タラスコン

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フランス > プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏 > ブーシュ=デュ=ローヌ県 > タラスコン


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タラスコンフランス語Tarascon、詳しくは後述)は、フランス南部の一地名ローヌ川の右岸沿いに置かれた古代ローマの陣営に起源する歴史ある町であり[1]、現在はブーシュ=デュ=ローヌ県アルル郡の小郡庁所在地となっている都市である。かつては郡庁所在地であった。

地名の由来ともなっている怪物タラスクの伝説と、ルネ王の城ことタラスコン城などで知られる。

呼称

フランス語名 Tarascon仮名転写:タラスコン)。別表記として Tarascon-sur-RhôneTarascon (Bouches-du-Rhône) などあり。英語名も、正式名・別表記ともフランス語に準じる。

別表記 Tarascon-sur-Rhône (仮名転写:タラスコン=シュール=ローヌ)は「ローヌ川沿いのタラスコン」を意味し、同名の別地名であるフランス南西部のタラスコン(タラスコン=シュール=アリエージュテンプレート:Sname。「アリエージュ川沿いのタラスコン」の意])と区別する必要がある場合に執られる表現の一つである。ただし、本項のタラスコンはあくまでも“本家”であり、したがって、地名として Tarascon 以外が用いられることは通常的でない。Tarascon (Bouches-du-Rhône) も同様で、所属地域であるブーシュ=デュ=ローヌの名を借りての説明表記であって地名ではない。そのほか、上記のようなかたちを執らず、平素な言葉による説明で済ませる場合もある。

地理

アヴィニョンの南23km、アルルの北20kmに位置し、ローヌ川を挟んだ対岸にはラングドック=ルシヨン地域圏ガール県の小さな町ボーケールがある。 タラスコンとボーケールは地域圏も県も異なるが、複数の橋で結ばれている。 もっとも、流通面ではさながら一つの町のように機能している両者であるが、古くから土地と水利を巡って争いが絶えなかった歴史的経緯から、人的交流は極めて乏しい。

文化

怪物タラスク

ファイル:Tarasque de Noves (profil - époque incertaine).png
人喰いの怪物を表した紀元前の石像
タラスクの原形と解釈され、「ノーヴのタラスク」と呼ばれる、ラ・テーヌen)III期(紀元前300- 紀元前120年頃)に属する遺物である。ノーヴen)出土。アヴィニョン碑文博物館(fr)所蔵。[2]
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信仰の力によって怪物タラスクを手なずけた聖マルタ
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タラスクの祭りにおける怪物タラスクの出し物

タラスクTarasque、タラスクスとも称)はこの町に伝わる伝説上の怪物で、ジェノヴァ大司教にして中世イタリア年代記作者であるヤコブス・デ・ウォラギネが著した聖者殉教者列伝『黄金伝説 (legenda aurea)』に紹介されている。 それによれば、当時タラスクはローヌ川付近の森に棲息していたという。 かつての棲み処は遠くオリエントシリアにあったとし、海の巨怪レヴィアタン様の怪物ボナコンとの間に生まれたものとする(ただし、考古学的・民俗学的知見から導き出されるタラスクの雛形[ひながた]と呼ぶべき存在は、古よりブーシュ=デュ=ローヌ地方に土着の謎多き人喰いの怪物[★右の画像を参照]であり[3][4]、オリエント起源は後付けの逸話と思われる)。 毒息を吐き、灼熱のをまき散らす邪悪な竜の眷属(けんぞく)で、硬い甲羅に鋭い背鰭とヤマネコの上半身、6本のドラゴンの体を具えている。性質は獰猛で、人を喰らい、特に子供を好んで襲ったという。

時は西暦48年キリスト教布教のためにサント=マリー=ド=ラ=メールからやってきた聖マルタ (fr: Sainte Marthe) は、当地にあるネルルク(「黒い森」の意)村を訪れた際、怖ろしい怪物タラスクの話を聞き、これを鎮めるべく森に入った。 そこで怪物と対峙した聖女はしかし、臆することなく一心に祈りを唱え、聖水を振りかけることでこれを抑え込むことに成功する。 そうして、鎖に繋がれて飼い犬のように聖女の下(もと)にひれ伏した怪物を、しかし、長らく苦しめられ続け、家族を喰われてきた村人たちは許すことなく、石礫(いしつぶて)でもって打ち殺した。

タラスクの伝説は、中世以降、物語や絵画の題材になってきた。 今日、タラスコンでは毎年6月の最終土曜日に「タラスクの祭り」が開催されている。

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英雄タルタランの扮装をする市民

1991年、フランス南西部はピレネー山麓の町エスペラザen)にて化石が発見された肉食恐竜に、この伝説の怪物に因んだ「タラスコサウルス」という学名が付けられた。 なお、確証は無いが、本項の地名タラスコンに因んで名付けられたフランス南西部の町タラスコン(タラスコン=シュール=アリエージュ)が化石の発見地エスペラザの近隣にあることから、この恐竜と怪物タラスクを関連付けるには距離的に遠く離れた本項のタラスコンより整合性があり、よって、タラスコン=シュール=アリエージュを仲立ちとして、本項のタラスコン(タラスコン=シュール=ローヌ)に伝わる怪物と恐竜の名がつながっていると解釈できる[5]

英雄タルタラン

タルタラン (Tartarin) は、小説家アルフォンス・ドーデの3部作『陽気なタルタラン(en)』『アルプスのタルタラン』『ポール・タラスコン』に登場する、タラスコンを生まれ故郷とする架空の英雄で、世界を股にかける冒険家である。 タルタランのシリーズは19世紀を舞台にした物語であり、怪物タラスクとその祭りのことも話の中で語られている。 そのような関係から、タラスクの祭りには英雄タルタランに引き連れられるかたちで怪物タラスクが現れるのである。

なお、1985年にはタルタランを記念した小さな博物館がオープンしている。

観光名所

聖ヨハネ門 (Portail Saint Jean)、コンダミヌ門ジャルネーグ門 :かつての市壁の名残である3つの門。聖ヨハネ門が正門。

聖マルタ教会 :聖マルタが埋葬されていると伝えられている。建築様式は、12世紀ロマネスク14世紀ゴシックで二分されている。地下納骨堂の由来は3世紀にまで遡る。

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タラスコン城(ルネ王の城)

タラスコン城 :川沿いにあり、現在のものは1401年アンジュー公ルイ2世が建造に着手したものである。建造は長男ルイ3世が引き継ぎ、次男ルネ1447年に完成させた。落成者の名を採り、この城はしばしば「ルネ王の城 (le château du roi René)」と呼ばれている。城は17世紀以降、国有になる1932年まで軍用の牢獄に転用されていた。

町役場1648年築造。

アクセス

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脚注

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関連項目

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参考文献

外部リンク

  • 『ローヌ河歴史紀行 -アルプスから地中海へ-』 岩波書店、157頁。
  • 『ヨーロッパの祝祭』 河出書房新社、163頁。
  • 『ヨーロッパの祝祭』 河出書房新社。
  • 『フランスの祭りと暦』 原書房。
  • そのように解釈しない限り、命名の動機が不明。