氷食症

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氷食症(ひょうしょくしょう)は、を無性に食べたくなる病気分の欠乏によることが多い。

定義

非栄養物質を強迫的に食べたくなる病気である異食症の一種[1]。近世、冷蔵庫が普及し始めてから生まれた病気で、一日に製氷皿1皿以上食べるもの、という定義がある。

原因

主たる原因は、鉄欠乏であり、鉄欠乏性貧血および、その前駆状態である「貧血がない鉄欠乏症」でも氷食症は起こる。体温を、腋下と口腔内で比較したとき、口腔内が高いことから、口腔内を冷やすためではないかという説や、鉄欠乏により食嗜好が変わるという説があるが、未だ不明な点が多い。精神疾患である強迫性障害の一つとして見られることもある[1]。なお、氷を大量に食べることにより鉄分の腸管吸収が低下し、鉄欠乏を招くという逆の発想からの説もあるが、鉄剤治療に際して、氷食症合併群と非合併群の間にその治療効果・速度に差のないことから、疑問視されている。

症状

基本症状は、氷を強迫的に食べる(食べずにいられない)こと。持久力の低下、記憶力の低下、寝起き寝つきの悪さ、食欲低下などの鉄欠乏症状や、顔色不良、動悸、息切れなどの貧血症状を伴うことが多い[1]。強迫性障害による場合は、他の強迫症状(手洗い、ドアノブ拭きなど)を合併することがある。

検査

貧血・鉄欠乏の有無を検査する。瞼の裏側の色調での診断は、貧血が高度の場合でないと有効ではない。

  • 貧血のタイプ:赤血球数、血色素値、ヘマトクリットの測定。
  • 鉄欠乏の程度:血清鉄、総鉄結合能、トランスフェリン飽和度、血清フェリチン値、赤血球プロトポルフィリン/ヘム比などの測定。

診断

診察所見に特徴的なものはなく、血液検査が必要になる。測る項目とおおよその基準値は以下の通り。

  • 貧血:血色素値が正常値以下で、MCHC(=血色素値*100/ヘマトクリット)が31未満であれば、鉄欠乏性貧血が強く疑われるが、氷食症においては、貧血は必須ではない。
  • 鉄欠乏:トランスフェリン飽和度(=血清鉄*100/総鉄結合能)が16%未満、血清フェリチン値が14ng/ml未満であれば、鉄欠乏の可能性が高く、鉄剤治療をする根拠とできる。

治療

鉄剤(フェロミア)50mg錠1日1〜2回の内服で治療可能である。主な臨床症状は、氷食症も含めて1ヶ月ほどで改善するが、再発予防のためには、3〜4ヶ月間内服することが勧められる[1]。過多月経が原因の場合などは、その後も週1回程度、内服しておくとよい。鉄剤の内服による副作用として、消化器症状(吐気、便秘、下痢など)が強い場合は、鉄剤の静脈注射による治療も選択できる。

脚注

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外部リンク

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