ムグンファ号

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テンプレート:Infobox ムグンファ号(ムグンファごう)は韓国鉄道公社列車種別。「ムグンファ」とは大韓民国を象徴する花、ムクゲの意。愛称としては1960年に最優等列車に初めて採用された。なお、一時期鉄道庁時代の日本語版ページにおいては「ムクゲ号」と表記されていた。

1977年8月13日、[1]セマウル号と、当時非冷房だった特急(のちのトンイル号)の中間クラスにウドゥン優等)を新設したことにはじまり、1983年12月23日に「ムグンファ号」へ改称した。

概要

セマウル号を補完する役割の優等列車[2]で、ほぼ全路線を網羅している。KTX開業によるトンイル号の廃止により、多くの路線で各駅停車に相当する列車が廃止されたため、ムグンファ号がこれを受け継ぐことになったが、すべての列車が各駅停車ではなく、幹線では列車によって停車駅を変更する千鳥停車を行い、所要時間は落とさずに、すべての駅に停車するようにしている。慶全線中央線ではロングランの各駅停車の列車が存在する。また、夜行列車の設定される路線もある。

釜山近郊ではディーゼル動車(気動車、下記)でも運行されているが、長距離列車はすべて客車である。初期に導入された客車の一部は2003年までにデザインリミット社製の新型客車への置き換えが完了。1980年から2000年ごろまで清涼里 - 東海で9900系電動車による運行や、1990年代には京春線で9201系ディーゼル動車(下記)による運行もあったが、2000年代初頭に廃止された。

運行路線

セマウル号ソウル特別市と地方都市を結ぶものであるのに対し、ムグンファ号はそれに加えて、地方都市同士を結びつける補完的な役割もある。また、釜山広域市の近郊都市を相互に結びつける短距離列車もおもに気動車を使用して運行している。

ムグンファ号の客車

鋼製車

ファイル:Mugunhwa Express train at Busan on 1984.jpg
ムグンファ号の初期の塗装の鋼製車
1984年釜山駅にて

ムグンファ号の客車は韓国鉄道公社の車両の中で最多(首都圏電鉄の電車を除く)であり、主力列車である。優等からの改称当初は1977年から1982年に導入された統一号客車ベースの120km/h級の台車を使用した客車が使用されており(トンイル号客車との違いは、大窓を適用および、新製当初から電気式冷暖房機の設置)、1985年からは仕様が大きく変更された150km/h級の台車を使用した客車が追加導入。1986年セマウル号にステンレス製の新型客車が導入された際、セマウル号から大量に格下げされた大窓の11000番台客車がムグンファ号特室に格下げされており、その後、ムグンファ号用にドア周りの改良と座席を改良した客車が新製された。これら初期車の一部はトンイル号に格下げされたが、2004年のKTX開業とともにトンイル号自体が廃止となったため、今後は直接廃車となる公算が大きい。開発途上国に送る計画もある。

現在、ムグンファ号に使われている客車は大きく分けて2種類ある。1990年代半ばから製造された12000番台客車は現行のムグンファ号の大多数を占める標準タイプで、車体を23メートルに伸ばしているため、「長大型」と呼ばれている。2000年ごろからは客車製造会社として整理統合されたデザイン・リミット社が製作した「リミット車」(側面がJR西日本681系電車に類似)と呼ばれる新型客車が導入され、セマウル号から格下げされた初期車を置き換えている。

車体の色は、1)クリーム色の車体に赤い帯 → 2)白地に黄色・橙色の帯 → 3)白地に赤帯、ドア周りのみ紺色 というように変化している。現在は3の色に変更している最中である。

かつては、子供の遊び場などを併設したスナックカーなども連結されていた。

ステンレス車

1990年代前半、セマウル号にプッシュプル方式の気動車が大量に導入されたため、余剰となったステンレス客車がムグンファ号に格下げされた。これらは特室(グリーン車に相当)専用列車として他の客車とは全く混用せずに運行した。ただし、長大型やリミット車はセマウル号と遜色ない客室設備を備えているため、2000年代に入って「特室」専用列車の運用は廃止され、旧セマウル客車(流線型と称した)はKTX開業とともに定期運用から外れた。また、ムグンファ号の「特室」も廃止されたが2008年1月1日の改正で中央線系統の列車において運行されるようになった。

寝台車

韓国にも夜行列車があり、通常ムグンファ号で運行される。その際に寝台車も運行されるが、日本のように寝台専用列車は存在せず、座席編成の最後尾などに連結されている。旧式車両は大窓の客車をベースとしたもので、2段式の寝台であった。現在の寝台車はすべてリミット社製の新車で、JR西日本285系電車と同じタイプの寝台となっている。車両は新製にも拘らず定期運用から外れており、2005年からは金剛山などの観光列車に限って運行されている。

京釜線ではセマウル号による夜行列車もあるが、こちらは寝台車は連結されていない。

なお、韓国の夜行列車は、まだ地下鉄やバスが動いていない午前3時台 - 5時ごろに到着するものが多く、やや不便である。

イベント列車

2004年韓国高速鉄道開業により、ムグンファ号の特室が大幅に削減されたため、余剰となった特室車4両を改造して、観光専用列車TLXが製作された。種車は長大型特室(ヘッテ特室)で個室やイベントスペース、密閉式展望デッキが増設された。のちに8両化、「レディーバード」と命名されて、団体・臨時列車として運行している。なお、運行の際にはセマウル号とされることが多い。

また余剰となった客車を改装し、寝台車食堂車を組み込んだ特別列車「ヘラン」として落成している。予備車4両と電源車2両を含む22両が改造され、8両基本編成2本が、韓国国内を周遊するツアー用団体・臨時列車として2008年から定期運用されている。車体は濃紺に塗装され、金色のストライプと鳳凰をデザインしたシンボルマークをあしらっている。

ムグンファ号の気動車

9211系(NDC)

ファイル:NDC.jpg
慶全線を走るNDCムグンファ号

NDC:New Diesel Car は9211系と呼ばれる気動車(ディーゼル動車)のこと。大宇重工業製造。制御は液体変速方式で最高時速120km。

釜山広域市と周辺都市を有機的に結ぶための短距離列車として、1984年10月に211系気動車(動力車211型と制御車411型)を利用したムグンファ号が登場した。まず先頭車同士の2両編成 (211 - 411) であったが、翌1985年から中間動力車311型が新造され、3両編成と4両編成による運行も開始した。おもな運転系統は釜山 - 馬山、釜山 - 蔚山、釜山 - 大邱、大邱 - 馬山の4つで、ソウルの京春線(清涼里 - 春川)でも一時期4両編成で活躍し、末期には蔚山 - 慶州といった短距離運用にも着いた。車体塗装はクリーム色に赤帯で、塗り分けが日本の特急電車に類似していた。のちに赤・黄・白のムグンファ色となった。

車体番号は1987年(231系)、1988年(281系)に変更し、1992年から9211系として最後まで運用された。座席は当時普及し始めた簡易リクライニングシートで、長らく横5列の狭いシートが不評であったが、2000年までに4列72席に改造された。1984年から1990年までに3形式各12両ずつの計36両が製造されたが、1994年に列車同士の衝突事故(4名死亡64名負傷)で9412、9318、9420の3両が失われた。老朽化により2005年からVIP対応車の3両編成を除く全編成の運用中止に向けた廃車が始まった。2010年、韓国鉄道公社は、同年2月16日の運行をもってNDCの運行を終了したと発表した[3]。ただし鉄道史料としての価値を考慮し、保存についてはこれから検討する予定だとしている。

形式
  • 9211型(旧231, 281)先頭動力車(12両 9211 - 22)
89席、エンジン2機(カミンズ製 NTA855RI 315馬力)
  • 9311型(旧331, 381)中間動力車(12両 9311 - 22)
83席(78席車あり)エンジン2機
  • 9411型(旧431, 481)先頭制御車(12両 9411 - 22)
79席、発電機1機(1990年製9421・22は発電機でなく動力エンジン1機搭載して動力車化)

9222、9322、9422は公社VIPが使用する非営業車両。

9201系(DEC)

ファイル:KORAIL DEC.jpg
9201系ディーゼル動車

DEC:Diesel Electric (Excellent) Car は9201系と呼ばれるディーゼル動車。大宇重工業製造。電気式制御で最高時速120km。

9201系(当初201)は1980年セマウル号として登場し、全羅線ソウル - 南原間で運行を開始した。外観はともに登場した9900系電動車と瓜二つだが、先頭車はPMCと呼ばれる半分が動力室で客室が狭い形式、制御には電気式変速機方式を採用、5両編成が2組の計10両が製造された。1986年にセマウル号にステンレス製新型客車が入ると、旧型客車とともにムグンファ号に格下げされ、京春線(清涼里 - 春川)の運用に付いた。おもに5両編成1本が営業し、もう一本は予備車となっていたが、2000年ごろに用途廃止となり、そのまま10両すべてが廃車となった。

形式
  • 9201型(旧201)先頭動力車(4両 9201 - 04)
39席(PMC)エンジン1機(KTA38L 970馬力)発動機1機、電動機2機
  • 9301型(旧301)動力車(4両 9301 - 04)
83席、電動機4機。
  • 9401型(旧401)付随車(2両 9401 - 02)
83席
編成
  1. 9201 - 9301 - 9401 - 9302 - 9202
  2. 9203 - 9303 - 9402 - 9303 - 9204
ファイル:Korail Mugunghwa CDC.jpg
CDC改造によるムグンファ号

9501系(CDC)の改造投入(RDC)

通勤列車として使用されていた9501系気動車(CDC)は、通勤列車の相次ぐ廃止によって余剰となったため、内装をムグンファ号タイプへ改造され、2008年4月15日から大邱 - 馬山間で運行を開始した。改造後のCDCは「改造型ムグンファ動車(RDC:Refurbished Diesel Car)」と称されている。 その後東大邱 - 浦項間のムグンファ号などでも運行を開始している。2010年2月17日をもって全廃されたNDC(前述)の役割を受け継いだ。

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ムグンファ号の電車

9900系(EEC)

韓国初の電車特急として1980年9900系(EEC:Electric Excellent Car)10両編成2本の20両が登場した。清涼里から中央線太白線嶺東線を経由して東海まで1日1往復、19年間運行したが、1999年トンイル号に格下げされ、2001年に廃車となった(詳細は9900系の項目参照)。

蒸気機関車観光列車

1994年8月12日から、ソウル駅から京義線郊外線を経由して議政府駅まで、蒸気機関車が牽引する観光列車がムグンファ号として運行された。日曜・祭日の午前にソウル駅から議政府駅まで、夕刻に議政府駅からソウル駅まで運行され、機関車は中国で1994年に新造されたSY11(上游型)の同形機901号が使われた。この点がかつて現役で活躍した機関車が使われる日本や欧米の蒸気機関車観光列車と違うが、客車もレトロ調に塗装した客車を使う日本と違い、通常のムグンファ号用の客車がそのまま使われ、ややミスマッチであった。

しかし、KTXの車両基地建設のため、京義線の一部列車が運休となったことや、国際通貨基金 (IMF) による韓国救済という事態に至った深刻な経済危機、機関車の保守の困難さのため、2000年5月15日限りで蒸気機関車観光列車は運休となり、その後再開されていない。機関車はその後、水色駅に長らく放置されていたが、2009年に慶北線店村駅、2012年に中央線豊基駅に移設され、静態保存されている。なお、車籍は削除されておらず、休車状態となっている。韓国ではかつて東海南部線でも蒸気機関車観光列車が運行されたことがあったが長続きしなかった。韓国では日本や欧米のように鉄道ファンが多くないことから、需要もそれほど多くないと思われる。

脚注

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関連項目

外部リンク

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テンプレート:韓国鉄道公社の車両
  1. 写真で見た韓国鉄道100年 P.47 (韓国鉄道庁・公報担当官室、1999年、韓国語)
  2. 韓国の旅行業者コネストはソウルから地方への行き方~鉄道編~にて「急行に相当」と記している。
  3. 韓国鉄道公社の報道資料より、2010年2月17日の記事