等差数列

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等差数列(とうさすうれつ、テンプレート:Lang-en)あるいは算術数列(さんじゅつすうれつ、テンプレート:Lang-en)とは、どの隣り合う2つの項も“共通して一定な”差(common difference; 公差)になっている数列である。

等差数列の例と一般形

例えば、3, 5, 7, 9, 11, 13... という数列は、最初の項が3、いずれの二項間の差も2である。このような数列を初項3、公差2の等差数列という。

ここでいう「二項間の差」は、後の番号の項からその一つ前の番号の項を引くという意味の差であり、負の値になることもある[1]。若い番号の項からそのひとつ後の項を引いたものとは、符号が逆になると考えなければならない。また、隣り合う二項の差の絶対値が一定値であっても異なる符号を含む場合、この数列は等差数列とは言わない。したがって二項間の差も公差とは呼ばない。

初項が a1 、公差が d であるような等差数列の n 番目の項は

<math>\ a_n = a_1 + (n - 1)d</math>

と表せる。さらに一般的に、n 番目の項と m 番目の項の関係は

<math>\ a_n = a_m + (n - m)d</math>

と書くことができる。

等差数列の和

等差数列の有限個の項の総和は、しばしば(有限)算術級数 (テンプレート:Lang-en) と呼ばれる。

日本語で単に算術級数とだけ言った場合は、有限和の場合の極限として得られる無限和を指すことが多い。

等差数列の総和

公差 d の等差数列の n 個の項 a1, a2, ..., an の総和は、次のように表される。

<math>S_n = a_1+a_2+\dots+a_n=\frac{n( a_1 + a_n)}{2} =\frac{n[ 2a_1 + (n-1)d ]}{2}</math>

これは、最初の項と最後の項の合計が2番目の項と最後から2番目の項の合計と同じになり、そのような関係がおおよそn/2個続くことを表している[2]。この種の式は、ピサのレオナルド(一般にはフィボナッチとして知られる)が記した『算盤の書』("Liber Abaci"; 1202年, ch. II.12)に登場する。よく聞かれる逸話として、カール・フリードリヒ・ガウスがこの式を再発見した話がある。彼が3年生のときに、教師J. G. Bütnerが生徒たちに1から100までの合計を求めさせたところ、彼は即座に答(5050)を出したため、Bütner と助手のMartin Bartels(en:Johann Christian Martin Bartels)がいたく驚いた、というものである。

項の数が奇数のときの曖昧さをなくして上のような結果を得るには、項の平均値を考えると良い。等差数列の総和は、全部の項の平均値に項の数を掛けたものになる。全部の項の平均値は、数直線上で両端から均等に間隔があいた (a1 + an)/2 になることは明らかである。または、

<math>(a_k+a_{n-k+1})/2, 1\leq k \leq n</math>

のように両端から一つずつ項を取って平均すると、常に両端の平均値 (a1 + an)/2 に等しくなることからも、これが等差数列の全項の平均値であると示される。

公式の証明

等差数列の総和を、次のように2通りに書き表す。

<math> S_n=a_1+(a_1+d)+(a_1+2d)+\dots\dots+(a_1+(n-2)d)+(a_1+(n-1)d)</math>
<math> S_n=(a_n-(n-1)d)+(a_n-(n-2)d)+\dots\dots+(a_n-2d)+(a_n-d)+a_n</math>

この2式の両辺足し合わせる。すると、d を含む項がすべて相殺されるので、残るのは

<math>\ 2S_n=n(a_1+a_n)</math>

だけとなる。これを移項して、an = a1 + (n − 1)d という関係を用いれば、次の式を得る。

<math> S_n=\frac{n( a_1 + a_n)}{2}=\frac{n[ 2a_1 + (n-1)d]}{2}</math>

等差数列の総和とシグマ記法

等差数列の総和をシグマ記号を使って表示することも一般的に行われる。例えば、等差数列の和

<math>a_1+(a_1+d)+(a_1+2d)+\dots\dots+(a_1+(n-2)d)+(a_1+(n-1)d) </math>

はシグマ記号を用いて簡潔に

<math>\sum_{k=0}^{n-1} (a_1+kd)</math>

と表される。同様に、次のような等差数列の和を表すにも、

<math>a_1 + a_2 + a_3 + \cdots\cdots + a_{m-1} + a_m </math>

シグマ記号を用いれば、次のように書き表せる。

<math>\sum_{j=1}^{m} a_j </math>

等差数列の積

初項 a1 で、公差 d である総項数 n の等差数列に対して、項を全て掛け合わせた総乗

<math>a_1a_2\cdots a_n = d^n {\left(\frac{a_1}{d}\right)}^{\overline{n}} = d^n \frac{\Gamma \left(a_1/d + n\right) }{\Gamma \left( a_1 / d \right) }</math>

で表される。ここで、 <math>x^{\overline{n}}</math> は上昇階乗冪x から 1 ずつ増やしながら (x + n − 1) までの n 個の数を掛け合わせる階乗の類似物)、Γ は ガンマ関数を意味する。ただし、a1/d が負の整数や 0 となる場合には、この式は意味を持たない。

この式は、初項 1, 公差 1 の等差数列の積

<math>1 \times 2 \times \cdots \times n</math>

の値が階乗 n! によって与えられることの一般化である。また、正の整数 m, n (mn) に対する積

<math>m \times (m+1) \times (m+2) \times \cdots \times (n-2) \times (n-1) \times n</math>

の値が、

<math>\frac{n!}{(m-1)!}</math>

によって与えられるということの一般化でもある[3]

脚注

  1. 例えば、5, 2, −1, −4,...という数列は初項5、公差 −3の等差数列となる。
  2. nが奇数の時は(n-1)/2個続き、中央の項だけが残される。
  3. ガンマ関数が自然数に対してしか定義されない階乗の、実変数への一般化であることに注意。実際に階乗であるところがガンマ関数で置き換わって、本節当初の式が現われている。

関連項目

引用文献

外部リンク


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