ホンダ・CR-V

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

CR-V(シーアール-ブイ)は、本田技研工業が生産・販売しているミドルサイズのクロスオーバーSUVである。

概要

初代・2代目はシビックプラットフォームを基に開発されたが、3代目からは北米専用車種アキュラ・RDXなどと共通のグローバル・ライトトラック・プラットフォームを使用し、18インチタイヤの装着を前提にした最適設計を行った結果、アコードと並ぶ動力性能を手にしたと言われる。いわゆる乗用車ベースのエンジン横置きSUVである。なお、全モデルで共通して全幅が1,700mm以上あるため、3ナンバーボディとなる。

駆動方式は基本的に4WDであるが、一部FFもある。高い最低地上高によって道路状態の劣悪な災害地でも走破性を発揮できることやコストパフォーマンスの良さなどから、献血供給事業団血液搬送車のベース車両として多く採用されている[1]

初代 RD1/2型(1995-2001年)

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 1995年10月9日オデッセイに続くクリエイティブ・ムーバーシリーズの第2弾として登場した。SUVでありながらコラムシフトAT車)となっており、ウォークスルーも可能であるなど、居住性を重視したモデルであった。さらに、オフロードに重点を置いたSUVとは異なる都会的でスタイリッシュなエクステリアデザインや、その居住性、そして何よりも低廉な価格が評価され、好セールスを記録した。

この時代の乗用車としては非常に珍しいステッキ式パーキングブレーキを採用しているが、MT車はフロアシフトのため、ウォークスルーに適しているのはAT車である。

エンジンはB20B型 DOHC 2.0L(130PS)のみを搭載しており、動力性能は十分であったが、FFベースのスタンバイ4WDであるリアルタイム4WDデュアルポンプ式)を採用していたため、後輪への駆動力の伝達がスロットルコントロールに対してリニアではなく(緩慢かつ唐突)、スタックからのリカバリーや低ミュー路の旋回でのコントロールは難しく、そのような場面の走行性能は酷評を受けた。しかし、CR-Vは過剰なオフロード性能を排して、基本的にシティユースというコンセプトで作られており、また、よほどのオフロードや深いでもない限り問題ないロードクリアランス(最低地上高)を備えており、日常的な使用では特に他社製のスタンバイ4WD式SUVに劣ることはない。

1997年10月のマイナーチェンジで、ABS/エアバッグの標準設定、AT制御の改良、デュアルポンプの改良、MT車の設定(145PS)などが行なわれた。AT車は「スマートスケープ」、MT車は「アクティブスケープ」と呼ばれるようになり、合わせて一部車体色の差し替えが行われた。 当初は日本国内専用車として開発され、左ハンドル車の生産の予定はなかったが、北米ディーラーの要望から開発され、後に世界各国に輸出された。

1998年12月のマイナーチェンジで、スペアタイヤ位置を背面から床下吊り下げに変更した新グレードの「フルマーク」を新設した。またそれにあわせて従来のモデルを「パフォーマ」とネーミングした。動力面ではMT車/AT車共にエンジン出力が150PSに改良され、VSA(ビークルスタビリティアシスト)装着車を設定し、衝突安全性能の向上策も実施された。このマイナーチェンジを機にホイールも5穴化されている。また、FF車も設定された。


2代目 RD4/5/7型(2001-2006年)

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 2001年9月18日に、フルモデルチェンジを受け登場した。

エンジンはK20A型 DOHC i-VTEC 2.0L(158PS)が搭載され、初代で酷評を受けた4WDシステムも大幅に進化し、ミドルクラスSUVとして十分な性能となった。トランスミッションは4速ATと5速MT。

室内居住空間を重視したのは初代モデルと同様である。また、エクステリアデザインもキープコンセプトながら、さらに都会向けにリファインされたものの、樹脂パーツも多用するなどアウトドアライフを連想させるデザインとなっている。インテリアでは、初代の特徴であった、広く開放的な室内はそのままに、インパネと一体型の個性的なパーキングブレーキレバーや、メーター横に伸びたシフトレバー、大型のドアポケット、ペットボトル飲料の保冷・保温ができる「インパネ・マルチボックス」など、SUVのワイルドさとミニバンの使い勝手が融合した特徴的なインテリアであった。タイヤは北米からの要請で、ランニングコストを抑える目的で他のSUVよりも小さめのものになっている。

しかし、セールス面では日本国内でのSUVブームの沈静化や、従来のプリモベルノ店併売からベルノ店の専売になったこともあり、初代モデルほどの数字は記録できなかった。反面、北米・欧州・アジアでの評価が非常に高く、アコード、シビックに続く全ホンダ車中第3位の販売台数を誇り、世界的にはヒットした成功作と言える。

2004年9月22日に行われたマイナーチェンジでは既存のK20A型を廃止し、当初から北米仕様に設定されていた、アコードやオデッセイ、エレメントに搭載されているK24A型 DOHC i-VTEC 2.4L(160PS)が全車に採用され、トランスミッションもすべて5速ATとなった。なお、欧州仕様ではAT比率が非常に低いためMT車が継続販売され、N22A型 i-CTDi 2.2L 直噴ディーゼルターボエンジンが追加された。

英国スウィンドン工場で生産されているCR-Vは北米に輸出され、現地の会社でないにも関わらず対米輸出台数が1位となるなど、大きな人気となった。

中国では東風本田汽車の最初の車種として2004年4月24日から生産が開始され[2]5月12日に発売が開始された[3]。なお、上海モーターショーに、デザインの酷似した中国製自動車が出展され、物議を醸した。


3代目 RE3/4型(2006-2011年)

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 日本では2006年10月12日発表し、13日に発売した。(北米は2006年9月・欧州は2007年1月発売)従来の角ばった箱型ボディから一転、欧州車高級SUVの雰囲気のようなプレミアム感を演出し、全体的に丸みを帯びたアール・デコ調のグラマラスなボディを纏うこととなった。ボディサイズはさらに拡大され、全幅は1,820mmとなった。この事で車格も1ランクアップし、日本市場で今までライバルとされた車種より装備・質感・価格帯は大幅に上回った。当初のコンパクトSUVからミディアムサイズSUVとなったが、これはSUVブームが沈静した日本市場よりも販売台数が多い北米市場からの大型化の要請、および、欧州・アジア市場からのプレミアムSUV化への要請を意識したためである。日本市場におけるこれまでの初代・2代目の車格ポジションは2007年2月発売されたクロスロードが事実上の受け皿となった。

エクステリアデザインは、フロントマスクは同社のステップワゴンなどと共通のデザインモチーフが採用され、サイドウインドウの扇形のラインは初代ストリームを彷彿とさせるクーペ的フォルムとなっており、さらにメッキモールを施して全体的にプレミアム感を演出した。また、初代・2代目と背面に背負っていたスペアタイヤを全タイプ床下収納となりテールゲートも横開き式から跳ね上げ式に改められた。また、見た目の高級感を重要視する日本市場の上位グレードには、バンパー下部およびボディサイドシルのプロテクター部分をメタリックグレーの塗装を施してさらなる高級感を演出し、4WD廉価グレード「X」および北米・欧州・アジア他仕様では「バンパーはバンパーらしく」との声から、同部分が黒色の原着となる。

インテリアもワイルドで機能性重視の初代・2代目から、プレミアム重視のインテリアとなり全体的にシンプルなデザインであるが上質な雰囲気を醸し出している。初代・2代目に設定されていた折りたたみ式センターテーブルが廃され、代わりに大型センターコンソールが装着されたことで前後ウォークスルーが不可能になった。さらに、左右独立エアコンやステアリングテレスコピック機能、イモビライザーなどを全グレードに標準装備、運転席・助手席パワーシートと運転席にはシュクラ製の電動ランバーサポートを一部標準装備するなど、高級セダン車並の装備が特徴で、4WD廉価グレード「X」を除きヒーター付き本革シート(黒またはベージュ)もオプションで選択可能である。

動力性能面では、エンジンが2代目モデル(後期型)のK24A型のままの据え置きだが、170PSにチューンアップされ、ドライブ・バイ・ワイヤを採用した。4WDシステムも、デュアルポンプのクラッチ容量アップとワンウェイカムユニットの追加により、伝達駆動力とレスポンスアップを計り、全体的な底上げが施された一方、エアロダイナミクスを良化するためボディ底部にアンダーカバーを配するなど新しい取り組みもある。走りの性能は、ベース車となっているアコードを模範とし、特に日本・欧州市場からの要請であった「SUVにしてはタイヤが小さい」の声に応えるため、18インチタイヤが標準装着できるシャシーとなって全体的な動力性能が大幅に向上した。

安全装備は、全グレードにVSAを標準装備した他、18インチタイヤや最上位グレード「ZXi」(4WD)「ZLi」(FF)にはAFSCMBSIHCC、サイドカーテンエアバッグシステム、オートワイパー、オートライト、Hondaスマートキーシステムなどを標準装備し、ホンダの上級セダン車種以上に充実した内容となった。

2007年4月18日、中国仕様車が発表[4]。中国市場では2009年に年間販売台数が10万台を突破する人気車種となっている[5]

2007年9月20日に初のマイナーチェンジが行なわれ、新グレード「ZX<HDD navi>」(4WD)「ZL<HDD navi>」(FF)が登場した。同時に「ZXi」(4WD)「ZLi」(FF)に、木目調パネルを採用し、新色が追加された。

2008年2月21日特別仕様車「ZX<exclusive>」(4WD)「ZL<exclusive>」(FF)を発売した。アルカンターラ インテリア、木目調パネル、HDD NAVIを標準装備し、ボディカラーは専用色を含む4色のみ設定された。

2008年8月28日にマイナーチェンジが行われた。新グレード「ZX〈アルカンターラスタイル〉、ZX〈レザースタイル〉、ZL〈アルカンターラスタイル〉、ZL〈レザースタイル〉が登場した。

2009年9月17日、3回目のマイナーチェンジ。スマートなデザインのフロント周りとなり、アルミホイールは新デザインとなった。内装は前席アームレストの長さと幅を広くし、角度調節機能を追加したほか、シート表皮やドアグリップなど変更された。ボディには遮音材などを導入し静粛性を向上した。「Honda HDD インターナビシステム」は改良を行ない、「HDDナビ アルカンターラスタイル」、「HDDナビ レザースタイル」、「ZXi」、「ZLi」にはインターナビシステムを標準装備した。 北米仕様ではエンジンが166hpから180hpにパワーアップ、燃費も1MPG向上した。

2011年2月10日、FF車の「ZL」、4WD車の「ZX」をベースに、インターナビシステムとスマートキー(キー2個付)を装備した特別仕様車「HDDナビ スマートエディション」を発売した。

  • 日本仕様はサイドアンダーミラーをプリズム反射を用いて、左側ドアミラーと一体化させたプリズムアンダーミラーを初採用、ドアミラーウインカーも標準化された。プリズムアンダーミラーは、デザイン上で最大の障害となる左前面の補助ミラーを廃止するためのアイデアである。
  • 日本仕様の上級グレードはドアグリップと下部グリルのスリット部分がメッキ塗装を施している。(他の地域向けはドアグリップがボディ同色か黒色・スリット部分がグレードによってメッキ塗装されているか黒色になっている。)
  • 欧州仕様にはR20A型 SOHC i-VTEC 2.0LやN22A型の設定もあり、多様なエンジンを搭載している他、エアウェイブなどに採用されている、スカイルーフ仕様が上級グレードで設定されている。
  • ATのみの日本・北米他の仕様ではパーキングブレーキが足踏み式であるが、欧州やオセアニア市場で設定されているMT仕様車のパーキングブレーキは、スバル・アルシオーネSVXルノー・カングーに似た形状のハンドレバータイプとなる。
  • 北米での需要の高まりを受け、2007年より米国オハイオ州・イーストリバティ(East Liberty)工場、メキシコ工場での生産を開始した。2007年より北米でのSUVのベストセラーとなっている。


4代目 RM1/4型(2011年- )

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 2011年11月16日-11月27日に行われるロサンゼルスオートショーにおいて、フルモデルチェンジとなる4代目CR-Vが発表された[6]

日本国内向けにもティーザーサイトがオープンされ、2.0Lモデルの追加や新開発4WDシステムの採用が告知された[7]。その後、11月28日にフルモデルチェンジが正式発表された(販売は12月2日)。

外観は、フロントバンパーが空力性能を考慮した形状となり、テールゲートガラスが広い荷室と躍動感を生み出すために曲率を大きくするなど、強さと機能性を表現したもととなった。インテリアは、利便性と快適性をもたらす「センターディスプレイ(Hondaインターナビとセットでメーカーオプション設定)」を採用するなど、運転に集中していても走行状況が把握しやすく、スムーズな操作を可能としている。3代目に比べ、ボディサイズは若干小さくなっているが、室内長を225mm、荷室容量を65Lそれぞれ拡大し、扱いやすさや使いやすさを向上した。

エンジンは、2代目後期で廃止となった2.0L仕様を日本市場にのみ復活させた。その理由は「お膝元(生産拠点)である日本国内でも売れて欲しい」というメーカー自身の願望からである[8]。低速域から力強いトルク特性と低燃費を両立したR20A型となり、エンジン性能を最大限に引き出すため、CR-Vでは初採用となるトルクコンバーター付CVTが搭載された。3代目と同等の発進・加速性能を発揮するとともに各部の低フリクション化を徹底したため、JC08モードで14.4km/Lの低燃費を実現した。また、2.4L仕様も圧縮比などを高めたことで3代目に比べ出力を20PS(15kW)を向上するとともに、2.0L仕様と同じく徹底的に各部の低フリクション化を行ったことで燃費を向上した。なお、燃費向上により2.0L仕様は「平成27年度燃費基準」、2.4L仕様は「平成22年度燃費基準+15%」をそれぞれ達成した。さらに、2.4L仕様には電子制御によって後輪の駆動力を緻密でかつ素早くコントロールして、雪道での発進やコーナリング、登坂における安定性を高めた、新開発の四輪駆動システム「REAL TIME AWD(インテリジェント・コントロール・システム)」を搭載した。欧州やオセアニア市場向けには、先代同様MT仕様車も設定されている。

荷室については、サイドライニング部のレバーやシートクッションサイド部のストラップを引くだけで、シートクッションが持ち上がると同時にシートバックとヘッドレストが格納され、簡単に荷室を広くすることができるほか、低床・フラット設計により開口部地上高が低くなり、荷物の出し入れもしやすくなっている。グレード体系は「20G」と「24G」の2グレードで、駆動方式は「20G」がFF、「24G」が4WDとなる。

2011年12月20日に韓国市場にて発表・発売開始した[9]。駆動方式は日本国内仕様同様に2WD(FF)と4WDが設定されるが、エンジンは2.4Lのみとなる。

2012年2月22日に中国市場にて発表・発売開始した[10]

2012年10月11日、一部改良を行なった。新たに前席用i-サイドエアバッグシステム(助手席乗員姿勢検知機能付)+サイドカーテンエアバッグシステム(前席/後席対応)を標準装備した。ボディカラーには「オブシダンブルー・パール」を追加した。併せて、本革シート<運転席&助手席シートヒーター付>+運転席8ウェイパワーシート(スライド/リクライニング/ハイト前・後)+運転席ランバーサポートとHonda インターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器(ナビゲーション連動)を標準装備した「20G・レザーパッケージ」、「24G・レザーパッケージ」を追加した。 

搭載エンジン

車名の由来

  • Comfortable Runabout Vehicle(コンフォータブル・ランアバウト・ビークル) の略に端を発している。

脚注

  1. 八重洲出版『driver』2012年12月号 p.54
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite web
  6. 2011年ロスアンゼルスオートショーにて「フィットEV」「CR-V」の市販モデルを世界初披露
  7. New CR-V 先行スペシャルサイト
  8. ホンダ CR-V 発表…日本専用モデル設定「やっぱりお膝元で売れてほしい」カービュー2011年12月9日(2011年12月13日 閲覧)
  9. ホンダコリア、4世代CR-Vを発表中央日報 2011年12月21日(2012年3月8日閲覧)
  10. テンプレート:Cite web

関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:ホンダ車種年表 テンプレート:Honda テンプレート:自動車