報道被害

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テンプレート:複数の問題 報道被害(ほうどうひがい)とは、マスメディア犯罪などの事件や出来事を報道するとき、誤報や事実と確認されていない事を決めつけた報道をしたり、事実を故意に編集誇張した報道により、被報道者の生活基盤、人間関係、名誉などを破壊してしまうことをいう。メディア・パニッシュメント(報道断罪)はこの一つ。また、「風評被害」のように、正しい情報を政府やマスコミが報道しない事によっても引き起こされる。

概要

事実を作為的な編集や誇張をした偏向報道、それらによる意図的な社会的制裁によって、それを見聞きした人が誤認してしまう場合がある。

テンプレート:要出典範囲事実とは確認されていない事柄を『「○○は××」か』などと、「か」を小さく表示したり疑問符を小さく付けるケースが見られる。

誤報や誤解を生じる内容であったことが明らかになっても訂正されなかったり、また訂正文が掲載されても、先の本文ほどには目立たない形で書かれる傾向にある。そのため、必ずしも被害者の不名誉が払拭されるとは言いがたい。そのため被害者が民事裁判で謝罪広告の掲載などを要求することがある。

また、報道被害を受けた者が、その報道の根拠として情報源の開示を要求しても、「取材情報源の秘匿」を理由に拒否される場合もあり、被害者の「身の潔白」の証明を阻害する要因となっている。

報道の自由と人権侵害

人は真実を知る権利と同様に、私的秘密を守る権利も持っている。よって知る権利と被報道者のプライバシーのどちらを優先させるべきかは非常に難しい問題である。ただし、「知る権利」はいまだ確立された権利とまでは言えず、私人に行使する場合には内容の公共性、公益性のみならず、プライバシー領域にまで踏み込む必要性も検討する必要がある。

また社会的注目度の高い犯罪を起こしたという「疑惑」を、大々的かつ継続的に報道された場合、無罪確定後や無実が確認された後も疑いの目を持たれ続ける事がある(ロス疑惑松本サリン事件など)。また日本のマスコミは、「逮捕イコール有罪・犯罪者」的スタンスで報道することが多く、無罪判決や誤認逮捕が判明した場合でも、すでに失職や離婚等の被害を受けている例がある(三億円事件など)。

これらの結果、法的・形式的には名誉回復という形になっても、長期にわたり偏見に晒され続けた結果「社会的抹殺」に等しい状況に追い込まれてしまう。また、たとえこの被害を争点とした裁判を提起して勝訴しマスコミ側に謝罪広告や検証番組を出させたところで、結局はマスコミ報道によって破壊された元の生活が取り戻せないというケースもある(参考:痴漢冤罪)。

報道被害の実例

イギリス

記者が編集部の承認のもと、個人情報を探偵などの第三者を介して違法に取得することが近年まで横行していた。パソコンや携帯電話を不法にハッキングしたり、公務員(特に警察)に賄賂を払い個人情報を習得するなどの違法行為が常態化しており、ブラウン首相の男児が不治の遺伝病(CF病)にかかっていることなども個人のプライバシーを無視して大々的に報道されていた。他にも天才少女歌手として有名なシャーロット・チャーチの母親の精神疾患のカルテを違法に入手し、この内容を暴露すると脅迫し、引換にインタビューを勝ち取るなどの行為が明らかになった。他にも近親者しか知りえない情報がスクープされセレブの家族間で不和が生じたり、エル・マクファーソンのマネージャーが機密保持義務を破ったとの疑いをかけられ解雇されるなどの二次的な被害も存在した。しかし実際に政治家のスキャンダルや汚職などがこのような不法行為で暴かれることもあり、芸能人はもともと実生活を売り物にする職であるとの認識から著名人に対する違法行為に対して世論はおおむね寛容であった。ところが、調査の段階でタブロイド紙が一般人である犯罪被害者さえも違法なハッキングのターゲットにしていたことが明らかになる。 特に問題になったのは、タブロイドのニュース・オブ・ザ・ワールド紙による誘拐殺人事件の被害者である13歳の少女の携帯電話の留守電機能によるハッキングで、同社は被害者の携帯電話の番号を入手し留守電機能に残されたメッセージを違法にアクセス、その後に憶測に基づいて誘拐ではなく単なる家出であるとの疑惑を報道するが、後に被害者の少女が遺体で発見される。他にもロンドンテロ事件の被害者遺族の携帯電話の不法傍受などの一連の人権侵害が発覚すると国民の怒りが爆発し日曜版としては発行部数一位であったニュース・オブ・ザ・ワールド紙は広告主が次々と契約を打ち切る中で廃刊。さらに当時の編集長の逮捕にまで至っている。その後に国会の証人喚問で違法行為がマスコミ全体で横行していることが明らかになり、他の新聞社でも違法行為が判明した記者が複数逮捕されるなどマスコミ全体を揺るがす一大スキャンダルに発展し、イギリスでは報道の活動を法的に規制する立法が成立する見通しである。

日本

  • 容疑者としての実名報道による被害
    • 三億円事件 - 府中市の運転手が容疑者として逮捕されるが、後にアリバイが確認され事件に無関係であることが確定。しかし釈放されるまで新聞各社が犯人扱いで学歴、職歴、性格、家庭環境まで事細かく暴露。このため本人は職を失い一家は離散。さらにその後も真犯人の見つからない中で「三億円事件の容疑者として逮捕された」との世間の偏見と事件に関するコメントを執拗に求めるマスコミ関係者に悩まされ職を転々とし、2008年9月に自殺。当時の各新聞社の一面の見出しは、遺族の要望で未だに封印されている。
    • 松本サリン事件 - 第一通報者の河野義行が、自らも被害を受け、特に妻が重体に陥った(2008年に死亡)にも関わらず、農薬からサリンを合成したとの疑いで警察の捜査対象となった。その後、農薬からサリンを合成することが化学的に不可能であるにもかかわらず、半年以上もの間警察発表および警察の故意のリークにより日本全国のマスコミがあたかも河野義行が犯人であるとの前提で報道を行う。後に真犯人はオウム真理教信者である事が判明。
  • 被害者及び家族への被害(メディアスクラムも参照)
  • 個人の特徴に対する差別助長
    • 附属池田小事件 - 犯人が『男は精神科に通院中で…』と、ことさら精神科に通院していた事(病歴報道)を、誇張して報道した事に関して、精神障害者に対する偏見差別が強まったと、全国精神障害者家族会連合会(全家連)が精神科医を通して事件後の精神障害者に対する報道被害の様子の変化を調査している。「大教大池田小児童殺傷事件の報道について」(2001年6月8日付)と「小学校児童殺傷事件報道について」の見解では、『安易な報道によって、「精神障害者は危険だ」という社会の偏見がより強くなりました。(中略)これは「報道被害」であるといっても過言ではありません』と、報道機関を非難した[1]
  • 医療報道による医療システムへの報道被害は、 医療崩壊の大きな原因の一つとされている。また、同定されていない『ワクチン副作用』報道は、日本におけるワクチン接種率低下の要因ともされている。

脚注

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関連項目

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関連書籍

  • 「人権と報道関西の会」編 『マスコミがやってきた!取材・報道被害から子ども・地域を守る』 現代人文社、2001年1月。ISBN 4-87798-032-6
  • 浅野健一 『「報道加害」の現場を歩く』 社会評論社、2003年12月。ISBN 978-4-7845-1434-2
  • 梓澤和幸 『報道被害』 岩波書店、2007年1月。ISBN 978-4-00-431060-0
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