陸軍中野予備校

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible lists陸軍中野予備校』(りくぐんなかのよびこう)は、安永航一郎による日本漫画作品。および同作に登場する架空の学校。

概要

週刊少年漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)に1985年42号から1986年52号まで連載され、連載終了後に読み切り2本(週刊少年サンデー増刊号1991年10月号、11月号掲載)が描かれた。単行本は小学館:少年サンデーコミックスより全6巻(読みきり2本も収録)。

「陸軍中野予備校」出身の主人公、酢堂大雑が、先輩の有川雄妻等の助けを借りて、世界の政治・経済の掌握(=合法的な世界征服)を狙う秘密国家「南蛮帝国」の手下ゲゲーベン一味と、しょーもないバトルを繰り広げるギャグ漫画

組織としての「陸軍中野予備校」の設定

第二次大戦中の昭和19年(1944年)、「陸軍中野学校」の質を向上させるべく大雑の祖父である酢堂綱正帝国陸軍少将が設立した機関である。そのため「中野予備校」では諜報活動に必要な様々な訓練が繰り広げられている他、物語中の小道具や変装術等から察して、相当の科学力、技術力を備えていると思われる。因みに、中野予備校から中野学校に進学した者は只の一人もいない。

また、この予備校の人間(少なくとも大雑)は日本が太平洋戦争で敗戦し、大日本帝国陸軍が無くなった事は知っているが「陸軍中野学校」が無くなったことは知らなかった。それでも「陸軍中野予備校」の出身者たちは帝国陸軍人としてパン食の侵略から白い米の飯を守るため、海の彼方にある南蛮帝国と日々戦い続けている。

主要登場人物

酢堂大雑(すどう だいぞう・♂)
「陸軍中野予備校」創設者の孫で生まれながらの予備校生。「中野学校」受験のために上京し旗本家を訪れるが「中野学校」など既に存在しないと知らされ、以後どさくさに紛れて旗本家に住み着き、たけしの通う枕返高校に転入する。編入テストで満点をとり(中野予備校生にとっては知能テストレベル)格闘においても「十七条拳法」(素手の拳一撃で鉄筋コンクリート製の電柱を叩き折る程の技)をはじめ文武で超人的な能力を発揮するものの、物語が進むにつれ他のキャラクターに飲み込まれるが如き様相を帯びてしまう。予備校に所属していた頃はろくな物を食べさせてもらえなかったらしく、白米の飯を目の前に出されると涙を流しながら食べる。誕生日は1月1日。名前の大雑は「大福もち」と「雑煮」に由来している
コバヤシ丸(こばやしまる)
酢堂の愛犬。雑種。帝国陸軍の軍用犬で頭が良いが、マーキュリー(後述)の敵ではない。
有川雄妻(ありかわ おづま・♀)
「中野予備校」出身者で酢堂の先輩。酢堂の転入した高校の生徒会総務部長でもある(後に生徒会長)。人格および諜報員としての能力は完璧な筈なのだが、酢堂と行動を共にするようになってからは、例えばゲゲーベン宅に潜入した際、変装用に警備員の服を剥ぎ取っているところを他の警備員に見つかり痴女の烙印を受ける等、災難が相次ぐ上次第にギャグキャラに染まっていく。酢堂と同じく白米の飯を見ると条件反射的に涙が溢れてくる。
旗本たけし(はたもと たけし・♀)
酢堂が居候している家の娘。祖父が酢堂の祖父の部下であり、その祖父が軍用地を誤魔化して家を建てていたことを弱みに握られた挙句、家を受験の宿として利用されかけ、ついでにそのまま住み着かれる。物語中では貴重な常識人で、酢堂や友人のななみに対するツッコミ役。やや酢堂に惹かれている様子。
ななみ
たけしと同級の友人。天然ボケで人を疑うことを知らない性格。趣味は田舎じーちゃん手紙を出すことだが、必ず後に起こる騒動の前触れになる。
桜井(さくらい・♂)
「中野予備校」出身者で有川と同期。常に大怪我を負って入院しており、完治してもすぐ何かの拍子に大怪我を負わされる(但、大抵の怪我は常人の10倍近いスピードで完治しているらしい)。有川曰く「大ケガの天才」で、死ぬことは絶対にないという。有川と共に、酢堂に「南蛮帝国」の存在を伝え、その打倒のために協力を請う。予備校の薬学部出身らしい。
ゲゲーベン(♂)
秘密国家「南蛮帝国」の手先で架空の商社「オストワルド貿易」の支配人。酢堂に対し次々と刺客を送り込むものの悉く失敗、更に会社も傾いた挙句、本人のキャラクターも次第に崩壊していく。格闘に優れており、「オストワルド貿易」が抱えた負債56億7千万円を、覆面レスラーとなってプロレス興業で全額返済した。リングネームは「謎の覆面レスラー『ゲゲベマン』億の借金を持つ男」
バゾク(♀)
ゲゲーベンの娘。登場当初に酢堂攻略を買って出るが、後にゲゲーベンから見捨てられて(というか忘れられたせいで)家電三人衆にとして利用され、有川に拾われて同居するようになる。酢堂達と敵対していた頃、催眠術を使ってたけしの服をひん剥いたことがあるため、有川と同居後もたけしとは仲が悪い。幼少の頃から諜報部員養成の教官・ナンヤネンに育てられ、訓練時にやはりろくな物を食べさせてもらえず、挙句に教官が嘆く程セコい食材への嗜好を持つようになり、特にパンの耳にこだわるようになった。永らく父との確執があったが、すぐに騙されいい様に利用される、プロレス興業で借金を返済する父を手伝い「謎の覆面レスラー『ゲゲベマン2号』となってリングに立った事もある。
尾崎彦吉(おざき ひこきち♂)
枕返高校の体育教師。しかし正体はゲゲーベン配下の諜報員。酢堂との対峙を繰り返すうちに変態の本性が顕わとなり、結局は学校を追われ、ゲゲーベンからも見限られるものの、その後も執拗に酢堂達に付き纏っては返り討ちに遭う。「南蛮帝国極東支部=オストワルド貿易」崩壊後も大雑達に復讐心を燃やし続け、「コンコルド尾崎」「ステルス尾崎」なる2人の弟を呼び寄せ、自らも「ヂャンボ尾崎」を名乗り3兄弟で最終決戦に挑んだ。実力的には、全く酢堂の敵ではなかった。年齢28歳。趣味はボディービル。モデルは尾崎紀世彦
鉄拳ジョージ(♂)
ゲゲーベンに雇われたボクサーくずれの風来坊。本来は心優しい性格の様だが、自身の並外れて大きい口の事になると我を忘れる。また、ボクサーになれなかったのはその口に合うマウスピースが無かったためらしい。自慢のパンチを酢堂に見切られた挙句、十七条拳法の前に沈む。
水斑蛇(すいはんじゃ・♀)
帝国陸軍関係者抹殺のためにゲゲーベンに雇われた家電三人衆の一人。有川の実の姉で本名は有川水斑。年齢は30才を超えていると思われ、また会得する変装術が旧いものであったが他の2人と共に強引に高校生として枕返高校に転入する。「中野予備校」の予備校生だった15年前にあるトラブルを起こして同期の仙拓鬼・嶺僧虎と共に脱走し、以後逃亡生活を続けるが、その大元の原因が妹にあるとして有川をも付け狙う。
仙拓鬼(せんたくき・♂)
家電三人衆の一人。常に眼帯を着けているが失明している訳ではなく(右目が近視・左目が遠視)、行動によって着け換えているだけ。ネコの鳴き真似が得意。十手を携帯。趣味は競艇パチンコ
嶺僧虎(れいぞうこ・♂)
家電三人衆の一人。常に無言だが友情に厚いらしい。ななみに好意を持たれていた。
玉金坊(たまきんぼう・♂)
酢堂の兄で本名は酢堂玉金。「中野予備校」出身者で水斑蛇と同期でもある。頭は予備校でも相当悪かったらしいが「中野セラミック」を素手でぶち割るほどの腕力・体力を持つ。仏法に従うでありながら煩悩の塊で強引な性格。物語後期では神父として登場するが、これは年末から旧盆までは僧として、以後はクリスマスを見据え神父として御布施をせしめる魂胆による。誕生日は弟と同じく1月1日。母の好きなものが「玉子やき」、父が好きなものが「きんとん」から「玉金」と名付けられた。
ミスター・ナンヤネン(♂)
「南蛮帝国」諜報部員養成所の教官。バゾクの師匠であり育ての親。強烈な体臭の持ち主で、必殺技は戦地で多くのゲリラの命を奪ったという「脇の下のにおい」(相手の頭を自らの脇に挟み込む)。有川の家に同居しだしたバゾクの前に現れ有川を抹殺するよう指示するが、バゾクは有川に懐いてしまっていたため失敗。有川の不意打ちで意識を失ったところを袋詰めの上ごみ集積所に遺棄され、以後消息不明。この時にナンヤネンが使った「脇の下のにおい・フルパワー」の悪臭の影響で、有川とバゾクは住いのマンションから夜逃げするハメになった。
バニー・キャラハン(♀)
「南蛮帝国」本部から新たに日本へ派遣された監査役。鋭い蹴り技そして器用な足の指の使い手でナルシスト。通称「色の黒い女」。一旦は有川はおろか酢堂をも圧倒したが、復活した酢堂に「超速効白癬菌スプレー」を吹き付けられ自慢の足を封じられて敗北。後に枕返高校に転入して不良グループを配下に置きスケバンとなる。
マーキュリー
バニーの愛犬。英国王室犬の血統を持ち、コバヤシ丸よりも頭が良い。
縄田部奈里満(なわたべ なりま・♂)
有川とバゾクがナンヤネンによる悪臭の影響で引っ越した先のマンションの隣人。過激なパンクファッションが普段着で野球盤をこよなく愛し誰彼構わず相手に誘う変人だったが、実はバゾクの通う中学校の教師。縄田部代奈美という奇抜な服装のルームメイト(恋人か家族かは不明)と同居している。名前の元ネタは当時おニャン子クラブのメンバーだった渡辺満里奈渡辺美奈代
鈴木博士(♂)
旧帝国陸軍兵器開発顧問。戦時中あらゆる爆撃にも耐え自律行動の出来る「特機兵」(ロボット)を開発した天才科学者。しかし、莫大なコストが掛かる上、既に試作機に国民の血税を注ぎ込んだため、軍を放り出された。敗戦後もずっと陸軍を逆怨み続けていた。
旧帝国陸軍鈴木式特機兵
略して「旧帝鈴木(きゅーていすずき)」自律行動が取れ、人間と寸分たがわぬ姿のロボット。自らも自分がロボットだとは気付かなかった。背中の太陽電池が弱点で、すぐに電池切れを起こす。
旗本家の人々
たけしの祖父である鯛窟と母の藤乃、兄の健太郎が登場する。祖父と兄は物語序盤で酢堂にからかわれたりしたが、酢堂曰く旗本家は「人畜無害を絵に描いたような」一家で、酢堂だけでなく一連の騒動でマンションを追われた有川とバゾクさえ家族同様に扱う程である。なお、たけしの母は常識外れにおっとりした性格だが、物語終盤の展開を左右してしまう。

コミックスのブランク

奥付と連載期間

  1. 昭和61年4月15日 週刊少年サンデー昭和60年42号〜51号
  2. 昭和61年7月15日 昭和60年52号〜昭和61年12号
  3. 昭和61年9月15日 昭和61年13号〜23号
  4. 昭和63年2月15日 昭和61年24号〜34号
  5. 1988年8月15日 昭和61年35号〜45号
  6. 1992年4月15日 昭和61年46号〜52号、週刊少年サンデー増刊号平成3年10月号、11月号

第3巻と第4巻の間に、1年5ヶ月の間隔がある(連載終了からも1年以上が経過)。特に第5巻の発売後、最終巻(第6巻)が出るまでに4年間近くもかかったため、当時話題となった。

主な原因は、連載の完結時に第6巻のことを想定に入れておらず、ページ数が足りない状態になってしまったこと。そのため番外編的な読み切りを2本収録することでページ数を貯め、刊行にこぎつけた。

また、連載終了後、安永が『巨乳ハンター』シリーズ等で多忙になってしまい、番外編を執筆する余裕が無くなってしまったことも要因となっている。『巨乳ハンター』右乳編(第1巻。1990年11月15日)の巻末4コマで、本作の第6巻が発売されない事が自虐的なネタにされており、4択式のクイズになっていた。選択肢は下記の通り。

  1. バルセロナオリンピックまでには出る。
  2. 香港返還までには出る。
  3. ガンバスター返還(原文ママ)までには出る。
  4. ダイエーホークス優勝までには出る。

ちなみに、上から1992年(7月25日から8月9日まで)、1997年(6月30日から7月1日にかけて)、14292年、1999年[1]、となっている。結果的に正解は1となった(「までには」とされているため、ある意味全て正解ではある)。

備考

同作者の『県立地球防衛軍』と同様にSF作品等のパロディが見受けられる。

脚注

テンプレート:Reflist
  1. 他の選択肢は「いつ」かが確定している物だが、『巨乳ハンター』右乳編の刊行当時のダイエーホークスは1973年以降優勝から遠ざかっている時期だった。