リバースモーゲッジ

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リバースモーゲッジ(Reverse mortgage)とは、自宅を担保にした年金制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段。

概要

自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を毎月の年金という形で受け取る。年月と共に借入残高が増えていき、残高に対する利息も未払いのまま残高に複利的に加算される。契約満期または契約者死亡時のどちらか早い時期に一括返済しなければならない。現金で返済できない場合は、金融機関は抵当権を行使して担保物件を競売にかけて返済に充当する。契約者死亡の場合の返済義務は保証人または契約者の相続人が承継する。通常のモーゲッジ(=抵当・担保)ローンでは年月と共に借入残高が減っていくが、この制度では増えていくのでリバース(逆)モーゲッジと呼ばれる。

最終的に自宅を手放す(可能性が高い)ことはその家を売却することに似ているが、契約の期間中はその家に住み続けられることが特徴である。

大きく分けて以下の2つのタイプがある。

  • 自治体などの公的機関が「返済の期待される生活保護」として貸し付ける。
  • 商業銀行によるもの。

日本においては、1981年東京都武蔵野市で導入されたのを皮切りに、主に都市部の自治体が、直接(公社を通じて融資する)あるいは間接(金融機関を紹介する)の形で事業を行っている事例がある。また、厚生労働省が、2002年12月より、都道府県社会福祉協議会を実施主体として「長期生活支援資金貸付制度」を創設し、「不動産担保型生活資金」に制度改正された。民間においても、信託銀行などの金融機関により商品化がおこなわれている。また住宅販売会社がリバースモーゲッジの仕組みを利用して、住宅販売を行っているケースもある[1]

ただし日本では中古住宅市場が活発でなく「ウワモノ(=家屋)は無価値」という文化が根強いので、担保価値が土地のみとされる場合が多い(従って一戸建てが主体で「マンション」などは対象とならないか、または条件が厳しい)。またバブル期には担保割れするケースが多く発生したため、新規販売を停止したり高額不動産所有者に対象を限定しているケースもあり、普及は限定的であり今後の市場成長も期待されない。

以下の2つのリスクがある。

  • 契約の満期を超えて長生きする。
  • 返済時に担保物件の売却価値が借入残高を下回る(担保割れ)。

貸付側は、契約終了時に抵当権を行使するときのトラブルを防ぎ、上記の満期を超えて長生きするリスクを減らすために、通常は以下のような条件を定めている。

  • 契約者単身または配偶者と二人だけの居住する単独または共同所有の持ち家(従って子と同居などは不可)
  • 契約時に契約者(及び同居配偶者の両方)が65歳以上
  • 配偶者がいる場合は配偶者が連対保証人
  • 他に抵当権や賃借権などの設定なし
  • 推定相続人全員の事前承諾

契約終了時に借入残高と累積利息を返済しなければならないことは通常の借金と変わらない。例えば満期または契約者死亡で現金返済ができず、担保物件が競売されても回収金額が借入残高+累積利息に満たない場合は、不足分の返済義務は保証人および契約者の相続人が承継する。また、本来住宅ローンはあくまでも借主の返済能力などを基にした信用に対して貸し付けるものであり、借主は返済に励むことが期待され、担保物件の処分(抵当権の行使、競売)は万が一返済不能となったときに行われる。一方でリバースモーゲッジは、借主は返済を予定せず、最初から貸倒れを予定したローンである。そのため、契約開始時の担保価値を超えた貸付を行うことはなく、通常は発生する利息の累積高と将来の担保価値の下落の可能性を見越して担保価値の半分~70%程度が貸付限度額となる。これを契約期間で割ったものが毎月の「年金額」となる(月払でなく契約時に一括払いなどのプランもある)。

実施主体(日本)

自治体

など

金融機関

など

脚注

  1. 「民間企業によるリバース・モーゲージ」 リバース・モーゲージの手引き

外部リンク