財前五郎

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テンプレート:複数の問題 テンプレート:物語内容のみ テンプレート:Pathnav 財前 五郎(ざいぜん ごろう)は、山崎豊子小説白い巨塔』に登場する架空の人物。

概要

同作の小説の主人公。浪速大学病院第一外科助教授、後に第一外科教授。

タンホイザー序曲(ワーグナー作曲)がお気に入りであり、鼻歌まじりに手術のイメージトレーニングを行う。

人物

家族

岡山県和気郡生まれ。実母は黒川きぬ。小学生の時に小学校教諭をしていた父に死なれ、母の内職と父の遺してくれた財産で高等学校まで進み、篤志家である郷里の医師、村井清恵の支援で浪速大学医学部に入学(2003年版では、岡山県立和気高等学校を卒業、浪速大学大学院医学研究科博士課程修了となっている)。

苦学生ながら奨学金を得て猛勉強を重ね、恩人・村井の知己で、五郎の実力を高く評価した大阪医師会の実力者・財前又一の娘・杏子の婿養子に迎えられ財前五郎となってからは、財前産婦人科医院という強力なスポンサーと実力で助教授にまで上りつめる。義父の建ててくれた西宮市夙川の豪邸に住んだ。杏子との間に二男(一夫、富士夫)がおり、息子たちには愛情を注いでいる(2003年版では子供がいない設定)。また、有給助手となって以降、貴重な給料を割いて故郷の母・きぬへ仕送りを続けた。

愛人であるバー・アラジンのホステス・花森ケイ子は女子医大中退であり、財前が心を許せる数少ない相手のひとりである。大学時代からの同期生である里見脩二とは、進む道も考え方もまったく対照的であるが、お互いよきライバルとして、またよき理解者として接している。

教授選~医療裁判・学術会議選

食道噴門癌を専攻し、食道・胃吻合術を得意とする財前は「食道外科の若き権威者」と評され、手術の腕前は師である教授東貞蔵の腕を遥かに凌ぐといわれた。

その実力から、財前は周囲から次期教授就任を確実視されていたが、野心家であくの強い財前が、しばしば東教授を差し置いてのスタンドプレーを行ったことなどが、東の矜持を逆撫でする。財前の存在を不快に感じた東は、退官後の自分の影響力低下を危惧する思いなどから、母校・東都大学外科教授の船尾徹に候補者の推薦を依頼、財前排除を図る動きを見せるようになる。これにより船尾の弟子で心臓外科の大家で、東の長女・佐枝子の配偶者に期待された菊川昇が候補となり、財前を快く思わない整形外科の野坂教授も財前の前任者・葛西博司を次期教授に推し、これらが財前への刺客として送り込まれることになる。財前の教授就任のため、義父・又一を中心とする後援者たちは凄まじい政治工作を展開、医局員の行き過ぎた妨害作戦や病理学教授・大河内への懐柔行為などが裏目に出るなどもしたが、財前は僅差で教授選挙に勝利、念願の教授の椅子を手に入れる。

ところが、自らが執刀した初期の噴門癌患者佐々木庸平が執刀後の訪独中に死亡したため、遺族から医療訴訟を起こされたが、一審では勝訴する。その傍らで、鵜飼医学部長の勧めで学術会議選挙に立候補する。選挙では見事当選を果たすが、控訴審では一審とは異なり敗訴する。しかも財前の体は胃癌[1](2003年版では肺癌[2])に蝕まれており、師である東貞蔵執刀の下、手術が行われたが、すでに手術不能の状態まで進行しており、何もせずに縫合された。

財前の最期

緘口令が敷かれる中、財前の病状は次第に進行し、肝転移による黄疸が出たことによって自らの病を悟ると、里見を呼び自らの病について問いただすが答えてもらえなかった。本物のカルテ等を見せてくれるよう鵜飼医学部長らに頼んでほしい旨、里見に依頼する(1978年版では、財前は里見に向かって自分の過ちを認め、里見の手を取って悔恨の涙を流した)。

なお、2003年版では、鵜飼医学部長らは財前に初期の肺がんであることを公表したが、これはCT検査による結果によるもので末期がんであることを隠された。しかし、抗がん剤を投与に疑問を抱き、右手に物を掴めないほどの痺れが生じたことで脳転移に気付く。その夜、里見が勤務する千成病院へ向かい、里見の診察の末、末期がんであることを告げられている。

それから間もなく財前は症状が悪化し死去。枕の中から財前が残した手紙が発見され、最高裁への上告理由書および大河内教授への自身の癌所見書が見つけられた。なお、1978年版では医師としての良心に目覚めた財前が里見へあてた感謝の手紙、2003年版では前二者を折衷した内容になっていた。これらの手紙に共通する文面は、「癌専門医でありながら手術不能にまで進行した癌で死ぬことを心より恥じる」という財前の無念さが滲んだ言葉であった。

演じた俳優

  • 田宮二郎(1965年 - 1966年・ラジオドラマ、1966年・映画、1978年 - 1979年・テレビドラマ)
  • 佐藤慶(1967年・テレビドラマ)
  • 村上弘明(1990年・テレビドラマ)
  • 唐沢寿明(2003年 - 2004年・テレビドラマ)

脚注

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テンプレート:白い巨塔
  1. 小説執筆当時の癌死亡率の第1位
  2. 2003年当時の癌死亡率の第1位