風と共に去りぬ (宝塚歌劇)

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風と共に去りぬ』(かぜとともにさりぬ)は、宝塚歌劇団ミュージカル作品。植田紳爾脚本・演出。原作はマーガレット・ミッチェルの小説『風と共に去りぬ』(原題:Gone with the Wind)。

初演時に人気を博して以降、コンスタントに繰り返し再演されている宝塚歌劇の看板演目のひとつで、2004年現在の公演回数は1182回、観客動員数は266万人と、『ベルサイユのばら』に次ぐヒット作である。

概要

1977年まで宝塚では、老人役の脇役がヒゲを付けることはあっても、二枚目男役スターがヒゲを付けることは無かった。初演では、主演の榛名由梨がバトラー役を演じた際にヒゲをつけ[1]、以来、宝塚では男役スターの付けヒゲに抵抗が無くなった。

通常、男役トップスターがバトラーを演じるが、1978年雪組・1978年花組・1994年雪組では、男役トップスターをスカーレット役にあてた「スカーレット編」が上演されている。スカーレット・オハラ役は気性の激しい役柄に相応しく、男役スターの順みつきが演じ、以後も男役スター及び男役経験のある娘役によって多く演じられることが多い。

宝塚版最大の特徴は、ヒロインの分身である「スカーレットII」という彼女の本音を語る役の存在である。なお「II」に関しては娘役が配役される例も少なくなく、男役とのダブルキャストの場合もある。またメラニー役の比重が重くないことが特徴のひとつであったが、2002年版では脚本が改作され、アシュレ・メラニー夫婦の物語上での重要性が増した。「バトラー編」・「スカーレット編」双方から構成されている。

2002年度(第12回)日本映画批評家大賞のミュージカル大賞を受賞。

スタッフ

あらすじ

以下の節では、基本的なあらすじを記述している。

1994年の「スカーレット編」再演時に、樫の木屋敷でのスカーレットのアシュレへの告白の場面とバトラーとの出会い・チャールズとの結婚の経緯の新場面が追加された後、初演(1978年)の冒頭の敗戦後の南部へ繋ぐ展開となった。2002年の「総集編」では、1994年の追加場面を「バトラー編」の冒頭に繋ぎ、第2部は「スカーレット編」が中心となり、ラストは「バトラー編」のものであった。

バトラー編

第一部

スカーレット・オハラは愛するアシュレと結婚できなかった腹いせに、チャールズと結婚するも間も無く死別しアトランタへやって来た。チャリティーバザーの夜、女性に競売で落とすイベントで、喪中のスカーレットに法外な値を付けた男こそが、レット・バトラーであった。

今はメラニーの夫・アシュレが一時帰還し、スカーレットはサッシュを贈ると共に自分の想いを告白するが、彼はメラニーを頼むと告げるだけだった。

戦火が近づき、スカーレットは妊娠中のメラニーらと共に、レットに頼んでタラへ連れて行ってもらう。途中でレットは南軍に志願し戦場へ赴く。やがて南軍は敗北。荒れ果てたタラを見て、スカーレットはこの土地を守り抜くと決意する。

第二部

スカーレットはレットと結婚していた。雑貨店をアシュレに任せていたが、スカーレットと二人で抱き合う姿が目撃されて町の噂になる。激高したレットはスカーレットを強引に2階へ連れて行こうとするが、スカーレットは足を踏み外して転落し大怪我を負う。強い後悔と不安にかられたレットはメラニーに、スカーレットを心から愛していると告げる。

メラニーは流産し死期を悟り、スカーレットにレットの真意を告げ息を引き取る。その言葉によってスカーレットがレットへの愛情に気付き彼に告白するが、時既に遅く彼はひとり去っていくのだった。

スカーレット編

※1978年の上演を元に記述しています

第一部

南軍の敗北によって、南北戦争は終結。スカーレットは荒廃した農場を立て直すため、自ら懸命に働いていた。しかし税金が払えずタラを手放さなくてはならない危機に陥る。レットに相談するが、頼みには応じてもらえなかった。そこでスカーレットは妹・スエレンの婚約者で裕福なフランクを欺き、彼と結婚して税金を支払った。

しかし、北部人と南部人の対立の中で、フランクは死亡してしまう。

第二部

スカーレットはレットと結婚していた。雑貨店をアシュレに任せていたが、スカーレットと二人で抱き合う姿が目撃されて町の噂になる。激高したレットはスカーレットを強引に2階へ連れて行こうとするが、スカーレットは足を踏み外して転落し大怪我を負う。強い後悔と不安にかられたレットはメラニーに、スカーレットを心から愛していると告げる。

しかしメラニーは流産し死期を悟り、スカーレットにレットの真意を告げ息を引き取る。その言葉によってスカーレットがレットへの愛情に気付き彼に告白するが、時既に遅く彼はひとり去ってしまった。スカーレットは、一人たくましく生きることを決意するのだった。

登場人物

  • レット・バトラー
  • スカーレット・オハラ
  • アシュレ・ウィルクス
  • メラニー・ハミルトン
  • ベル・ワットリング

楽曲

君はマグノリアの花の如く
レットのスカーレットに対する想い
作詞:植田紳爾、補作詞:藤公之介、作曲:都倉俊一
愛のフェニックス
レットとスカーレットの情熱
作詞:植田紳爾、作曲:寺田瀧雄
故里は緑なり
南部への望郷
作詞:植田紳爾、作曲:入江薫
さよならは夕映えの中で
去っていくレットの心情
作詞:植田紳爾、作曲:寺田瀧雄
明日になれば
スカーレットの決意
作詞:植田紳爾、作曲:寺田瀧雄

これまでの公演

1977年・月組
1977年3月25日 - 5月10日:宝塚大劇場、7月2日 - 31日:東京宝塚劇場
第63期生美雪花代ら)の初舞台公演。
1977年・星組
1977年5月12日 - 6月28日:宝塚大劇場、8月3日 - 30日:東京宝塚劇場
1978年・雪組(スカーレット編)
1月1日 - 2月14日:宝塚大劇場、4月1日 - 4月30日:東京宝塚劇場
1978年・星組
1月11日 - 2月5日:全国ツアー
1978年・月組
2月10日 - 20日:中日劇場、6月3日 - 22日・10月9日 - 11月4日:全国ツアー
1978年・花組 (スカーレット編)
2月16日 - 3月22日:宝塚大劇場、7月1日 - 30日:東京宝塚劇場
4月30日 - 5月7日:福岡市民会館、5月9日 - 12日:小倉市民会館
トップスター・安奈淳の退団公演。
1984年・雪組
3月23日 - 5月8日:宝塚大劇場、7月1日 - 29日:東京宝塚劇場
トップ娘役・遥くららの退団公演。第70期生紫ともら)の初舞台公演。
1988年・雪組
1月1日 - 2月16日:宝塚大劇場、4月3日 - 29日:東京宝塚劇場
1994年・月組
1月1日 - 2月7日:宝塚大劇場、4月4日 - 27日:東京宝塚劇場
9月18日 - 10月10日:全国ツアー
1994年・雪組(スカーレット編)
5月13日 - 6月20日:宝塚大劇場、8月2日 - 29日:東京宝塚劇場
1997年・花組
4月12日 - 5月6日:全国ツアー
1998年・雪組
5月30日 - 6月21日:全国ツアー
2001年・星組
6月9日 - 7月1日:全国ツアー
2002年・合同
4月6日 - 4月29日:日生劇場
宝塚歌劇団88周年記念として、轟悠・湖月わたる・檀れい他専科メンバーと雪組(前半・ - 16日)・花組(後半・18日 - )の選抜メンバーにより公演。
内容はバトラー編・スカーレット編から抜粋した総集編で、フィナーレのショーは無し。
2004年・宙組
10月16日 - 11月7日:全国ツアー
2013年・宙組
9月27日 - 11月4日:宝塚大劇場、11月22日 - 12月23日:東京宝塚劇場
2014年・月組
1月11日 - 1月27日:梅田芸術劇場
宝塚歌劇団100周年記念として、轟悠と月組選抜メンバーによる公演。
内容は2002年の総集編とほぼ同じだが、『水色の愛』『そよ風の青春』『真紅に燃えて』など初演のバトラー編やスカーレット編で使用された曲が再び使用された。
2014年・星組
11月14日 - 12月7日:全国ツアー *予定
2番手男役の紅ゆずるが主演を務める予定。
2015年・月組
2月7日 - 3月2日:中日劇場 *予定
前年の梅田芸術劇場公演に引き続き、轟悠と月組選抜メンバーによる公演。

配役一覧

太字がトップスター(=主演)

キャスト(1)
  1977年月組 1977年星組 1978年雪組 1978年星組 1978年月組 1978年花組 1978年月組
レット・バトラー 榛名由梨 鳳蘭 麻実れい 鳳蘭 榛名由梨 麻月鞠緒</br>榛名由梨</br>鳳蘭[2] 麻月鞠緒 榛名由梨
スカーレットI 順みつき 遥くらら 汀夏子 遥くらら 順みつき 安奈淳 順みつき 舞小雪
スカーレットII[3] 北原千琴 玉梓真紀 - 玉梓真紀 潮はるか - 潮はるか 世れんか
アシュレ 瀬戸内美八 但馬久美 常花代 但馬久美 瀬戸内美八 松あきら 瀬戸内美八
メラニー 小松美保 奈緒ひろき 城月美穂 月城千晴 小松美保 上原まり 小松美保
ベル・ワットリング 舞小雪 衣通月子 千花さち代 山奈由佳 舞小雪 汐見里佳 舞小雪 条はるき
スエレン [4] - 東千晃 - 北原千琴 -
フランク [5] - 尚すみれ - みさとけい -
ピティパット 深山しのぶ 美吉佐久子 睦千賀 - 水の瀬あきら - 鈴鹿照子 水の瀬あきら
プリシー 葉山三千子 朝みち子 瀬戸千尋 美珠千代 明知希帆 鈴鹿照子 純川暁美
マミー 水穂葉子 洋ゆり 葉山三千子 水穂葉子 藤園さとみ 葉山三千子
ミード博士 大路三千緒 清川はやみ 立ともみ 美穂真咲 小柳日鶴 汝鳥伶
ミード夫人 水代玉藻 淡路通子 神代錦 淡路通子 水代玉藻 瑠璃豊美 恵さかえ 水代玉藻
脚本・演出 植田紳爾
演出 阿古健
劇場 宝・東 宝・東 宝・東 全国 中日 宝・東 福岡・小倉 全国(夏) 全国(秋)
キャスト(2)
  1984年雪組 1988年雪組 1994年月組 1994年雪組 1997年花組 1998年雪組 2001年星組
レット・バトラー 麻実れい 平みち</br>杜けあき[6] 天海祐希 麻路さき</br>久世星佳</br>真矢みき</br>轟悠[7] 轟悠</br>高嶺ふぶき[8] 真矢みき 轟悠 稔幸
スカーレットI 遥くらら 神奈美帆</br>一路真輝[9] 麻乃佳世</br>真琴つばさ[10] 麻乃佳世 一路真輝 愛華みれ 香寿たつき 星奈優里
スカーレットII 草笛雅子 一路真輝</br>神奈美帆[9] 真琴つばさ
麻乃佳世[10]
汐風幸 - 千ほさち 月影瞳 朝澄けい
アシュレ 平みち 杜けあき</br>平みち[6] 久世星佳 真琴つばさ 高嶺ふぶき 高嶺ふぶき</br>轟悠[8] 香寿たつき 安蘭けい
メラニー 鳩笛真希 仁科有理 舞希彩 夏妃真美 早原みゆ紀 渚あき 檀れい 朋舞花
ベル・ワットリング 矢代鴻 北斗ひかる 若央りさ 春乃若葉 詩乃優花 五峰亜季 秋園美緒
スエレン - 小乙女幸 -
フランク - 楓沙樹 -
ピティパット 深山しのぶ 邦なつき 葉山三千子 双葉美樹 小乙女幸 毬丘智美
プリシー 毬谷友子 小乙女幸 那津乃咲 星野瞳 毬花なみ 百花沙里 絵麗まりな 彩愛ひかる
マミー 木花咲耶 星原美沙緒 真山葉瑠 星原美沙緒 風早優 英真なおき
ミード博士 沙羅けい 小柳日鶴 萬あきら 大峯麻友 泉つかさ 大伴れいか 箙かおる にしき愛
ミード夫人 銀あけみ 夏妃真美 花園ゆかり 灯奈美 町風佳奈 美穂圭子 万里柚美
脚本・演出 植田紳爾
演出 阿古健 谷正純
劇場 宝・東 宝・東 宝・東 全国 全国 全国 全国
キャスト(3)
  2002年合同 2004年宙組 2013年宙組 2014年月組 2014年星組
レット・バトラー 轟悠 和央ようか 凰稀かなめ 轟悠 紅ゆずる
スカーレットI 朝海ひかる 瀬奈じゅん 花總まり 朝夏まなと
七海ひろき
龍真咲 礼真琴
スカーレットII 白羽ゆり 遠野あすか 初嶺麿代 純矢ちとせ
伶美うらら
凪七瑠海
アシュレ 湖月わたる 初風緑 悠未ひろ
朝夏まなと
沙央くらま 華形ひかる
メラニー 檀れい 美羽あさひ 実咲凜音 愛希れいか
ベル・ワットリング 未来優希 真丘奈央 芽映はるか 緒月遠麻 光月るう
スエレン 愛耀子 沢樹くるみ - - 花陽みら
フランク 立樹遥 彩吹真央 - - 煌月爽矢
ピティパット 一原けい 鈴奈沙也 美風舞良 憧花ゆりの
プリシー 夢園麻衣 桜一花 綾花ちか 綾瀬あきな 姫咲美礼
マミー 星原美沙緒 出雲綾 汝鳥伶
ミード博士 未沙のえる 寿つかさ 星条海斗
ミード夫人 高ひづる 貴柳みどり 鈴奈沙也 萌花ゆりあ
脚本・演出 植田紳爾
演出 谷正純
劇場 日生(雪) 日生(花) 全国 宝・東 梅芸 全国

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:宝塚歌劇団
  1. 当初はファンに配慮し、一幕目はヒゲ有・二幕目はヒゲ無にしたが、かえって不自然なため両幕とも付けることにした。
  2. 役替わり
  3. スカーレット編には登場しない
  4. バトラー編には登場しない
  5. バトラー編には登場しない
  6. 6.0 6.1 役替わり
  7. 麻路、久世、真矢がバトラーの時はチャールズ。轟がバトラーの時のチャールズは高倉京。
  8. 8.0 8.1 高嶺のバトラーは東京のみ。東京は高嶺と轟の役替わりでバトラーとアシュレ役。
  9. 9.0 9.1 役替わり
  10. 10.0 10.1 役替わり