足立美術館
足立美術館(あだちびじゅつかん)は、島根県安来市にある、近代日本画を中心とした島根県の登録博物館。運営は、公益財団法人足立美術館。130点におよぶ横山大観の作品と日本庭園で有名。
概要
地元出身の実業家・足立全康(あだちぜんこう、1899年 - 1990年)が1970年(昭和45年)、71歳のときに開館したものである。質量ともに日本一として知られる大観の作品は総数130点にのぼり、足立コレクションの柱となっている。大観のほかにも、竹内栖鳳、橋本関雪、川合玉堂、上村松園ら近代日本画壇の巨匠たちの作品のほか、北大路魯山人、河井寛次郎の陶芸、林義雄、鈴木寿雄らの童画、平櫛田中の木彫なども収蔵している。
足立全康は裸一貫から事業を起こし、一代で大コレクションをつくりあげたが、その絵画収集にかける情熱は並外れたものであったらしく、数々の逸話が残されている。なかでも大観の名作『紅葉』と『雨霽る』(あめはる)を含む「北沢コレクション」を1979年(昭和54年)に入手した際の武勇談は有名である。
足立美術館のもう一つの特色は、その広大な日本庭園である。庭園は「枯山水庭」「白砂青松庭」「苔庭」「池庭」など6つに分かれ、面積5万坪に及ぶ。全康自らが、全国を歩いて庭石や松の木などを捜してきたという。 専属の庭師や美術館スタッフが、毎日手入れや清掃を行っていて「庭園もまた一幅の絵画である」という全康の言葉通り、絵画のように美しい庭園は国内はもとより海外でも評価が高い。 日本庭園における造園技法のひとつである借景の手法が採られ、彼方の山や木々までも取り込んで織り成す造形美は秀逸である。
米国の日本庭園専門雑誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』が行っている日本庭園ランキング(Shiosai Ranking)では、初回の2003年から2012年まで、10年連続で庭園日本一に選出されている[1]。2012年のランキングは日本国内約900箇所の名所・旧跡を対象にしたもので、「庭そのものの質の高さ」「建物との調和」「利用者への対応」などが総合的に判断されたもので、とくに細部まで行き届いた維持管理が評価されている[2]。また、フランスの旅行ガイド『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』や『Guide Bleu Japon』にて、それぞれ三つ星(最高評価)を獲得している。
主な収蔵品
- 横山大観『無我』(1897年)
- 横山大観『紅葉』(1931年)
- 横山大観『雨霽る』(あめはる)(1940年)
- 竹内栖鳳『潮沙和暖』(1934年)
- 富岡鉄斎『阿倍仲麻呂在唐詠和歌図』(1918年)
- 速水御舟『新緑』(1915年)
- 村上華岳『観世音菩薩 巌上拈花之像』(1935年)
- 上村松園『待月』(1944年)
- 橋本関雪『夏夕』(1941年)
- 川端龍子『愛染』(1934年)
- 北大路魯山人『金らむ手津本(金襴手壷)』(1945年)
- 河井寛次郎『三色扁壷』(1963年)
- 大橋翠石『猛虎の図』
足立美術館賞
院展の作品から、優秀かつ足立美術館にふさわしい作品を1点選考するもので、選ばれた作品は、足立美術館が買い上げる[3]。
1995年、院展において創設。2005年からは、春の院展にも同賞が設けられている。
回(年度) | 受賞者 | 受賞作 |
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第1回足立美術館賞(1995年) | 西田俊英 | 「プシュカールの老人」 |
第2回足立美術館賞(1996年) | 前原満夫 | 「探梅」 |
第3回足立美術館賞(1997年) | 岸野香 | 「呼吸」 |
第4回足立美術館賞(1998年) | 井手康人 | 「一生補処」 |
第5回足立美術館賞(1999年) | 小田野尚之 | 「ひととき」 |
第6回足立美術館賞(2000年) | 吉村誠司 | 「水族館」 |
第7回足立美術館賞(2001年) | 穂苅春雄 | 「天上の家族」 |
第8回足立美術館賞(2002年) | 宮北千織 | 「うたたね」 |
第9回足立美術館賞(2003年) | 倉島重友 | 「穣」 |
第10回足立美術館賞(2004年) | 村岡貴美男 | 「水底の部屋」 |
第1回春の足立美術館賞(2005年) | 吉村誠司 | 「秋野」 |
第11回足立美術館賞(2005年) | 角島直樹 | 「渡岸を待つ」 |
第2回春の足立美術館賞(2006年) | 村上裕二 | 「ミャーゴの港から」 |
第12回足立美術館賞(2006年) | 西田俊英 | 「吉備の鶴」 |
第3回春の足立美術館賞(2007年) | 松村公嗣 | 「桂林山水」 |
第13回足立美術館賞(2007年) | 山田伸 | 「幻影」 |
第4回春の足立美術館賞(2008年) | 守みどり | 「逢のいろ」 |
第14回足立美術館賞(2008年) | 中村譲 | 「海陸風」 |
第5回春の足立美術館賞(2009年) | 村岡貴美男 | 「窓の白い手」 |
第15回足立美術館賞(2009年) | 山本浩之 | 「苑」 |
第6回春の足立美術館賞(2010年) | 村岡貴美男 | 「イブの庭」 |
第16回足立美術館賞(2010年) | 大野逸男 | 「柳生道」 |
第7回春の足立美術館賞(2011年) | 前田力 | 「雨あがる」 |
第17回足立美術館賞(2011年) | 吉村誠司 | 「陽光」 |
第8回春の足立美術館賞(2012年) | 小田野尚之 | 「映」 |
第18回足立美術館賞(2012年) | 番場三雄 | 「タルチョ舞う中で」 |
第9回春の足立美術館賞(2013年) | 中村譲 | 「夜間操業」[4] |
第19回足立美術館賞(2013年) | 井手康人 | 「百花為誰開」 |