ムササビ

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テンプレート:生物分類表 ムササビ(鼯鼠、鼺鼠)は哺乳類の一種である。ムササビ属に属する哺乳類の総称でもある。ネズミ目(齧歯目)リス科モモンガ亜科に属する。野臥間、野衾(のぶすま)という異名がある。長い前足と後足との間に飛膜と呼ばれる膜があり、飛膜を広げることでグライダーのように滑空し、樹から樹へと飛び移ることができる。160m程度の滑空が可能である。長いふさふさとした尾は滑空時には舵の役割を果たす。頭胴長27-49cm、尾長28-41cm、体重700-1500gと、同じくモモンガ亜科に属するモモンガに比べて大柄である(ホンドモモンガ Pteromys momonga は頭胴長14-20cm、尾長10-14cm、体重150-220g)のみならず、日本に生息するネズミ目としては、在来種内で最大級であり、移入種を含めても、本種を上回るものはヌートリア位しかいない。

生態

ムササビは日本固有種であり、本州四国九州に生息し、日本国外には生息していない。夜行性で、主に樹上で生活し、若葉、種子、果実、芽などを食べる。地上で採食はしない。大木の樹洞、人家の屋根裏などに巣を作る。メスは1ヘクタール程度の同性間のなわばりをもつ。オスは2ヘクタール程度の行動圏をもつが、特になわばりをもたず、同性同士の行動圏は互いに重なりあっている。

冬と初夏の年2回発情期を迎える。発情期にはメスとの交尾の順位をめぐり、オス同士が激しい喧嘩を繰り広げる。オスは射精後に、「交尾栓」と呼ばれるタンパク質でできた物質を陰茎から放出する。「交尾栓」はメスの内で固まり、白い石鹸状の栓になる。これによりメスの膣内から精液が漏れ出すことを防ぎ、受精の確率を高める役割をしていると考えられる。「交尾栓」があると交尾をすることができない。ムササビの陰茎は「コルク抜き」のような形状をしており、次に交尾しようとするオスは、陰茎を用いて交尾栓を取り除き、交尾を行っている。平均74日の妊娠期間を経て、春と秋に1-2匹の仔を生む。

ファイル:Petaurista leucogenys.JPG
東京都八王子市で撮影された野生のムササビ

モモンガとの相違点

漢字表記の「鼯鼠」がムササビと同時にモモンガにも用いられるなど両者は古くから混同されてきた。両者の相違点としては上述の個体の大きさが挙げられるが、それ以外の相違点としては飛膜の付き方が挙げられる。モモンガの飛膜は前肢と後肢の間だけにあるが、ムササビの飛膜は前肢と首、後肢と尾の間にもある。また、ムササビの頭部側面には、耳の直前から下顎にかけて、非常に目立つ白い帯がある。(画像参照)

ムササビの仲間

ムササビと同じ Petaurista 属には、インドネシアに生息するオオアカムササビ Petaurista petaurista などがいる。オオアカムササビは頭胴長約45cm、尾長約50cmの大型のムササビである。

滑空する動物

ムササビなどモモンガ亜科の動物たちと同様に飛膜をもち、滑空する哺乳類として、同じネズミ目に属するが科の異なるウロコオリス類、フクロネズミ目(有袋類)のフクロモモンガヒヨケザル目(皮翼目)のヒヨケザルなどが知られている。

Status

ムササビをモチーフにしたキャラクターなど

  • とび丸 - 横浜フリューゲルスのマスコット。ただし、フリューゲルスの母体が全日本空輸であることもあり、顔は航空機をモチーフとしたものとなっている。このため、何も知らない人が見るとにも見える。なお、好物は
  • ムササビプレス - プロレスラー野上彰 (AKIRA) が得意技とするトップロープからのダイビング・ボディ・プレスは「ムササビプレス」と呼ばれ、フィニッシュ・ホールドとして定着している。野上が見せる類稀な跳躍力と四肢を目一杯に広げた美しいフォームをムササビが飛翔する様に形容したもの。
  • ハセツネカップ - 毎年秋に開催される、トレイルランの国内最高峰、日本山岳耐久レース(長谷川恒男カップ)のマスコットキャラクター。開催地の東京・奥多摩の豊かな自然中では多くのムササビが生息している。この大会は、70km以上の山岳をコースにみたて24時間以内に完走するという山岳アドベンチャーレースで、ムササビの夜行性、木から木へグライダーのように飛び移る様子を大会のイメージとしている。
  • トビー -東京レインボープライドのゆるキャラマスコット。ゆるキャラグランプリ、企業の部門で5位をとっている。普段は新宿御苑で暮らしているムササビ。

人との関係

ムササビは、日本では古くから狩猟の対象であった[1]。時代によっては保護の対象ともなり、日本後紀には、ムササビの利用を禁ずるとする記述がある[2]。特に、保温性に優れたムササビの毛皮は防寒具として珍重され、第二次世界大戦では物資が不足する中で、ムササビ1匹の毛皮は、当時の学校教員の月給に匹敵するほどの値段となった[3]。毛先に独特のネバリと味があり、の材料としても珍重される[4]。現在の日本では、ムササビは鳥獣保護法において「非狩猟鳥獣」であるため、狩猟は不可能となっている[5]

脚注

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関連項目

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