当時、Windows用の無償のC/C++コンパイラは、ほかにGCCほどしかなく、Borland C++が広く知られることになった。
  • C++ Builderの新しい版ではMFCDirectXなどもサポートしている。
  • バージョンやパッケージの種類によってはDelphiなどのCD-ROMも付属する。
  • DelphiやC++Builderの開発者の一部はマイクロソフトに移籍して、Visual C#などを作成している。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web
  3. アップグレードした場合、元のバージョンと同じバージョンのライセンスの重複取得はできない。
  4. 旧バージョンライセンスの取得は、購入180日以内に行う必要がある。

外部リンク

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