硬骨魚綱

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硬骨魚類(こうこつぎょるい)は、現在大きく2種類の定義で用いられる、脊椎動物の中のグループである。

  • A : 古典的には、階層分類における"魚類"の分類群(タクソン)のひとつで、一般的には便宜上こちらを指すことが多い。
  • B : 近年の系統学や分岐分類学的立場からすると、硬骨魚類(Osteichthyes)はある単系統群(クレード)に与えられた名称であり、哺乳類のような動物もすべて硬骨魚類に含まれる。

こうした定義上の混乱は、生物学における分類体系が常に更新されたり、用途や思想・学説によって最適な体系が異なるために頻繁に生じるものである。

特に近年は分子系統学や分岐分類の躍進が著しく、形態のみに基づいた伝統的な分類体系が、DNA解析などにより次々と更新されているが、一般には広まりにくく、また伝統的な分類の方が直感的で理解しやすいため、便宜上どちらの分類体系も用いられているのが現状である。

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特徴

サメエイ(板鰓亜綱)、ギンザメ(前頭亜綱)など、骨格がすべて軟骨でできている軟骨魚類に対して、硬骨魚類の多くは、骨格の大部分が、硬骨と呼ばれる硬い骨からなる(ただし、チョウザメ類のように、軟骨の割合が大きいものもいる)。硬骨には、軟骨の骨化した軟骨性硬骨、結合組織や外皮に由来する膜骨などがある。

骨格のほかにも、硬骨魚類は、楯鱗をもたない、やそこから派生した浮き袋をもつといった特徴によっても、軟骨魚類から区別される。肺を獲得した初期の硬骨魚類の祖先は淡水棲であったとみられ、海棲の硬骨魚類はここから二次的に海洋に進出したものである。そのため硬骨魚類の体液の塩分濃度は約0.9%であり、現在の海水の塩分濃度(3.5%程度)よりかなり低い。ちなみに淡水での進化を経験していない軟骨魚類・海棲の無脊椎動物の体液の塩分濃度は、現在の海水のそれに近い。

A, 伝統的分類に基づく硬骨魚類

軟骨魚類・硬骨魚類は、古くは魚綱の下位の軟骨魚亜綱・硬骨魚亜綱としたが、今では魚類を魚上綱として、軟骨魚綱と硬骨魚綱の2綱に分けることが多い。なお魚類に無顎類ヤツメウナギヌタウナギ等)を含めるかどうかは、研究者によって意見が分かれる。

生物の進化上は、硬骨魚類は軟骨魚類から、軟骨魚類は無顎類から分岐した。また、両生綱、爬虫綱、鳥綱、哺乳綱は、硬骨魚類から分岐した。下図参照。

    ┏ 無顎類 (A)
脊椎動物┫    ┏ 軟骨魚類 (B)
    ┗ 顎口類┫     ┏ 条鰭魚類 (C)
         ┗ 硬骨魚類┫     ┏ 肺魚類 (D)
               ┗ 肉鰭魚類┫
                     ┗ 四肢動物━ (両生類,爬虫類,鳥類,哺乳類)

すなわち硬骨魚類は(C)+(D)のグループであり側系統群(単系統群から一部の群を除いたグループ)のため、この場合分岐分類学の立場では(無脊椎動物爬虫類などと同様)生物分類の単位とはされないはずである(後述)。ただし実用性の観点から、硬骨魚類の分類名は現在も広く使用されている。しかし分岐分類においても"硬骨魚類(Osteichthyes)"の名称は定義を変えて使用されており、伝統的な分類体系と混同され混乱を招くことも多い。

分類概略

硬骨魚類は、肺魚亜綱、総鰭亜綱、腕鰭亜綱、条鰭亜綱の4亜綱に分類される。このうち、肺魚亜綱にはケラトドゥス目とレピドシレン目、総鰭亜綱にはシーラカンス目、腕鰭亜綱にはポリプテルス目だけしか現生目がない。

条鰭亜綱は、軟質下綱と新鰭下綱の2下綱に分けられるが、軟質下綱は軟骨上綱チョウザメ目のみが現生である。現在最も繁栄している魚類のグループは、条鰭亜綱の新鰭下綱であり、通常私たちの目にふれる“魚”は、ほとんどがこのグループであると言ってよい。

新鰭下綱は、さらに全骨類と真骨類とに分かれるが、現生する全骨類の魚類はガー目(レピソステウス目)とアミア目のみであり、それ以外のすべての新鰭下綱の魚類は、真骨類に属する。

分類樹

B, 分岐分類に基づく硬骨魚類

分岐学は、全ての形質を極力同様に重みづけした上で分岐図を作成し、その各分岐点を分類群として定義する手法である。このため、硬骨魚類の系統が分岐して以降、その子孫は全て硬骨魚類であって、例えば哺乳類が恣意的に硬骨魚から外されることはない。

系統樹

脊索動物の系統の概略を以下に示す。太字部は全て硬骨魚類ということになる。

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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