安息日
安息日(あんそくじつ、あんそくにち、あんそくび(日本語での読み方を参照)、テンプレート:Lang-he、テンプレート:Lang-en)は、西方系の宗教において、何もしてはならない日と定められた日である。
目次
概要
旧約聖書で週の7日目と定められており、実際には土曜日にあたる。ユダヤ教徒はこの日には戒律としていかなる労働も行わないことを求められる。キリスト教ではそれは厳密に求められることはない。なお、教会堂に集まって礼拝を行う日は基本的に日曜日になっている。
旧約聖書の「日」は基本的に夕方で区切る。「土曜日」というのは深夜を一日の始まりとする現代の時法でいえば金曜日の日没から土曜日の日没までの間を言う。
「何もしてはならない」の範囲は宗派によりかなり差異があり、ユダヤ教では基本的に厳格であり、家事を含め日中は一切の労働を行わない。人命の救助など緊急の場合には安息日でも労働を行ってよいとされているが、教義に厳格な人々からは非難され救急車に投石されることもある。以前国際大会でボクシングの選手がたまたま試合の日が安息日になってしまったため、棄権したようなこともあった。キリスト教では歴史的には安息日の休日が重視されたが、一部の教派を除きそれほど強い禁止はない。ピューリタン(改革派)の教派では、娯楽などもつつしみ神の崇拝に専念する日とする考え方がみられるが、キリスト教全般の傾向からすれば、むしろ例外に属する。現代キリスト教の多くの宗派では普段より少し心静かに過ごす程度か定まった禁忌をもたない。また、してはならないことが収入を得るための労働のみと考えられることもあり、敬虔な信者でなければむしろ娯楽などはこの日に行う事が多い。
起源
キリスト教やユダヤ教では、『創世記』で啓典の神が天地創造の7日目に休息を取ったことに由来し、何も行ってはならないと定められた日とされている。一方で、バビロニアの七曜制からきたものとする見方もある。しかしながらも、聖書通りに解釈するのは7日目であり、本来の安息日は現代における「土曜日」である。
各宗教での扱い
ユダヤ教
ユダヤ教の暦のなかで、安息日は一番大切な日である。それは『出エジプト記』20章と『申命記』5章に記されている十戒の中で守ることを教えられている日であるからである。安息日(テンプレート:Lang-he シャバット)は、救世主の時代の前兆である。
『出エジプト記』20章では、神が天地創造において7日目に休まれてこの日を祝福し聖であると宣言したゆえに安息日を覚えて聖なる日とし、労働してはいけないことを教える。また『申命記』5章では、神がユダヤ人をエジプトの奴隷状態から連れ出して休みを与えたゆえに、安息日を覚えて聖別し、労働してはいけないことを教える。 したがって、ユダヤ教で安息日は、神が天地を創造したことを覚えるとともに、神がユダヤ人の歴史を救い、ユダヤ人が神の民であることを覚える記念日である。
この日は捕囚期以後、シナゴーグにつどい、神を礼拝する日となった。
イスラエルでは、シェバト(シャバット)には機械の操作や火を扱うことができない(『出エジプト記』35章3節)とされている。このため、厳格なユダヤ教徒は金曜日の日没前までに食事の支度をし、安息日である土曜日は調理を行わない。安息日の食事として、金曜日の日没前に煮立たせてから燠火にかけて一晩中低温調理するチョレントや、金曜日の日没前に調理して冷めたものを食べるゲフィルテ・フィッシュが生まれたのはこのためである。また、国内ではユダヤ・アラブ間における「共存」を目指しているとされているハイファ、ならびにアラブ系イスラエル人の都市や村落などを除きバスや鉄道など公共交通機関はすべて運休するうえ、国営航空会社もすべての航空便の運航を停止する(ただし、「シェルート(שרות)」という乗り合いタクシーは、上述のハイファだけではなく、テルアビブやベングリオン国際空港などにおいても運行されている)。スポーツ界では、国際大会に出場予定だった選手が、競技の日程が安息日と重なったとして欠場したケースもある。シャバトになるとエレベーターが各階停止の全自動運転になるところがある。これは「ボタンを押す」ことによって電気スイッチ内に火花が飛び「火を灯火する」ことを避けるためである。また同じ理由から電話番号を音声認識する「コーシェル・フォン(シャバットフォン)」なる電話機も存在する。それ故、ユダヤ教徒は安息日である金曜日の日没から土曜日の日没までは、本来は宗教的な観点から禁煙をしなければならない。しかし、ユダヤ教徒であるユダヤ系イスラエル人が安息日に喫煙を行うことは、宗教的にみればタブー視されるが成人であるならばイスラエルの法律に対する違法行為ではない(ただし、イスラエルにおいては、路上における喫煙行為は、民族や宗教に関わりなく2007年11月からは非合法とされている)。また、ユダヤ教とはいえどもあまり厳格でない宗派も改革派を中心に存在し、普通の家庭生活を送っているユダヤ教徒もいる。
キリスト教
キリスト教会では当初は安息日(土曜日)に集まって礼拝を行っていたが、のちにキリストの復活を記念して、復活の日である日曜日を主日と呼び、礼拝を行うようになった。ローマの神や土地の神との結びつき(印欧化・混交)、ユダヤ教からの乖離政策であるといわれる。さらに西方教会では主日を安息日と同一視するようになった。
アメリカでは191教団がこの安息日を厳守すると言われる。
こういった歴史的背景に直視し、本来の聖書通り日曜ではなく土曜礼拝を主張するセブンスデー・バプテスト教団やセブンスデー・アドベンチスト教会、真イエス教会、イエス之御霊教会などのキリスト教団(主にプロテスタント)も存在する。また、カトリックの聖職者も日曜ミサのほか、「サバティーノ」と呼ばれる土曜ミサも行う。
一方、正教会など東方教会では土曜日を安息日とする。正教会に属する日本ハリストス正教会では安息日をスボタと呼ぶ。この語は直接にはロシア語に由来している。正教会においてはスボタは神の創造の業を記憶する喜びの日であり、大斎にあっても平日には禁止されるオリーヴ油および酒の摂取が許される。ギリシャ語をはじめ、カトリック圏のロマンス諸語でも「安息日」という語が「土曜日」、「主日」が「日曜日」という曜日名になっている。また、ギリシャ語では金曜日を準備の日と呼ぶ。
ヨーロッパ大陸におけるカレンダーでは一般的に日曜日を一番左に配置しており、土曜日が7日目という扱いをしていると言える。
以上の点で、キリスト教の安息日は一般に日曜日と説明される。聖書通り土曜日であると解釈するのも妥当である。
イスラム教
イスラム教ではムハンマドがメッカを脱出した金曜日を安息日としている。厳密には安息日とはユダヤ教のものであり、この場合の安息日とは、休日という意味である。イスラム教は、毎日が礼拝であり、特に金曜日には合同礼拝(集団礼拝、金曜礼拝)が行われる。神はムハンマドに合同礼拝についての啓示を下しており(大天使ガブリエルが仲介している)、アル・クルアーンのスーラに「アル・ジュムア」がある。アル・ジュムア(テンプレート:Lang-ar)は金曜日という意味。金曜日が休日のイスラム社会もあれば、休日でないイスラム社会もある。また、イスラム教で土曜日は安息日ではないけれども、アラビア語で「土曜日」は「ヤウム・アッ=サブト(يوم السبت)」というが、その「サブト(سبت)」はヘブライ語で「土曜日」や「安息日」を意味する「シャバット(שבת)」が語源である。
日本語での読み方
日本語の「安息日」には「あんそくじつ」「あんそくにち」「あんそくび」の3つの読み方がある。キリスト教関係者の間でも読み方が分かれているが、NHKでは「あんそくび」と読んでいる[1]。
「文語訳聖書」、「口語訳聖書」、「新改訳聖書」では「あんそくにち」、「フランシスコ会訳聖書」では「あんそくじつ」、「新共同訳聖書」では「あんそくび」と振り仮名が振られている。
日本における影響
私立中学のいわゆる名門校は地域によってある一定の日時(東京においては2月1日)に入試を行うことによって併願を制限している。しかし、その日が安息日にあたる場合、キリスト教など宗教を母体とした学校では入試が実施されず、翌日に設定されることがある。従ってその年度の受験生は通常併願できない組み合わせの学校同士を受験できることとなり、入学のチャンスが増える。一方で、例年とは異なる受験者層が受験することにより当該学校のみならず地域全体の学校の難易度に変化が生じ、合否の予測が困難となることもある。一部ではサンデーショックと呼ばれる。
名称の起源と比較
かっこ内は土曜日の名称。
ヘブライ語 | (שבת, šabbāth シャバット) |
イディッシュ語 | שבת, šabes シャベス |
ギリシア語 | |
ルーマニア語 | ( ) |
ロシア語 | (суббота) |
ラテン語 | sabbatum, (Dies Saturni) |
イタリア語 | (Sabato, サーバト) |
フランス語 | Sabbat, (samedi) |
スペイン語 | (Sábado) |
ポルトガル語 | (Sábado) |
ドイツ語 | Schabbat, (Samstag) |
オランダ語 | Sjabbat |
英語 | Sabbath, shabbath, (Saturday) |
ゲール語 | (Satharn) |
ポーランド語 | Szabat |
ハンガリー語 | Szombat |
エスペラント語 | (Ŝabato) |
アラビア語 | (السَّبْت, As-sabt アッ=サブト) |
ペルシア語 | شنبه, Shanbeh シャンベ |
インドネシア語 | hari Sabtu |
ヘブライ語の「シャバット」に由来する語が「土曜日」の名称となっている言語では、「安息日」というとそれはユダヤ教の安息日である土曜日のことを指し、キリスト教の安息日である日曜日やイスラム教の安息日である金曜日のことは表さない。たとえば、イタリア語の「Sabato」やスペイン語とポルトガル語の「Sábado」は、曜日名としては「土曜日」を指すが、「安息日」という意味では土曜日が安息日であるユダヤ教の安息日のみを表す。
関連項目
- モーセの十戒
- トーラー
- ミツワーの一覧
- 日、週、曜日
- C・K・ドージャー#日曜問題
- サンディー・コーファックス - 敬虔なユダヤ教徒だった彼は、1965年のワールドシリーズ第1戦(10月6日)がユダヤ教最大の祭日であるヨム・キプルと重なったため、安息日として先発登板を拒否した(当時ロサンゼルス・ドジャース所属)。
脚注
外部リンク
執筆の途中です | この項目「安息日」は、キリスト教に関連した書きかけ項目です。加筆・訂正などをして下さる協力者を求めています(P:キリスト教/PJ:キリスト教)。 |
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