ペルセポネー

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テンプレート:Greek mythology ペルセポネーテンプレート:Lang-grc-short)は、ギリシア神話に登場する女神で冥界の女王である。

ゼウスデーメーテールの娘で、ハーデースの妻として傍らに座しているとされる。しばしばコレー(「乙女」の意)とも言及される(地上にいる間はコレーと呼ばれ、冥界に入るとペルセポネーと呼ばれることもある)。

日本語では長母音を省略してペルセポネペルセフォネとも呼ぶ。

神話

ペルセポネーの略奪

神話によると、ペルセポネー(当時のコレー)は、ニューサ(山地であるが、どこであるのか諸説ある)の野原でニュムペー妖精)達と供に花を摘んでいた。するとそこにひときわ美しい水仙の花が咲いていたのである。ペルセポネーがその花を摘もうとニンフたちから離れた瞬間、急に大地が裂け、黒い馬に乗ったハーデースが現れ彼女は冥府に連れ去られてしまう。

デーメーテールの怒り

オリュムポスでは、ペルセポネーが行方知れずになったことを不審に思った母デーメーテールが、太陽神ヘーリオスから、ゼウスとハーデースがペルセポネーを冥府へと連れ去ったことを知る。女神はゼウスの元へ抗議に行くが、ゼウスは取り合わず、「冥府の王であるハーデースであれば夫として不釣合いではない」と発言した。これを聞き、娘の略奪をゼウスらが認めていることにデーメーテールが激怒し、オリュンポスを去り大地に実りをもたらすのをやめ、地上に姿を隠す。 一方、冥府に連れ去られたペルセポネーは丁重に扱われるも、自分から進んで暗い冥府に来た訳ではない為、ハーデースのアプローチに対しても首を縦に振る事は無かった。

四季の始まり

その後ゼウスがヘルメースを遣わし、ハーデースにペルセポネーを解放するように伝え、ハーデースもこれに応じる形でペルセポネーを解放した。その際、ハーデースがザクロの実を差し出す。それまで拒み続けていたペルセポネーであったが、ハーデースから丁重に扱われていた事と、何より空腹に耐えかねて、そのザクロの実の中にあった12粒のうちの4粒(または6粒)を食べてしまった。

そして母であるデーメーテールの元に帰還したペルセポネーであったが、冥府のザクロを食べてしまった事を母に告げる。冥界の食べ物を食べた者は、冥界に属するという神々の取り決めがあった為、ペルセポネーは冥界に属さなければならない。デーメーテールはザクロは無理やり食べさせられたと主張してペルセポネーが再び冥府で暮らすことに反対するも、デーメーテールは神々の取り決めを覆す事は出来なかった。そして、食べてしまったザクロの数だけ冥府で暮らす事になり、一年のうちの1/3(または1/2)を冥府で過ごす事となり、彼女は冥府の王妃ペルセポネーとしてハーデースの元に嫁いで行ったのである。そしてデーメーテールは、娘が冥界に居る時期だけは、地上に実りをもたらすのを止めるようになった。これが冬(もしくは夏)という季節の始まりだという。

また、ペルセポネーが地上に戻る時期は、母である豊穣の女神デーメーテールの喜びが地上に満ち溢れるとされる。これが春という季節である。そのため、ペルセポネーは春の女神(もしくはそれに相当する芽吹きの季節の女神)とされる。ペルセポネーの冥界行きと帰還を中軸とするエレウシース秘儀は死後の復活や死後の世界における幸福、救済を保証するものだったと考えられている[1]

デーメーテールがポセイドーンの間に産んだ娘、デスポイナと同一視されることもあり、ギリシア神話が確立される以前はポセイドーンとデーメーテールの間に産まれた子だった。そもそもペルセポネー自体が本来デーメーテールと同じ神であり、同一神格の別の面が強調されただけではないかともいわれる[2]

なおペルセポネーへの言及は『オデュッセイア』、オルペウス説話などにも見られる。

物語

このように、ペルセポネーは強制的にハーデースの妻にされてしまったが、ハーデースの妻であることを受け入れ、ギリシャ神話では夫のそばにいる場面が多い。またハーデースの浮気相手メンテーを厳罰に処しているなど、夫の浮気にも強い嫉妬心を見せるようになった。しかしペルセポネー自身も美しい人間の男・アドーニスを深く愛し、ゼウス公認で一年の3分の1の間、彼を恋人として堂々とそばにおいている。

メンテー(ミント)

数少ないハーデースの浮気話。

冥王ハーデースはコキュートス川のニュンペー、メンテーの美しさに魅了されてしまい、それに気付き嫉妬に狂ったペルセポネーは「お前などくだらない雑草になってしまえ」とメンテーを踏みつけて恐ろしい呪いをかけ、草に変えてしまった。 以来この草はミントと呼ばれ、今もなお陽光を浴びる度に芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだという。

もしくは、地上を見回っていた冥府の王ハーデースに目を付けられ、攫われようとしていた。しかし自らも攫われて妻となったペルセポネーがそれに気付き、彼女を香りの良い小さな草に変えて茂みへ隠し、ハーデースの目から隠してやったともいわれる。

アドーニス(アネモネ)

アッシリア王キニュラースの娘ミュラー(スミュルナ)が父王を愛し、その結果生まれたアドーニス。

この不幸な出生のアドーニスの養育を、愛の女神アプロディーテーは密かにペルセポネーに頼んだ。やがてアドーニスは美しい青年に成長、こうなるとペルセポネーもアプロディーテーもアドーニスを愛するようになり、そこでゼウスは春から夏はアプロディーテー、秋から冬はペルセポネーと暮らすよう決めたのだが、ある時アプロディーテーは、秋が来ても冬が来てもアドーニスをペルセポネーに返さなかった。怒ったペルセポネーは、アプロディーテーの愛人である軍神アレースにこの事を密告した。これを知ったアレースは獰猛な猪に変身し、アドーニスを殺した。この時アドーニスが流した血からアネモネが生まれ、死を悲しみアプロディーテーが流した紅涙が白薔薇を赤く染めた。

その他

  • セイレーンは、元はペルセポネーに仕えていたニュムペーで、ペルセポネーがハーデースに誘拐されると、毎日悲しんでばかりで、「恋愛もせず、泣いてばかりで許せない」、とアプロディーテーの怒りを買い、怪鳥の姿に変えられてしまったとの説もある[3]
  • プシューケーがアプロディーテーの試練により冥府に来た際、美の箱を渡したり、冥府に連れて来られたシーシュポスの三日間だけ生き返らせてくれという頼みを叶えたりするなど、冥府の女王としての描写もたくさんある。
  • また、ディオニューソスギンバイカの木と引き替えに母親のセメレーを冥府から帰したり、死者を多々、生き返らせている。
  • ペルセポネーはローマ神話にも取り入れられ、プロセルピナと呼ばれた。
  • 「ペルセポネー」という名前の意味については諸説がある。
    • 「光を破壊する女」或いは「目も眩むような光」[4]
    • 「破壊する者」[5]
  • その象徴は水仙、ザクロ、蝙蝠である[4]

出典・脚注

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関連項目

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テンプレート:オリュンポス十二神
  1. 草野巧『地獄』新紀元社。
  2. 木村点『早わかりギリシア神話』日本実業出版社。
  3. 『オデュッセイア』エウスタティウス注より。
  4. 4.0 4.1 フェリックス・ギラン『ギリシア神話』青土社。
  5. バーバラ・ウォーカー『神話・伝承事典』大修館書店。