ペットボトルロケット

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ペットボトルロケット、発射の瞬間

ペットボトルロケット英語:water rocket)は、炭酸飲料などの入っていたペットボトルに、と圧縮空気を入れて、一気にを開放させることにより、噴出する水と空気の反作用によって飛行するロケット模型である。水ロケットあるいはウォーターロケットともいう。

このロケット模型は、火薬などの規制が厳しい日本において、手軽にモデルロケットの実験が行えることが最大の特徴である。他のロケット推進エンジンとは異なり、圧縮空気の圧力で水を噴射して飛ぶ、このわずか200g程度のロケットは、作用・反作用力学的な学習を行う上で、安全かつ非常に面白い教材として好まれている。

また、火薬を使わず火災の心配がないこと、環境汚染の心配がないことなどから、山岳地帯の電線敷設の際に、尾根から尾根への架線作業に利用されている。架線作業は中部電力が「ウォーターロケット延線工法」と呼んで最初に使った[1]と言われており、400m近く飛ぶペットボトル2本を連結し、容量を増加した大型のペットボトルロケットも使っている。

初期の頃は、圧縮空気の圧力に耐え得る弁の製作がやや難しかったものの、近年では、市販の耐圧弁や発射装置が発売され、小学校低学年でも製作・打ち上げを行うことができる。勿論、高速で飛行するため、きちんと工作しないと、空気抵抗の関係でまっすぐ飛ばないこともあり、また入れる水の量と圧縮空気を入れるためにポンプを押す回数、の向きを把握して、追い風・向かい風に沿って飛ばす技能的な面もあるため、競技としての打ち上げも、日本各地で開催されている。

安全対策

ペットボトルロケットは手軽ではあるものの、200m以上飛ぶ物も少なくないため、周辺の安全確保が行いやすい、人のいない広場で打ち上げる必要がある。

また、日本の空港の周辺では、航空法により打ち上げが禁止されたり、周辺でなくとも250m(航空路では150m)を超えて打ち上げる場合には必ず飛行通報書の提出が必要になる。

自転車空気入れでは破裂するほどの空気圧を与えることは難しいが、テンプレート:要出典範囲などもあり、稀にペットボトルの傷等から破裂する可能性もある。そのため、ペットボトルは高い圧力がかけられるために、炭酸飲料の物を使用する。緑茶飲料ミネラルウォーターなど非炭酸系飲料のものでは、構造や強度が異なるため、危険な場合がある。

航空法

テンプレート:See also 日本国内では、航空法に基づき、ロケットを打ち上げる空域によっては、打ち上げることが禁止される場合、または、打ち上げる場合に事前に国土交通大臣への届出が必要な場合がある。

歴史

古くからアメリカ合衆国では、日本の小学校に相当するジュニアスクールや、同じく中学校に相当するジュニアハイスクール児童生徒、果ては大学生や大人に至るまで、火薬を固めた固形燃料を使用した、モデルロケットを飛ばす授業を受けたり、また趣味で飛ばす者は多い。

しかし日本では、高速ガスを噴出しながら燃焼する固形燃料は、小型のものは花火と同じ扱いであるものの、大型となるものは都道府県知事へ届出が必要になるといった様々な義務がある。また、山林や人口密集地が多く、モデルロケットはなかなか普及しなかった。こうして日本では長い間、学校カリキュラムにおいて、小型ロケットに関係する実験は行いづらい事情があったが、1990年代に家庭の廃品として出るペットボトルに圧縮空気を溜めて打ち上げる、これらペットボトルロケットが知られるようになると、学校カリキュラムに次第に取り入れられていった。

有人飛行

本来であれば、小型軽量なロケット模型であるペットボトルロケットだが、これで人間を飛ばそうという実験も行われている。

フジテレビ系列番組『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』では、10本から始めて実験したところによると、100本を同時に噴射させることにより、成人男性とこれの座った椅子を備えた台座(総重量不明)を2m30cm浮かせることに成功している。ただしこの実験では、事前に行われた30本を使い60kgのを飛ばす実験で、各々のペットボトルからの噴射力の合力において、推力バランスがとれず横転、2度ほど、弁開放操作のスタッフに突っ込んでいるため、100本を使った実験では、ガイドレールを設けて垂直方向にのみ台座が移動するよう設計された。同番組では、この実験をペットボトルロケットによる世界初の有人飛行であると共に、「日本初の有人ロケット」と称している[2]

また、日本テレビ系列番組『世界の果てまでイッテQ!』でも、番組内の企画で同様の実験を行っている。タイで行われたこの実験では、現地で流通している3Lの炭酸飲料用のペットボトルが用いられた。番組内では、同様のペットボトルを6本、12本を束にして、ランドセルのように背負って飛行を試みたが、6本では推力が足らずに、少しジャンプしただけ、12本では、噴射した瞬間にロケットを装着した出川哲朗ごと1mほど真上に飛び上がったものの、バランスが取れずにそのまま頭から落ちた。この後、14本をドーナツ型に組み合わせ、その中心に人間が乗るロケットを用いたが、発射する前に壊れてしまい、最終的には、ドーナツ型に52本のペットボトルを組みあわせた大型のロケットを製作し、斜めに立てられた発射台から海へ向かって発射されると、横方向に約5m飛んだ。

なお、同じく日本テレビ系列番組の『投稿!特ホウ王国』では伊東万寿男がペットボトルロケットを背負って数十m飛行したかのような映像が放送されたが、こちらは発射後に前のめりに回転しているにも関わらず空中で不自然に体勢が立て直されているなど、ワイヤー等を利用した捏造映像の可能性が高い。

脚注

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参考文献

関連項目

外部リンク

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  • テンプレート:Cite journal - 同工法の紹介記事が掲載されている。
  • なお、日本軍が開発したロケット機桜花」と「秋水」が、第二次世界大戦中に有人動力飛行を行っている。