ミニシアター
ミニシアター (mini theater) は、日本の映画館のうち、ブロックブッキングなどによる大手映画会社の直接の影響下にない独立的なものを指す呼称である。旧来の「単館系」を含む。
一般に、定員200人程度までの小さい映画館であることが「ミニ」という名称の由来である。2009年現在、多くのシネマコンプレックス(シネコン)においては「定員200人クラスのスクリーン」は、標準サイズであるが、「ミニシアター」という用語が出現した当時、特に首都圏においては、定員500人級ないし1000人級というスクリーンが標準であったため、それと対比して「ミニ」と称された。ただし、後述のとおりあくまで運営形態などを指すものであり、館の規模だけによる分類ではない。例えば、ピンク映画や日活ロマンポルノを上映する成人映画館でも、特にこれらが活発に公開されるようになった1970年代以降に開業した映画館では200人以下の規模の施設が多いが、一般的にはミニシアターとは呼ばれず、まれに小劇場と呼ぶことがある。
上映作品は都市部の場合、映画館が決めた方針によって上映される映画のジャンルが決まっていることが多い。しかし、地方では映画館の館数が少ないこともあり都市部でヒットした作品を後で上映したり、名画座的な興行の間に新作を入れる程度のミニシアターや、シネコンで1スクリーン程度を常時割り当てている地域限定展開のシネコンなどもある。
目次
歴史
1968年に設立された岩波ホールの総支配人だった高野悦子と、彼女を支えた東宝東和の川喜多かしこが、1974年にエキプ・ド・シネマ(フランス語で「映画の仲間」の意)をスタートし、ロードショー公開されない世界中の良作を上映する運動を始めたことがミニシアターの始まりである[1]。
1980年代中盤にヌーヴェルヴァーグの作品群や『ニュー・シネマ・パラダイス』『ベルリン・天使の詩』などのヨーロッパ映画を上映することでミニシアターブームと呼ばれる現象を生む。現在でもこれらに近い系統のおもに女性向けの映画が多く上映される傾向にある。
一般的に「ミニシアター=単館上映」と捉えられがちだが、2003年頃から、複数の映画館で一斉に封切られるミニシアター作品も増えてきた。加えて、2006年ごろから生じ始めたシネコン間の競争の中で、ミニシアター系と分類される作品を上映するシネコンが増加し、最終的に上映館が150館という映画も存在している。例として『誰も知らない』(是枝裕和監督、2004年)などが該当する。平均的には、全国展開のシネコンチェーンで公開されるなどして、30 - 40スクリーンで公開する作品も多く、それらも一般的には「ミニシアター系」と分類されるため、従来から使われている「単館系」「全国拡大系」といった分類は曖昧なものとなっている。加えて2007年以降、「ミニチェーン」「単館拡大系」と呼ばれる公開形態も現出するようになった。
シネコンでミニシアター作品が上映されるようになり、さらには、配給会社とシネコンとの力関係その他の事情により、「その地域では、シネコンでしか上映しないミニシアター作品」もあらわれるようになった。その結果、シネコンとミニシアターの棲み分けが崩れつつあり、それが、旧来のミニシアターの興行や経営に影響を与えている面もある。
2010年頃からミニシアターの閉館が続いており、若者のミニシアター離れが指摘されている[2]。
日本各地のミニシアター
現在、東京では渋谷に多くの単館系のミニシアターが集まっている。
北海道
東北
- シネマディクト(青森県青森市)
- 八戸フォーラム(青森県八戸市)
- 盛岡フォーラム(岩手県盛岡市)
- 仙台フォーラム(宮城県仙台市)
- チネ・ラヴィータ(宮城県仙台市)
- 桜井薬局セントラルホール(宮城県仙台市)
- 山形フォーラム(山形県山形市)
- 鶴岡まちなかキネマ(山形県鶴岡市)
- 福島フォーラム(福島県福島市)
関東(東京都を除く)
- シネマ・ジャック&ベティ(横浜市)
- 深谷シネマ(埼玉県深谷市)
- 川越スカラ座(埼玉県川越市)
- TKPシアター柏(千葉県柏市)
- シネマテークたかさき(群馬県高崎市)
東京都
- 角川シネマ有楽町(千代田区)※旧「シネカノン有楽町1丁目」。
- ヒューマントラストシネマ有楽町(千代田区)※「シネカノン有楽町2丁目」から2009年12月に館名変更。
- 岩波ホール(千代田区)
- シネスイッチ銀座(中央区)
- キネカ大森(品川区)
- シネクイント(渋谷区)
- シネマライズ(渋谷区)
- ル・シネマ(渋谷区)
- ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷区)※「アミューズCQN」より2008年12月に館名変更
- ユーロスペース(渋谷区)
- アップリンクファクトリー/UPLINK-X(渋谷区)
- シアター・イメージフォーラム(渋谷区)
- 渋谷HUMAXシネマ(渋谷区)※「シネマGAGA!」より2008年12月に館名変更
- 新宿武蔵野館(新宿区)
- シネマート新宿(新宿区)
- 新宿シネマカリテ(新宿区)
- シネマスクエアとうきゅう(新宿区)
- テアトル新宿(新宿区)
- K's cinema(新宿区)
- 短編映画館トリウッド(世田谷区)
- ポレポレ東中野(中野区)
- シネ・リーブル池袋(豊島区)
中部
- 新潟・市民映画館シネ・ウインド(新潟市)
- 十日町シネマパラダイス(新潟県十日町市)
- シネモンド(金沢市)
- メトロ劇場(福井市)
- フォルツァ総曲輪(富山市)
- 進富座(伊勢市)
- シネギャラリー(静岡市)
- シネマイーラ(浜松市)
- シネマスコーレ(名古屋市)
- 名古屋シネマテーク(名古屋市)
- 名演小劇場(名古屋市)
- 伏見ミリオン座(名古屋市)
- センチュリーシネマ(名古屋市)
近畿
- テアトル梅田(大阪市)
- シネ・リーブル梅田(大阪市)
- 第七藝術劇場(大阪市)
- シネマート心斎橋(大阪市)
- シネ・ヌーヴォ(大阪市)
- PlanetPlus1(大阪市)
- シネ・リーブル神戸(神戸市)
- 神戸アートビレッジセンター(神戸市)
- 元町映画館(神戸市)
- 神戸映像資料館(神戸市)
- 宝塚シネ・ピピア(宝塚市)
- 塚口サンサン劇場シアター1(尼崎市)
- 京都シネマ(京都市)
- 京都みなみ会館(京都市)
中国・四国
- シネマ・クレール(岡山市)
- 序破急運営ミニシネマ(広島市)
- サロンシネマ 1・2
- シネツイン本通り
- シネツイン新天地
- 八丁座
- 横川シネマ!!(広島市)
- シネマモード(広島県福山市)
- シネマ尾道(広島県尾道市)
- ホールソレイユ・ソレイユ2(香川県高松市)
- アイシネマ今治(愛媛県今治市)
- シネマルナティック湊町(愛媛県松山市)
九州・沖縄
- KBCシネマ(福岡市)
- シアターシエマ(佐賀市)
- Denkikan・熊本松竹(熊本市)※2009年8月から、館名をDenkikanに統一。
- 長崎セントラル劇場(長崎市)
- シネマ5(大分市)
- 日田シネマテーク・リベルテ(大分県日田市)※2009年6月再オープン。
- 宮崎キネマ館(宮崎市)
- Gardens Cinema(鹿児島市)※2010年4月オープン。
- リナシアター(鹿児島県鹿屋市)
- 桜坂劇場(沖縄県那覇市)
閉館したミニシアター
- 銀座テアトルシネマ(東京都中央区)※2013年閉館
- シアターN渋谷(東京都渋谷区)※2012年閉館
- シネセゾン渋谷(東京都渋谷区)※2011年閉館
- 恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)※2011年閉館
- シネマ・アンジェリカ(東京都渋谷区)※2011年閉館
- 渋谷シアターTSUTAYA(東京都渋谷区)※2010年閉館
- 渋谷シネ・ラ・セット(東京都渋谷区)※2008年閉館
- テアトルタイムズスクエア(東京都新宿区)※2009年閉館
- シネカノン有楽町1丁目(東京都千代田区)※2010年閉館
- 池袋テアトルダイヤ(東京都豊島区)※2011年閉館
- シネマアートン下北沢(東京都世田谷区)※2008年閉館
- ゴールド劇場・シルバー劇場(名古屋市)※2012年閉館
- シネマ・ヴェリテ(大阪市)※ACTシネマ・ヴェリテ→シネ・ヌーヴォ梅田と改称し1999年閉館
- 高槻セレクトシネマ(大阪府高槻市)※2011年閉館
脚注
関連項目
- ショートフィルムシアター(短編映画館)
- 小劇場