チョーキング

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チョーキング

チョーキング(bendingとはを弾いた後に押弦している指で弦を引っ張り、無段階に音の高さを変えるギター演奏技法である。

そもそもチョーキングは「絞める」という意味の英語だが、この言葉が使われるのは日本のみで、日本国外では意味が通じない。

古くからアメリカの黒人ブルースミュージシャン達(B.B.キングなど)や、白人カントリーミュージシャン達が使っていたテクニックである。それ以前よりジャズやブルース音楽でのサックスは持続音の中で音程を上げるピッチベンドという奏法を用いていたが、ブルース音楽のギタリスト達がこの管楽器のピッチベンドを模して使いだした奏法がチョーキングである。これが世の中に広まったのは、白人のロックミュージシャン達(エリック・クラプトンなど)が多用して以来と見る向きもある。太い弦を使用するアコースティックギターの時代から存在したテクニックだが、エレクトリックギターの時代になって以降、ロックの殿堂入りバンド、The Ventures の ノーキー・エドワーズ が張力の弱い細い弦「ライト・ゲージ弦」を考案し、それ以降、一般的なテクニックとして使用されるようになった。

チョーキングで音程を上げた状態において、ビブラートをかけることをチョーキングビブラートという。

同様の技法はヴァイオリン三味線のようなフレットのない有棹弦楽器を除く弦楽器に広く用いられており、例えばの「押し手」の技法は弦を引っ張る方向こそチョーキングとは違えど原理は全く同じである。また、インドシタールのミンドはチョーキングに極めて近い奏法である。

チョーキング

1音チョーキング
通常のチョーキング。人差し指の付け根の関節を支点にしたてこの原理を移用して1音分(長2度)音程を上げる。楽譜では[C]で表示される。
チョーキング後にピッキング・ハーモニクスやタッチ・ハーモニクスを行うなど、広く応用のきく奏法でもある。
半音チョーキング
半音分(短2度)音程を上げる奏法。楽譜では[H.C]で表示される。
1音半チョーキング
1音半分(短3度)音程を上げる奏法。楽譜では[1H.C]で表示される。
2音チョーキング
2音分(長3度)音程を上げる奏法。楽譜では[2C]で表示される。これの他に2音半(完全4度)[2H.C]、3音(増4度)[3C]音程を上げるものもある。
クウォーター・チョーキング
半音に満たない程度の音程を上げる奏法。楽譜では[Q.C]で表示される。必ずしもクウォーター(1/4)の音程である必要は無い。

ダブル・チョーキング

ダブル・ベンド
2本以上の弦を同時に音程を上げる奏法、上げる音程が指定されることもある。この奏法のことをダブル・チョーキングと呼ぶこともある。
ハーモナイズド・チョーキング
音程を上げる弦と上げない弦を同時に発音し、和音を作る奏法。楽譜に表示される記号は無いが、この奏法だとわかるように示されている。
ユニゾン・チョーキング
音程を上げる弦と上げない弦を同時に発音し、2つの音を同じ音程にする奏法。ハーモナイズド・チョーキングと同じく、楽譜に表示される記号は無いが、この奏法だとわかるように示されている。

その他

チョーク・アップ
チョーキングした状態で音を出す奏法。音程を上げる過程の音は入れない。楽譜では[U][H.U][1H.U][2U]で表示され、それぞれ1音、半音、1音半、2音を示す。
チョーク・ダウン
チョーキングした音を元に戻し、音程を下げる奏法。楽譜では[D]で表示され、下げる音程は指定されない。
ポルタメント・チョーキング
ゆっくりと音程を上げるチョーキング。楽譜では[Port.○○]で表示される。
ヴィブラート
チョーキングとチョーク・ダウンを繰り返し音を揺らす奏法、エレキギターにおいて一般的なヴィブラートの方法である(この他にスライドを利用したヴィブラートとトレモロアームを利用したヴィブラートがある)。楽譜では波線で表示される。
チョーキング・ヴィブラート
チョーキングした状態でヴィブラートを行う奏法。
スティールギター・リック
チョーキングする弦とチョーキングしない弦をコードとして同時に発音、あるいはメロディの一部として弦ごとに発音することによって、ペダルスティールギターのようなフレーズと音色を得るテクニック。主にカントリーミュージックで多用される。