除斥期間

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テンプレート:Ambox 除斥期間(じょせききかん)とは、法律関係を速やかに確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度。

  • 民法について以下では、条数のみ記載する。

概説

条文上一定の期間が定められているものの中には、消滅時効ではなく除斥期間の規定であると解されるものがある。除斥期間は、民法はもとより、その他の法律にも明文規定の存在しない制度であり、あくまで解釈上認められている概念である。

権利が消滅する期間を定めるものとして消滅時効と類似する制度であるが、両者には下記にあるような差異が認められている。

法令で定められた権利が消滅する期間について、それが消滅時効の時効期間を定めたものか、あるいは除斥期間を定めたものか解釈が分かれる場合がある。

消滅時効との比較

消滅時効と効果が似ているが、法律関係を速やかに確定させるという制度趣旨から下記の差異があるとされている。

  • 除斥期間には、中断は認められない。
  • 除斥期間には、原則として、停止がない。
  • 除斥期間は、当事者が援用しなくても、裁判所の職権によって権利消滅を判断できる。
  • 除斥期間は、権利発生時から期間が進行する(起算点)(消滅時効は権利行使が可能となった時点から期間が進行する)。
  • 除斥期間には、遡及効が認められない。

除斥期間について問題となる条文

除斥期間について定めたものではないかとみられる民法上の主な条文には以下に掲げるようなものがある。なお、学説は一様ではなく条文ごとに除斥期間ではなく消滅時効を定めた規定であるとする学説が存在している条文もあるので注意を要する。

  • 即時取得の盗品又は遺失物の回復(193条)
    盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
  • 占有の訴えの提起期間(201条)
    1年以内に提起しなければならない。
  • 詐害行為取消権の期間の制限(426条後段)
    行為の時から20年を経過したとき消滅する。
  • 売主の担保責任(566条)
    契約解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
  • 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(724条後段)
    不法行為の時から20年を経過したときは、消滅する。 なお、この20年の期間については後述のように除斥期間の性質をもつとする判例がある。
  • 不適齢者の婚姻の取消し(745条)
    適齢者は、適齢に達した後、なお3箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。
  • 遺留分減殺請求権の期間(1042条
    相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年を経過したとき消滅する。

民法724条後段の期間に関する判例

除斥期間の性質をもつとする判例

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権に関する20年の期間制限(724条後段)
    • 1989年(平成元年)12月21日 最高裁第一小法廷判決、民集43巻12号2209頁
    724条後段の不法行為に基づく損害賠償請求権に関する20年の期間制限は除斥期間であり、当事者が援用しなくても裁判所は請求権が消滅したものとして判断すべきである。

ただし、除斥期間の性質から生じる不合理性を回避するため次のような解釈も判例で示されている。

除斥期間の進行の停止に関する判例

不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告(現在の成年後見開始決定)を受け、(成年)後見人に就職した者がその時から6箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、158条の法意に照らし、724条後段の効果は生じない。
26年前に失踪した女性が、加害者の自首により26年後に遺体が発見され殺害が判明した事案で、死亡の事実を知りえない状況を殊更に加害者に作出され、相続人がそのような事実を知ることが出来ず、相続人が確定できないまま20年が経過した場合に、その後相続人が確定した時から6ヶ月以内に、損害賠償請求をしたときは、160条の法意に従い、特段の事情があり、除斥期間の効果は生じず、相続人が確定した時から6月経過するまで時効は完成しないとした。

除斥期間の起算点に関する判例

民法724条後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。
  • 2004年(平成16年)10月15日最高裁第二小法廷判決、民集58巻7号1882頁 関西水俣病訴訟
水俣病による健康被害につき,患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること,水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では,上記転居から4年を経過した時が724条後段所定の除斥期間の起算点
 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につき、B型肝炎を発症した時が724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

関連項目