コミューン

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コミューンテンプレート:Fr)は、フランスにおける基礎自治体、すなわち地方自治体の最小単位である。

スイスの基礎自治体もフランス語圏(Suisse romande 又は Romandie)ではコミューン(コミュヌ)と呼ぶ。

元来はフランス語で「共通」「共同」「共有」「多数」「平凡」「庶民」等を意味する語で、英語のコモン (common) にあたる。

日本では英語読み [kɔmjuːn] からのコミューンという表記がポピュラーであるが、フランス語ではコミュヌ [kɔmyn] と読む。

制度

日本市町村にあたるが、フランスには日本のような行政上の、町、の区別はない。地図上に「都市」も「村」も存在しない。人口80万人のマルセイユも、200人程度のカマンベールもコミューンである。そのため、通例、日本の自治体の規模と翻訳者の主観に合わせて「マルセイユ市」、「カマンベール村」のように恣意的に翻訳される。

コミューンには、議会(テンプレート:Fr)と市長(テンプレート:Fr)が置かれる。議会の議員は住民の直接選挙で選ばれる。市長は議員の中から互選され、議会の議長と執行機関の長を兼ねる。

規模

人口がほぼ日本の半分のフランスに、日本の市町村数の20倍ほどの3万8千のコミューンがあり、規模は日本の市町村より小さいものが多く、コルビエールのように人口が26人のコミューンもある。ロッシュフルシャの人口は1人である[1]。この点はイタリアのコムーネと共通している。

日本の市町村と比べるとコミューンの規模は小さく、平均人口は約1500人で、約9割が人口2000人未満である[2]

歴史

フランスの県や地域圏とは異なりコミューンの歴史は古く、住民の宣誓共同体という形態では中世の11-12世紀の頃にさかのぼるものもある。ただし、現在の多くの自治体については、特にその管轄範囲の起源をめぐっては、カトリック教会の地方組織として整備された教区(パロワスparoisse)が基礎となっていることが多い。制度的には、フランス革命を経た後、教区の範囲が現在のコミューンの範囲とされ、19世紀には議会と首長の公選制が導入されている。

社会運動における「コミューン」

コミューンは、小規模な共同社会を意味することもあり、1970年代のベトナム反戦運動公民権運動の時代には、新しい価値観、生き方を模索して、こうした共同生活を営むものもアメリカでは少なくなかった。しばしば、宗教的な小教団のかたちを採ったり、語源の共通性から想像できるように共産主義的意味合いを持つことがあった。

参考文献

  • 竹下譲 監修・著『新版 世界の地方自治制度』イマジン出版、2002年
  1. 伊奈川秀和(2012)"フランスの社会保障制度における国と地方の関係"海外社会保障研究(国立社会保障・人口問題研究所).180:18-27.(18ページより)
  2. 前掲書、200頁

関連項目