生産緑地地区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Ambox テンプレート:日本の都市計画 生産緑地地区(せいさんりょくちちく)とは、市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度(生産緑地地区制度)に沿って管轄自治体より指定された区域のことである。

概要

ファイル:Seisanryokuchi 05x2632s.jpg
生産緑地指定された土地(地区)を示す標識(世田谷区) (2005年 5月26日撮影)
ファイル:Higashitakane 06b8177v.jpg
公園適地として生産緑地指定された森林(川崎市宮前区東高根森林公園) (2006年 5月29日撮影)

都市計画上、農林漁業との調和を図ることを主目的とした地域地区のひとつであり、その要件等は生産緑地法によって定められている。また、この制度により指定された土地または森林のことを生産緑地(せいさんりょくち)と呼ぶ。

昨今、大都市圏など一部地域において都市化が急速に進んでいるが、いっぽう緑地が本来持つ地盤保持や保水などの働きによる災害の防止、および農林漁業と調和した都市環境の保全などのため、将来にわたり農地または緑地等として残すべき土地を自治体が指定することにより、円滑な都市計画を実施することを主目的としている。

また、大都市圏の一部自治体においては、生産緑地指定を受けることで、固定資産税課税の基礎となる評価が農地並みになる措置が受けられる措置もある。

なお、一旦指定を受けた土地は、一定の要件を満たす場合の外は原則として解除できない。

農地課税の扱いが異なる自治体

主に市街化区域内の農地の宅地転用を促す目的で、大都市圏の一部自治体においては、市街化区域内の農地について固定資産税および相続税の課税が宅地並みに引き上げられた。しかしながら、農地や緑地の持つ前述の役割が都市部においても変わるわけではないので、生産緑地地区が誕生した。当初は条件が厳しかったが、長期に営農することで課税を農地並みにしていた長期営農継続制度を1991年に廃止することとなり、その対策として条件が緩和されたため、この制度による指定を受ける農地が増加した。

なお、該当する自治体は次のように定められている。

要件

生産緑地に指定する(または地権者等が要望して生産緑地としての指定を受ける)際には、生産緑地法により定められている次のような要件を満たすことを、所轄自治体が審査する。

主な要件
  • 農林漁業などの生産活動が営まれていること、または公園など公共施設の用地に適していること。
  • 面積が 500m2以上であること(森林、水路・池沼等が含まれてもよい)。
  • 農林漁業の継続が可能であること(日照等の条件が営農に適している等)。
  • 当該農地の所有者その他の関係権利者全員が同意していること。

生産緑地になると

受けられる措置

  • 生産緑地であることを示す標識が設置される。
  • 固定資産税が一般農地並みの課税となる。
  • 相続税の納税猶予の特例などが設けられている(ただし自身が耕作していない場合は除く)。
  • 農地等として維持するための助言や、土地交換のあっせんなどを自治体より受けることができる。

制限される行為

  • 当該土地の所有者または管理者等に、農地としての維持管理を求められる。
  • 農地以外としての転用・転売はできない(農地としての転売については農地法による手続きにより可能)。
  • 生産緑地地区内において建築物等の新築・改築・増築や、宅地造成等土地の形質の変更は出来ない。ただし農業等を営むために必要であり周辺環境に悪影響を及ぼさないもの(ビニールハウス、水道設備や従業員の休憩所等)は市区町村長の許可を受けて設置することができる。
  • 土石の採取、水面の埋め立て、干拓などが制限される。
  • 上記に違反した場合、原状回復命令が出されることがある。

生産緑地の指定解除

以下のいずれかに該当する場合に市区町村の農業委員会に買取申し出を行い、市区町村が買収せず、買取希望照会・農業経営者への買取凱旋を経て生産緑地として買収する者がいない場合には生産緑地の指定が解除される。

  • 生産緑地の指定後30年経過。
  • 土地所有者または主たる従事者の疾病・障害等により農業等の継続が困難な場合。
  • 土地所有者の死亡により相続した者が農業等を営まない場合。

指定解除後に当該土地は再び生産緑地の指定を受けることはできない。上記のいずれにも該当しない場合には生産緑地の指定は解除されない。

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister