闇のイージス

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テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible lists闇のイージス』(やみのイージス)は、七月鏡一原作・藤原芳秀作画による日本漫画作品。

概要

闇のイージス AEGIS IN THE DARK』(やみのイージス イージス イン ザ ダーク)は、『週刊ヤングサンデー』(小学館)2000年48号から2006年34号まで連載された。単行本は全26巻。

その後、『暁のイージス AEGIS IN THE DAWN』(あかつきのイージス イージス イン ザ ドーン)とタイトルを変更し、週刊ヤングサンデー2007年42号から2008年35号まで連載。掲載誌の休刊に伴ってYSスペシャルに移籍し、VOL.1からVOL.5まで連載された。単行本は全6巻。

ストーリーは、裏社会のボディーガード「護り屋」楯雁人が、数々の依頼に応じて依頼人を護衛する話と、護り屋となるきっかけとなった事件を引き起こしたテロリスト「蝶」と対決する話を軸に展開される。『闇のイージス』劇中では7年の時間が経過しており、『暁のイージス』は更にその1年後の物語となっている。

本作と同じく七月鏡一・藤原芳秀が手掛けた『ジーザス』の後日談でもあり、『ジーザス』のストーリーとの直接的な関連性はないが、主人公ジーザスら一部キャラクターが劇中に登場している。また、本作の後日談・続編である『JESUS 砂塵航路』は、たかしげ宙原作『死がふたりを分かつまで』(ヤングガンガン連載中)とのクロスオーバー作品としてストーリーが展開されており、『暁のイージス』最終回においてそのことが示唆されている描写がある。

登場人物

メインキャラクター

楯 雁人(たて かりと)
本作の主人公。闇社会で「イージスの楯」と呼ばれ、依頼を受ければ犯罪者でも守り抜く凄腕の「護り屋」。過去の事件で右腕を失っているため、特注の筋電義手を装着している。「殺しをせず、殺しに荷担しない」ことを信条とする。
夏場でもケブラー入りの防弾コートを纏っている。基本的に武器類は用いず、鋼鉄の義手と中国武術、戦闘に関連する様々な知識を用いて依頼人を護衛、状況に応じて敵を制圧する。中国武術の技量は極めて高く、相手の殺気を読み取ることで銃弾の軌道を察知し、義手を盾にして弾丸を防ぐ。
親兄弟や親類のいない天涯孤独の身で、高校時代は非行に走っていたが、恩師・加納の説得で立ち直り、高校卒業後は警察官となった。そして同僚だった甲斐晴美と出会って結婚、一人息子・雅人を授かり、また義兄・彰一の抜擢によりSATの隊員となるなど、公私ともに充実した生活を送っていた。しかし「蝶」によるSAT狩りの標的となって背中に紋章を刻まれ、晴美を殺害され、雅人に仕掛けられた爆弾の解除に失敗し雅人と自身の右腕を失った。その時のトラウマにより、炎を目の当たりにすると右腕に激しい幻肢痛が走る。
その後、「蝶」に復讐する力を求めて世界中を放浪。シチリア島でルッソ・アルラッキから護り屋としての心得と中国武術を学び、後継者としてアイギス(イージス)の通り名を引き継いだ。
SAT狩りにおいて殉職したことになっており、戸籍上は死亡している。加えて家族を失い闇の世界に身を投じたことなどから、自らを「死者」と称している。数々の拷問に耐え抜く並外れた精神力、どのような悪人でも依頼があれば分け隔てなく護衛する高い職業意識を持つ一方、「蝶」に対する復讐心もまた極めて強く、「護り屋」としての自身と「復讐者」としての自身の板挟みに常に葛藤している。
独身時代は、正義感は強かったものの融通が利かず協調性のない性格だった。SAT時代は近接格闘と爆弾解体で優れた成績を残し、特に爆弾の解体技術は護り屋となって以降もしばしば活用されている。警察官としての最終階級は、殉職による2階級特進で警部
雁人の義手
藍空医科大学沢渡研究室にて製作された筋電義手。開発コンセプトは「マグナム弾にも耐える強度を持ち、精密動作可能な義手」で作中でも定期的に新型の義手に換装していた。基本的に雁人専用である為固有名はなく、ナンバリングされているくらいだが例外として「クロムウェル」と「ミネルバ」がある。
アナ・リドル
雁人のパートナー。黒衣黒髪の少女。護り屋に仕事を依頼する時は「Tea room セイレーン」にてアナに接触し、アナの出すなぞなぞに答えて嘘偽りなく依頼内容を話さなければならない。「セイレーン」「魔女」を自称し、子供ながら大人が舌を巻くほどの高い知性と理性を備えている。天才的ハッカーでもあり、情報収集能力にも優れている。
本名アナ・キタガミ・マドニア。コーサ・ノストラの大幹部ミケーレ・マドニアの孫娘で、母アメーリアと日本人医師キタガミが駆け落ちしアメリカ合衆国で誕生した。ミケーレらが出資した研究機関「ゲイザー」が、不妊治療と称した極秘実験によって人為的に作り出した超天才児で、貴重な成功例として組織に狙われ、ミケーレに保護されていた。その時にイージスの異名を引き継いだばかりの雁人の護衛対象となり、以来パートナーとして護り屋としての雁人を支えている。
雁人に好意を抱いており、近づく女性に対してしばしば嫉妬している。一方で、雁人が自分を亡くした子供の代わりとして見ているのではないかという恐れを抱いている。ゲイザーを告発しようとして行方不明になった父の消息と、何者かに狙撃され亡くなった母が今際の際に残したなぞなぞの答を、今なお追い求めている。
甲斐 彰一(かい しょういち)
警視庁公安部所属の警察官。カウンターテロの専門家。東京大学卒のキャリアで、階級は警視正。雁人の妻だった晴美の実兄で、雁人の無二の親友・戦友。滅多に感情を表に出さずその態度は冷酷とも見えるが、現場指揮官としての人望は厚い。一方でその出世の早さを快く思わない人間も少なからず存在する。
SAT狩りにより雁人が裏社会に身を投じた後、「表と裏それぞれの世界から蝶を追跡する」「互いの生命を顧みず、どちらかが倒れたらその屍を踏み越えて前に進む」という約束を雁人と交わした。表の世界の最大の支援者として護り屋のバックアップを行っているが、互いの命を顧みない約束のため過酷な仕事を依頼することも少なからずあり、また雁人も甲斐を護衛する依頼は基本的に拒否している。
少年時代に自らの命と引き替えに自分を守った巡査に憧れ、警察官となった。雁人と出会った当初は、下の階級だった雁人の態度が反抗的だったことと妹との交際関係のために険悪な仲だった。
蝶(バタフライ)
国際指名手配中のテロリスト。ペルシャ語で蝶を意味する「ファラージャ」とも呼ばれる。一流の破壊工作員であると同時に、闇の世界で「テロリストメイカー」と呼ばれカリスマ視されているテロリスト教官で、「完璧ならざる世界の破壊」と称して世界中でテロを引き起こしている。自身が求めるテロリストとしての素養を持つ人間の背中に、その証として焼けたナイフで大きな十文字の傷を刻んで「紋章」とし、テロリストもしくは自分に対する復讐者に仕立て上げる。
紋章を刻まれながらその思惑通りに動かない雁人に興味を抱き、様々な形で間接的に雁人と接触。自ら軍勢を率いて海ほたるパーキングエリアを占拠し、雁人だけでなくSATやジーザス、ゼロ達と激しい戦いを繰り広げ、最後は雁人と手錠で繋がれ東京湾に沈み死亡したと見られていた。しかし手錠につながれた右腕を自ら切り落として生き延び、その後、核兵器を手に入れることで世界を更なる混乱へと陥れた。
元々は日系アメリカ人の一般市民だったが、マーキュリー刑務所に収監され秘密囚人部隊の一員としてベトナム戦争に参加。しかし、極秘任務中止により機密保持のため抹殺されそうになり、さらに家族にまで累が及んだため世界に絶望、全てを捨て去る。その後アメリカ国内にて2039部隊に殺されることを望み遭遇したが、逆に部隊に加えられ「蟻(アント)」の名を授かる。2039部隊加入後は各隊員がそれぞれ得意とする破壊工作を全て学んでいき、ある作戦でリーダーの「蝶」裏切りを察知して打ち倒した上その「"世界"の名」と「"蝶"の名」を奪ったことで今日の「蝶」となった。

Tea room セイレーン

護り屋への依頼の窓口となる喫茶店。

来島 ちひろ(くるしま ちひろ)
雁人の助手。野坂亜紀の実姉。初登場時は高校生。
無実の罪を着せられ破滅させられた母に、亜紀と共に復讐心を植え付けられて育ち、ある日「天使」からかかってきた一本の電話がきっかけとなって暗殺者としての訓練を受け、暗殺者としての才能を開花させた。しかし亜紀と違い復讐の実行には賛同しておらず、雁人に協力する形で亜紀を止め、そのことがきっかけで亜紀に命を狙われるようになる。その後護り屋となるべくアシスタントとして雁人に弟子入りし、幾度もの失敗を乗り越えて最終的には雁人から信頼を置かれるようになり、やがて亜紀とも和解した。
本来は明るい性格をしているが、自らに厳しい一面もあり、仕事中は滅多に感情を表に出さない。一方、「護り屋」としての自身と、訓練によって目覚めた「暗殺者」としての自分の間に揺れる場面も少なからず見られる。雁人を「先生」と呼ぶ。
護り屋の仕事を遂行する時は、雁人と同じく防弾コートを纏い、右腕に弾丸を防ぐ頑丈な防具を装着。基本的に武器は用いず格闘術のみで対処するが、追い詰められた時はスペツナズナイフを用いて戦う。
一時はアナに嫉妬され一方的に嫌われていたが、ある事件を通じて和解、雁人の不在時にはその護衛を任されている。『暁のイージス』では、「蝶」を追って渡米した雁人に代わって護り屋の依頼をこなし、自らに課した10の依頼を成功させる目標を達成したことで、アナと共に再び雁人の元へ向かった。
ジョバンニ・ロッシーニ
セイレーンの店員。カウンターで仕事をしている男性。アナの祖父ドン・マドニアに命を救われたことがあり、その縁でアナに仕えている。雁人の不在時はアナのボディガードを務める。

協力者

沢渡 啓之(さわたり けいすけ)
藍空医科大学の医師。大学内にある自らの研究室で次世代型筋電義手の開発・研究を行っており、雁人に「本物の腕と同様に動き、なおかつマグナム弾の直撃に耐える義手」の製作の見返りとして、多額の研究資金と義手のデータを提供されている。
義手の研究を通して医師として多くの人間を救うことを望み、雁人に対しても「『生者』に戻る日が来ること」を心から願っている。一方、雁人の復讐心を慮った機能を義手に組み込み、それが結果として雁人の葛藤と世界の混乱に拍車をかけてしまったこともある[1]
“天使”
神秘的な雰囲気を漂わせる美しき女性。その容姿とは裏腹に人々を滅びへと追いやる魔性の女。その本名や素性は一切が謎で、唯一つわかっていることは「ハウザー症」患者であること。人の嘘を見抜く才能があり、自らは人々の嘘による苦痛を強いられている。藍空医大で研究目的を含めた治療を受けていたが、担当医の相良清彦により研究ごと藤堂義明に売り渡された。自らを籠の鳥として愛玩する藤堂の手を逃れた後、多くの人々に悪の種子を植え付けて狂わせる。しかし、ちひろたち姉妹には“希望”を見出しており、その窮地にあっては自ら藤堂の元に舞い戻ると同時に、楯に救いを求めた。
再び藤堂の元を離れた後、聖セイレム学園に音楽教師・「霧野真由」[2]として赴任していた。自分の研究データを利用したある組織の所行を暴くため、巧みに楯を誘導した。その後は、宿命を逃れる術を求めて放浪の旅に出ている。
他の主要な登場人物たちが『暁のイージス』に登場する中、彼女は一切登場しない。
レイチェル・雨宮・ハンター(レイチェル・あまみや・ハンター)
テロ対策を専門に請け負い全米で業界3位の実績を持つ民間警備会社「HSE(ハンター・セキュリティー・エンタープライズ)」の最高経営責任者。20歳にしてオックスフォード大で経営学の学位を取った才女。誇り高く聡明で責任感が強い。反面、駆け引きに長け、高圧的で人を見下した態度も見せる。依頼人を装って楯の力量を測りヘッドハンティングしようとしたため怒りを買うが、「蝶」の情報を餌にして協力を取り付ける。白人の父と日本人の母を持つ日系人。
彼女の20歳の誕生日に発生したアメリカ同時多発テロで両親を失い自らも負傷し、鳩尾には事件の傷跡が大きく残る。両親を奪ったテロリストたちを激しく憎み、父の遺産である株式を受け継いで経営者となり、「HSE」を対テロ組織とした。「十字架」を背中にもつムハンマド・サイードのテロ計画を楯と共に阻止する中で考えに変化が生じ、サイードが残した、彼が最も大切にしていたラピスラズリを預ることになる。
『暁のイージス』では「蝶」を追う楯に協力するが、銃撃を受けて瀕死となった楯を目の前で拉致される。さる国の施設に捕らえられた楯を救出すべく、下記のアーネスト・ロイドやウリエル達と共同戦線を張る。
アーネスト・ロイド
FBI特別捜査官。白髪の目立ち始めた年配の黒人で「テロ・ハンター」として恐れられる。同時多発テロを未然に防げなかったショックで酒に溺れるようになるが、後輩からの叱咤で「9.11」と名乗るテロリストを巡る事件を担当し「蝶」の暗躍を知る。イラク出身の少女ライラを巡ってアメリカの掲げる正義に疑問を抱くようになり、その後「蝶」を追って来日し楯と邂逅し、楯が「蝶」の意図したテロリストにはならないことを確信する。
ベトナム戦争では通信兵として従軍した過去を持つ。また、横須賀に配属されていたこともあり、日本語も話せる。
『暁のイージス』ではレイチェル、ウリエルと共に「蝶」を追っている。レイチェルに対してはブラックサイトに拉致された楯を救出するために、「伝説」と呼ばれたある人物を雇うことを薦める。最終章では、アメリカの一都市が壊滅する危機に際し、自らテロリストの説得に当たる。
ウリエル
『暁のイージス』に登場。「蝶」の過去を探るべくメキシコを旅する楯に、常に電話越しからコンタクトを取り続ける人物。ユダヤ系の白人男性でその正体は、エシュロンで情報分析をするCIAの分析官。楯に有益な情報をもたらすものの、情報を小出しにして楯を誘導する姿勢が怒りを買いコンタクトを断ち切られそうになると、ある人物の護衛依頼を楯に懇願する。その後、楯の危機に際しては、「耳」であることをやめて自ら踏み込んで手助けするようになる。
ミケーレ・マドニア
コーザ・ノストラの大幹部。アナの母方の祖父。アナを可愛がり、ボディーガードを長く務めていたルッソやその弟子の雁人に親愛の情を示す一方、組織内で対立する勢力が臓器売買組織に加担していることに激しい嫌悪感を抱いている。
第二次世界大戦後のアメリカで生き残るために組織が「ゲイザー」の出資者となり、やがてゲイザーがミケーレの娘アメーリアを使ってアナを人工的な天才児として産み出させ、更に娘がゲイザーに殺されたことを激しく悔やんでいた。ゲイザーにまつわる内紛が終息した後、自分ではアナを守りきれないと悟り、護り屋として日本に戻る雁人にアナを託した。
ルッソ・アルラッキ
雁人の師匠で、「アイギス」の異名で知られた護り屋。ミケーレ・マドニアのボディーガードだったが、ある人物の護衛に失敗し刺客をその手にかけてしまったことから引退し、素性を隠しシチリア島の一介の料理人として生活を送っていた。
「蝶」への復讐のための力を望む雁人に地下墓地の試練を課し、地下墓地から生きて帰って来た雁人に護り屋としての心得と中国武術を授けた。その後、ミケーレの依頼で雁人と共にアナを護衛していた時にミケーレをかばって銃弾に倒れ、その生涯を閉じた。自らが用い雁人に授けた武術の門派や技の名前は、師の意向で教えられていないためルッソ自身も知らない。

殺し屋

ジーザス
ジーザス』の主人公。裏社会で伝説の存在となっている殺し屋。追い詰められた相手が「ジーザス!」と叫ぶと、「それが俺の名だ、地獄に落ちても忘れるな」と返しとどめを刺す。
日本において秘密組織「24」を壊滅させた後、中東の小国・カダス共和国に渡って革命を成功させ、その後は教師としてカダスの子供たちに勉強を教えていた。しかし8人の教え子が臓器売買ブローカーによって誘拐されてしまい、行方を追って世界中を飛び回り関連組織を壊滅させ続け、その過程で再び日本に足を踏み入れた。
ゼロを戦慄させるほどの実力を持ち、日本においては教え子を探す過程で幾度となく雁人と対決・共闘。「天使」による一連の事件が解決した後は、亜紀を助手・弟子としている。
傭兵部隊「砂漠の兎(デザート・ラビッツ)」の唯一の生き残りで、部隊が壊滅し捕虜となった時に「蝶」によって紋章を刻まれた。部隊を全滅させた張本人の1人であることから「蝶」への復讐に執念を燃やしているが、一方で教師として教え子を護るという使命感も強く、雁人と同じく復讐と護ることとの間で揺れている。
ゼロ
新宿にあるバー「雁の巣」を根城とする殺し屋。長身と無精ひげが特徴的な外見をしており、帽子、コート、丸眼鏡のサングラスを常に身に着けている。拳銃やナイフを始めとする様々な殺人術を、無痛症体質を生かした人間離れした戦い方の下で用い、雁人やジーザスと互角の実力を持つ。標的を殺害する時は、「灰は灰に、塵は塵に、土は土に」という聖書から引用した言葉を呟く。
10代で両親を殺され天涯孤独の身となった後、東西分裂時代のドイツでルドルフ・カウフマンに弟子入りし、暗殺者としての訓練を受けた。その時期に、ルドルフの娘マリアをかばって頭部に銃弾を受けたことによって、痛覚だけでなく温度覚や味覚も失った。
仕事を巡るトラブルで何度となく雁人と対決、殺人をタブーとする雁人の信条に反発し激しくライバル視している。幾度もの戦いを経て雁人と互いに理解し合い、関係は改善しないものの共闘する場面が多くなり、アルベルト・へスとの戦いの後、無痛症の治療のためにマリアと共に日本を旅立っていった。
かつてゲイザーに追い詰められたルドルフからマリアの殺害を命じられ、マリアを護るためにルドルフを殺害した。マリアからは密かに思いを寄せられているが、敢えて気づかぬ振りをしている。
橿原 七瀬(かしはら ななせ)
BAR「雁の巣(ネスト・オブ・ギース)」のオーナーで女性バーテンダー。父・十蔵から店と情報屋としてのネットワークを受け継ぎ、ゼロに対して依頼を斡旋している。時折、窮地に陥ったゼロを救うために護り屋に仕事を依頼している。
野坂 亜紀(のさか あき)
来島ちひろの実妹。「天使」との出会いをきっかけに訓練を受けて暗殺者となった。ちひろと同じく母から復讐心を植え付けられ、ちひろと生き別れになった後、養父の陵辱を受けて育ったことなどから、人間性に欠落している部分があり殺人に対する抵抗感がない。
母の悲願であった復讐を雁人とちひろに止められ、それをきっかけにちひろの命を狙っていたが、様々な戦いを経て和解した。「人間狩り」の後、人としての尊厳や何かを護ろうとする心を取り戻し、カダスの生徒を救いに来ていたジーザスに拾われ弟子・助手として行動を共にするようになった。二度と人を殺さない、殺さなければならなくなった時はジーザスが代わりに背負うという約束をジーザスと交わしている。

日本警察

守渡 陽子(もりと ようこ)
警視庁南新宿署生活安全課に所属する女性刑事。階級は巡査部長。男勝りで正義感が強く、警察官としての職務に強い誇りを持っている。捜査手法は強引で荒っぽく、時に自身への婦女暴行や公務執行妨害といった冤罪を被せて相手を逮捕・拘束する一方、市民を守るために命を懸けることも厭わず、階級や恫喝にも屈さない。
時として犯罪者からの依頼も受ける雁人を最低の人間と目の敵にしていたが、やがて雁人が裏社会に身を置きながらなお「警察官としての誇り」を持ち続けていることに気付き、雁人と互いに信頼関係を築いた。雁人からは「最も信頼できる警察官」と言われており、自身も雁人に対して好意を示している。
米内 星美(よない ほしみ)
甲斐の側近の女性刑事で、階級は警部補。性格・風貌ともに清楚な美人だが、自らも相当の捜査力・行動力を持つ。「蝶」を追う余り自らを顧みない甲斐を密かに心配している。
火山 律子(ひやま りつこ)
警視庁公安部外事第3課(国際テロ専門部署)を統率する理事官。中年の女性で、階級は警視。甲斐よりも下の階級だが、国家の中枢にも顔が利き、対テロ対策においては甲斐の上司となっている。
警視内閣情報調査室にも顔が利き、テロ犯罪に対しては手段を選ばない姿勢で臨むため、「魔女の婆さん」の異名を持つ。楯に対しては護り屋になった経緯と真実を全て知りながらも蝶(バタフライ)に付けられた背中の十字の傷を理由に「テロリストになりうる素質を持つ人間の中でも、最も危険な存在」と見なし、甲斐の度重なる説得に全く耳を貸さないほど敵視していたが、海ほたるでの「蝶の軍隊」との戦闘で楯の護り屋に徹する行動と甲斐の幾度もの説得を受け入れ、楯の逮捕を撤回する(但し、楯に対する認識は終幕まで全く変わっておらず、テロリストを殲滅するためならば警察内外を問わず楯と楯に関わる人物を陥れることも辞さないほどである[3])。
「東京戦争編」では甲斐を警視庁公安部に新設された対テロ特捜課のチーフに招聘し、自身は「蝶」が楯に固執する理由を知った上で、内閣総理大臣・花沢の命に従い「蝶」と楯を追い詰める作戦を展開する。
葛原(くずはら)
警視庁南新宿署生活安全課の係長で、守渡陽子の上司。階級は警部。守渡の姿勢や護り屋としての雁人に対して理解を示している。その外見とは裏腹に警察官としての職務に熱心で、事件や関係者への対応を巡ってしばしば上層部と対立している。

「紋章」の戦士

セラ
12、3歳位の少女だが、背中にはやはり十字傷が刻まれている。元々は人身売買により金持ちに売られそうになった所を「蝶」によって救われた過去を持つ。以来、「蝶」を全面的に信頼して「パパ」と呼び、自らの意思で「蝶」に最も近い立場に身を置いている。中性的な容姿の可憐な性格で、一人称は「僕」である。
「蝶」所有の古びた船をねぐらとしていることもあり、後述のアスラン・カディロフを救助し「蝶」の戦士に引き入れた。アメリカ南部の砂漠で楯と甲斐の前に「蝶」達と共に現れ、楯に「蝶」の宣戦布告のメッセージを伝える。
ムハンマド・サイード
「砂漠の虎」の異名を持つ歴戦のイラク人傭兵。屈強な肉体を誇り、小口径の銃弾なら皮一枚しか通さず、筋肉を隆起させることで弾丸を体外へ弾き飛ばすほど。また、銃火器の他によく鍛えられたアラブ風のサーベルを操り、その膂力によるサーベル捌きは楯の義手をも破壊したほどである。
運命の悪戯により戦場で実の息子をその手で殺してしまい、その後「蝶」と出会い十字傷を刻まれる。過酷な運命と「蝶」との出会いによって生じた己の中の抑えきれない衝動から、風船爆弾によるウイルス散布計画「フゴー」を画策。それを阻止せんとする楯との死闘の末、敗北し断崖から転落するが生存、己の暴走に区切りを付けたかに見えた。しかしアメリカで小型核爆弾を回収するため、「蝶」と共に楯の前に再び姿を現す。
「東京戦争編」では「蝶」に従い行動し、「完璧ならざる世界に対する復讐」を「蝶」に託す考えに変化はないが、彼自身は楯を倒そうとは考えておらず、せめて、ある少女だけは助けたいという思いを抱いており、その思いは少年少女を放っておけないある人物に託される。
アスラン・カディロフ
チェチェン共和国出身のスナイパー。長身で銀の長髪に紅い瞳を持つ女性と見紛うばかりの美男子だが、吹雪の中、肉眼の視力のみで数百メートルの狙撃を必中させる超人的な腕前を持つ。ロシアへの抵抗運動に参加し、北オセチア駐留のロシア兵を毎週木曜日に殺害していたことから、「木曜日の悪魔」の異名で恐れられていた。
少年時代、分離独立を図ろうとした祖国がロシア軍の弾圧を受けた際、爆撃により幼馴染の少女アイーシャを目の前で殺される(それが木曜日の出来事だった)。アイーシャの亡霊[4]に取り憑かれ、復讐鬼と化した。自らを「亡霊に取り憑かれ、死者に支配された人間」と称し、楯も同じだと言い放つ。
突如として来日したカディロフは、渋谷新宿にて無差別狙撃殺人を繰り広げ、守渡にも重傷を負わせる。アイーシャの双子の姉・マリーカの依頼を受けた楯はカディロフを止めるべく行動するが、ロシア政府と密約を結びスワロフら元スペツナズの入国と行動の自由を認めた日本警察に妨害される。カディロフと仲間の復讐に逸るスワロフらの破壊活動により、東京はカディロフが望んだとおりの戦場と化す。有明国際展示場での死闘の際、楯の言葉に心を打たれカディロフは暴走を止めるも、その直後にマリーカがスワロフの凶弾に倒れてしまう。カディロフはマリーカの亡骸を抱えて冬の海に消えるが、奇跡的に生存し「紋章の戦士」の船に救助された。そして、「蝶」の「完璧な世界を取り戻す」という言葉を聞き「紋章」の戦士となる。アメリカにおいて小型核爆弾を回収するため、「蝶」やサイードと共に楯の前に再び姿を現した。
名前のモデルは、ロシア連邦チェチェン共和国の政治家アスラン・マスハドフアフマド・カディロフであると考えられる。ガンダム某キャラとは無関係とのこと。[5]
『暁のイージス』では「東京戦争編」において「蝶」と共に再び日本に現れ楯と対決するが、その中で「蝶」のことを「自分や楯と同じ亡霊を背負った人間」であると楯に告げる。同じスナイパーという人種にあたるアンガスとは楯を巡って対立する。
オルガ
メキシコから幾度も楯を襲撃し、「蝶」の過去を知る人物達を消してゆく謎の少女。見た目は10代の白人の美少女で、首筋に傷跡を残しライダースーツに身を包んでいる。重火器も巧みに操るが、ジャンビーヤに似た宴曲ナイフの二刀流による格闘術を最も得意とする。
その正体は「蟷螂」ことアルフレッド・クインの養女であり、素晴らしい声の持ち主で人の心を震わせる歌唱力を持つ少女だった。しかし不慮の事故により声を失った結果、自殺未遂を繰り返すようになり、彼女の悲しみと絶望に目を付けたルーデルによって誘拐され「蝶」と出会ったことがきっかけで「蝶の十字架」を持つ戦士となってしまう。
アンガス
「紋章」の戦士の1人で、初老のスナイパー。同業者のアスランを「若造」と呼ぶ。楯ですら感知出来ないほど、微塵の殺気も発生させず狙撃を行う。
「蝶」を狂信的に崇拝しており、「蝶」について行くことは共に死することも厭わないことであると主張する。ゆえに彼自身が「蝶」にとって危険な存在と認識した者に対しては「蝶」の指示を無視してでも独断で行動することが多く、楯が「蝶」に死をもたらす存在であることを認めていない。そのため、「完璧ならざる世界に対する復讐」を「蝶」に託している点は共通しているもののサイードやアスランとは意見の相違が度々見られる。
レビア
「紋章」の戦士の1人で、アジア風の長身の美女。接近戦に長けており、ナイフやシミター等を武器にして戦う。

マーキュリー刑務所

アルフレッド・ブラガ
マーキュリー刑務所所長。小太りで眼鏡をかけた白人男性。所内を腐敗させて麻薬などを蔓延させ、私腹を肥やしている。ムライの陰謀に加担させられているが、その背景は何ひとつ知らされておらず、ムライに対して反感を抱いている。後にムライに殺害された。
ベルグマン
マーキュリー刑務所の主任看守。腐敗している看守の中で数少ない清廉潔白な人物で、囚人には厳しくしかし公正に接し、時には身を呈して囚人を保護する。同僚から疎まれている様子もある。
ロペス
囚人の1人。受刑者の中では最も古株の老人で、刑務所内のことに詳しい知恵袋的存在。食事に出されたリンゴを集めて酒を作っている。趣味はペーパークラフト。人生のほぼ全てを刑務所で送ってきたため、一般社会に適応できなくなってしまっている。
雁人に対して様々な形で助言を行っていたが、所長に釈放を盾に脅迫されて殺し屋となり、雁人の暗殺を目論んだ。それを雁人に許され、その後甲斐を救う時間を稼ぐため単身ムライの軍勢に立ち向かい、仲間達に見守られながら息を引き取った。
ベン・シスコ
黒人囚人グループのリーダー。プロボクシング・ヘビー級の世界ランカーだったが、ギャラを横領したマネージャーと浮気していた妻を殴り殺して収監された。粗暴な男だが信義に厚い。黒人グループのリーダーとしての面子にかけて雁人とボクシングで決闘、左腕一本で自分に勝利し、戦いの後で自分のことを信じて正体を明かした雁人と「ブラザー」として兄弟分の契りを結び、マーキュリー内で様々なバックアップを行った。
マイク
囚人の1人。性同一性障害が原因のいじめに耐えきれなくなり、殺人を犯して収監された。白人の美少年で、男娼としてマーキュリー内で売春を行い、所長の愛人にもなっている。雁人を籠絡しようとした所長に雁人の夜伽を行うよう命じられたが、雁人がマイクがよこされてきた背景と内心の傷を理解し、手を出さずにいたわってくれたことに惚れ込んで協力者となった。
ホセ
囚人の1人。中年のメキシカン。雁人の隣の房になったことから、何かと世話を焼いている。若い頃から問題を起こしては刑務所と一般社会を行き来し、その気の弱さから「ビビリのホセ」と名乗っているが、仲間を救うためならば命を懸けることも厭わず、雁人が陰謀に巻き込まれていると知った後も友人として協力している。
クラウディオ・サルド
イタリア系の老齢の囚人。コーザ・ノストラで武闘派と言われた幹部で、ミケーレ・マドニアの義兄弟でもある。ベンと雁人の戦いから雁人が「アイギス」の後継者であることに気付き、マイクの護衛を依頼した。マイクの姿と、マフィアである自分に反発して家を飛び出し命を落とした息子とを重ねて見ている。マルコという囚人が常に付き従っている。
ジョナサン・ムライ
囚人の1人で、スキンヘッドに髭を生やした日系人の元軍人。過去にムライとトラブルを起こした人間は例外なく変死を遂げているため、囚人内で孤立している。またブラガ所長に対しても対等以上に振舞っている。
かつて軍の命令を受けてアフガニスタンに潜入、部族をまとめ上げることで戦争を終わらせようとしていたが、軍の意向を受けて派遣された「蝶」に計画を潰されて紋章を刻まれ、マーキュリー刑務所に収監された。「蝶」への復讐のため所内で核兵器を開発、調査に来た甲斐を監禁するなどして秘密裏に3発の核爆弾を完成させたが、側近に裏切られて2発を「蝶」に奪われ、残りの一発で自爆しネバダ州に果てた。

2039部隊

1960年代にアメリカ合衆国国防総省が秘密裏に創設した特殊部隊。数々の破壊工作や情報操作を行い、ジョン・F・ケネディらを暗殺したとも言われている。2039という部隊名は、ケネディの暗殺事件の情報が公開されるとされる年にちなんで付けられたものという。部隊の生き残りの背中には、「蝶」によって刻まれた十字の紋章がある。

ジョナサン・ブレナン
2039部隊隊長。コードネームは「蝶(バタフライ)」。グリーンベレーの元大尉で、国内での任務の途中に拾い上げた男に対して「蟻(アント)」のコードネームを与え、様々な技術を叩き込んだ。後に部隊を捨て石にして自分だけ生き延びようとしたところを「蟻」に殺害され、「蝶」のコードネームを奪われると共に稀代のテロリストを誕生させる直接のきっかけを作ってしまった。
イレーネ・サルドーニ
「毒蜘蛛(タランチュラ)」のコードネームを持つ、近接戦闘のスペシャリスト。部隊が壊滅した後メキシコの裏社会の顔役となり、年老いてからは修道女として町の人々の尊敬を集めている。「蝶」を生み出してしまったことを後悔し、雁人に対し「蟷螂」を紹介するのと引き換えにレオンを護衛し父親に引き合わせることを依頼、追手に立ち向かいオルガに殺害された。
アルフレッド・クイン
2039部隊の狙撃手。コードネームは「蟷螂(マンティス)」。部隊壊滅後、長年に渡りハリウッドに住む者たちを守り続け、ハリウッドにおいては名士として慕われている。「毒蜘蛛」の紹介で訪れた雁人に対し、「蝶」が誕生した経緯を語って聞かせ、声を失い行方不明となっていた養女オルガの護衛を依頼、その直後雁人を襲撃に来たオルガに殺害された。
フランク・ルーデル
情報工作の専門家。コードネームは「蠍(スコルピオ)」。やや軽薄な感じの白人の美男子と言った風貌だったが、年老いた後は顔の半分が焼けただれ引きつった傷痕が残っている。部隊壊滅後、アメリカ政界や国防関係に強い影響力を持つ闇のフィクサーとなった。HSEの大株主でもある。
「蝶」を誕生させたことを後悔している「毒蜘蛛」や「蟷螂」と違って、「蟻」が「蝶」となってから一貫してその信奉者であり、「蝶」の最大の支援者となった。自分に対して何ら意識を向けず雁人に執心し続ける「蝶」に対して激しく嫉妬し、「蝶」をアビスへと収監。その後アビスを制圧し脱獄した「蝶」の逆襲に遭って瀕死の重傷を負い、入院先の病院で「蝶」の過去に関する資料と引き換えに「蝶」の殺害をジーザスに依頼、その場においてジーザスに殺害された。
カシアス・マシスン
「甲虫(ビートル)」のコードネームを持つ、爆破工作の専門家。アフロヘアの黒人青年。部隊壊滅後の消息は不明。

その他登場人物

橿原 十蔵(かしはら じゅうぞう)
「オールドギース」の異名で知られる日本最高の情報屋。ジーザスが「24」を倒した後、「雁の巣」を娘の七瀬に任せ、世界を放浪していた。旅の途中でシチリア島に赴き、戦友ルッソ・アルラッキと共に、雁人が護り屋としての試練を乗り越えたのを見届けた。その後、アルベルト・へスの脅迫により窮地に陥ったゼロを救い、旧友だったカウフマンの教え子のネットワークに呼び掛けてゼロとマリアを匿った。『ジーザス』から引き続き登場。
マリア・カウフマン
東京の、「租界」と呼ばれる外国人居留地で診療所を開いている外科医。20歳前後の若く美しいドイツ人女性だが、その天才的な治療の腕と、患者に対する真摯な姿勢から、「租界」の住人から女神のように慕われている。
ゼロの師匠ルドルフ・カウフマンの娘だが、実はアナと同じく「ゲイザー」の実験によって誕生した、人工的な天才児である。ゼロに対しては恋愛感情を持ちながらも、自分のせいで「無痛症」になったことに対して負い目を感じており、またゼロからルドルフの死に関する衝撃的な事実を告げられ、お互い決別していた。
しかしルドルフの弟子の1人が起こした事件の中で真相を知りゼロと和解、彼の「無痛症」を治療するため共に欧州に渡る。
ライラ
元FBIのアーネスト・ロイドが、NYの「グラウンド・ゼロ」跡で出会った中東系移民の少女。何らかの事情で口がきけないが、彼女との触れあいでロイドは精神的に再起する。しかし彼女の背中にもまた「蝶」の十字架があり、ロイドは彼女の目的と過去を知った上で彼女を救おうとしたが、その死を見届ける結果となる。その後ロイドは彼女の形見であるブローチを預かり、警官でありながらライラと同じく「蝶」と出会い、闇の世界で生きる楯を見極めようとする。
マーティン・リガーディア
FBI捜査官で、「テロ・ハンター」ことアーネスト・ロイドの後輩。新米時代からロイドの下につき、現在では捜査チームを指揮するチーフだが、「9・11」と名乗るテロリストの捜査のために既に退職していたロイドを頼った際、かつての覇気を失い失意の日々を送るロイドの姿を見ることになる。
『暁のイージス』にも登場。米国内での「蝶」のテロにチームを率い対処にあたるものの、不測の事態に苦慮している所にロイドが現れる。
ジャガーノート
日本国内に誘拐をビジネスとして定着させるべく暗躍するプロの誘拐犯。民族風の奇妙な仮面で素顔を隠しており、誘拐計画の企画立案を行う知能犯。だが、組織が未成熟であるため陣頭指揮をとる。事件に関わった楯に興味を抱く。
痩せ型の男で高い戦闘技術を有しているわけではないが、先天性の特殊な皮膚疾患のため指紋・掌紋がまったく無い。
ミオドコーパ(「蝶」の軍隊)
「蝶」の手足となって働く兵士達。「紋章」の戦士とは違い、全員が背中に十字架を持っているわけではない。同じ装備で規律正しく編成され、部隊単位で行動することが多く、「蝶」に心酔している者達である。その一部を除く全員が、各国の軍や警察の特殊部隊出身という精鋭ぞろいである。リーダー格のオコーナーに率いられて「海ほたる」を占拠し、多くの一般人を人質に取る。日本警察が素性を特定できたのは25人だが、本来の総数は不明。劇中の「海ほたる」の戦いにおいて、オコーナー以下殆どの隊員は、楯、ジーザス、ゼロ、SAT(特殊急襲部隊)との交戦で戦死したと思われるが、ミオドコーパ側の生き残りも多く、おそらくその後新たに人数を増やした模様。『暁のイージス』でも多くのミオドコーパが組織されていた。以下では、『闇のイージス』で作中で顔と名前が判明した「ミオドコーパ」のメンバーについて述べる。
ランス・カーマイン
「海ほたる」の戦いの前哨戦で、楯とホテルのレストランの中で対決する。後に判明したところでは元米軍特殊部隊デルタフォースの隊員で、見かけからは想像もつかないが実は女性だったらしい。
オコーナー
上述した通り「ミオドコーパ」の司令官で、「海ほたる」の戦いにおける「蝶」の副官のような立場にあった。
レイブン姉妹
レイブンは、10代前半の少女でありながら白兵戦では「ミオドコーパ」の中で最高の腕を持つとされる。また、その姉妹である同年代の2人の少女も同等の腕前を持つと思われている。覆面を取った姿は、それぞれ黒髪の短髪、ブロンドの長髪と短髪だが、そのうちの誰がレイブンに相当するかは明言されていない。彼女達は「蝶」に拾われ、その「愛情」の代償に「蝶」の命令には絶対的に服従し、その連携プレイで楯に迫る。
フォアマン
元ニューヨーク市警のSWAT隊員という経歴で、レイチェル・天宮・ハンターのHSE社に入社するが、その正体は「海ほたる」の戦いにおける「ミオドコーパ」の生き残りであり、ある護衛依頼を共同で実行中に楯を奇襲するも制圧される。フォアマンは「蝶」の日本での作戦を阻止した楯の暗殺を狙い、ムハンマド・サイードの「フゴー計画」を支援していた。警察に拘留されたフォアマンは、サイードから指示されていた通り計画の全容を自白する。
劉 伊健(リウ・イーキン)
最古にして最大の中国系秘密結社「竜門幇(ドラゴン・ゲート)」の当主。十代の若者でありながら、何十年も闇の世界に君臨してきた者の風格を漂わせる。自らも優れた暗殺者だが、昼間は普通の高校生として新星高校に通い、その生活に幸福を感じている。しかし幼少期からの訓練によるマインド・コントロールで、夜は自らの意志をも離れて組織のために活動する非情の暗殺者となる。また組織内で対立する異母兄弟達に日本人の母親を人質にとられており、当主の座を狙う兄の策略で高校の同級生の少女の暗殺を命じらる。伊健は楯に“自分から”その少女を護る依頼をして楯と戦った後、楯と共に同級生を護り切る。その後、伊健は「自らの意志で竜門幇を支配する《真の竜》になること」を決意する。
加納 俊作(かのう しゅんさく)
高校教師で雁人の恩師。天涯孤独の孤児という境遇が原因で荒んでいた雁人を、命懸けの説得で更生させた。定年退職後、自らの教え子である眉村の護衛を雁人に依頼する。かつて自分自身が原因でかつて5歳の息子を死なせてしまったことがあり、そのため家庭の事情で非行に走っている教え子を見過ごすことができない。
ルドルフ・カウフマン
ゼロの師匠。ドイツで五指に入る心臓外科医だが、工作員養成教官という裏の顔を持つ。またゲイザーのメンバーもあり、人工的に天才児を生み出す実験に関わっていた。実験の結果天才児として生まれたマリアを娘として引き取り、一流の外科医へと育て上げたが、実験の証拠であるマリアを消せという指令が下り、反逆されるのを覚悟でゼロにマリアの殺害を命じ、ゼロに殺害された。
カウフマンに育てられた工作員は「カウフマンの教え子」と呼ばれ非常に結束が固く、たとえ敵対する組織に属していても教え子同士は殺し合わないという不文律がある。その掟を破った裏切り者には、「宝島」になぞらえた絶縁状として黒い円盤(ブラックサークル)を送りつけられ、世界中にいる教え子達から命を狙われることになる。
マックス・オブライエン
『闇のイージス』の番外編『JESUS:兎の檻』に登場。かつてジーザスが「J・バウマン」と名乗っていた頃に所属していた、西側の傭兵部隊『砂漠の兎』の曹長。『砂漠の兎』は、北アフリカのカダス共和国において、アマルガム・ハジム将軍による独裁政権を倒すことに成功するが、その後ハジム政権の残党を掃討する名目の作戦“オペレーション・ジーザス”によって鉱山跡に誘い込まれ、『砂漠の兎』は精製マスタードガスの殲滅攻撃を受ける。マックスはただ1人ガスの猛威を逃れた「J」の前で事切れるが、その時点では生存しており、その後西側大国のバックアップによって生きながらえたハジム政権の収容所で「J」と対面し、「J」が「ジーザス」となる最後のきっかけを与えることになる。
ロザ・アルベニス
メキシコとアメリカ合衆国南部の国境地帯に根を張り、合衆国への密入国斡旋や麻薬密輸などを生業にする組織「メサ・コヨーテ」を率いる一族の娘。ラテン系の色香が漂う情熱的な性格の美女で、自分達こそ国境地帯を治める者と、組織の長の一族としてのプライドを強く持っている。「蝶」の正体を求めてメキシコにやって来た楯と「メサ・コヨーテ」が関わる事件の中で出会う。楯がイレーネ・サルドーニから依頼された護衛対象と共に合衆国へ逃れようとするのを、メキシコ警察の刑事と共に狙う。
レオン・ベルトラン
メキシコ政府の要人暗殺現場を偶然目撃し、その証拠となるPDAを所持していたため命を狙われることとなり、イレーネ・サルドーニの元に匿われていた少年。当初は心を閉ざし護衛を引き受けた楯に対しても反抗的だったが、自分を守るために戦う楯達と行動を共にすることで、自分が置かれている境遇に立ち向かう姿勢になっていく。
サドル・アマルガム・ハジム
かつてのカダス共和国の独裁者、アマルガム・ハジム将軍の子。ハジム将軍が倒れ、民主化したはずの後も混乱が続くカダスにおける様々な勢力の1つ「ハジム派」のリーダーとして、若年ながら擁立されている。しかし、ハジム派の主義に照らし合わせると致命的な弱点を持っている。
アマルガム・ハジム将軍
冷戦時代、様々な氏族や派閥が争う歴史を辿ったカダス共和国を、大国の後ろ盾をもって力で制しようとした独裁者。当初ソ連の援助を受け恐怖政治を行っていたが、西側の傭兵部隊「砂漠の兎」の活躍によって、一度はカダスから追放される。しかし今度は西側大国の支援を受け、「砂漠の兎」を排除した上で再びカダスの独裁者に返り咲く。
そして90年代半ば再び起こった革命戦争の際、ハジムは1人の傭兵に討ち取られる。ハジム将軍の人物像は、ただ大国に擦り寄り権力に座っていたというものではなく、国全体を思うがゆえにあえて大国の支援でもって力の政治を行っていた。自分を討とうとする傭兵に対し「大義をもつ“戦士”(フェダイーン)にしか、自分を討つことを許さない」と言い放ち、その傭兵の戦後のカダスに対する理念を聞き、その大義を認めた上で“戦士”として一対一の決闘を行った結果破れ、長年にわたったハジムの独裁政権は終焉した。
アフマド
CIAがカダス領内にもつ“ブラックサイト”「深淵(アビス)」の囚人。中東系ドイツ人。ルーデルの画策で「アビス」に収容された楯の隣の監房におり、楯に「アビス」の実態や、自分が休暇旅行中に訳も分からずにテロ容疑をかけられ連行されたことなどを話す。
ビースト
「黙示録の獣」を名乗るテロリスト。本名:セルゲイ・葛城・オルソリッチ。日系ユーゴスラビア人で元神父。ボスニア紛争で自分たちの教会が誤爆され、避難していた子供たちが殺された事が政治的理由で握りつぶされた。
カルロス・エスコバル
南米コロンビアに本拠を置く麻薬カルテル“蛇(セルピエンテ)”のアジア圏担当幹部。元FARCの闘士で80年代は実行部隊として活動していたが、組織の方針変更と共に疎外され、兄のロベルトと共にアジア圏に追いやられた。
蒼ざめた馬(ペイルライダー)
元SAT隊員:進藤一樹(しんどう かずき)。「海ほたる」の戦いでの経験から警察を辞職、SATで得たスキルを使い私的な「犯罪者狩り」を繰り返した。
花沢 和夫(はなざわ かずお)
『暁のイージス』終盤より登場する内閣総理大臣。1970年代に防衛庁官僚として米国に出向しており、「蝶」誕生の重大な秘密を握る人物でもある。最終章「東京戦争編」において、「完璧な世界を取り戻す」最後の戦いを進める「蝶」に対し花沢は、「蝶」誕生のきっかけとなった過去の秘密を共有する米国との合同で、楯をも“生贄”にした「蝶」を追い詰める作戦を進めるよう、火山に指示を下す。

脚注

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  1. 彼が作り上げた戦闘兵器級義手・クロムウェルが「蝶」の手に渡り、使用されてしまった。
  2. 後に五十鈴家に入り込んだ際には「雨宮真由」を名乗っているが、偽名を名乗ることも自らの「嘘」によって彼女を苦しめる。
  3. この行動姿勢により、当時の楯の依頼人であり、「紋章」の戦士になったアスラン・カディロフの幼馴染でもあるマリーカ・カザロヴァが命を落とし、捜査を通して楯に協力していた守渡陽子が瀕死の重傷を負い一時は生命の危機に陥る結果を招いた。また、楯を庇うために火山に銃を向け命令違反を犯した甲斐彰一には懲罰の意味を込めてマーキュリーへの潜入捜査を命じ、これもまた一時は生命の危機に陥る結果を招いている。
  4. カディロフ自身の作り出した幻覚と思われていたが、スワロフも目撃した。
  5. YSコミックス「闇のイージス」21巻あとがき を参照。