シラビソ

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テンプレート:生物分類表 シラビソ(白檜曽、学名テンプレート:Snamei)は、マツ科モミ属の常緑針葉樹で、日本の特産種である。別名はシラベ

特徴

山形・宮城県境の蔵王から中部山岳地帯紀伊半島大峰山系、四国の剣山石鎚山まで分布する。ウラジロモミより更に上部、海抜1,500mから2,500mの亜高山帯に分布する。四国に分布するものは、シコクシラベ テンプレート:Snamei var. テンプレート:Snamei という変種として扱われる[1]。関東から中部地方にかけての亜高山帯林において、オオシラビソと混生するが、比較すると太平洋側のの少ない山岳ではシラビソが、日本海側の多雪地ではオオシラビソが比較的優勢である。

球果は4〜6cmとかなり小型で、成熟すると暗青紫色になる。樹高は大木では35m以上に達する場合もあるが、自生地が標高の高い山岳地帯であるため、多雪・強風・土壌の貧弱など過酷な自然環境により、大木となることはかなりまれである。また、寿命も数十年程度と、樹木としては比較的短い場合が多い。混生することが多いオオシラビソとはよく似ているが、枝からの葉の生え方に違いがあり、上から見ると、シラビソは枝がよく見えるのに対して、オオシラビソは葉が枝を隠すように生えていることで区別ができる。また、球果の先端がオオシラビソでは丸みを帯びているのに対して、シラビソでは先端が尖っている。

八ヶ岳北横岳縞枯山では、同一地域のシラビソとオオシラビソが一斉に枯死 → 稚樹が一斉に成長 → 同じくらいの寿命で再び一斉に枯死というサイクルを繰り返し、白い枯れ木と緑の樹木が帯状に連なっているため、「縞枯現象」と呼ばれる。この「縞」は、木の生長のサイクルに従って、数十年単位で山頂方向にゆっくりと移動している。

北海道・千島列島・樺太に分布するトドマツと近縁で、最終氷期、またはそれ以前の氷期に本州まで南下してきたトドマツが、氷期の終了とともに本州中部の山岳地に取り残されたものの子孫と考えられる。大量の積雪に弱いため、現在の東北地方の日本海側にはまったく分布せず、太平洋側でも蔵王より北には分布しない。この分布パターンやそれに至る経緯は、トウヒ属のトウヒエゾマツに類似している。

変種、品種

シラビソの変種品種として下記のものがある[1]

シコクシラベ

1928年、中井らは、四国山地に分布するシラビソが、本州のものと比較して毬果がやや小さく、葉の形状に相違が見られることから、四国の固有種「シコクシラベ、四国白檜、テンプレート:Snamei var. テンプレート:Snamei (Nakai) Kusaka.」として発表した[2]。分布域は石鎚山系二ノ森、石鎚山周辺)、笹ヶ峰剣山系(剣山、一ノ森周辺)の標高約1,700mより上部の極限られた領域である。

しかし、1957年に矢頭らは西駒ヶ岳、石鎚山、大峰山のシラビソの毬果や葉の解剖的性質の比較を行い、四国産のものと本州のものを区別する必要はないと発表した。山中らも1981年に四国と紀伊半島のシラビソを比較して、区別の必要はないとの見解を示している。従って石鎚山系のシラビソは南限に相当する。

四国のシラビソは最終氷期に南下したものの遺存植物とされており、その後の温暖化によりブナササ類の進入により追いつめられて、高所の岩礫地など条件の厳しい場所に辛うじて生育しているものとされる[2][3]。さらに将来、腐植の堆積によるササの進入や地球温暖化による成育域の逼塞が懸念されている[2][4]愛媛県では準絶滅危惧種、徳島県および高知県では絶滅危惧II類に指定されている[5]

脚注

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関連項目

テンプレート:Sister

  • 1.0 1.1 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 2.0 2.1 2.2 笹ヶ峰自然環境学術調査会 『笹ヶ峰の生物』、1986年
  • 田代博、藤本一美、清水長正、高田将志 『山の地図と地形』 山と溪谷社、1996年
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