ヘロド (競走馬)

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テンプレート:Infobox ヘロドまたはキングヘロドHerodKing Herod1758年 - 1780年)は、18世紀後半に活躍したイギリス競走馬種牡馬サラブレッド種の成立に極めて大きな役割を負い、残した血量はあらゆる時代のいかなる種牡馬・繁殖牝馬をも凌駕している。馬名はヘロデ大王に由来、かつてはキングヘロドと呼ばれていた。

成績

主な勝ち鞍

  • 1763年
    • ロマンに対する500ギニーの競走
  • 1764年
    • ターターに対する300ギニーのスウィープステークス
    • トムティンカーに対する1000ギニーのマッチレース
    • アンティノスに対する500ギニーのマッチレース
  • 1765年
    • アンティノスに対する1000ギニーのマッチレース
  • 1767年
    • アスカムに対する1000ギニーのマッチレース

種牡馬成績

  • 勝利産駒:497頭
  • 総獲得賞品:20万1505ポンド以上、この他2100ガロン赤ワイン
  • チャンピオンサイアー:8回(1777 - 84年

ヘロドの標準ドサージュは750(血量換算で18.3%)にまで達し、エクリプス (568) 、セントサイモン (420) などを優に上回る。計算上はゴドルフィンアラビアン(14.6%)、ノーザンダンサー(ドサージュは1984-2007年の北米における集計で296)などよりも高く、サラブレッドへの血統的影響は史上最も大きいと言える。

生涯

ヘロドは後にエクリプスも生産する軍人、カンバーランド公ウィリアム・オーガスタスによって生産された。エクリプスはカンバーランド公の死のためウィリアム・ワイルドマン所有で走っているが、ヘロドは当初カンバーランド公の所有で走っている。記録上では5歳になる1763年ニューマーケット競馬場で行われた4マイルのレースで勝利したのが初めてのレースであり、その後も勝ち進んだ。翌年強豪として知られていたアンティノウス (Antinous) とのマッチレースがニューマーケットで組まれこれを下す。アンティノウス陣営は翌年もう一度再戦を申し込み再びマッチレースが組まれたが、またしてもヘロドの勝利に終わった。

このマッチレースが行われた1765年、カンバーランド公が死亡したためジョン・ムーアが購入し所有者が変わっている。その後は環境の変化からか体調を崩し不調が続いたが、1767年には復活を果たし、前年敗れたターフに雪辱すると、引退レースとなった1000ギニーのマッチでもアスカムに勝った。通算成績は10戦6勝で、一応一流と呼べるべき水準には達しているが、超一流とまでは行かない程度であった。

だが、引退後種牡馬入りするとヘロドの評価は急上昇する。馬主であるジョン・ムーアの元で種牡馬入りすると、当初は10ギニーと安い種付け料であったが、初年度からフロリゼルを輩出した。その後も18世紀三名馬の1頭に数えられるハイフライヤー(12戦無敗)などが活躍しヘロドの勢いは加速していった。同時期に三大始祖のもう一頭であるエクリプスも種牡馬として活躍していたが、エクリプス産駒の勝利数が862勝(344頭)だったのに対して、ヘロドは1042勝(497頭)とそれを引き離していた。エクリプスの862勝という数字も極めて優秀なものではあったが(参考:それまでの大種牡馬とされていたマッチェムが781勝(354頭))、ヘロドとその産駒ハイフライヤー(1108勝/469頭)の活躍はそれを凌いでおり、エクリプスはついに一度もリーディングサイアーを取ることができなかった。

このヘロドの影響は極めて大きく、今日のサラブレッドへの影響を血量に換算して計算すると、過去の種牡馬、繁殖牝馬のどれよりも高い数値を出す。ヘロドの成功は、サラブレッドという馬種の成立に少なからず貢献した。

リーディングサイアーの獲得年数は後世の研究によれば1777 - 84年の8年。ヘロドは死後4年たってリーディングサイアーを明け渡すが、すぐに代表産駒ハイフライヤーがリーディングサイアーの座につき、1785-96年,98年の計13回リーディングサイアーを獲得し、父に続く成功を見せた。さらにハイフライヤーの代表産駒サーピーターティーズル1799-1802,04-09年の計10回(又は9回)リーディングサイアーになり、この系統だけで33年間で31回もリーディングをとることになった。このため18世紀後半から19世紀前半にかけてサラブレッドの主流血統は現代ではマイナーなヘロド系であった。

しかし、ヘロドからサーピーターティーズルの三代があまりに成功しすぎたため、配合の幅が狭まり、近親交配の弊害などによりセントサイモンの悲劇と同様の現象が起き衰退した。ヘロド系は現在も存続しているが、活躍している種牡馬は僅かであり勢力は小さい。

  • ヘロド系の衰退と直系子孫についてはヘロド系及びヘロド系の一部であるトウルビヨン系を参照されたい。なおトウルビヨン系以外のヘロド系はほとんど滅びている。

主な産駒

  • フロリゼル(1768_Florizel)
  • ウッドペッカー(1773_Woodpecker) トウルビヨン、ザテトラーク系の祖先
  • ハイフライヤー(1774_Highflyer) 12戦不敗 英リーディングサイアー13回
  • ブリジット(1776_Bridget) 英オークス
  • フェイス(1778_Faith) 英オークス
  • メイドオブジオークス(1780_Maid of the Oaks) 英オークス
  • フェノミナン(1780_Phenomenon) セントレジャーステークス

血統表

ヘロド血統ヘロド系 / Darley Arabian4×5=9.38%(母内))

Tartar
1743 栗毛
Partner
1718 栗毛
Jigg
1701
Byerley Turk
Spanker mare
Sister to Mixbury Curwen's Bay Barb
Spot mare
Meliora 1729 Fox
1714
Clumsy
Bay Peg
Witty's Milkmaid
1720
Snail
Shield's Galloway

Cypron
1750 鹿毛
Blaze
1740 鹿毛
Flying Childers
1715
Darley Arabian
Betty Leedes
Confederate Filly Grey Grantham
Rutland Black Barb mare
Selima/Salome
1733
Bethell's Arabian 不明
不明
Champion mare Graham's Champion
Darley Arabian Mare F-No.26

外部リンク