多冪数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

整数n多冪数(たべきすう、powerful number)であるとは、素数pnを割り切るときに、必ずp平方nを割り切ることをいう。

ポール・エルデシュとG. Szekeresがこの形の数を研究したが、S. W. Golombがはじめてこの形の数を多冪数と名づけた。

性質

多冪数を素因数分解すると、現れる指数は常に1より大きくなる。

2r+3sr, sは正の整数)は1より大きなすべての整数を表すから、多冪数はa2b3の形に表される。また、b平方因子を持たないという条件の下では、多冪数はこの形に一意的に表される。

多冪数の逆数の和は <math>\prod_p(1+\frac{1}{p(p-1)})=\frac{\zeta(2)\zeta(3)}{\zeta(6)}=\frac{315}{2\pi^4}\zeta(3)</math>(pは全ての素数を走る) に収束する。ここでζ(s)はベルンハルト・リーマンゼータ関数である(Golomb, 1970)。

k(x)を1≤nxとなる多冪数nの個数とすると、 <math>cx^{1/2}-3x^{1/3}\le k(x) \le cx^{1/2}, c=\zeta(3/2)/\zeta(3)=2.173\cdots</math> となる(Golomb, 1970)。

ペル方程式x2-8y2=1は無限に多くの自然数解を持つから、 無限に多くの連続する多冪数が存在する(Golomb, 1970)。

奇数や4の倍数は多冪数、特に平方数の差で表されるが、Golombは

2=33-52
10=133-37
18=192-73=32(33-52)

など、多冪数の差として表される単偶数の例を示し、6はそのように表すことはできず、他にも多冪数の差として表すことができない無限に多くの数が存在すると予想したが、Narkiewiczは

6=5473-4632

など、6は多冪数の差として無限に多くの方法で表されることを示し、McDanielは全ての整数は互いに素な多冪数の差として無限に多くの方法で表されることを示した(McDaniel, 1982)。

エルデシュは十分大きな全ての整数は高々3つの多冪数の和として表されると予想したが、これはHeath-Brownによって証明された(Heath-Brown, 1987)。

一般化

より一般的な概念として、素因数分解したときに現れる指数が少なくともkであるような整数をk-多冪数(k-powerful number, k-ful number, k-full number)と呼ぶ。

(2k+1}-1)k, 2k(2k+1-1)k, (2k+1-1)k+1

k-多冪数からなる等差数列である。またa1, a2, ..., ask-多冪数からなる公差dの等差数列であれば、

a1(as+d)k, a2(as+d)k, ..., as(as+d)k, (as+d)k+1

s+1項からなる等差数列である。

k-多冪数による等式としては、

ak(al+...+1)k+ak+1(al+...+1)k+...+ak+l(al+...+1)k=ak(al+...+1)k+1

というものもあり、ここから、l+1個のk-多冪数の和がk-多冪数となる例が無数にあることがわかる。Nitajは互いに素な3-多冪数で、その和が3-多冪数となるものが無数にあることを示し(Nitaj, 1995)、Cohnは互いに素で、なおかつ立方数でない3-多冪数で、その和が再び立方数でない3-多冪数となるものが無数にあることを示した(Cohn, 1998)。Cohnの構成は次の通りである。X=9712247684771506604963490444281, Y=32295800804958334401937923416351, Z=27474621855216870941749052236511は方程式32X3 + 49Y3 = 81Z3の解であり、ここからX′=X(49Y3 + 81Z3), Y′ = −Y(32X3 + 81Z3), Z′ = Z(32X3 − 49Y3)とし、その公約数を取り除くことによって新たに方程式32X3 + 49Y3 = 81Z3の解を構成する。32X3, 49Y3, 81Z3が求める組である。

参考文献

J. H. E. Cohn, A conjecture of Erdös on 3-powerful numbers, Math. Comp. 67 (1998), 439--440. [1]

P. Erdös & G. Szekeres, Über die Anzahl der Abelschen Gruppen gegebener Ordnung und über ein verwandtes zahlentheoretisches Problem, Acta Litt. Sci. Szeged 7(1934), 95--102.

S. W. Golomb, Powerful numbes, Amer. Math. Monthly 77(1970), 848--852.

Richard Guy, Section B16 in Unsolved Problems in Number Theory, Springer-Verlag, 3rd edition, 2004; ISBN 0-387-20860-7.

D. R. Heath-Brown, Ternary quadratic forms and sums of three square-full numbers, Séminaire de Théorie des Nombres, Paris, 1986-7, Birkhäuser, Boston, 1988.

D. R. Heath-Brown, Sums of three square-full numbers, in Number Theory, I(Budapest, 1987), Colloq. Math. Soc. János Bolyai 51(1990), 163--171.

Wayne L. McDaniel, Representations of every integer as the difference of powerful numbers, Fibonacci Quart. 20(1982), 85--87.

A. Nitaj, On a conjecture of Erdös on 3-powerful numbers, Bull. London Math. Soc. 27 (1995), 317--318.

外部リンク

Powerful number