非経験的分子軌道法

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テンプレート:出典の明記 非経験的分子軌道法(ひけいけんてきぶんしきどうほう、テンプレート:Lang-en-short)は、量子化学に基づく計算化学手法である[1]

非経験的分子軌道法では、ハートリー-フォック方程式(正確には、閉殻系の場合はRoothaan-Hall方程式、開殻系の場合はPople-Nesbet方程式である)を解くために必要な分子積分を、実験値に置き換えたり省略したりせずにすべて計算する。物理定数以外の実験値を全く使用せずに分子軌道を計算するため、ab initio MO法ab initio分子軌道法とも呼ばれる。

ab initioという用語は、ベンゼンの励起状態に関する半経験的研究においてテンプレート:仮リンクおよびテンプレート:仮リンクら共同研究者によって、量子化学において初めて使われた[2][3]。背景はパーによって詳述されている[4]。「量子力学の第一原理から」という現代的意味で用いたのは、Chen[5]やローターン[6]が初めてで、AllenおよびKaroは論文のタイトルにも用いて明確にこの用語を定義した。

ほとんどの場合、シュレーディンガー方程式を解くために用いられる基底関数系(大抵LCAOテンプレート:仮リンクから構築される)は完全ではなく、イオン化散乱過程と関連したヒルベルト空間に広がらない(テンプレート:仮リンクを参照)。ハートリー-フォック法ならびに配置間相互作用法では、この近似によってシュレーディンガー方程式を「単純」なテンプレート:仮リンク固有値方程式として扱うことができ、解のテンプレート:仮リンク集合が得られる。

種類

ハートリー-フォック法(HF法)
RHF法(閉殻系分子、1つのMOに異なるスピンの電子2つ)、テンプレート:仮リンク(開殻系分子、1つのMOに異なるスピンの電子2つ、1つのMOに不対スピンとなる電子1つ)、テンプレート:仮リンク(開殻系分子、α電子とβ電子を別々の軌道に)

以下はHF法より高精度な方法である(beyond HF、Post-HFなどと呼ばれることがある)。

Møller-Plesset摂動法([MP法)
Rayleigh-Schrödinger摂動法による近似。2次以上の摂動により電子相関が取り込まれる。その次数により、MPn (n=2,3,4,…) 法と呼ばれる。
配置間相互作用法(CI法)
多電子波動関数(全電子波動関数)を単一のスレーター行列式ではなく、励起電子配置による複数のスレーター行列式の線形結合として近似する方法。CISD(1,2電子励起配置を使用)、CISDT(CISDに加え、3電子励起配置を考慮)、CISDTQ(さらに4電子励起配置を考慮)、full CI法に加え、参照電子配置を複数以上考慮するMR-CI法も一般的になってきた。
多配置SCF法MCSCF法)
CI法では、まず多電子励起電子配置の波動関数を求めておき、その線形結合時の係数のみを最適化するのに対し、この方法では同時に分子軌道も最適化する。最適化する価電子数と分子軌道数を指定するCASSCF (Complete Active Space SCF) 法がよく使われる。
クラスター展開法(CC法)
多電子励起電子配置を、より少ない電子の励起配置の積で表す。CCSD、CCSDT、CCSD (T)、SAC (Symmetry Adapted Cluster) -CI法など。一般に size-consistency を満たすことなどが特徴。
Iterative CI-General Single and Double法(ICI-GSD法)
Iterationが必要だが、1,2電子励起電子配置を考慮するだけでfull-CIと同等の解が得られる。

脚注

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関連項目

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