牽引車

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牽引車(けんいんしゃ)は、何らかの理由で自力運転ができない他の電車などの最前部もしくは最後尾に連結し、本線上を運転するための事業用電車(職用車)の一種である。

ファイル:JNR kumoya143 shinagawa inside.jpg
車内に搭載されているジャンパ
(クモヤ143形)

概要

被牽引車両の工場への入場や配置転換の際の配給列車や工場出場時の試運転列車の先頭に立ち、単独で自力走行できない車両の牽引・制御をするための車両である。電車の自力走行ができない理由として、下記のような場合がある。

  • 走行用機器・制御機器の故障、検査切れ。
  • 編成分割により先頭車(制御車)が連結されていない。
  • 編成分割により電動車が連結されていない。
  • ATSATCなどの保安機器が走行する線区に適合しない。

そのため、牽引車は運転室(制御機器)・電動機を有し、各線区にて多種の形式の電車を牽引するため、数種類のATS・ATCに対応した保安機器および各車両形式を制御するために必要なジャンパ連結器、制御信号の読替装置を搭載している。

80系電車が登場するまでは、電動車には運転台があるのが当然であり、工場への入場に際しても牽引車は必要なかったが、80系以降の電車は先頭車を付随車とし、電動車を運転台のない中間電動車とするケースが多くなり、新性能電車ではこれが標準となったことから、こうした制御付随車や中間電動車を制御牽引する車種が必要となったものである。こうした要請から多くが新性能車と旧性能車両方の牽引・制御が可能な構造となっていた。

他の事業用車の例に漏れず、陳腐化した旧形車両を改造したものが多いが、クモヤ143形のように新造されたケースもある。また、営業用車両を牽引車代用として使用したケースも多い。その任務上、両運転台車がほとんどである。中には工場内専用として、鉄道車両としては除籍された車両を改造のうえ使用することもある。

国鉄時代は、1両から数両単位で全国規模で車両が配置転換される場合が多いことから、編成内で各車両の検査サイクルがずれる場合が多く、配転先や工場での検査などの回送に牽引車の登場が多かったが、国鉄分割民営化前後から、車両の管理を従来の1両単位から編成単位で取り扱うケースが多くなったため、牽引車の出番は少なくなっており、車両基地や工場内での車両の入換が主な任務となっている。国鉄末期には、老朽化した複数の事業用車両を1両で置き換えるため、救援車としての機能を併せ持った車両も登場している。

電車ではないが、双頭連結器を装備しているマヤ34などの検測車を牽引する場合もある。

国鉄・JRの牽引車

私鉄の牽引車