ボイラー技士

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ボイラー技士(ボイラーぎし)とは、労働安全衛生法に基づく国家資格(免許)の一つで、各級のボイラー技士免許試験に合格し、免許を交付された者をいう。また熱源を用いる現場においては、法的には資格が不要な設備であっても、免許所持者を求める傾向は根強いものがある。 その他に、ボイラー整備士ボイラー溶接士がある。

概要

労働安全衛生法(昭和47年6月8日法律第57号)第61条では、事業者は、政令で定める一定の業務については、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならないとしている。

そして、就業制限に係る業務の一つとして労働安全衛生法施行令(昭和47年8月19日政令第318号)は「ボイラー(小型ボイラーを除く)の取扱いの業務」について就業制限を設けており(労働安全衛生法施行令第20条第3号)、当該業務については労働安全衛生施行規則(昭和47年9月30日労働省令第32号)により特級ボイラー技士免許、一級ボイラー技士免許又は二級ボイラー技士免許を受けた者でなければ、当該業務に就かせてはならないとしている(労働安全衛生施行規則別表第三)。なお、労働安全衛生法施行令第20条第5号で定められた小規模ボイラーの取扱いについては、ボイラー技士のほかボイラー取扱技能講習を修了した者についても取扱いが認められている(労働安全衛生施行規則別表第三)。

ボイラー技士は病院学校工場ビル船舶機関車銭湯地域熱供給などの様々な場所で、資格の必要なボイラーを取り扱い、点検安全管理を行う技術者である。近年、ボイラー技士資格の必要の無いボイラー及び多様な熱源設備が普及してきている。そのため多くの現場や企業では、ボイラー技士の資格を事実上、知識や技能を証明する検定試験的な捉え方をする場合が多くなっている。熱源を用いる現場においては、法的に資格が不要な設備であっても、免許所持者を求める傾向は根強いものがある。

なお、正式表記については、上記のように「○級」は前置され、また、表示環境が縦書きか横書きかにかかわらず「○」の部分は算用数字でなく漢数字を用いる。

区分

級の区分にかかわらず、全てのボイラーを取り扱うことができる。ただし、取扱者を統括する立場の作業主任者に選任されるには、次の区分に応じた級の免許が必要となる(ボイラー技士の資格について書かれている書籍雑誌等の中には、級によって取り扱える範囲や区分が異なるような記載がなされているものもあるがそれは間違い)。

  • 特級ボイラー技士 - 全ての規模のボイラー取扱作業主任者となることができる。
  • 一級ボイラー技士 - 伝熱面積の合計が500m²未満(貫流ボイラーのみを取り扱う場合において、その伝熱面積の合計が五百平方メートル以上のときを含む。)のボイラー取扱作業主任者となることができる。
  • 二級ボイラー技士 - 伝熱面積の合計が25m²未満のボイラー取扱作業主任者となることができる。
作業主任者の選任、取扱いのできるボイラー設備
資格 伝熱面積500m²以上 伝熱面積25m²以上
500m²未満
伝熱面積25m²未満
(小規模を超える)
小規模ボイラー
(注2参照)
作業主任者 取扱 作業主任者 取扱 作業主任者 取扱 作業主任者 取扱
特級ボイラー技士
一級ボイラー技士 ×
二級ボイラー技士 × ×
ボイラー取扱技能講習修了
(注:ボイラー技士資格ではない。
また、ボイラー実技講習とは異なる)
× × × × × ×

注1)ボイラー及び圧力容器安全規則第24条第2項による伝熱面積の合計とは、

  • 一  貫流ボイラーについては、その伝熱面積に十分の一を乗じて得た値を当該貫流ボイラーの伝熱面積とすること。
  • 二  廃熱ボイラーについては、その伝熱面積に二分の一を乗じて得た値を当該廃熱ボイラーの伝熱面積とすること。
  • 三  令第二十条第五号 イからニまでに掲げるボイラーについては、その伝熱面積を算入しないこと。
  • 四  ボイラーに圧力、温度、水位又は燃焼の状態に係る異常があつた場合に当該ボイラーを安全に停止させることができる機能その他の機能を有する自動制御装置であつて厚生労働大臣の定めるものを備えたボイラーについては、当該ボイラー(当該ボイラーのうち、最大の伝熱面積を有するボイラーを除く。)の伝熱面積を算入しないことができること。

注2)小規模ボイラーの定義(令第二十条第五号)

  • イ 胴の内径が七百五十ミリメートル以下で、かつ、その長さが千三百ミリメートル以下の蒸気ボイラー
  • ロ 伝熱面積が三平方メートル以下の蒸気ボイラー
  • ハ 伝熱面積が十四平方メートル以下の温水ボイラー
  • ニ 伝熱面積が三十平方メートル以下の貫流ボイラー(気水分離器を有するものにあつては、当該気水分離器の内径が四百ミリメートル以下で、かつ、その内容積が〇・四立方メートル以下のものに限る。)

他資格の受験資格等との関係

特級ボイラー技士は職業訓練指導員 (ボイラー科) 試験の受験資格が与えられると共に学科の一部と実技免除、一級ボイラー技士は同試験の受験資格のみが与えられる(免除無し)。

免許交付要件

各級における免許交付要件

免許を受けることができる者は、試験合格のほかに実務経験(または、ボイラー及び圧力容器安全規則に規定する学歴、実地修習等)が必要になっている。

  • 特級(次のいずれもの要件を満たす者)
    • 一級ボイラー技士免許を受けた後、5年以上の取り扱い経験、または、3年以上のボイラー取扱作業主任者の経験など
    • 特級ボイラー技士免許試験に合格
  • 一級(次のいずれもの要件を満たす者)
    • 二級ボイラー技士試験免許を受けた後、2年以上の取り扱い経験、または、1年以上ボイラー取扱作業主任者の経験など
    • 一級ボイラー技士免許試験に合格
  • 二級
    • 二級ボイラー技士免許試験に合格し、以下のいずれかに該当する満18歳以上の者。
      • 大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校においてボイラーに関する学科を修め卒業した者で、その後3月以上の実地修習を経たもの
      • ボイラーの取扱いについて6月以上の実地修習を経たもの
      • ボイラー取扱技能講習を修了した者で、その後4月以上小規模ボイラーを取り扱った経験があるもの
      • エネルギーの使用の合理化に関する法律第9条第1項のエネルギー管理士(熱)免状を有する者で、1年以上の実地修習を経たもの
      • 海技士(機関1、2、3級)免許を受けた者
      • ボイラー・タービン主任技術者(1種又は2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
      • ボイラー実技講習を修了した者(後述)
      • 海技士(機関4、5級)免許を受けた者で、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
      • 鉱山保安法施行規則附則第2条の規定による廃止前の保安技術職員国家試験規則による汽かん係員試験に合格した者で、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
      • 鉱山において、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの(ただし、ゲージ圧力が0.4MPa以上の蒸気ボイラー又は温水ボイラーに限る。)
    • ボイラー運転に関する規定の普通職業訓練を修了した者。

ボイラー実技講習

ファイル:Boiler Practice Certificate.jpg
ボイラー実技講習修了証

ボイラー取扱いの実地修習・実務経験を有しない者等が二級ボイラー技士免許の交付を受ける場合に、その前提として必要となる法定講習。都道府県労働局長登録講習機関が定期的に開催している。日程は3日間。ボイラー取扱技能講習とは異なり、この講習を受けただけでは小規模ボイラーや小型ボイラーを扱うことはできない。あくまでも二級ボイラー技士免許の交付要件を満たすための講習である。ボイラー実技講習は二級ボイラー技士免許の交付においてボイラー取扱いの実地修習・実務経験を有しない者等を対象とするもので、2012年(平成24年)3月31日までは受験資格要件の一つとして定められていたものであるが、法改正により、2012年(平成24年)4月1日以降は免許交付要件の一つに改められている[1]

登録講習機関

  • 一般社団法人日本ボイラ協会(全42支部。青森県、秋田県、山形県、滋賀県、宮崎県以外の各都道府県に所在)
  • 公益社団法人ボイラ・クレーン安全協会(全18事務所のうち函館、秋田の各事務所)
  • 一般社団法人青森地区労働基準協会
  • 一般社団法人弘前地区労働基準協会
  • 一般社団法人八戸地方労働基準協会
  • 一般社団法人下北地区労働基準協会
  • 一般社団法人西北労働基準協会
  • 一般社団法人山形県労働基準協会連合会
  • 公益社団法人宮崎労働基準協会(宮崎県内全4支部)

北海道労働局は2団体、青森労働局は5団体、その他の都府県労働局はそれぞれ1団体のみ登録。うち日本ボイラ協会京滋支部(京都府)は、京都労働局長及び滋賀労働局長の登録を受け、両府県で講習を実施している。

講習科目

  1. 点火(1時間)
  2. 燃焼の調整(7時間)
  3. 附属設備及び附属品の取扱い(6時間)
  4. 水処理及び吹出し(1時間)
  5. 点検及び異常時の処理(5時間)
※上記は法令上の順序であって、実際の講義順序は講習地ごと、あるいは講師の都合等により変動する。
※上記の科目は座学が主体であるが、おおむね最終日(3日目)に4時間程度実施されるボイラー設備の見学、装置操作の疑似体験等も含まれる。
※筆記試験等は課されない。

免許試験

  • 厚生労働大臣指定試験機関の公益財団法人安全衛生技術試験協会が、全国7か所の安全衛生技術センターにおいて、特級は年1回、一級は2か月に1回位、二級は1か月に1~2回実施。そのほか、各都道府県につき年1回程度の出張特別試験も実施している。

受験資格

  • 特級
    • 一級ボイラー技士免許を受けた者
    • 大学又は高等専門学校においてボイラーに関する講座又は学科目を修め卒業した者で、その後2年以上の実地修習を経たもの
    • エネルギーの使用の合理化に関する法律第9条第1項のエネルギー管理士(熱)免状を有する者で、2年以上の実地修習を経たもの
    • 海技士(機関1、2級)免許を受けた者
    • ボイラー・タービン主任技術者(1種又は2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が500m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
  • 一級
    • 二級ボイラー技士免許を受けた者
    • 大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校においてボイラーに関する学科を修め卒業した者で、その後1年以上の実地修習を経たもの
    • エネルギーの使用の合理化に関する法律第9条第1項のエネルギー管理士(熱)免状を有する者で、1年以上の実地修習を経たもの
    • 海技士(機関1、2、3級)免許を受けた者
    • ボイラー・タービン主任技術者(1種又は2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
    • 鉱山保安法施行規則附則第2条の規定による廃止前の保安技術職員国家試験規則による汽かん係員試験に合格した者で、伝熱面積の合計が25m²以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
  • 二級
    • 規定なし。誰でも受験できる。2012年(平成24年)3月31日まで二級ボイラー技士の受験資格要件として定められていたものは、法改正により、2012年(平成24年)4月1日以降は先述の免許交付要件に改められている[2]

試験科目

特級・一級・二級
  1. ボイラーの構造に関する知識
  2. ボイラーの取扱いに関する知識
  3. 燃料及び燃焼に関する知識
  4. 関係法令

脚注

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関連項目

外部リンク

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