キアゲハ

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キアゲハ(黄揚羽・学名 Papilio machaon)は、チョウ目アゲハチョウ科に分類されるチョウの一種。ユーラシア大陸北米大陸に広く分布し、日本でもナミアゲハとともに全国でよく見られるアゲハチョウである。

概要

成虫の前翅長は4cm-6cmほど。ナミアゲハとよく似ているが、キアゲハは前翅のつけ根が黒ずんだ色彩で塗りつぶされたようになっていてナミアゲハのような縞模様にはならない。また、の中ほどは黒い線が細く、和名どおり黄色みが強いので区別できる。

成虫は4月から10月頃まで、年に2回~4回ほど発生する。後述のように海岸植物から高山植物までを含むセリ科植物を食草とするため生息地も幅広く、海岸から市街地農村山地、さらには高山帯までと、いろいろな場所で見られる。雄成虫には独特の香りがあるが、成分としてはリナロールゲラニルアセトンn-ドデカンなどが検出されている[1]

幼虫食草セリハマウドシシウドなどのセリ科植物である。だけではなく花序や若い果実をも好んで食べて育つ。ニンジンミツバアシタバパセリなどの野菜も食草となるので、これらが栽培されるでも幼虫が見られる。都会でも家庭菜園でパセリなどを栽培するとたちまち成虫が産卵していき、幼虫を見ることができる。幼虫は三齢まではナミアゲハと同様に鳥の糞に似せた保護色をしているが、四齢幼虫では白地に黄色と黒の斑点模様の警戒色となる。五齢幼虫ではさらに黄緑と黒のしま模様に変化し、黒いしまの部分には橙色の斑点が乗る。

冬は越冬する。冬型の蛹は-196℃の低温にも耐えられる。

分布

ヨーロッパからアジア北米北西部にかけて広く分布する。広い分布域の中でいくつかの亜種に分かれていて、そのうち日本に分布するのは亜種 P. m. hippocrates とされる。また、研究者によってはそれらの亜種を別種とすることもあり、この場合日本産は P. hippocrates となる。

なお北アメリカにはよく似たアメリカキアゲハ(学名 Papilio zelicaon・英名 Anise Swallowtail)が分布している。英語ではこの2種を区別するため、キアゲハを Old World Swallowtail(旧世界のアゲハ)と呼ぶ。

ギャラリー

ファイル:Caterpillar Papilio machaon.ogv
キアゲハの幼虫の動画

関連項目

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参考文献

  • 猪又敏男編・解説、松本克臣写真 『蝶』 山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年、ISBN 4-635-06062-4。
  • 森上信夫・林将之 『昆虫の食草・食樹ハンドブック』 文一総合出版、2007年、ISBN 978-4-8299-0026-0。