仮面ライダーJ

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テンプレート:Pathnav テンプレート:告知 テンプレート:注意 テンプレート:Infobox Film仮面ライダーJ』(かめんライダージェイ)は東映スーパーヒーローフェアの一作として、1994年4月16日に公開された劇場映画のタイトル。および、それに登場するヒーローの名。

石ノ森章太郎が製作に関わった仮面ライダーとしてはシリーズ最後の作品。

同時上映は『忍者戦隊カクレンジャー』『ブルースワット キック・オフ! ニュー・ヒーロー』。

概要

東映スーパーヒーローフェアの一策として公開された『仮面ライダーZO』に続き、劇場用オリジナル作品として制作された。全編フィルム撮影及びオールアフレコで制作された最後のライダー作品である。

この作品の一番の特徴としては、主人公・仮面ライダーJが巨大化するということである[1]。ライダーの巨大化には前例として1993年に制作された『ウルトラマンVS仮面ライダー』があり、この作品が好評だったことも、仮面ライダーJの巨大化企画の後押しとなった[2]

プロデューサーの久保聡によると、当初は原作者の石ノ森章太郎も仮面ライダーの巨大化案には反対であり、そのためにJの巨大化シーンは決定稿ギリギリまで入っていなかった。最終的に「Jの巨大化は地球に未曽有の危機が訪れた時にのみ、大地の精霊たちがJに全ての力を注ぐことで初めて可能となる奇跡の形態であり、Jの基本的な能力ではない」という設定を出したことで石ノ森もJの巨大化に合意し、現在の形になったという[2]。また監督の雨宮慶太も、巨大化には反対だったが「映画興行におけるセールスポイントとしてこれに対抗しうる代案がなかった」とコメントしている。

主人公・瀬川耕司役には『恐竜戦隊ジュウレンジャー』で主演を務めた望月祐多が起用された。この他に『鳥人戦隊ジェットマン』で結城凱 / ブラックコンドルを演じた若松俊秀が候補として挙がっていたが、変身前の姿でのアクションも多い関係から当時JAC所属だった望月が選ばれる形になったという[3]。また、仮面ライダーJのスーツアクターは、前作『仮面ライダーZO』に引き続き岡元次郎が務めた。

脚本は上原正三が執筆した。上原は『仮面ライダーBLACK』を初期で降板して以降、東映とは疎遠になっていたが、プロデューサーの吉川進より自宅に数年ぶりに電話が掛かってきて、「今度やるライダーの映画を書かないか」と誘われたとのことである。映画公開前後に発売された雑誌『宇宙船』テンプレート:Fullインタビューにて、上原は同作品を執筆するにあたり前年度作品で杉村升脚本の『仮面ライダーZO』を強烈に意識したそうで、「特撮マニアが見たら『ZO』が面白いという意見が多いかもしれませんけど、子供が見たら『J』のほうが絶対に面白いと思ってくれる。自信はありますよ」と語っていた。

名前の「J」は「ジャンボ(巨大)」を意識しているが[1]、一般向けには「ジャパン(日本のヒーロー)」「ジャスティス(正義)」「ジャッジ(審判)」と説明されており、原作者の石ノ森章太郎も「ジャッジ」を推していた[2]。また、後に上原正三が著した小説版(ISBN 4094401024)においては「ユピテルJupiter、ジュピターとも)」の頭文字だとされている。作中における「ユピテル」とは仮面ライダーJおよび地空人のパワーの源である「精霊の力(ユピテル・パワー)」の名称であり、映画の劇中では「Jパワー」と略されている。

作風としては、当時ブームであったエコロジーを反映していることが特徴で、主人公は環境破壊を調査するカメラマン、彼が変身するJは大自然のエネルギーで戦う戦士 = 大自然の使者、その使命は人類のみならず大自然の全生物を守ること、そして敵の目的はいわゆる世界征服ではなく、地球上の全生物を死滅させることである。また、ヒロインの少女・加那が公害で死んだ動物の墓を作るシーンや、山林が開発作業で切り崩されるシーンなども、この演出に一役買っている。

本作は、企画当初ではZOがパワーアップした姿を描くことが予定されていたが、諸事情により別作品として製作された[4]。その経緯から、Jやバイクの外観は、前作の『ZO』と酷似している[5]

仮面ライダー1号から始まった「改造人間」というモチーフは本作が最後となった。次作である『仮面ライダークウガ』以降、テレビ作品に登場するライダーは諸事情により改造人間という設定が省かれ、唯一テレビスペシャルに登場した『仮面ライダーG』のみが改造人間とされている。


あらすじ

世界中を異常気象が襲う最中、かつて恐竜を絶滅させた集団・フォッグが再び地球に来襲。無数の怪人を孵化させ、地球の全生命を滅ぼそうとする。

一方、環境破壊を独自に調査し、その現状を多くの人々に訴えようとするカメラマン・瀬川耕司はバイクで野営しながら取材活動を続けていた。フォッグ・マザーは耕司が出会った心優しき少女・加那を生贄として選び、連れ去るよう幹部たちに命令する。それを阻止しようとする耕司だったが、返り討ちにあい谷底へ落とされてしまった。

地空人と呼ばれる人々によって耕司は改造手術(劇中では蘇生手術と呼ばれる)を受け、仮面ライダーJに変身する力を得て、加那を救うためにフォッグに立ち向かう。

登場人物

瀬川 耕司(せがわ こうじ) / 仮面ライダーJ
26歳のフリーカメラマン。環境破壊の現状を世間に伝えるため、オートバイで野営しつつ取材の旅を続けている。ある夜の野営中に、加那を誘拐したフォッグの攻撃により絶命するが、地空人により蘇生・改造手術を受け、Jパワー(精霊の力)の戦士・仮面ライダーJとして蘇り、フォッグから地球を守る使命を受けた。
木村 加那(きむら かな)
耕司がとある湖の汚染の調査に立ち入った際、知り合った少女。9歳。心優しい性格で、公害で死んだ動物たちの墓を作り続けている。耕司を慕い、野営中の彼にコーヒーを差し入れに来たが、そこをフォッグに大孵化の生け贄として誘拐されてしまう。
地空人(ちくうじん)
地中の奥深くで大地の精霊のエネルギーを糧として生きる者たち。劇中では男女が一人ずつ登場。強大な力を持つにもかかわらず、地上の光に弱い上、下半身が木の根のように大地に根付いているため、フォッグと戦う者として、大自然と心を通わせることのできる人間を捜し求めていた。耕司の大自然を愛する心を認め、彼に蘇生・改造手術を施し、フォッグ打倒の使命と仮面ライダーJの名を与えた。
ベリー
地空人の下僕である、言葉を話すミュータントバッタ。地中から出られない彼らに代わって地上を飛び回り、耕司に助言を与える。

フォッグ

女帝にして母艦でもあるフォッグ・マザーと、彼女が生み出した怪人から成る集団。7000万年の昔、地球の恐竜を滅ぼしたのも彼らである。

設定名称では「フォッグ」だが、劇中では「フォグ」と発音されている。

機械獣母艦フォッグ・マザー
  • 全高:70m / 体重:12000t
フォッグの首領。体内には無数の怪人の卵が安置してあり、千年に一度の大孵化を行うための生贄を求めて地球に降り立った。母性の感情があり自ら生み出す怪人には慈悲深いが、それ以外の生物には無慈悲。コブラか蛇の様なマザーの本体は深奥に存在している。
母艦は地上に降りた状態でも、車輪での移動が可能。多数の砲門や鍵爪、破壊光線(描写から反重力光線とも解釈できる)などを駆使して破壊の限りを尽くす。前作「ZO」のレッドドラス同様、公開まで登場は公表されていなかった。
コブラ男ガライ
  • 身長:207cm / 体重:125kg / ジャンプ力:120m
3幹部のリーダー格でフォッグの第1王子。コブラ男に変身。高い戦闘力を持ち、人間を催眠状態にして操る能力も持つ。鞭にも変化する光の剣を武器とし、手から巨大な三つ又の爪を発射する。「命」を「物」としか考えておらず、「死」のことを「壊れる」と表現するなど冷酷な性格。
生贄の儀式を取り仕切り、フォッグ・マザー内部でJと激戦を繰り広げるも、Jキックを受けて絶命した。
人造人間ハカイダー
手配書が登場。
仮面ライダーZO
本作とのクロスオーバー作品の映画作品(『仮面ライダーワールド』)にシャドームーンの部下として登場。
仮面ライダーディケイド
『ディケイド』劇場版および、『仮面ライダーW』とのクロスオーバー作品に登場。
『ディケイド』劇場版では、大ショッカーの怪人として登場。『仮面ライダーW』と『ディケイド』のクロスオーバー作品ではスーパーショッカーの怪人として登場。
平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
地下帝国バダンの幹部怪人として登場。
ハチ女ズー
  • 身長:189cm / 体重:79kg / 最高飛行速度:時速870km / 最高高度:5000m
3幹部の一人でフォッグの女性神官。戦闘力はあまり高くないが、飛行能力を活かした奇襲戦法を得意とする。手の平から鋭い針を発射する。3幹部で唯一、怪人態でも人語を話す。
アギトに続いてJに襲い掛かるも圧倒され、最後の力を振り絞ってJをフォッグ・マザーに連れて行き、ガライの名を連呼して息絶え、消滅した。
『人造人間ハカイダー』
手配書が登場。
『仮面ライダーZO』
本作とのクロスオーバー作品の映画作品(『仮面ライダーワールド』)にシャドームーンの部下として登場。
トカゲ男アギト
  • 体長:350 - 490cm(尻尾が伸縮する) / 体重:105kg
3幹部の一人の老紳士。トカゲ男に変身。怪力と突進力を兼ね備えた猛者。伸縮自在な尻尾や鋭い牙を使った攻撃を得意とする。また、人間態ではダンプカーの運転もこなす。
物語の冒頭で、自分達の目撃者である耕司を崖下から転落させ殺害し、仮面ライダーJとして復活した耕司に真っ先に襲い掛かったが、Jパンチで脳天を潰されて死亡した。
『人造人間ハカイダー』
手配書が登場。
『仮面ライダーZO』
本作とのクロスオーバー作品の映画作品(『仮面ライダーワールド』)にシャドームーンの部下として登場。
フォッグの怪人たち

「フォッグ・マザー」の産卵室である孵化室に安置された卵から孵ったばかりの怪人たちの幼体。その姿は人のような人面の芋虫を思わせるような姿から、怪物じみた芋虫の姿など、多数の姿があり、グロテスクそのもの。 その旺盛な食欲で生贄を喰らった後、マザーの体内から外へと進出し、惑星の生命体の殆ど全て喰らい尽くす。

  • 3幹部のモチーフは、前作に引き続き『仮面ライダー』第1クール登場の怪人に準じている[1]
  • 本編で登場した三大怪人の他にも竜人、トカゲ男アギトの強化体などがデザイン画(DVD映像特典)に存在する。

仮面ライダーJ

瀬川耕司が腹部のJスピリットにより変身する仮面ライダー。

聖霊の力・Jパワーを力の源とし、指をJの字型に構えるJサインには、Jパワーを高める効果があり、変身時や必殺技の発動時などにたびたび使用する。必殺技は「Jキック」(発声はライダーキック)、「Jパンチ」、「Jチョップ」、「Jエルボー」。 戦闘力のみならず、治癒能力も高く、劇中ではアギトやズーとの戦闘で傷を負いながらもすぐに回復し、その後の戦闘に全く支障をきたしていない。

予告編ではJを「14人目の改造戦士」と紹介しているがこれはブラックとRXを同一人物として一人と数え、真を「12号」、ZOを「13号」としたものであり、後の『ネット版 仮面ライダーディケイド オールライダー超スピンオフ』で設定の整理が行われ、BLACKを11号、BLACK RXを12号、真が13号、・ZOが14号になり公式にはJは15号目のライダーとなっている。

  • 身長:194cm / 体重:84kg / ジャンプ力:一跳び150m
ジャンボフォーメーション
フォッグ・マザーとの決戦においてJが巨大化した形態。大地に宿る全ての精霊たちがJに力を注ぐことで初めて可能となった「奇跡の形態」。この形態における身長は40m[6][7]
重量12000tのフォッグ・マザーを吹き飛ばす打撃力、雲の上まで達する跳躍力など、全ての面で驚異的なパワーアップを遂げている。必殺技は「ジャンボライダーキック」。
ジェイクロッサー
  • 全長:2100mm
  • 全幅:900mm
  • 全高:1310mm
  • 重量:135kg
  • ジャンプ力:90m
  • 最高時速:1330km
Jパワーを動力源とするJ専用のスーパーバイク。瀬川耕司の愛車である市販バイク(スズキTS200R)がJパワーを受けてこの形態に変形する。1000℃の高温にも耐えるボディを持ち、天候や路面状況を問わずに常に最高性能を保つことができる。空中からの体当たり技「ジェイストライク」などでJと共に戦う。
ベースマシンはスズキ・DR250S

客演情報

平成ライダーの映画に登場する際にはジャンボフォーメーション化する事が多い。概要の節に記載した通り、ジャンボフォーメーションはJの基本能力では無いのだが、どの様に巨大化しているのかは不明。

仮面ライダーZO
本作とのクロスオーバー作品の映画作品(『仮面ライダーワールド』)と小説作品(『HERO SAGA』)にそれぞれ登場。
『仮面ライダーワールド』では、ZOとともにシャドームーンの怪人軍団と戦い、ラストでは巨大化したシャドームーンに対抗して巨大化する。
『HERO SAGA MASKED RIDER ZO EDITION -ZO vs J-』では、ドラスに吸収され赤ドラスVer.2となるものの、ZOに救われる。ラストは、ドラスとフォッグ・マザーが合体したフォッグ・ドラスと対決する。
仮面ライダーディケイド
『ディケイド』劇場版および、『仮面ライダーW』とのクロスオーバー作品に登場。声はどちらも根本幸多
『ディケイド』劇場版では、キングダークが現れた時に仮面ライダーディエンドにジャンボフォーメーションの状態で召喚され、キングダークと戦うも敵わず、直後にディケイドがファイナルフォームライドすることで変形したジャンボディケイドライバーと合体、仮面ライダーディケイド コンプリートフォーム ジャンボフォーメーションとなった。最後に出てくる役どころのため、Jのみオールライダーのスチールに写っていない。
仮面ライダーW』と『ディケイド』のクロスオーバー作品では、ディケイドを倒すためジャンボフォーメーションの状態で戦うも激情態のギガントとサイドバッシャーの猛攻を前にして、カードに封印されてしまう。
仮面ライダーオーズ/OOO
仮面ライダー電王』とのクロスオーバー作品に登場。ショッカーの怪人連合を倒すべく、人々の思いを受けて他のライダーと共に登場。本作でも戦ったコブラ男ガライと交戦する。また平成ライダーシリーズでは初めての等身大で登場した他、今回はライダーが集合したスチール写真に映画、VシネマのみライダーであるシンやZOと共に掲載されている。
スーパーヒーロー大戦シリーズ
第1作に、ゴーカイレッドに他のライダー共々時空の狭間に消されていたが終盤で他のライダー、スーパー戦隊と共に復活し大ショッカー、大ザンギャックと戦った。
平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
ジャンボフォーメーションの状態で仮面ライダーフォーゼ(ロケットステイツ)を倒すが仮面ライダー鎧武(スイカアームズ)の攻撃に敗れロックシードに変えられた。終盤で復活し、平成ライダーとの最終決戦では仮面ライダーZOと共に仮面ライダークウガ仮面ライダーアギトと戦った。

キャスト

スーツアクター

テンプレート:出典の明記

スタッフ

音楽

主題歌・挿入歌および劇中BGMは、前作『ZO』と同じく川村栄二が手掛けた。なお、本作のBGMは『重甲ビーファイター』に流用されている。

主題歌

「心つなぐ愛」
  • 作詞:大津あきら / 作曲:川村栄二 / 歌:BYUE(バイユー)

挿入歌

「Just One Love」
  • 作詞:大津あきら / 作曲:川村栄二 / 歌:BYUE

他媒体展開

映像ソフト化

  • VHS(セル、レンタル共通)、LD(セルのみ)がリリースされている。
  • DVDは2003年12月21日発売。

漫画作品

『仮面ライダーJ』
小石さとしが執筆。てれびくんにて連載された。

小説作品

『仮面ライダーJ』
小学館スーパークエスト文庫から脚本を担当した上原正三によるノベライズが1994年4月に刊行された。
HERO SAGA MASKED RIDER ZO EDITION -ZO vs J-』
本作と『仮面ライダーZO』のクロスオーバー作品。仮面ライダーJとフォッグマザーが登場。

他映画作品

仮面ライダーワールド
本作と『仮面ライダーZO』のクロスオーバー作品。仮面ライダーJが登場。
人造人間ハカイダー
本作に登場した怪人の手配書が登場。
劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー
『仮面ライダーディケイド』の映画作品。仮面ライダーJとコブラ男ガライが登場。
『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』
仮面ライダーW』と『ディケイド』の映画作品。仮面ライダーJとコブラ男ガライが登場。
オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー
仮面ライダーオーズ/OOO』と『仮面ライダー電王』の映画作品。仮面ライダーJが登場。
仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦
仮面ライダーシリーズスーパー戦隊シリーズの映画作品。仮面ライダーJが登場。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:仮面ライダーシリーズ
  1. 1.0 1.1 1.2 テンプレート:Cite book
  2. 2.0 2.1 2.2 『仮面ライダー 悪(ショッカー)の系譜』樹想社、2003年5月、p.173。ISBN 4877770496
  3. バンダイ刊エンターテイメントバイブル『仮面ライダー大図鑑 J・ZO・真編』の記述から。
  4. 仮面ライダーJ超全集より。
  5. これを逆手に取り、後のオリジナルストーリーHERO SAGAにおいてZOとJを結び付ける物語が描かれ、ZOを助けた巨木やミュータントバッタの正体がJを作った地空人であり、彼らはZOを元にしてJを作ったという設定が創られた。
  6. 竹書房『仮面ライダー画報』
  7. この身長は『ウルトラマン』と同じ背丈である。
  8. テンプレート:Cite book