警告色

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警告色(けいこくしょく、テンプレート:Lang-en-short)は、生物がもつ派手な体色のことをいう。警戒色危険色とも言う。主に有毒の生物に見られる色彩であり、捕食者など自分に害を及ぼす他の生物に対する警告の役目を担う。動物植物を問わず、さらには人間の社会生活にまで広く応用されている。

概要

多くの生物は保護色を備えたり、他の物に偽装する擬態を行うなどして、外敵から身を隠している。それに対し、警告色を持つ生物はあえて外敵に目立ちやすい体の色や模様を持つことにより、自身に手を出すと危険が及ぶぞと警告を発し、自身の安全を確保するものと考えられている。それらの多くは、実際に毒を持っていたり、不快な味や臭いの元となる化学物質を含んでいる。

これはわざと目立つことで、嫌な思いと体色を結びつけて覚えこませることが目的であると言われる。つまり、最初に出会ったときに手を出して不快な記憶が残ると、捕食者の攻撃意欲が低下し、警告側が捕食されづらくなるという戦略である。類似の現象としては有毒な動物が目立つ姿勢をしたり、耳障りな音を立てる例がある。これらも捕食者にとって見つかりやすいようになることで、相手に敬遠させるものと思われる。

なお、用語としては警戒色が古く、現在でもこちらが広く使われるようである。しかし、英語のWarning colourationに対する訳語としては不自然である点などから、現在は専門分野では警告色を正しい訳語としている。

具体例

警告色を持つ代表的な動物にはテントウムシアカハライモリヤドクガエル科サンゴヘビ属ヒョウモンダコなどがいる。

このような動物の中には、敵に襲われたときに特に目立つ部分をさらに目立たせるような行動を取るものがいる。たとえばイモリやスズガエルは敵に襲われるとひっくり返り、派手な色をしている腹面をさらけ出す。これは警告色の効果をさらに高めるための行動と考えられる。

擬態との関係

アシナガバチスズメバチは、いずれも黄色縞模様である。このように、有毒な種が複数いて、それらが共通した派手な模様を持っている場合、これらをミュラー擬態という。これは、複数種が同じ姿をすることで、敵に覚えてもらうモデルの数が少なくなり、また痛い目をする体験の確率も相対的に高くなることが利点であると考えられる。

また有毒ではないものの、有毒な動物の警告色に自分の体色を似せることで、撃退の効果を肖ろうとしている形態もいる。これをベイツ型擬態(標識的擬態)という。トラカミキリウシアブなどがハチに似せ、あたかも毒を持っているように見せかけることに成功している。ハナアブはどこにでも生息する大変身近な昆虫で、花に飛来したり、飛ぶ際に「ぶんぶん」という音を放つなど習性や外見がミツバチと似ている。よく花壇などで「ハチがいる」などと警戒されるものの多くは実はハナアブであったりもする。

人間工学への応用

ファイル:踏切警報機.jpg
警告色で彩られた踏切

警告色は、人間工学や身近な分野でも利用される。例えば、道路用の信号機では、「停止」を意味する色にを、「もうすぐ停止信号に変わる」を意味する色に黄色を用いる。鉄道信号の場合、赤は「停止」であるが 、黄色は「注意」を意味し、黄色を現示している信号機の先が停止現示、もしくは警戒現示である場合を示す。先の信号の現示に対する注意とともに、停止現示の信号機の過走防止のための速度制限を示している。天気予報でも、警報に赤を、注意報に黄色を用いる 。これには、赤はから「危険」を連想させる性質から、黄色は太陽を連想させ、暗い所でも良く見える特質から「注意」を連想させる性質から、使用されている。

又、「赤と」や「黄色と」の組み合わせが用いられる例も多い。これは、白が赤さを引き立たせている点や、黒が黄色さを引き立たせている点に起因する。踏切工事現場、工場で危険な機械が動作しているエリアなどでは、黄色と黒の組み合わせで危険区域である事を示している[1][2]。又、豪雪地帯では、道路脇に赤と白の組み合わせの棒を立てる事で、積雪の高さを示している。

写真

脚注

  1. 「赤色・白色」踏切遮断かんの実証実験について - 静岡鉄道 2007年2月9日
  2. テンプレート:PDFlink

関連項目

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