聖路加国際病院

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テンプレート:医療機関 聖路加国際病院(せいるかこくさいびょういん)は、東京都中央区にある病院である。事業主体は、学校法人聖路加国際大学。「せいろかこくさいびょういん」とも俗称される。

概要

東京・築地にある大規模総合病院であり、東京都心部では最もよく知られる病院のひとつである。入院診療では現在、病床の半数が差額ベッドであり、将来的には全室が差額ベッドになる予定である。人間ドックの開設などにより予防医療の重要性を啓蒙するほか、「成人病」の呼称を「生活習慣病」に改めるよう提言するなど、医療行政にも積極的に関与しているテンプレート:要出典

1902年に設立された財団法人の初代理事長は実業家・渋沢栄一が務めていたほか、戦前の旧病棟の建設にあたっては多額の資金を下賜されるなど、皇室との関係もあった。名誉院長病院にはメディア出演や本の出版などで知られる日野原重明が就任しているほか、「医療社会事業科」が設置されて医療ソーシャルワーカーが常駐している[1]。関連組織として、財団法人聖ルカ・ライフサイエンス研究所を併設している。

いわゆる「病院ランキング」などでは、しばしば上位に評価されるほか[2][3][4]研修医の初期臨床研修施設としても知られ、虎の門病院など並んで日本で最も医学生の人気の高い研修先のひとつとなっている[5]

2012年7月23日、国際的な医療施設認証機関であるJCI(テンプレート:Interlang)の認証を取得した。認証された施設は聖路加国際病院、聖路加国際病院附属クリニック予防医療センター、聖路加産科クリニック、聖路加訪問看護ステーションの4つの事業体であり、複合医療施設の同時認証は国内初、病院としての認証取得はテンプレート:要出典範囲[6]国内3番目となった。[7]

2014年4月、聖路加看護大学聖路加国際大学に改組するのに伴い、元の設置者一般財団法人聖路加国際メディカルセンタ-から学校法人聖路加国際大学が事業譲受し主従関係を逆転して聖路加国際大学附属の病院となった。

施設

新病院棟

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1992年竣工の新病院棟

この区域は「第2街区」と呼ばれ、公道を挟んで建つ「第3街区」聖路加タワーとは、地上2階レベルで屋根付きの連絡橋によって結ばれている。新病院は1992年の竣工で、アメリカ合衆国のユタ州ソルトレイクシティにあるセントマークス病院(1973年)をモデルに[8]日建設計によって設計された。病室は患者のプライバシーへの配慮と感染防御の観点から、小児病棟、緩和ケア病棟、三つの集中治療室を除いた500床の病床のすべてが個室となっている。

新病院に移転すると共に、薬品・物品の搬送は、それまでの看護師・薬剤師に代わって、専門の係員によって行われることになった(SPDシステム)。電子カルテの導入も積極的に行われ、2003年導入の第三次システムではほぼペーパーレス化が実現された。

また、新病院は大規模災害など大量の被災者発生の際には、機能を臨時拡張して医療処置を遂行できるよう設計されている。具体的には、施設内のあらゆる壁面に酸素供給口が設けられており、チャペル礼拝堂)・ロビーホール廊下などでの救急救命医療処置が可能になっているが、これは当時の常務理事である日野原重明が、スウェーデンの病院に同様の設計があることから提言して実現したものである[9]日野原がこの設計を取り入れたのは、東京大空襲の経験による[10]。建設当時は無駄との批判もあったこの機能は、新病院完成から3年後の1995年に発生した地下鉄サリン事件の被害者診療時で大いに活用され、他の大病院でも採用されるようになった。

新病院では、テレビ局などのドキュメンタリー取材の受け入れも多いが[11][12]、病院の施設がテレビドラマや映画の撮影などのロケに提供されることはない。

聖路加タワー

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聖路加タワー(隅田川方向より)

このツインタワー部分は「第3街区」と呼ばれ、病院の敷地を構成する3街区のうちの最も隅田川寄りの街区に建設された超高層ビルディング形態の棟。47階建てと38階建ての高低差がある特徴的なデザインのツインタワー構造で東京湾岸のスカイラインを造形する代表的な建築物として知られている。

47階建ての棟の3・4階には予防医療センター(人間ドック)があり、その上部はオフィスフロアとして賃貸されている。かつて、大手広告代理店電通の大半の部署が汐留に新本社ビルを完成させる前にこの部分に入居していた。最上部には展望レストラン「Luke」(聖ルカの意)があり、また、日本テレビフジテレビ定点観測カメラが東京湾岸の状況を中継するために設置されている。また、フジテレビと日本テレビのFPU基地が設置されている。

38階建ての棟は、下から約4分の3は医療介護付き居住施設の「聖路加レジデンス」で、約4分の1の最上部には銀座クレストンが入居している。

旧病院棟の保存部分を含む区域

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1933年竣工の旧病院棟の保存部分

この区域は、「第1街区」と呼ばれる。保存部分はアントニン・レーモンドヤン・ヨセフ・スワガーベドジフ・フォイエルシュタインの3名のチェコ建築家によって設計が進められたネオ・ゴシック様式の建物で、途中で設計者がJ.V.W.バーガミニーに変更されている。 創立者トイスラーの出身地であるボストンマサチューセッツ総合病院をイメージしてデザインされた。

礼拝堂のステンドグラスは、予算の関係から複雑な聖人画などは作れなかった。逆に抽象的な図像でキリスト教の殉教の歴史を象徴する画が配されている。漁船や魚の図像は築地市場のある土地を反映したものだが、それは同時に魚がローマのキリスト教弾圧の時代にキリスト教徒同士の合い言葉であり、漁船が聖ペトロ(人をすなどる漁師)を表している。

礼拝堂の前には床のタイルにハエネズミなど、伝染病を媒介する動物、及びアラジンの魔法のランプ(迷信を象徴するもの)がレリーフとして彫られており、これらを足で踏みつける事が出来るようになっている[13]

新館に移転後はオルガンなどが設置され、現在は聖公会による礼拝や聖書朗読会、オルガンコンサートなどが行われている。また、日に3度(8:30・12・18時)鐘楼から賛美歌が流れ明石町一帯で聴く事が出来る。

かつて病棟があったときには、各階病棟から礼拝堂(旧館チャペル)に出ることができた。旧館には現在、入院病棟は無い。

現状

現在は中央部分(外部はエントランス部分から十字架が立つ尖塔にかけて、内部は礼拝堂ロビー・事務室・トイスラークリニック・国際外来・その他)が保存されている。十字架の尖塔と礼拝堂の保存部分を中央にして左右に保存部分とデザインを整合させて設計されたウイング状の棟があるがこの部分は新築である。左側のウイングの大部分は聖路加看護大学の施設となっており、右側のウイングには「小児総合医療センター」などの施設がある。かつては右側ウイング内に「予防医療センター(人間ドック)」があったが現在は超高層ビル棟(聖路加タワー)の3・4階に移転している。

解体計画

中央区明石町の3街区にわたる病院敷地全体の再開発事業(聖ルカ・ライフサイエンスセンター構想)の開始にあたり、当初計画では旧病院棟の全体が取り壊される予定であった。しかし、日本建築学会アントニン・レーモンドの設計による礼拝堂(旧館チャペル)の文化的重要性を理由に保存の要請をした結果、設計変更が行われて旧病院棟のチャペルを含む中央部分は内外観ともにレーモンドの設計による姿が忠実に保存修復されて全体の象徴になっている。なお、チャペル及び付属する旧病棟は、居留地時代の名残を残す明石町のシンボルとして、東京都選定歴史的建造物の選定を受けている。

病院の名称

病院名は、使徒パウロの協力者の一人であり、新約聖書福音書の一つである『ルカによる福音書』の著者とされる聖人ルカの漢字表記に由来する。聖ルカは、『コロサイ人への手紙』で「親愛なる医者のルカ」(4章14節)と呼ばれていることから、キリスト教圏ではしばしば病院の名前に使われる[14]

聖路加国際病院の名称における「聖路加」の正式な読みは「せいるか」である[15] 一方、「せいろか」の読みも定着しており、職員も以前はそのように発音していることがあったが、近年では積極的に正式名を用いており、テレビ報道でも正式名称で紹介されることが多くなっている。同様に、関連施設である聖路加看護大学[16]聖路加ガーデン聖路加レジデンス等も同様に「せいるか」の発音が正式である[17]

歴史

聖路加国際病院理は、1933年にルドルフ. B. トイスラーが語った、「キリスト教の愛の心が 人の悩みを救うために働けば 苦しみは消えて その人は生まれ変わったようになる この偉大な愛の力を だれもがすぐわかるように 計画されてできた生きた有機体が この病院である」の言をその理念としている。

診療科

  • 一般内科
  • 呼吸器内科
  • 腎臓内科
  • 血液内科
  • 代謝・内分泌内科
  • 神経内科
  • 心療内科
  • アレルギー・膠原病科(成人、小児)
  • 感染症科
  • ハートセンター
    • 循環器内科
    • 心臓血管外科
  • 消化器センター
    • 消化器・一般外科
    • 消化器内科
    • 予防医療センター内視鏡科
  • 小児総合医療センター
    • 小児科
    • 小児外科
    • Well baby Clinic(乳幼児健診)
  • 胸部外科
  • 整形外科
  • 形成外科
  • ブレストセンター
    • 乳腺外科
    • 乳腺腫瘍内科
    • 放射線腫瘍科
  • 女性総合診療部
    • 一般婦人科
    • 女性外科
    • 周産期科(旧・産婦人科)
  • 生殖医療センター
  • 皮膚科
  • 泌尿器科
  • 形成外科・美容外科
  • 眼科
  • 脳神経外科
  • 歯科口腔外科
  • 耳鼻咽喉科
  • 精神科
  • 救命救急センター
  • 国際外来
  • 放射線科
  • 緩和ケア科
  • 病理診断科
  • 放射線腫瘍科
  • 麻酔科
  • 人間ドック科
  • 遺伝診療部
  • 臨床検査科
  • 健診内科
  • 腎センター
  • リハビリテーション科
  • 訪問看護科

各種認定

関連項目

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:東京都災害拠点病院
  1. 「医療社会事業科」については、日本の医療ソーシャルワーカーの第1号は浅賀ふさで、1929年、アメリカで学んだ浅賀が聖路加国際病院に勤務したことから日本の医療社会事業の歴史が始まったという背景がある。明治期には困窮者に医療を提供しつづけたことで明治天皇から褒状と花輪が贈られた
  2. 日経ビジネスが毎年主催する「良い病院ランキング」でたびたび第1位になるテンプレート:要出典
  3. 週刊ダイヤモンド2007年4月7日特大号の特集記事内「8000人が選んだベスト病院ランキング」総合第1位
  4. 行きたい病院・満足した病院ランキング goo Researchと読売ウィークリーの調査:「行きたい病院」2位、満足度3位(いずれも東京都内)
  5. 週刊医学界新聞第2495号 研修医採用戦線異常なし?
  6. JCIホームページ(認定機関一覧)
  7. 国際的な医療機能評価(JCI)認証取得
  8. ルイス・G.レッドストーン編 田中一夫訳 『病院と医療施設』 啓学出版 現代建築集成
  9. 聖路加国際病院 救命救急センター『業績集 1997-2007』
  10. 築地地区への直接の空爆は無かったが、隣接する新富町地区の爆撃による爆風でチャペルのステンドグラスが吹き飛ぶのを目の当たりにしたと院内誌で述べている
  11. NHKスペシャル『こども 輝けいのち』ISBN 4-1408-0813-6
  12. アンテナ22#2006年 「実録 ナースのお仕事・救命センター新人奮闘記」
  13. 藤森照信『建築探偵 奇想天外』朝日文庫 ISBN 4-02-261181-2
  14. 参考:en:St Luke's Hospital
  15. 聖路加国際病院は東京都知事を主務官庁として特例財団法人としての登録名称には、「セイルカコクサイビヨウイン」という振り仮名となっている。
  16. 文部科学省等に「セイルカカンゴダイガク」という読みで登録されている
  17. 同レジデンスを運営している株式会社聖ルカレジデンスが「ルカ」を片仮名表記している
  18. 18.0 18.1 18.2 18.3 18.4 18.5 18.6 18.7 18.8 100周年記念誌 『聖路加国際病院の一〇〇年』 聖路加国際病院
  19. 後に東京都が設立する築地産院とは別である
  20. 病院は同年を公式な設立年としている
  21. がん診療連携拠点病院・都認定がん診療病院 東京都福祉保健局
  22. JBCT 認定研修施設一覧
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