空燃比

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テンプレート:出典の明記 空燃比(くうねんひ、Air / fuel ratio)とは、内燃機関において、混合気空気質量を燃料質量で割った無次元数である。A/F(エーバイエフ)やAFRと略される。燃費排気ガス成分の改善など、燃焼性能を制御するために用いられる。

概要

混合気中の酸素と燃料が、過不足なく反応する時の空燃比を理論空燃比という。例えば、ガソリン1gの燃焼には空気14.7gが必要であり、ガソリンにおける理論空燃比は14.7となる[1]。理論空燃比よりも濃い混合気の状態を混合気がリッチであるといい、薄い状態をリーンであるという。理論空燃比のことをストイキオメトリー(ストイキ)ともいう。

乗用車用ガソリンエンジンの実際の空燃比

今日のガソリンエンジンでは排気ガス浄化のために三元触媒が使われており、これが有効に機能するためにはストイキ近傍で燃焼させることが必要である。

しかし、常にストイキで燃焼しているわけではなく、燃費に有利で有害排出物質が少なくなるリーン傾向の経済空燃比と、出力を稼ぎやすく発進時や加速時に使われるリッチ傾向の出力空燃比[2]がある。負荷の状況によって空燃比は使い分けられており、常にその値は変化している。

さらに、高回転化したエンジンでは、熱負荷の軽減(冷却)のためリッチ傾向で運転されることが多い。

  • ストイキのまま回転数を上昇させると、たとえ点火時期を早めても排気バルブの開弁後かなりの時間にわたり燃焼が終了せず、アフターファイアーを生ずる。
  • 高出力時には発生する熱量そのものも膨大となり、シリンダー、シリンダヘッド内壁面や、バルブシートその他からの放熱だけでは間に合わなくなる。結果として、主に排気バルブやピストンの溶損等を生じる。

これを防ぐため、空燃比をかなりリッチ傾向の設定とする。これにより燃焼速度が高くなり、アフターファイアーが緩和され、また、燃焼しきれないガソリンの気化潜熱により、バルブ周りやシリンダ内が冷却される(エキゾーストに排熱される)。しかし、この状態での運転は、燃費が悪化するのはもとより、三元触媒が働かないなどの弊害もある。

このため高速連続運転の比率の高い欧州車等の一部の乗用車では燃費改善のため、

  • 金属ナトリウム封入排気バルブの採用(バルブ溶損の防止)
  • シリンダー壁面材料を高い熱伝導率を持つアルミ等へ変更(シリンダ壁面放熱性の向上)

等を行い、ガソリン過剰を少しでも改善させる方策が採られているが、技術上の問題やコストの観点から、多くの乗用車に普及するまでには至っていない。

さらに、冷間始動時にも理論空燃比が使われることはない。冷間時には、混合気中の霧化した燃料が冷たいインテークマニホールド内壁面に付着してしまい、結果として燃焼するのに十分な燃料が燃焼室まで達しないからで、この付着分を考慮したリッチな(濃い)混合比の設定を行う。エンジン始動後、インテークマニホールドの温度上昇に応じて、この冷間始動時の燃料増量が減少するように制御される[3]

関連項目

脚注・参照

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  1. 模型用エンジンなどに用いられるメタノールは6.45、ニトロメタンは3.96で、ガソリンに比べ燃料の割合が高い
  2. こちらは燃料が濃い = HCCO が発生しやすい
  3. コールドスタート制御と呼ばれる(キャブレター式燃料供給の始動方法に関してはチョーク弁を参照)