ラクス・クライン

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ラクス・クライン(Lacus Clyne) は、アニメ機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』などのフィクション作品に登場する架空の人物で、ヒロイン(田中理恵)。

プロフィール

矢印右は『SEED DESTINY』時のデータ。

プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの一人娘で、可憐さと奥ゆかしさと知性を兼ね備え、美しい声を持つ歌姫としてプラント国民の間では絶大な人気を博していた。

その社会的影響力もあり、本人の意思とは別にユニウスセブン追悼慰霊団の代表を務めるなど公的行事にも度々参加していた。

プラント国防委員長パトリック・ザラの息子アスラン・ザラとは、許嫁の関係だった。そのアスランからプレゼントされたハロを破談後も大切にしており、最初にもらったピンク色のハロ(愛称・ピンクちゃん)は特に気に入っている。

平和を訴える歌姫としての顔を持つ一方、目的のためには武力行使も辞さない活動家でもある。福田己津央が『DESTINY』放映終了後のインタビュー[1]で「人類を救うためしなければならないと思ったことを実行して世界を丸く収めようとしたデュランダルを討ったキラ、ラクス側は若干正義から外れている」「デュランダルを悪役のように描いたのは演出上の問題であって自分自身はデュランダルを悪だと思っていない」「アスランは『DESTINY』終盤ラクス達と行動を共にしたが、彼女らの行いが本当に正しいかどうか常に疑念を抱いていた」と語っているように、キラ、ラクス側は必ずしも絶対的な正義として描かれているわけではない[2]

名前はラテン語で湖を意味するlacus(英語のlake)。

衣装
艦船に搭乗する際に軍服は着用せず、髪を上げて丈の短い和風の衣装の上に陣羽織のようなものを羽織っている。また、インフィニットジャスティスで地球へ降下した際には、専用と思しきピンク色のパイロットスーツを着用していた。
SEED
深刻な戦闘のさなか、エターナルのブリッジにて発現状態になるシーンがあった。

経歴

機動戦士ガンダムSEED

自由条約黄道同盟ZAFTの広告塔として歌やメッセージをプラント国民に送っていたが、彼女自身は「ZAFT(のメンバー)ではない」と述べている。

ユニウスセブン追悼式典の準備のため民間船に乗って視察に赴いていたが、地球連合軍に遭遇し諍いが起き、逃れるために緊急避難ポッドで脱出させられ漂流していた。そのところを偶然に物資補給のため、ユニウスセブンに寄っていたアークエンジェルに救助され、キラ・ヤマトと出会う。

直後に遭遇したザフト軍との戦闘でアークエンジェルは撃沈寸前の危機に陥るが、同艦のクルーは彼女を人質として利用し、ザフト軍の攻撃を中止させその危機を脱する。はずみとは言え人質を取って攻撃を止めさせるというクルーの卑怯な手段に不満を抱いたキラは、彼女を連れアークエンジェルを脱し、ザフト軍、アスラン・ザラに彼女を引き渡し、プラントへと帰還する。

キラはこの件(捕虜開放)で艦内における軍事法廷に処されるが、当時は軍法上の軍人ではないとの理由で不問に付されている。アークエンジェルの士官達も軍法上の訴追及び緊急避難的措置は法的に正しかったとしながらも、その負い目から処罰は全く考えていなかったようであり、軍法会議は形骸的なものに過ぎなかった。

地球へ降下したキラがアラスカ基地への道中でアスランとの死闘の末に重傷を負った際には、プラントを訪れたオーブのマルキオ導師から託され、彼を自邸に匿い、看護しながら彼と言葉を交わし、さらに相互理解を深めてゆく。

キラの傷が癒えた頃、ザフト軍がオペレーション・スピットブレイクを始動。キラが地球に戻る決意をすると、クライン派のルートを使ってキラに新兵器フリーダムを授ける。しかしその引き渡す様子を政府に知られ、プラント最高評議会議長(パトリック・ザラ)により国家反逆罪で指名手配犯にされる。追われる身となって地下に潜り、クライン派の協力によって国民に反戦メッセージを送りつつ逃亡生活を続けるが、その最中父(シーゲル・クライン)の謀殺を知る。

アスランに発見され再会した折には、その真意を問い質してくる彼に対して逆に何を信じて戦うのか「敵ならば私を撃ちますか?」と反問、アスランのザフトからの離反の契機をなした。

その後アンドリュー・バルトフェルドマーチン・ダコスタクライン派と共に高速戦艦エターナルをザフト軍から奪い、父と訣別したアスランをパトリックから救い出しプラントを脱出。要塞ヤキン・ドゥーエ防衛軍に追撃され窮地に陥ったところを宇宙に上がりフリーダムを駆るキラに救われ、そのままアークエンジェル、クサナギと合流、プラントでも連合でもない第三勢力としてキラやアスランたちと共に戦争終結のため尽力する。

この時に結成された部隊に正式名称は存在しないが、俗称として三隻同盟という名称がある。

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

停戦後はオーブの島にて仲間、マルキオ導師、キラ・ヤマトや孤児らと共に隠棲していた。家事や子供の相手などをする劇中の描写がある。

平和な暮らしを送っていたが、ザフトは執拗にも彼女にコーディネイターで構成された暗殺部隊を差し向けた。この暗殺部隊はキラやアンドリュー・バルトフェルド、マリュー・ラミアスに守られて撃退した。

しかし、更にプロパガンダのために形成手術までして彼女を騙る偽者(ミーア・キャンベル)の存在もあり、高潔な為政者と評判の高かった現プラント最高評議会議長・ギルバート・デュランダルに疑念を抱いてゆく。

オーブ脱出後はキラやアンドリュー・バルトフェルド、マリュー・ラミアスらとともにアークエンジェルを拠点とし、スカンジナビア王国の保護を受けながら潜伏活動を再開し、カガリを彼女の結婚式から連れ去った後説得して協力をとりつけ、ザフトと連合軍の戦闘から起きる戦禍から人々を守るために戦闘に介入、プロパガンダ放送など行い、プラントにも連合にも与しない形での和平実現を目指した。

プラントの情勢やデュランダルの真意を知るため宇宙へ上がった後は、前戦争時にザフト軍から奪取し、戦後は小惑星に偽装して秘匿していた高速戦艦エターナルを拠点として活動、「ファクトリー」「ターミナル」といったクライン派関連組織の協力の元にMSストライクフリーダムなど、オペレーション・フューリーからメサイア攻防戦に至るまで、クライン派の戦力の中核をなすMSの開発を指揮。その中で見聞きする出来事から、デュランダルが新しい世界秩序を構築しようとしているのではないかと考えるに至る。

後にザフト軍のオペレーション・フューリーによって戦場となったオーブにインフィニットジャスティスに搭乗して降下し、オーブを支援。ザフト軍の撤退後、全世界に向けた放送において、ミーアはラクスを演じる偽者で、自分が真のラクス・クラインであること、デュランダルの考えにも軍産複合体の盟主ジブリールの考えにも賛同出来ないことを表明した後、デュランダルの思惑を阻止することを目指し再び宇宙に上がる。

ジブリールによるレクイエム発射によってプラントが被害を受けた時、デュランダルを止める決意を新たにする。その後補給のために月へ寄港しミーアと邂逅するが間もなく彼女の死に直面し、その後彼女のカバンの中からミーアの日記を発見し、中身を読みその純粋な歌への思いに涙した。

ついにデュランダルはアルザッヘル基地に向けて大量破壊兵器レクイエムを使う、ラクスはデュランダルと戦うことを決意し、エターナルに乗りオーブ、ザフト軍及びクライン派による連合艦隊と共闘、終戦までその指揮を執り仲間たちと戦い抜き生存した。

機動戦士ガンダムSEED DESTINY FINAL PLUS 〜選ばれた未来〜

オーブの慰霊碑前でキラ・ヤマトとシン・アスカの会話を横で見守る。メサイア陥落後オーブ、プラント両国間を仲介、停戦協議合意後プラント最高評議会の招聘を受けてプラントに戻り、イザーク・ジュールらと共にプラント最高評議会に臨む。(作中でラクスがどのような地位あったのかは明示されていない。50話に議長という字幕が存在するため、一部で最高評議会議長に就任したのではないかという解釈がある。一方、監督である福田はラクスが議長になったという解釈をTwitter上で否定している。[3]

備考

  • SEEDにて、アスランとの婚約は破棄されたはずだが、実は支持率低下を恐れたパトリック・ザラは公式な公表、手続きはしなかった(口頭のみ)らしく、DESTINYでも2人は表向きは婚約者のままである様で、少なくともプラントの国民はそう認識していた。
  • 小説版『SEED DESTINY』では、前作の活躍から「救国の歌姫」という英雄像が実際のラクス本人の姿から一人歩きしてしまっているとされ、ラクスのそのことの認識も描かれた。ほぼ完全に偶像崇拝と化しているために、終盤でステーションワンの防衛艦隊旗艦の艦長はアークエンジェルとエターナルをロゴスと断定した。
  • アニメ雑誌の人気投票ではヒロインとしてかなりの人気を保ち、カップル(キラ&ラクス)としての人気も根強いが、一方で悪役としてキラと共に上位にランクインした事もある。[4]

ゲームにおける描写

ゲーム作品に登場するラクス・クラインはその作品独自の設定付けが非常に多い。これは角川小説版や漫画『ジ・エッジ』、『コミックボンボン』版やファンディスクなどのメディアミックス作品でも見られる現象である。

第3次スーパーロボット大戦α
立場や行動は原作と同じだが、アニメの設定のみが用いられており、ジャンク屋・クライン派などとの協力関係といった部分はこのゲームでは省略されている。また、エターナル、フリーダムの強奪はバルトフェルド他ごくわずかの仲間と共に起こした行動とされている。
アニメでは存在しなかった、「SEED」能力の発動カットインシーンが見られる。
「歌の力で戦争を止める」という点で、『マクロス7』の熱気バサラミレーヌ・ジーナスらに敬意を覚えており、バサラの影響で戦争を終わらせるために戦う事を決めたと語るシーンがある。また、『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイの姿を見て「自分の進む道を見つけた」とも発言するシーンがある。
スーパーロボット大戦J
天真爛漫な性格がより強調されており、味方と合流した際にはナデシコの名前を「可愛らしい」と評し、ミスマル・ユリカとも意気投合している。
スーパーロボット大戦W
今回は火星の後継者に付け狙われており、第二部後半で、フレイ・アルスターを守るために、ラウ・ル・クルーゼの攻撃からエターナルで庇い、その際の混乱で火星の後継者に誘拐されてしまう。演算ユニットに接続されたミスマル・ユリカを安定させるためにその歌を利用されそうになり、当初は拒否していたもののテレサ・テスタロッサ(以下テッサ)の勧めで最終的には歌う事になる。テッサの狙いはラクスの歌で火星の後継者達の戦意を揺さぶり、彼らの部隊の一部を投降させる事であり、それに成功する。その後、ノイ・ヴェルターに合流してエターナルで戦う。
スーパーロボット大戦Z
ブレイク・ザ・ワールド後から登場。デュランダルに暗殺されかけたことでアークエンジェルのクルーとして多元世界を巡っている。その道中で∀ガンダムキエル・ハイムに扮したディアナ・ソレルと出会っている。その後は原作通りに宇宙に上がり、エターナルの艦長となり連邦に引き渡されそうなディアナを救出しようとした。物語中盤まではアニメと相違ないが、中盤以降は他者との交流を通じることで、武力介入による自身の行動を反省し、新たな道を模索するというアニメと大幅に異なる展開となっている。
また、デスティニー・プランに対してはアニメと異なり、遺伝子で全てが決まれば人が夢や希望が持てなくなる世界になると明確に言葉に表し否定した。
スーパーロボット大戦Kスーパーロボット大戦L
前者はシナリオ中盤以降より、後者はシナリオ後半以降よりエターナルで参戦。後者では、エンジェルダウン作戦時にアークエンジェルにいたため、ミネルバ隊に自らの存在を明示し、プラントにいるラクスがデュランダルが仕立て上げた影武者である事、オーブでザフトらしき部隊に暗殺されかかった事を伝えた。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY 連合vs.Z.A.F.T.II
インフィニットジャスティスでの降下時に着ていたスーツでMSパイロットとして登場する。覚醒時にはキラ、アスラン、カガリ、シン同様「SEED」発動のカットインシーンが存在する。
ガンダム無双2
エターナル搭乗時の陣羽織姿のまま、MSパイロットとして参戦。ハイパーSP攻撃発動時のカットインは、キラ、アスラン、シンと同じく「SEED」発動状態のものとなっている。ゲーム自体がパロディー作品であるため、このゲームにおけるラクスは、「他者に言葉で平和を説きつつ同時に、従わない者は問答無用で武力制圧する」「プレイヤーへのご褒美と称し、敵味方問わず攻撃を加える」「自分に疑いを持ったキラを粛清する」「無断出撃をランバ・ラルにおねだりする」「プレイヤーへの作戦参加要請に対する返答の選択肢がラクス様…である」など、強烈なギャグキャラである。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY GENERATION of C.E.
C.E.73-Extraステージからエターナルに乗艦し戦闘に参加する。その結末は物語の進行によって大きく変化する。ただ、ラクス視点から見るとシナリオのほとんどがバッドエンドというシビアなものとなっている。
Extra3c「歌姫達の声」
自分が本物と名乗るが叶わず。ミーアの護衛任務中のミネルバ隊の艦長タリア・グラディスの判断ではなくFAITHシン・アスカの判断により戦闘を仕掛けられ乗艦を撃破され死亡した。シン・アスカとの戦闘ではキラ・ヤマトの仇を討とうとする。
Extra4a「蘇える光」
最終局面において、ジブリール亡き後のロゴス残党と、月面プトレマイオス基地に向けてネオジェネシスを撃とうとするデュランダル率いるザフトの争いを止めるために、オーブ軍と連合し、戦場に乱入する。しかし、乗艦を撃破されてしまい死亡した。
Extra4b「重なる明日」
ほぼアニメのストーリー通りに行動し、ミネルバと何度も交戦する。最終的に連合・ザフト両軍を止めるためオーブ軍と連合し、戦場に乱入する。このシナリオでは乗艦を撃破されても死亡せず、撤退する。ジブリール艦を撃沈した場合のみ、オーブと共に両軍を調停する。

脚注

  1. 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』公式サイトの『福田監督スペシャルインタビュー』より。
  2. 放送後に製作されたゲーム『スーパーロボット大戦Z』ではその点にも焦点が当てられており、ハリー・オードを介して聞かされたカミーユ・ビダンの一言を受けたラクス(とキラ)が反省し、クライン派が考えそのものを変えるというストーリーが描かれている。
  3. ちなみに福田は自身のTwitter上の発言は、あくまで私的なものでサンライズ公認のものではないことも認めている。
  4. ガンダムエース、アニメージュ、アニメディア、コミックボンボン

関連項目

テンプレート:コズミック・イラ