アキュート・アクセント
テンプレート:ダイアクリティカルマーク アキュート・アクセント (´) は、鋭アクセントともいい、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、カタルーニャ語、イタリア語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語、セルビア・クロアチア語(セルビア語のラテン文字表記・クロアチア語・ボスニア語)、ギリシャ語、アイルランド語、ウェールズ語、アイスランド語、ベトナム語、ハンガリー語、トルクメン語など、おもにラテン文字を用いる言語の表記に用いられるアクセント符号で、ダイアクリティカルマークの一種。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
- フランス語
- accent aigu (アクサンテギュ)という。正書法上音節が e 字で終わっているとき、通常曖昧母音に発音されるか無音になるため、区別のために [[非円唇前舌半狭母音|テンプレート:IPA2]] は é と書く。
- ルクセンブルク語
- フランス語と同様に é で テンプレート:IPA2 を表す。
- イタリア語
- accento acuto (アッチェント・アクート)といい、単語の最後の音節に強勢がある場合などで、その母音が狭い e や o ( 広めの テンプレート:IPA2 や テンプレート:IPA2 ではない テンプレート:IPA2 や テンプレート:IPA2 )のときに付号する(例: perché 「なぜ」、poiché 「~だから」)。 accento grave (アッチェント・グラーヴェ、グレイヴ・アクセントのこと)に比べると用量はずっと少ない。グレイヴ・アクセントも参照のこと。
- スペイン語
- acento (アセント)、もしくは tilde (ティルデ)と呼び[1]、強勢の位置を示すのに使われる。ただし、規則的な位置(最後から2番目の母音など)に強勢がある場合にはこの記号は用いない。この記号を用いるのは不規則的な位置に強勢のある場合(例: máquina 「機械」、最後から3番目の母音に強勢がある)、および同綴語同士の一方に付加することによって区別をつける場合(例: te 「きみを」に対する té 「お茶」)で、記号は正書法上綴りの一部であり、義務的である(インターネットなどでは省かれる場合もある)。ただし、大文字で書くときにはこの記号を省略する場合がある。
- ポルトガル語
- スペイン語と同様、強勢の位置を示すのに使われるが、狭い a, e, o に強勢が置かれるときにはかわりにサーカムフレックスを使用する。
- カタルーニャ語
- アキュートまたはグレーブ・アクセントによって強勢の位置を表す。e と o に関してはアキュート・アクセントのついたものが狭い母音 テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を、グレーブ・アクセントのついたものが広い母音 テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。a にはグレーブ・アクセントのみ、i, u にはアキュート・アクセントのみがつく。
- ウェールズ語
- á, é, í, ó, ú, ẃ, ý は、単語の最後の音節に使われて、そこに強勢があることを表す。また、ẃ は、半母音ではなく母音であることを示すために使われることもある。
- ポーランド語
- akcent ostry (アクツェント・オストルィ)といい、ś, ź, ć, dź, ń は s, z, c, dz, n のそれぞれ口蓋化した音(軟音、 シャ行、ジャ行、チャ行、ニャ行のような子音)を表す。また ó は u と同音 テンプレート:IPA2 で、かつて「音の狭さ」を表していた用法の名残。なお、“暗いL”( テンプレート:IPA2 に近い音)を表す ł の斜線も含め、テンプレート:要出典範囲。
- ソルブ語
- ポーランド語と同様に ś, ź, ć, dź, ń が使われる。ś, ź は下ソルブ語でのみ使用する。
- モンテネグロ語
- ć, ś, ź は、口蓋化子音 テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。
- セルビア・クロアチア語
- ć は、口蓋化子音 テンプレート:IPA2 を表す。ほかに á, é, í, ó, ŕ, ú が上昇調長母音を表すために使われることがあるが、正書法上はアクセントは表記されない。キリル・アルファベットでも使われるが、Unicodeの合成済み文字はラテン・アルファベットのもののみが定義されている。
- スロベニア語
- á, é, ẹ́, í, ó, ọ́, ŕ, ú が上昇調長母音を表すために使われることがあるが、正書法上はアクセントは表記されない。
- リトアニア語
- 正書法上は使用しない。下降調の高低アクセントを持つ長い音節を表すのに用いられる。辞書や学習書・研究書・およびアクセント記号なしではあいまいになる語を区別する目的で使用される。
- チェコ語
- á, é, í, ó, ú, ý は各母音の長音を表す。
- スロバキア語
- á, é, í, ĺ, ó, ŕ, ú, ý は各母音の長音を表す(スロバキア語では l や r も音節主音になり、長短を区別する)。
- ハンガリー語
- á, é, í, ó, ú は各母音の長音を表す。なお、ö, ü の長音はダブルアキュートを用いて ő, ű としている。
- アイルランド語
- á, é, í, ó, ú は各母音の長音を表す。ただしすべての長母音にアキュート・アクセントがつくわけではない。
- アイスランド語
- 古アイスランド語では、長音を表す。現在のアイスランド語では、記号のない a テンプレート:IPA2, e テンプレート:IPA2, i / y テンプレート:IPA2, o テンプレート:IPA2, u テンプレート:IPA2 に対するそれぞれ別の音、á テンプレート:IPA2, é テンプレート:IPA2, í / ý テンプレート:IPA2, ó テンプレート:IPA2, ú テンプレート:IPA2 を表すのに使われている。
- グリーンランド語
- 1973年以前の旧正書法では á í ú があり、後続する子音が長子音であることを表していた。現在は子音字を重ねて記す。
- トルクメン語
- ý は半母音の テンプレート:IPA2 を表す。これに対してアキュート・アクセントのつかない y は中舌母音の テンプレート:IPA2 を表す。
- ベトナム語
- サックという声調を示す。á, ấ, ắ, é, ế, í, ó, ố, ớ, ú, ứ, ý がある。
- 中国語
- 拼音で第二声(陽平)を示す声調記号として用いられる。á, é, ế, í, ḿ, ń, ó, ú, ǘ がある。
キリル・アルファベット
ギリシャ・アルファベット
ギリシャ語は古典時代には高低アクセントを持ち、伝統的にアキュート(οξεία オクシア)・グレーブ(βαρεία ヴァリア)・サーカムフレックス(περισπωμένη ペリスポメニ)の3種類のアクセント記号を使って書き分けられてきた。しかし現代ギリシャ語では強勢以外を表す意味がなく、20世紀後半になるとアキュートアクセントだけを使用するようになった(1982年に公式の正書法として規定される)。
Unicodeでは、はじめ現代ギリシャ語のみに対応していたため、アキュートアクセントつきの母音字のみが定義されていたが、後に他のアクセントのついた字も追加された。しかし、追加した部分にもアキュートアクセントつきの母音字が含まれていたため、まったく同じ字が2つの符号位置を持つことになってしまった。たとえば α にアキュートアクセントのついた ά は、U+03AC (GREEK SMALL LETTER ALPHA WITH TONOS) と U+1F71 (GREEK SMALL LETTER ALPHA WITH OXIA) の2か所に定義されている。いくつかのフォント(例えば Tahoma)では、前者がアキュートアクセントと少し異なる形にデザインされている。
音声記号
- 国際音声記号でも声調記号として用いられるが、ベトナム語や拼音とは異なり、高平板を示す。
- アメリカの言語学界では音声記号として、声調だけではなく、第1強勢(最も強い強勢)を示すのにも用いることがある[2]。2011年現在、日本で発行されている英語の辞典や教科書などでも第1強勢を示す場合が多く、音声記号や英語での単語表記と組み合わせて用いられる。なお、国際音声記号では第1強勢を示す記号は[ˈ]である[3]。
その他
ローマ帝国時代には、ラテン語の長母音を表すのにアペックス(英語版記事)と呼ばれるアキュート・アクセントによく似た記号が使われることがあった。現在ではアペックスは用いられず、長母音を区別する必要があるときにはかわりにマクロンを使用する。
ś は、サンスクリット・ヘブライ語など、いくつかの言語の翻字に用いられる。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称
テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode |
---|
脚注
テンプレート:ラテン文字- ↑ スペイン語では他のアクセント符号を用いないので、単に「アセント」と呼ぶ。アセントとティルデ (~) は似た字形になりやすく、総称して「ティルデ」と呼ぶことが一般的である。
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 第1強勢がある音節に前置する。