高尾山薬王院

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テンプレート:日本の寺院 高尾山薬王院(たかおさんやくおういん)は、東京都八王子市高尾山にある寺院。真言宗智山派の関東三大本山のひとつである[1]。 正式な寺名は高尾山薬王院有喜寺だが、一般には単に「高尾山」あるいは「高尾山薬王院」と呼ばれる。薬王院と参道のスギ並木は八王子八十八景に選ばれている。

沿革

天平16年(744年)に聖武天皇の勅命により東国鎮護の祈願寺として、行基菩薩により開山されたと伝えられている。その際、本尊として薬師如来が安置されたことから薬王院と称する。

永和年間(1375年 - 1379年)に京都の醍醐寺から俊源大徳が入り、飯縄権現を守護神として奉ったことから、飯縄信仰の霊山であるとともに修験道の道場として繁栄することとなる。

寺に伝わる北条氏照文書に拠れば、戦国期に高尾山は後北条氏当主氏政の弟氏照が高尾山一帯に広がる椚田郷を寄進したという。江戸時代には氏照文書を根拠に境内である高尾山を朱印地とする運動を起こす。

歴代山主

中興開山

  1. 俊源
  2. 源広
  3. 源尊
  4. 智圓
  5. 慶圓
  6. 慶尊
  7. 源智
  8. 源実
  9. 源恵
  10. 堯秀
  11. 祐清
  12. 堯永
  13. 賢俊
  14. 秀永
  15. 賢秀
  16. 秀憲
  17. 秀興
  18. 秀神
  19. --
  20. --
  21. --
  22. 秀如(秀盛)
  23. 高尾秀融
  24. 佐伯隆範
  25. --
  26. 志賀照林
  27. 武藤範秀
  28. 山崎範亮
  29. 保立俊恵
  30. --
  31. 山本秀順
  32. 大山隆玄

諸堂

大本堂

  • 開山本尊:薬師如来
  • 中興本尊:飯縄権現

薬王院の中心となる本堂で、薬師如来と飯縄権現を祀る。現在の堂宇は1901年明治34年)に建立されたものである。彩色は施されていないが、彫刻で装飾されている。入母屋造である。堂内には護摩壇がある。


本社(権現堂)

ファイル:Tokaosan-Yakuouin.jpg
権現堂 飯縄権現を祀る。
  • 本尊:飯縄権現

薬王院の中心となる本社で、飯縄権現を祀る社殿(神社)である。現在の社殿は1729年享保14年)に本殿が建立され、1753年宝暦3年)に幣殿拝殿が建立された。のち1805年文化2年)・1965年昭和40年)・1998年平成10年)に大改修を行なっている。江戸時代後期の代表的な神社建築1952年(昭和27年)に東京都指定有形文化財に指定されている。入母屋造の本殿と拝殿を幣殿で繋いだ権現造である。社殿全体に華麗で極彩色の装飾がなされていることが特徴である。社殿前方には鳥居があり、神社であることが分かる。寺院の中にある神社という形態は神仏分離以前の神社の姿の一つの典型例といえるだろう。本尊の飯縄大権現立像は異形の仏として有名。

山上の諸堂

  • 神変堂
    • 本尊:神変大菩薩
    • 神変堂は浄心門を入ってすぐ左手にある。神変大菩薩とは修験道の開祖役小角(役行者)のことで、日本各地の霊山で修行し、高尾山でも修行したと伝えられる由縁から、ここに祀られている。様式は入母屋造唐破風付である。
  • 八大竜王堂
    • 本尊:八大竜王
    • 1993年(平成5年)11月に建立される。手水舎のようになっており、ここで硬貨を洗うとよいとされている。
  • 倶利伽羅堂
  • 修行大師堂
  • 弁天洞
    • 本尊:弁才天
    • 本坊のそばの洞窟内に弁才天が祀られている。古くから祀られていたが、荒廃していたため、1926年(昭和1年)12月に再興された。
  • 愛染堂
    • 本尊:愛染明王
    • 1994年(平成6年)12月に建立される。様式は宝形造唐破風付である。
  • 聖天堂
    • 本尊:歓喜天(聖天)
    • 1997年(平成9年)9月に建立される。様式は宝形造である。
ファイル:高尾山薬王院 不動堂.jpg
奥の院 不動堂 不動明王を祀る。
  • 大師堂
    • 本尊:弘法大師
    • 江戸時代中期の建立で、1978年(昭和53年)に東京都指定有形文化財に指定されている。四方3間で宝形造向拝付の銅版葺である。『新編武蔵風土記稿』には大日堂と記され位置も違っている。
  • 天狗社
    • 本尊:大天狗小天狗
    • 高尾山に古くから住むといわれる天狗を祀っている。大小2社の神社からなっている。両社とも一間社流造である。
  • 福徳稲荷
    • 本尊:稲荷神
    • 一間社流造唐破風付の社殿で、極彩色の装飾がなされている。
  • 奥の院 不動堂
    • 本尊:不動明王(東京都有形文化財・彫刻)
    • 薬王院の奥の院である。江戸時代初期の寛永年間(1624年-1644年)の建立で、1953年(昭和28年)東京都指定有形文化財に指定される。四方3間の宝形造向拝付である。1959年(昭和34年)に改修される。本尊の木造不動明王及び二童子立像は寄木造り・玉眼・彩色で、室町時代以前で鎌倉仏の特徴を持つ優秀な作として、1962年(昭和37年)にこちらも東京都有形文化財(彫刻)に指定された[2]。本尊の他に行基菩薩・俊源を祀る。
  • 柴燈護摩道場
  • 仏舎利奉安塔
    • タイ王国から寄贈された仏舎利を祀る。なお、仏舎利塔の前に飯綱大権現の像が建っている。
  • 浅間社

山麓の諸堂

  • 不動院
  • 交通安全祈祷殿
  • 飯縄権現遥拝所
    • 社殿は一間社流造唐破風付である。

山中の諸堂

脚注

  1. 残り2つは川崎大師平間寺神奈川県川崎市)と成田山新勝寺千葉県成田市)である。
  2. 東京都教育委員会編『東京都の文化財(三)』による。

関連項目

外部リンク