ルパン三世 風魔一族の陰謀

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テンプレート:Infobox Filmルパン三世 風魔一族の陰謀』(ルパンさんせい ふうまいちぞくのいんぼう)は、モンキー・パンチ原作のアニメルパン三世』の劇場映画第4作。東宝系で1987年12月に劇場公開された日本のアニメーション映画である。もともとはシリーズ初のOVA作品として企画されていた。

概要

アニメーションの制作は『ルパン三世 カリオストロの城』、『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』を担当した東京ムービー新社の子会社テレコム・アニメーションフィルムが請け負った。テレビシリーズ放映中の劇場版やテレビスペシャルとは異なり、テレビ局は製作に名を連ねず、東宝と東京ムービー新社が製作している。

本作品はもともとOVAとして企画制作が進められていたが、ビデオ販売に先駆けて劇場公開されることになった[1]1987年12月18日に東宝系で封切られたが、東京ではテアトル池袋、大阪では玉造東宝[2]で、上映館数はごくわずかに留まった。テレコム・アニメーションフィルム公式サイトではOVA作品として紹介されているが[3]、実際にビデオリリースがなされたのは劇場公開の後、1988年4月である。本作がOVA作品なのか劇場用映画作品なのか、扱いが分かれることもある[4]

本作品の一番の特徴は、声優陣が従来のシリーズから一新されたことである。ルパン三世に古川登志夫、次元大介に銀河万丈、峰不二子に小山茉美、石川五ェ門に塩沢兼人、銭形警部に加藤精三がそれぞれ起用され、「ニュー・ルパン」と銘打って発表され、後述のように様々な波紋を呼んだ。ルパン三世シリーズで声優陣総入れ替え[5]が行われたのは、全シリーズ中、本作のみである。

本作には作品の責任者である監督が存在せず、代わりにテレコムを率いるアニメーター大塚康生が監修を務め、原画マンや作画スタッフが、シークエンスごとにアイデアを出し合い作画する、というかつての東映動画的なスタイルとなった。これは大塚の著書『作画汗まみれ 増補改訂版』によると、当初監督に抜擢された演出家の提示した絵コンテが、テレビアニメ的なアップや口パクを中心とした枚数を省略するスタイルだったため、劇場長編のクオリティ(例えば宮崎駿高畑勲の監督作品)の作画スタイルで育って来たテレコムの作画スタッフの要求に応えらなかったため、とのことである[6]

TV第1シリーズの作画監督である大塚康生が参加していることもあり、ルパンのジャケットの色はTV第2シリーズの「赤」ではなく第1シリーズの「緑色」である[7]が、赤いジャケット自体は登場しており、ルパンではなくゲストキャラクターの紫が、ルパンが持っていた私服の中から選んだ着替えとして、終始着用している。

声優のみならず、ルパン三世の劇場版長編およびOVA作品では唯一「ルパン三世のテーマ」が使用されておらず、これまで音楽を担当していた大野雄二が降板。録音監督など音響スタッフも交代している[4]

仮題は『ルパン三世 五右衛門紫変化』[1]。公開前の雑誌や主題歌レコードのジャケットではこのタイトルが使われていた。

声優陣入れ替え

本作では、ルパンファミリーの声優陣の総入換えが実施された。原作者モンキー・パンチは、製作側から、当時の東京ムービーの経営不振によりギャラの高い山田康雄らを降板させて、制作費を抑えるためと説明を受けたと語っている [8]

一方、これまでのイメージとは異なる作品にしようとしたため、山田康雄のコミカルな演技を是としないスタッフの意図で変更がなされたとの情報もあり、アニメライターの小黒祐一郎はおそらくはギャラと演技の両方が理由ではないか、としている[9]

声優が交代する件について、モンキー・パンチは、レギュラー声優に必ず了承を得るようスタッフに釘を刺したが、山田には伝わっていなかった。公開の1年後の深夜、モンキー・パンチに山田から怒りの電話がかかり、30分ほど怒鳴られて非常に怖い思いをしたという。2年後に放送されたテレビスペシャル第一弾『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』で顔合わせをした際に、モンキー・パンチは改めて謝罪したがギクシャク感が残った[10]。1995年、山田の訃報の電話を受けたモンキー・パンチは本作での誤解を解けないまま亡くなったことに声をあげて泣いたと語っている[11][12]

声優の一新はファンからの評判も芳しくなく、製作した東京ムービー新社には苦情が寄せられて、次作の『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』から元のキャストに戻されることになった[9][13]

あらすじ

飛騨の山奥にある神社で、石川五ェ門と墨縄家の跡取り娘である紫との結婚式が行われていた。いにしえの習わしに従い、墨縄家の壺が五ェ門に手渡されようとしたその時、覆面装束の一団が壺を奪おうと現れた。ルパン達の活躍で何とか壺を取り返したのもつかの間、花嫁の紫がさらわれてしまう。

その壺には墨縄一族の先祖が残した財宝のありかが記されていた。 そして、それらを狙う風魔一族は、四百年もの間その財宝を狙っていた。それを知ったルパンたちは、墨縄家の隠し金庫から壺を盗み出して紫との交換へ向かう。

一方、風魔はルパンが死亡したと思いこんで警察官を引退し、山寺の住職となった銭形警部を呼び寄せた。ルパンと風魔、双方ともあわよくば壺と紫を両方手に入れようと思っていたが、交換場所である機関車整備庫に銭形警部がやってきたため、壺は風魔、紫はルパンへと入れ替わるだけになった。その後、五ェ門がルパンに財宝から手を引けと迫るが、ルパンはすでに壺の秘密を解読しており、五ェ門・紫とは別行動をとることになる。

不二子は単独で風魔を調査し、財宝の秘密に探ろうとするが逆に捕まってしまい、不二子につけた発信器を逆手に取られたルパンは銭形率いる警官隊と派手なカーチェイスを演じるハメになる。

不二子は自力で風魔のアジトを脱出し、壺の底に隠されていた黄金の鍵を手に入れていた。その鍵こそ、財宝が隠された洞窟の落盤を防ぐ安全装置だったが、それはすでに風魔に財宝を奪われまいとする墨縄老人の手によって破壊されていた。

財宝が眠る洞窟へ乗り込んでいく風魔、五ェ門と紫、そしてルパンたち。そこに仕掛けられた様々な罠や迷路、幻覚ガスなどを突破し、ついにたどり着いた地下空洞には、すべてが黄金でできている巨大な財宝の城が建っていた。

刻々と地下空洞の落盤が迫る中、黄金城の財宝を巡ってルパンと風魔の最終決戦が開始された。

ゲストキャラクター

墨縄紫
- 荘真由美
飛騨に住む墨縄家の跡取りの孫娘で、明るく恋愛に積極的な性格の少女。五ェ門との結婚が決まり婿養子として迎えようとするが、墨縄家の財宝である壺を狙ってきた風魔一族にさらわれてしまう。
劇中では結婚は成されないままであるが、五ェ門に「待っててあげないからね」と言いながらも、ルパンの「また会おうね~」という台詞には頷いている。なお、五ェ門のことは、「五ェ門さま」と呼んでいる。
墨縄老人
声 - 宮内幸平
からくり細工で有名な墨縄家の当主で、紫の祖父。遙か昔より伝えられている墨縄家の財宝の隠し場所を示した壺を家宝とし、それを守るためだけに生きていて、孫娘の命よりも壺を優先しようとする。しかし、作動した仕掛けで崩壊が決定打になった洞窟内に紫が入っていった事を知ると、怪我の身体を押して銭形警部の案内役を申し出るなど、愛情は持っていた。
設定では、その後ルパンや五ェ門を追って再び世界中を飛び回る銭形警部の家族の後見を、現在も引き受けているという。(銭形の家族に関する設定は、銭形幸一の解説を参照。)
風魔一族のボス
声 - 広瀬正志
その名の通り風魔一族の頭領で、大仏をスキンヘッドにしたような顔をした大男。一党を建築会社に偽装し、世間の目を欺いていた。風魔の兵隊を多く従えているが、自身も硬貨を使った指弾や六節棍を自在に操る格闘家で、五ェ門と互角以上に渡り合える程の実力者。五ェ門との一騎打ちを繰り広げたが、最期は五ェ門の斬鉄剣で斬られ、その後洞窟の崩壊に巻き込まれ死亡した。
風見刑事
声 - 千葉繁
本庁所属の刑事。死亡した(ということになっている)ルパンを供養するために出家した銭形にルパンを発見したという報告をして復職させるが、正体は風魔一族の一員で、墨縄家の財宝を狙っている。彼自身も常人離れした身体能力を持つが、ボスの側近のように振る舞うなど他の兵隊たちと異なり、風魔の大幹部である。
紫を人質に五ェ門を追いつめるが、最後は紫の捨て身の機転で黄金の城から谷底へ転落し、消息不明となる。
ガクシャ
声 - 中原茂
その名の通り学者のようであるが、正確な素性は不明。壺やからくり細工の解析を担当し、風魔の兵隊に対する指揮権も持っているが、戦闘能力は皆無に近い。ルパンがからくり城で使用した幻惑ガスの影響で兵隊たちと戦う羽目になるが、その後の行方は不明(洞窟を脱出した後逮捕された風魔の兵隊たちの中に彼の姿は無かった)。

登場メカについて

この作品は、TV第1シリーズ末期や劇場映画第二作『ルパン三世 カリオストロの城』に登場した、フィアット 500が再登場している。しかし、今回のフィアット500はスーパーチャージャー付きエンジンではなく、水陸両用仕様だった(水上では車体が半分ほど水没するのでマフラーを延長する)。ナンバーは日本が舞台なので「R-33」ではなく「岐5 へ2150」であった。また、銭形警部が乗車するパトカーも『カリオストロの城』と同じ410型日産ブルーバードを使用しているが、埼玉県警ではなく舞台の設定上岐阜県警となっている。また、銭形とルパンが再会した直後のカーチェイスで登場した暴走車両(銭形が危うく轢かれそうになる)は、『カリオストロの城』の冒頭でクラリスが使用していたシトロエン2CVである(ナンバーも「F-73」になっている)。

このほか、鉄道車両では茶色に塗られたDF50(車両ナンバーはDF50 63)や能勢電鉄610形らしき車両が登場している(両者とも実在する車両だが、岐阜県内での国鉄線走行および鉄道会社への譲渡の実績は無い)。

銃は、「落盤の危険がある」ということで殆ど使用されていないが、風魔はウージーを所持している。

声の出演

スタッフ

脚注

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外部リンク

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  1. 1.0 1.1 「『ルパン三世・風魔一族の陰謀』劇場公開決定!!五右ェ門、一大奮起」、『アニメージュ』1987年12月号、徳間書店、p.86.
  2. この映画館は1991年3月閉館、なお併映作品は「カリオストロの城」
  3. 作品紹介 ルパン三世 風魔一族の陰謀 テレコム/アニメーションフィルム公式サイト内
  4. 4.0 4.1 小黒祐一郎「アニメ様365日 第420回『ルパン三世 風魔一族の陰謀』」 WEBアニメスタイル 2010年8月2日
  5. 本作品の声優たちも、公開当時のパンフレットでは(先輩たちを差し置いて)自分らが演じることにつき、申し訳ないようなコメントの記載がある。
  6. 大塚康生『作画汗まみれ 増補改訂版』徳間書店、2001年、pp.196-198
  7. 小黒祐一郎「アニメ様365日 第421回『風魔一族の陰謀』のキャラデザインと作画」 WEBアニメスタイル 2010年8月3日
  8. 不二子フェチ倶楽部編著『ルパンも知らなかった!峰不二子の謎』祥伝社、1999年、p.238。モンキー・パンチインタビューより
  9. 9.0 9.1 小黒祐一郎「アニメ様365日 第422回『ルパン三世 風魔一族の陰謀』のキャスト変更」 WEBアニメスタイル 2010年8月4日
  10. 後のTVスペシャルシリーズ第2作『ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎』では、『金曜ロードショー』に2人でゲスト出演していた。
  11. 不二子フェチ倶楽部編著『ルパンも知らなかった!峰不二子の謎』祥伝社、1999年、pp.239-240。
  12. 取材・文 岩崎真美子「(新)平成ソフトビジネスの仕掛け人たち 30年のルパン三世」『DIME』1996年5月23日号、pp.57-60。
  13. 山田の没後はルパン役を栗田貫一が担当し、2011年のテレビスペシャルではルパン・次元を除くメインキャストの交代が行われた。