リーンバーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

リーンバーン (Lean burn) とは内燃機関において理論空燃比よりも薄い(リーン)混合気で運転している状態のこと。希薄燃焼。

概要

ジェットエンジンガスタービンの燃焼は、ほとんど全てリーンバーン状態である。ガスタービンエンジンの理論空燃比は、空気 : 燃料 がおおよそ 15:1であり、熱効率やエンジンの小型化の面ではこの混合比で燃焼させるのが最も望ましいが、実際は60:1程度の薄い混合比で燃焼させている。これは理論空燃比での燃焼では高温になりすぎ、エンジンが耐えられないからである。またエンジンの冷却にも外気が用いられ、冷却用の空気と混合気が混合する事によって、さらに混合気が薄くなる。

レシプロエンジンでは、使用する燃料によって大きく状況が異なる。ディーゼルエンジンに用いられる軽油重油は、酸素が極端に不足していないかぎり熱するだけで発火する性質を持っているため、ガソリンエンジンのように混合気を圧縮する形態をとらず、吸気行程で空気のみを吸入し、圧縮行程で燃料のみを超高圧で燃焼室内に噴射する。このため、酸素過多の状況でも確実に着火(発火)し、燃焼を終えることができ、特に高負荷でなければ常に希薄燃焼域での運転も可能である。

この特性は燃費の面で有利ではあるが、高温、高圧にさらされる酸素と窒素が多いことから窒素酸化物(NOx)の発生が多く、排出ガス中には余剰酸素と拡散燃焼につきものの粒子状物質も多いため、後処理にガソリンエンジンと同様の三元触媒は利用できず、多段噴射によるNOx生成の抑制と、尿素SCRシステムアンモニアを自家生成する触媒を用いた還元作用で排出ガスを浄化している。

自動車用ガソリンエンジンでは、1990年代前半(実際には1970年代後半にごく一部の車種に採用されていた)から、燃費の抑制を目的として低負荷時にリーンバーン運転を行うものが流行したが、排ガス規制の強化に伴い、2000年代以降はほとんど姿を消した(下記参照)。

現在のガソリンエンジンにおいても経済空燃比として16:1 - 17:1程度のリーンバーンが行われているが、リーンバーンエンジンと呼ばれているエンジンは、20:1近くまで空燃比を上げて燃焼することで、ポンピングロスの減少を図っているものを指す。

リーンバーンエンジンと排出ガス規制

スロットルを絞った状態で大型ガソリンエンジンを運転する(低負荷運転になる)と吸気行程で外に対して仕事をすることになるが、排気バルブを開けた時点でその仕事は取り戻せなくなる。希薄燃焼は、スロットルの絞りを減らす一方で、混合するガソリンの量を増やさずに燃焼を安定させる技術であった。具体的には強いスワールやタンブル流を起こし、白金プラグで強力な点火火花を発生させていた。当時は筒内直噴ガソリンエンジンも同じ狙いで設計されていた。

ところが、酸素過多の状態で燃焼させるため、ディーゼルエンジンと同様に窒素酸化物の発生が問題となった。当初は、NOx吸蔵還元触媒を装備することで解決を試みたものもあったが、結局は排気ガス規制の強化とともにリーンバーンエンジンそのものが廃れていった。

関連項目