アリバイ

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アリバイ (alibi) または現場不在(げんじょうふざい)は、犯罪等で被疑者被告人が犯行に関わっていないことを推認させる間接事実の一つ。ラテン語alius ibi(他の場所に)に由来する。

概要

犯行が行われた際、被疑者がその場に存在していなかったことを主張(現場不在証明)し、犯罪の直接的な実行が不可能であったことを主張するのがアリバイである。もっとも、この場合、その人物がその場にいなかったことそれ自体を証明するのではなく、実際にはその時間に別の場所にいたことを主張立証する活動が行われる。同一人物が、同一の時間に異なった二カ所に存在することは不可能であるため、それが現場に存在しなかったことの証明になる。現在では一般的な用語としても使われている。

事件においてアリバイが証明されたら捜査機関の容疑者候補から外れるが、アリバイが証明されないと捜査機関の容疑者候補から外れないことが起こりうる。しかし、刑事訴訟法的には当事者主義訴訟構造をとっている刑事訴訟法上当然の原則から、当該被告人が犯人であること(犯人性)および公訴事実の存在を証明する必要は訴追側の検察官にあるため、アリバイ事実を被告人側が証明する必要はない。

刑事裁判において、被告人のアリバイの有無は犯行の可能性を左右する重要な要素であるため、弁護側と検察側の間でしばしば争われる。また、証人が被告人のためにアリバイを偽装することは違法であり、偽証罪犯人隠匿罪等に問われることもある。

推理小説などにおける扱い

推理小説においてはアリバイの偽装工作が見せ場となっており、各々の作家がアイデアを凝らしている。アリバイもので著名な推理作家としてはF・W・クロフツヘンリー・ウェイド等が居る。

殺人事件が起きた時間が完全に特定できる場合に、その場にいなかった、という場合と、殺人の時間は完全に特定できない、だから被疑者のアリバイもその前後に違う場所にいた、という場合とでは扱いがかなり異なる。後者の方が現実的であろう。

後者に於いては、アリバイの主張もその間の時間に、事件の現場と被疑者のいた場所の間での移動が不可能だ、ということになるから、普通には有り得ない移動をどうやって可能にしたか、というのが問われる。松本清張の『点と線』は、これに列車時刻表を用いたことが秀逸で、日本のその後の推理小説、サスペンスに一つの定型を作ったとされる。

関連項目