コガネグモ

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テンプレート:生物分類表 コガネグモ(黄金蜘蛛、学名: テンプレート:Snamei)は、クモ目コガネグモ科に属するクモである。最も広く知られているクモのひとつである。

形態

体長は、メスで20mm弱、クモとしては大型の部類である。初夏に成熟し、メスの腹部には幅広い黄色と黒の横縞模様があるのが特徴である。オスのサイズはメスの1/5程度とはるかに小型であり、体色は茶色一色である。

生態

造網性のクモで、ほぼ形に近いきれいな円網を作る。クモは常に網の中心におり、頭を下に向けて止まる。この時、前2対と後ろ2対の足をそれぞれそろえて真っすぐに伸ばし、その配置はX字状になる。コガネグモは、この足の配置に合わせるように、網の上に糸の帯でできた白いジグザグの模様をつける。これを、クモの姿を隠すものという意味で「隠れ帯」と呼んだが、実際にその効果があるかどうかは分からない。単純に「白帯」(はくたい)と呼ぶ場合もある。なお、白帯の形は、特に幼虫の場合には円形であったり、縦一直線であったりと、様々である。

非常に攻撃的であり、餌の昆虫が網にかかると、ほとんど警戒することもなく、瞬時にその振動に反応して接近し噛みつく。さらに、獲物の体を独楽のように回しながら糸の帯を巻き付け、糸で包んでから網の中央に運び、そこで食べる。人為的に餌となりうるもの以外を網にかけたり挑発すると、網を網の平面に対して垂直に振動させて威嚇する。

オスは成熟すると網を張らず、メスのところにやって来る。メスの網の端で枠糸に足をかけ、糸に振動をあたえ、メスの機嫌をうかがい、それから網に入って交接を行う。メスは卵を糸でくるみ、卵嚢にして網の片隅にぶら下げる。卵嚢は細長い八角形くらいの形で、偏平で、2枚のに卵塊を挟んだような仕組みになっている。

幼体は秋に孵化し、糸を使って飛んで行くバルーニングを行う。年1化であり、成体は秋までに死亡する。

分布

日本では本州以南、伊豆諸島と沖縄諸島までの南西諸島に知られる。国外では台湾、朝鮮、中国に分布する。

利害

日本の多くの地域でごく普通種であり、身近に見られる目立つ種であるから、よく知られている。そのために古くから各地で様々な名前で呼ばれていたようである。特に、ジョロウグモと混同され、同じに呼ばれることは多かったらしい。両種の違いについては後述する。それ以外に、湯原はサンバソグモ(三番叟のこと?)、ヨコブリグモなどの異名を取り上げ、さらに子ども達が勝手に呼ぶ名としてチンダイグモ(鎮台グモ?)、ヘイタイグモ(兵隊グモ?)を取り上げている[1]

ただ、実生活において大きな利害はなく、子どもの遊びに使われる程度である。

その一つは、子どもがセミなどを捕まえる場合である。捕虫網のような柄と網の枠だけを用意し、この枠にクモの網を引っかけ、臨時の網として用いて虫を捕る、という方法があり、その場合に本種の網が使われることが多かったという[2]。ただし、現在では簡単な虫取り網が安価に入手できるから、このような方法は廃れている。

もう一つはクモ同士を戦わせる遊びで、これも本種がよく使われる。ナガコガネグモの場合、本種ほど攻撃的でないのでおもしろくないという。

クモ合戦

クモは肉食性の小動物であり、2匹を近づければ攻撃を掛け合うことがある。そこで、クモを捕まえてきて、互いにけしかけ、喧嘩をさせる遊び昆虫相撲が各地にある。造網性のクモを使う場合やハエトリグモを使う場合などがあり、各地の伝統的な遊びにもなっている。ただ、子供が野外での遊びをすることが少なくなった現在では、それを見ることはあまりない。

しかし、コガネグモを戦わせる遊びを、地域の伝統行事として現在も盛んにおこない、町おこしに利用しているところもある。鹿児島県姶良市では、この「クモ合戦」を毎年の6月第3日曜日におこなっている。大人も子供も参加し、参加するものはあらかじめコガネグモを採集し、大会まで大事に育てる。強いクモを飼育するには色々な秘伝があり、名人と呼ばれる人もいる。紅白の布を巻いた横枝のついた棒を立て、この横枝にコガネグモ2匹を止まらせ、互いに喧嘩するようにけしかける。行司役は「タッタッタ」というかけ声をかける。この行事は、伝承に由れば、文禄・慶長の役において、薩摩藩島津義弘が出陣した際、兵士達を励ますために始めたものとされている。高知県四万十市にも同様の行事がある。 テンプレート:Main

フィリピンでは、2匹のクモを細い横棒の上で闘わせる遊びが、子どもたちによって日常的に行われている。このフィリピンのクモ相撲に使われるクモは、コガネグモではなく、ヒメオニグモ属のクモである。

コガネグモとジョロウグモ

コガネグモと同じくらい名の通ったクモにジョロウグモがある。名前としてはむしろジョロウグモの方が有名かもしれない。この両者は共にごく普通のクモであり、両者が混同されることが多い。いずれもかつてはコガネグモ科に所属していた(ジョロウグモは現在ではジョロウグモ科に所属させる)ほどであって、多少似ていなくもなく、また、成虫の腹部に大柄な横縞があることも共通している。しかし、違いを知っていれば混同することはない。

コガネグモ
腹部は幅広く、黄色と黒の横しまで、足は比較的太く、直線的。網はほぼ円形の円網で、直径30cm位で、普通は白帯をつける。初夏に成熟する。
ジョロウグモ
腹部は楕円形で、黄色と水色の横しまで、足は細長く、曲がっている。網は縦長の特殊な円網の変形で、前後に補助的な網をつけ、さしわたし1m近くになる。白帯はつけない。秋に成熟する。

近縁種

テンプレート:Sister テンプレート:Sister コガネグモ属学名: テンプレート:Snamei)は、日本に7ある。地域にもよるが、普通に見られるのは以下のような種である。特に最初の2種は本種と共に見られ、斑紋も似ている。

コガネグモ テンプレート:Snamei
チュウガタコガネグモ テンプレート:Snamei
コガネグモに似ているが、腹部の模様が異なる。日本本土に普通。
コガタコガネグモ テンプレート:Snamei
コガネグモに似ているが、腹部の模様が異なる。日本本土に普通。
ナガコガネグモ テンプレート:Snamei
腹部が細長く、細かい黒の横線模様がある。日本本土に普通。
ナガマルコガネグモ テンプレート:Snamei
コガネグモとナガコガネグモの中間のような姿。南西諸島では普通種である。


出典

  1. 湯原(1931)p.126
  2. 八木沼(1986),p.113

参考文献

  • テンプレート:Cite book
  • 小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会、p.425
  • 八木沼健夫,『原色日本クモ類図鑑』、(1986),保育社
  • 湯原清次、『蜘蛛の研究』、(1931)、綜合科學出版協會

関連項目

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外部リンク