リーマス・ルーピン

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リーマス・ジョン・ルーピン(Remus John Lupin)は、J・K・ローリングの小説『ハリー・ポッター』シリーズ、及びその派生作品に登場する架空の魔法使いである。

概要

主人公ハリー・ポッターが3年生の時、ホグワーツ魔法魔術学校で「闇の魔術に対する防衛術」を教えた魔法使い。自身もホグワーツの卒業生であり、ハリーの父ジェームズ・ポッターや、ハリーの名付親シリウス・ブラックとは学友であった。

登場巻

3巻4巻(名前のみ)、5巻6巻7巻

人物

名前・通称

名前のRemusはローマ建国神話のレムス(狼に育てられた)と同綴であり、名字のLupinも「狼のような」を意味するlupineと類似し、狼との関連性を暗示した名前である。Lupinはアルセーヌ・ルパンとも同綴である。

7巻でラジオ出演の際用いた偽名:ロムルスはレムスの双子の兄弟である。ただし、ルーピンは双生児ではない[1]

学生時代、シリウスやジェームズ、ピーターからはムーニー(Moony)と呼ばれた。moonyは「月の」という意味の形容詞であり、ルーピンが満月の夜に狼に変わることにちなんだ愛称である。シリウスはアズカバンを脱獄した後も時々ルーピンをムーニーと呼んでいた。

外見

顔は青白く病人のようにやつれ、鳶色の髪(原文:light-brown hair)には30代半ばながら白髪が交じっている。使い古したトランクに、継ぎ接ぎだらけのローブを纏っているが、ルーピンが登場するたびに以前よりもみすぼらしくなっているとの描写がある。

また、3巻で「叫びの屋敷に連れて行かれている時は、襲う対象がないために自分を咬み、引っ掻いていた」と発言していることから、身体のあちこちに傷があると思われる。映画版では実際に顔に無数の傷跡が見られた。

来歴[1]

生い立ち・学生時代

1960年3月10日、魔法使いの父ライアル・ルーピン、マグルの母ホープ・ルーピン(旧姓ホーウェル)の間に一人息子として生まれる。

1965年頃、魔法省勤務の父が、マグルの子供2人の死亡に関して人狼のフェンリール・グレイバックの尋問を担当する。この際、父がグレイバックの前で人狼を侮辱する発言をし、復讐としてとしてリーマスは5歳の誕生日を迎える前にグレイバックに咬まれ、人狼となった(この経緯については長い間知らされなかった)。父は手を尽くしたが、治療をすることはできなかった。

その後、一家はリーマスの状態を隠す羽目に陥り、リーマスは他の子供と遊ぶことは禁じられ、両親から愛されていたとはいえ、孤独な少年時代をすごした。魔法界の人狼に対する忌避と実際の危険性から、ホグワーツに入学はできないと判断され、父から家庭で教育を受けていた。

しかし1971年のリーマスの11歳の誕生日直前、アルバス・ダンブルドアがルーピン家を訪れ、変身時は叫びの屋敷に隔離されるという条件で、リーマスにホグワーツ入学を許可する。リーマスはこの時、これまでの人生で一番喜んだという。

1971年ホグワーツへ入学しグリフィンドール生となった。ルーピンが人狼であることは学生には伏せられ、そのため、事情を知らない学生からは病気を患っていると思われていた。

入学後、同寮の同級生ジェームズ・ポッターシリウス・ブラックは、リーマスのユーモアセンスや優しさに惹かれ、すぐに友達になった。またリーマスは同寮のピーター・ペティグリューにも親切にしており、リーマスがジェームズとシリウスを説得したことで4人が友達となった。リーマスが満月の夜に姿を消す彼に3人は不審を抱き、2年次にジェームズとシリウスにより人狼であることを知られる。3人は動物の姿であれば狼と化したルーピンに襲われないと考えて数年がかりで動物もどきになり、友情を示す。ルーピンは変身の際は「叫びの屋敷」に閉じ込められていたが、3人の学友が動物もどきになった後は、満月の夜になるたびに4人で「叫びの屋敷」を抜け出し、ホグワーツ城の周辺を冒険していた。その成果が「忍びの地図」である。

又、ジェームズとシリウスが大型の動物に変身していた為、ルーピンが襲う人間が居ないことで自分を傷つけるような感情の高まりを抑制していた。その為か、ジェームズの死後も彼に感謝するような発言が見られる。

5年生時には、友人のジェームズとシリウスの行き過ぎた悪戯を止めることを期待されて(とリーマスは推測している)監督生になっているが、スネイプとの対立とそれに付随する悪質な「悪戯」を不快に思いつつも、自分を友人と認めてくれた恩から積極的になれず歯止めには成らなかった(もっともルーピンの人柄と責任感は周りから認められておりスネイプでさえもルーピンの行動は悪意ではないと認めていた)。だがシリウスは後に「リーマスのお陰で自らの行為を時に恥じる機会が得られた」と述べている。 また、試験の解答にふざけた答えを得意気に書いたと述べる(第5巻での発言だがジョークの可能性もあり)など、虐めまがいの行き過ぎた悪戯を除けば、悪ふざけは嫌いではなかった。

成人後

ホグワーツ卒業後は、不死鳥の騎士団の一員として活動していた。シリウスからポッター夫妻の秘密の守人をピーターに変更したことを知らされず、彼とは互いをスパイではないかと疑っていた。

1981年、騎士団の任務中に、ポッター夫妻の死、及びシリウスがピーターを殺してアズカバンに収監されたという知らせを聞き、大きくショックを受ける。

その後は、父の安らかな生活を脅かしたくなかったため、父と一緒に暮らすことは断り(母はすでに亡くなっていた)、能力に見合わない仕事を転々としてその日暮らしの生活を送ることになる。その間に変身しても理性を保てるようになる脱狼薬が開発されるが、複雑で材料が高価な薬であったため、ありつけることはなかった。

1993年、ダンブルドアに招聘されて母校の「闇の魔術に対する防衛術」教授に就任する。一部のスリザリン生を除く全校生徒から好かれており、他の教授からの評価も高かった。友人の遺児であるハリーを気にかけ、守護霊の出し方を個人教授する。この間はスネイプに脱狼薬を作ってもらっていた。

1994年6月、ハリーから没収した忍びの地図により、ピーターが生存していることを知ると、叫びの屋敷へ急行。シリウスと再会し、真実を知るとともに、互いの誤解を解いて友情を取り戻す。シリウスと共に裏切り者のピーターを殺そうとするが、父親の友人を殺人者にさせたくないハリーによって止められる。その後ピーターを真犯人として突き出そうとするが、その夜、薬を飲まなかったことから人狼に変身し、ピーターはその隙に逃亡してしまう。翌朝、マーリン勲章を逃したセブルス・スネイプの腹癒せによって人狼であることを暴露され、辞任する。

退職後は、反人狼法が施行されていたことから、就職はできなかったと思われる。この間は、後任者のアラスター・ムーディに、自分が教えた内容について手紙を書いたりしていた。

1995年夏、不死鳥の騎士団が活動を再開。シリウスより連絡を受け、ダンブルドアの命でしばらくの間シリウスを匿う。その後リーマスはシリウスと共に彼の実家であるグリモールド・プレイス12番地に居住し、その一員として行動する。騎士団の同僚ニンファドーラ・トンクスと親しくなり、互いに惹かれ合うようになる。リーマスは自身が人狼であることから想いを押し込めるが、トンクスはリーマスが自分のことを好きだと確信していた。

1996年6月、魔法省の戦いに参加。戦いでは負傷しておらず、ハリーと共にシリウスの死を目撃しており、ハリーがシリウスを追ってベールに向かうのを止めた。その後、ダンブルドアの命を受け、スパイとして人狼と一緒に生活し、自分を噛んだのがフェンリール・グレイバックであることを知る。

1997年6月、ホグワーツ城天文塔の戦いに参加。スネイプがダンブルドアを殺害したと知り絶望する。その際、不完全ながら人狼の呪いを受けたビル・ウィーズリーフラー・デラクールが受け入れたことを契機に、トンクスは人狼でもリーマスへの愛は変わらないと詰め寄る。リーマスはついにトンクスの想いを受け入れ、ダンブルドアの葬儀には二人で手をつないで出席した。同年7月頃、スコットランド北部の酒屋でニンファドーラと結婚式を挙げる。その後、「七人のポッター」作戦でハリーに変身したジョージの護衛を担当。この際ジョージは(誤射であるが)スネイプの呪いを受ける。

1997年8月、ニンファドーラの妊娠が判明すると、人狼であることの苦悩からハリーらの分霊箱探索の旅への同行を申し出るが、妻子を捨てることについてハリーと激しく口論し決別する(映画版ではこの描写は省略された)。その後は妻の元に戻り、翌1998年4月に息子テディ・リーマス・ルーピンが生まれた際には、ハリーを息子の後見人(名付け親)とする。なお、人狼の特徴は息子には遺伝しなかった。

1998年5月2日、ホグワーツ防衛隊の一員として、ヴォルデモート率いる死喰い人と戦う。数か月安全な場所にいて決闘の技術が鈍っていたことから、アントニン・ドロホフの手にかかって死亡する。その後、蘇りの石の力で、霊としてハリーの前に姿を現した。

死後には、人狼としては初めて勲一等マーリン勲章を授与された。

性格・才能

苦労人であるため、しっかり者で性格は落ち着いている。自分を受け入れてくれた者への恩義や友情には忠実と思われる。作品中、ダンブルドア以外で、臆すること無く「ヴォルデモート」の名を口にした最初の人物。

基本的に優しい性格であり、生徒への指導なども丁寧に行っていた。しかし、第3巻で裏切り者のピーターを殺そうとしたり、第7巻では死喰い人に毅然とした態度を取らなかったハリーを糾弾したり、家族を捨てることに関してハリーと口論して吹き飛ばすなど、時には容赦のない言動も見られる。また、巻が進むにつれて、シリウスやダンブルドアの死、妻の妊娠などに際し、より感情的になっていく描写も見られる。

ユーモアのセンスもあり、ネビルのボガートのスネイプをネビルの祖母の姿に変えさせるといった、周囲を楽しませる言動も得意な模様。

人狼になるのは非常に苦痛らしく、ボガート(まね妖怪)は銀白色の球(=月)に変わる。また人狼に対する世間の偏見から、自嘲癖がある。トンクスとの結婚後は、人狼と結婚して肩身が狭くなったトンクス一家の処遇について思い悩むことになる。

教師としての評価は高く、ミネルバ・マクゴナガルは「(ハリーは)有能な教師によって行われた『闇の魔術に対する防衛術』のすべてのテストで、高い成績を収めています」と発言している(ハリーはルーピンが担当した3年次の試験で満点を取っている)。ハリーはルーピンから「守護霊の呪文」を教わり、3巻の終盤で完全に使いこなせるようになった。

本人曰く「昔から薬を煎じるのが苦手」。

作者によれば、守護霊は(人狼でない)狼だが、自身の守護霊の形態を嫌い、人前ではわざと形のはっきりしない守護霊を出すことが多かったという[2]

また、忍びの地図を作った四人のうちの一人である。

人間関係

先述したようにジェームズ、シリウス、ピーターとは学友であり、人狼である自分を受け入れてくれた彼らに対し深い感謝の念を抱いている。そのため、ジェームズとシリウスに対して、彼らの行き過ぎた悪ふざけに必ずしも賛同しない部分はあったが、「彼らは何でもよくできた。」と彼らを贔屓する様子も見られる。

ジェームズは「リーマスのことについてはふわふわした小さな問題(取るに足らないこと)」、「友を信じないのはこの上ない不名誉」などと発言していたと、後年リーマスがハリーに伝えており、友達思いだったジェームズに感謝している様子が伺える。

シリウスに対しては、ジェームズとリリーを裏切り、ピーターを含む大量の人間を殺害したとして逮捕された後は、彼を有罪だと思い、彼らの話題を避ける要因にもなっていた。後に、シリウスがピーターに罪を着せられていたことが判明すると、すぐにお互いを許し合って友情を取り戻し、一緒にピーターを殺そうとしていた。ヴォルデモート復活後は共に騎士団で活動し、シリウスと共にハリーにクリスマスプレゼントを贈ったり、父親の過去で悩むハリーの相談にシリウスと共に答えていたりしていた。

ホグワーツの同期生には他にスネイプがいる。ホグワーツ在学中にはスネイプに秘密をかぎ回られており、リーマスがスネイプをどう思っていたかは不明であるが、ホグワーツ勤務中にスネイプにトリカブト系脱狼薬を調合してもらっていたこともあり「スネイプのことは好きでも嫌いでもない」と発言している。ただし、他の騎士団員同様、スネイプを味方だと信じた理由はダンブルドアが信じているからという理由であり、恩義あるダンブルドアがスネイプに殺害された後はスネイプを憎むようになった。七人のポッター作戦でも、ルーピンを助けようとスネイプが死喰い人に放った呪文がジョージに当たったことからスネイプの事を恨んでおり、「あいつは昔からセクタムセンプラが十八番だった」と発言している。リーマスは結局スネイプが味方だと知る前に殺された。

ダンブルドアに対しては、自分をホグワーツの生徒として受け入れてくれたこと、及び教師に採用してくれたことから、恩義を感じており、絶大な信頼を寄せていて、ダンブルドアのためなら少々危険な任務も受け入れる様子。一方、自分たちが学生時代にダンブルドアに内緒で悪戯を行っていたことに対し、罪悪感も感じている。ダンブルドアがスネイプに殺された際は、ハリーがこれまで見たことがないほど取り乱していた。

ハリー・ポッターに対しては、親友の息子であること、吸魂鬼の影響を受けやすいことや、騎士団で守る義務があることなどから、他の生徒と比べて気にかけている様子が伺える。最終的にリーマスの手ほどきでハリーは守護霊の呪文をマスターした他、神秘部の戦い、天文塔の戦い、七人のポッター作戦でも共に戦っている。リーマスが妻子を捨てようとした際は、親をなくしたハリーは「親は子供の側にいるべきだ」と糾弾するが、息子が生まれた際に和解し、リーマスはハリーに息子の後見人を頼んでいる。最終決戦でのリーマスを含む多数の犠牲は、ハリーに深い悲しみをもたらした。

後に妻となるニンファドーラ・トンクスに対しては、お互いに想いを寄せ合っていたが、人狼であることから自分はニンファドーラの相手にはふさわしくないと考えていて、彼女と距離を置こうとしていた。最終的に両者は結婚するが、この想いは変わらず、ニンファドーラが妊娠した際は「自分みたいな父親はいないほうがいい」と思っていた。ハリーに諭されてニンファドーラの元に戻った際には考えを変えたと見られ、息子の生誕ではとても幸せそうにしていた。

ドローレス・アンブリッジが起草した「反人狼法」により今まで以上に就職が困難になったため、シリウスが「リーマスがあの女についてどう言ってたか(ハリーに)聞かせてやりたいよ」と語る程度に、アンブリッジを快く思っていない。

家族

映画・ゲーム

アズカバンの囚人』から登場。デヴィッド・シューリスが演じていた。日本語版の吹き替えは郷田ほづみが担当した。

ゲームでは田中秀幸が日本語版の声を担当していた。

なおシューリスは『アズカバンの囚人』にて監督であるアルフォンソ・キュアロンから"gay junkie"として演技するように指導を受け、ルーピンをゲイであると解釈していた。 だが『謎のプリンス』からトンクスとの恋愛を知り、役作りを軌道修正した[3]

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. 一部『ポッターモア』からの情報
  2. 『ポッターモア』からの情報
  3. http://www.tor.com/blogs/2011/04/every-so-often-remus-lupin-is-gay
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